（２）

　業務を終えた亜美は、同僚で仲のいい阿部翔子と共に洋子に付き添い３人で和風パブの店に入った。

「どうですか、係長、この店？」

　翔子が洋子に感想を尋ねた。

「んー、なかなかだわ。私の好みよ。」
「良かったぁー。つい最近なんですけど、亜美と見つけたんです。」
「へぇー、そうなの。ま、そんな事より早く飲みましょう。」

　３人は、テーブルに座ると、それぞれ好みの料理を注文した。
　洋子がブラウンの髪をヘアピンで止める。

「係長、飲む気満々ですね。」

　亜美の言葉に洋子も素直に頷く。

「今日はね、何となく飲みたい気分なの。アンタ達もちゃんと付き合うのよ。」
「で、出来る限りは・・・・」

　洋子は、二人に笑顔を見せると、さっそく運ばれてきた大ジョッキを握って乾杯を促す。

「係長、何に乾杯しましょうか。」
「そんな事なんでもいいのよ。早く飲ませて。」
「じゃ、カンパァーイッ！」

　洋子が喉を鳴らしながらビールを流し込んでいく。
　亜美と翔子は洋子の飲みっぷりに舌を巻いていた。

「あぁー、美味しいわぁー。やっぱ仕事の後のお酒はいいわねー。」
「係長、お願いですから乱れないで下さいね。」
「何言ってんの、亜美、大丈夫よ。それに明日は休みだし。」
「で、でも・・・この間・・」
「大丈夫、紳士なら変な真似はしないから。」

（し・・紳士ならって・・・・・）

　女３人集まれば、痴話と淫話とはよく言ったもので当然ながら酒が進むたびに話は、そちらの方向に進んでいく。
　亜美も洋子に釘を刺した割には、話に盛り上がっていった。

「へぇー、係長の彼氏ってエッチなんですねぇー。」
「エッチなんてもんじゃないわよ。ドがつくわね。」

　亜美は、今日の昼間に洋子から彼氏が、補佐の鏑木だと聞かされていたためか、妙に洋子の話がリアルに聞こえて身体が火照っていた。

（へぇー・・あの鏑木補佐が係長にそんな事を・・・・）

　亜美は股間が、湿ってくるのを感じた。
　亜美の様子に気付いた洋子が、目でサインを送ってくる・・・・

（亜美、言うんじゃないよ・・・）

　亜美は、洋子の訴えるような視線に余計と鏑木と洋子が裸で絡み合う様子が頭に浮かんでしまう。

「さぁーて、ちょっと踊りにでも行こうか？」

　洋子の提案に翔子も小躍りして喜んだ。

「公園通りに新しく出来たダンスバーがあるんですけど。」
「ＯＫ！　翔子、そこへ行きましょう。」

　３人は、店を出るとタクシーをつかまえて乗り込んだ。
　後部座席で亜美と翔子が化粧を直している。
　それに気付いた洋子が二人に喋りかけた。

「妙に念入りに化粧するわね。アンタたち逆ナンパでもする気かい？」

　洋子の質問に、二人とも的を付かれたのか体裁悪そうに舌を出した。

「なんだ、本当にそのつもりだったの。冗談で言ったのに。」
「・・・・・・え・・・・・そ・・・」

　そうこうしているうちに、タクシーは店の前に止まった。
　３人は、カウンターの男性店員にフリーチケットを貰い店内に入っていく。

　中では、アマチュアバンドに合わせて若い男女がステップを踏んでいた。
　翔子が、一つの空きボックスを見つけると場所をとってバッグを置く。

「係長、ここ空いてます。」
「ホイ、ホォーイ・・・」

　亜美が、３人分のカンパリソーダを持ってボックスに戻ってきた。

「さ、躍ろうかな。」

　洋子が、カンパリを一口飲むとさっそく中央のフリーステージに歩いていく。
　洋子は、なかなかイカした巧みなステップを踏んでいた。
　いつの間にやら洋子を囲むような配列になっている。

　洋子の踊りを見ていた翔子が呟いた・・・・

「係長って踊り上手ねぇ。　凄い目立ってるわ。」
「そうね、背も高いし顔の造りもハーフだから余計とね。」
「亜美も背が高いしスレンダーだからいいわよ、羨ましいわ。」
「そんな事気にしないのっ！　さ、私達も踊ろうよ。」

　亜美と翔子は、洋子の側に近づいていった。
　３人は、ステージの真ん中で小汗をかきながら踊りを楽しんでいた。
　
　そして、しばらく踊った後、ショータイムのため演奏が止んだ。
　３人は、ボックスに戻って一息ついた。

「あー、スッキリ。」

　洋子が椅子に座って残りのカンパリを喉に流し込んだ。
　翔子は、バックを持って席を立つ。

「トイレに行ってきまぁーす。」
「いってらっしゃーい、ちゃんと、おまた拭いてくるのよ。」

　洋子の言葉に、ガクッっとしながら翔子はトイレに向かう。
　洋子と亜美は、新たにマルガリータを注文した。

　洋子が、煙草を取り出し火を付けると何気に入口付近を眺める。
　どうやら翔子の跡を追うようだ。

「・・・・？」

　亜美が、洋子の視線に気付く・・・・

「係長・・・どうしたんですか？」

　洋子は、煙草を灰皿にもみ消すと無言で席を立った。
　ゆっくりとトイレの方に歩き出す。
　それを見た亜美も首をかしげながら洋子の後をついていくことにした。

　その頃、トイレ前では、翔子が、若い男数人に口を押さえられてもがいていた。

「いいじゃねぇーか、お姉さん。減るもんじゃねぇし。楽しませてやるからよ。」

　暴れる翔子を２人の男が両脇から抱え、もう１人が口を押さえてトイレ奥の器具庫に入っていく。男らは、３人だった。
　器具庫に入ると、もう１人の男が翔子のスカートを捲り上げてニヤついた。
　Ｖカットのオレンジ色のショーツが露になる。

「ほぉう・・派手なパンツ穿いてるねー、お姉さん。」

　叫ぼうにも口を押さえられて声が出ない。
　男は、一気に翔子のショーツをストッキングごと引き降ろした。
　両脇では、男ら二人が翔子の乳房を揉んでいる。
　前にいる男が翔子の股間に手を滑らした。

「・・ん・・うぅぅぅー・・・・」
「くぅー、こりゃいい湿り具合だぜ・・・・・」

　男が、ベルトを外してブリーフごとＧパンを下ろす。

「まず、俺から頂くぞ。」

　押さえつけている二人の男は頷いた。
　肉棒を握って翔子の蜜壷に入れようとした瞬間、器具庫のドアが勢いよく蹴り破られる。

　洋子だった・・・

「な！・・・なんだ、テメェー！」

　肉棒を出したまま振り向いた男の股間をめがけて洋子の容赦ない蹴りが真下から炸裂した。
　男は、声も上げることなく白目を向いて気を失う。

「・・・か、係長ぉぉーっ！」

　翔子が、洋子を見て安堵感を表わし泣きながら叫んだ。

「翔子、オ○ンコは大丈夫だったかい？」
「・・・・は、・・はい・・・なんとか・・・」

　翔子は、器具庫から飛び出し洋子の後ろにいる亜美に抱きつく。
　二人の男が、洋子に臆しながらも器具庫から出てきて怒鳴りあげた。

「コラっ、何の真似だ、ネエちゃん。」
「それは、こっちの台詞だよ。僕ちゃんたち・・」
「おう、なに冷静装ってるんだ。連れをこんな目に合わせてただで済むと思うなよ。」
「アンタら、激馬鹿野郎だね。この状況見て刑務所行きだってのが判んないの。」
「・・ぅ・・グッ・・・ウルセェーっ！」

　男が、そう言いながら洋子に飛び掛かっていく。
　洋子は表情を変えずに男の鳩尾に前蹴りを入れるとヒールが根元まで食い込んだ。
　男は、汚物を吐きながら前のめりに倒れこんでしまう。

　もう１人の男が、驚きながらも器具庫にあったモップを振り上げた。
　クールな笑みを見せる洋子・・・・
　打ち込んできたモップを軽く交わすと同じく洋子の膝が男の鳩尾にヒットした。
　呻きながら倒れていく・・・・・

　それを見て翔子が、すかさずモップを拾い上げ倒れた男を叩きまくった。

「この、クソ野郎ーっ！　舐めんなよっ、バッカヤロォー！　よくも、私のオ○ンコに指を突っ込んでくれたわねー！」

　亜美と洋子は、ポカンと口をあけながら罵倒して男を叩いている翔子を見ていた。
　二人の視線に気付く翔子・・・

「・・・あ、あら・・・私ったら・・・」

　恥かしそうにモップを置くと乱れた服を直し始めた。

「・・・・・アンタを怒らすと怖いかもね。」

　顔を赤く染めながら翔子が洋子に礼を言った。

「・・・あの、・・・か、係長、どうもありがとうございました。」
「ま、今日はしょうがないけど、仕事では隙を見せないようにね。」
「は、はい。」

　そう言うと洋子が、気を失っている男たちのズボンを脱がし始めた。

「な、何やってるんですか。係長・・・まさか・・・」

　亜美が怪訝そうに洋子に尋ねた。

「馬鹿ねぇー、こいつらに跨って腰下ろすとでも思ったの？」
「え？　違うんですか？」
「お馬鹿・・・　念を入れておくのよ。アンタ達も手伝いなさい。」
「え、えぇー・・・」
「いいから早く・・・」

　亜美と翔子は、渋々、洋子の言うとおり男たちのズボンを脱がし始めた。
　下半身を丸出しにした男たちを見て洋子が呟く。

「プッ、おっ粗末な、ポ○チンねー・・・」

（・・・・・・・・ま、また・・・言ってるわ・・）

　亜美と翔子は、洋子が何をするのか疑問に思っていた。
　洋子は、男たちのズボンを窓から放り投げ携帯で電話を掛ける。

「あ、警察ですか。いま公園通り前のダンスホールの女子トイレで３人の男が下半身丸出しで寝ているんです。直ぐにきてください。」
「はい、そうです。お願いします、急いでください。怖いんです。」

　洋子は、そう言うと電話を切った。

「さ、今日は、もう帰りましょう。」

　亜美と翔子は、唖然として言葉が出てこなかった。
　しかし、冗談じみてる洋子の行動も、洋子が持つ実力と冷静さによるものであり、二人は、改めて感心したのだった。

　歩いていく洋子の後に続く亜美と翔子・・・・
　二人は同時に同じ事を心の中で呟いていた。

（格好いいなぁー・・・）

　そう思ってる二人に気付かず、おもむろに立ち止まる洋子・・・・

「ちょ、ちょっと待って・・・・ショーツが割れ目ちゃんに、食い込んじゃった。」

　洋子はそう言うと足を開いてスカートの中に手を入れショーツのずれを直した。

「よしと、ＯＫ！　さ、いこうか。」

（・・・こ、これさえなければ、もっと尊敬するのに・・・）

　しかし、そう思う反面、亜美は、洋子が素敵に思えてしかたがなかったのだ。