（５１）

　裕二と鏑木は、マーベラス社の連中が宿泊しているホテル前の喫茶店で、連中の顔を覚えるためコーヒーを飲みながら観察を続けていた。

「鏑木さん、出てくるんですか？」
「そりゃ、わからん。しかし、今は、これぐらいしか、やる事はないだろう。」
「ええ。」

　その時、勇次の携帯が鳴った。相手はマンションの管理人だった。

「えぇっ！・・・解りました。直ぐ行きます。」
「どうした？」
「俺の部屋が荒らされました。セキュリティーが働いて管理人と契約警備会社に連絡が入ったみたいです。」
「・・・ふむ、奴らだな。行くか。」
「ええ。」

　裕二と鏑木は、喫茶店を出るとマンションに急いだ。
　車を遠くに停め慎重に周りを確認する。

「どうだ、香坂？」
「んー、どこで見てるか解りませんが・・・・・とりあえず、俺一人で行ってみます。」
「気をつけろ。」

　裕二は、気を配りながらマンションに入っていった。
　エレベーターに乗り部屋に向かうと玄関のロックが破壊されている。
　裕二は、ドアを開けて部屋に入った。

（チッ・・・荒らしまくってやがる・・・）

　部屋のパソコン、クローゼット、タンスとあらゆる場所を探したようだ。
　裕二は、簡単に中を整理し部屋を出た。

　外に出て鏑木の待つ場所へ戻る裕二・・・・

（あれ、鏑木さん・・・・・何処に行っちまったんだ・・・）

　裕二は、塀にでも、もたれているのだろうと足を運んでいく。
　道を曲がっって鏑木の名を呼ぼうとすると２人の大男が鏑木の首にナイフを突きつけながら裕二を迎えるように笑っていた。

（・・・・・・・・チッ・・やられたぜ・・・）

「お帰り、香坂さん。」
「・・・・・日本語が上手いんだな。」
「まあね。」
「こ、香坂・・・すまん。」

　鏑木を羽交い絞めにしている男が裕二に呟く・・・・

「香坂さん、先日は、仲間と遊んで頂いたそうでありがとうございました。」
「ふん、気にするなよ。」
「ところで、チップを返していただけませんか？」
「先に、俺の仲間を離せ。」
「返していただけたらね。」
「返しても、コピーがあるぞ。」

　二人の男が、声を上げて笑った。

「嘘を言っては、いけませんよ。あのチップはコピーできないようにホールカットしてセキュリティーを埋め込んであるんです。読んだだけでも、我社にアクセスカウントが送られてくるようになってます。」

　男の言葉に鏑木が感づいた。

（そ、そうか・・・それで何度試しても・・・）

　鏑木が、そのデータを分析中、何度もネットにアクセスをしてしまう理由がわかった。

「さぁ、香坂さん、チップを返してくださいませんか。そうすれば、我々は、大人しくアメリカに帰ります。」

（・・・くっそぉ・・・）

　鏑木が、咄嗟に口からでまかせを言った。

「おい、本当に、コピーは出来ないと思っているのか。」
「ええ、できませんね。」
「一旦、読み込みこんだ情報を強制的にお前らの会社にアクセスして再度、ホールカットした情報をハードコピーしたとしたらどうだ。」
「あなたに出来ますか、そんな科学者が行うような高度な技術が。」
「俺は、マーベラスの入口・・・ラウンドをこじ開ける事が出来たんだぞ。侵入記号と暗証コードは、Ｍ１１０−ＭＮ９を３７乗して電気分析した。その、セキュリーティーに、そこにいる香坂が倒した男の身分証明にはコードが記入してある。それを打ち込めば簡単に侵入できるさ。違うか。」
「・・・・なるほど、貴方でしたか。」
「コンピューター先進国のアメリカも大した事はないな。」
「・・・・フッ、貴方を我社にスカウトしたいですな。」

　事実、鏑木がマーベラスのサーバーにアクセスした事は間違いない。
　その情報も、この男達の耳に入っているのだろう。

「一緒に来てもらいましょう。」

　男は、鏑木にナイフを突きつけたまま、裕二を車に誘導した。

「さ、乗ってください。」

　裕二は、鏑木の事もあり抵抗できずに車に乗り込んだ。
　そして、二人は、目隠しをされた。
　行き先を判断できないよう混乱させるために色々な道を無造作に走っている。

　そして、１時間くらい経過しただろうか車は停車し目隠しをされたまま使われていない雑居ビルの空き部屋に連れ込まれた。
　目隠しを外される裕二と鏑木・・・

　窓の外に見える看板で場所が何とか確認できる。

（なに・・駅裏のビルじゃねぇか。）

　連れてこられたビルは、センターとは目と鼻の先だった。

　部屋の中には、全裸の女性が、椅子に縛られて脅えた顔をしている。
　その周りには、マーベラス社の社員であろう連中が同じく椅子に座って談笑していた。

（５２）

「おう、ヘインズ、トミー、お客さんかい？」
「ああ、太平洋の方だ。丁重におもてなししてくれ。」
「ああ。そうだな。」

（何、言ってやがる・・・）

　裕二と鏑木を連れて来た男の一人は、ヘインズとトミーと呼ばれていた。
　ヘインズが、裕二と鏑木を鉄柱に縛って固定した。

「おい、おい、優しく縛ってくれよ。」

　裕二の言葉に、一人の金髪女性が近づいてくる。

「へぇー、いい男じゃない。トミー、この男は私の好みよ。」
「そうかい。こいつがチップを持っているんだ。」
「そうなの。・・・ねぇ・・お兄さん、返していただけない？」

　そう言いながら、裕二の首筋に舌を這わせながら股間を触り優しく上下していく。

「・・・・あんた、なかなか綺麗だな。プライベートで遊んでやるぜ。」

　そこへ、もう一人の女性が、鏑木に近づき腰を突きつけながら唇を重ねていった。

「じゃ、私は、この男でいいわ。ハンサムだし・・・」
「ほぉう、やはり本場のキスは洒落てるな・・・」

　二人の行動に呆れたトミーが、二人を制止した。

「おい、おい、ヘレンもダイアンも後にしろ。仕事が先だ。」

　ヘレンとダイアンと呼ばれた女が、渋々、二人から離れた。
　そして、一人の男が、裕二と鏑木の前に近づいてくる。

「始めまして、香坂裕二さん、鏑木洋さん。」
「ほぉぅ、フルネームで知ってるのか。」
「ええ、私らも太平洋グループ中央管理センターのような部署の人間ですので。」
「あんたは？」

　鏑木の言葉に、笑っていた顔が真剣になった。

「申し送れました。私は、マーベラス・コーポレーションの社員で、ＭＣ中央情報管理システムの責任者、ディック・スペンサーと言います。彼らは、私の優秀な部下でお二人を連れてきた眼鏡を掛けた男がトミー、大男が、ヘインズ、そして金髪の女がダイアン、レッドヘアーの女がヘレンです。それから奥にいる坊主頭の男がジョンで黒人の男がサムです。皆、紳士、淑女です。どうか、よろしくお願いしますよ。」

　鏑木が、ディックに言い放つ・・・

「紳士、淑女が、こんな真似するのかい？　それに、その全裸の女性は誰だ。」
「ああ、この女性は、太平洋のニューヨーク支店に勤める女性社員です。一緒にアメリカから連れてきました。日本では調達出来ないのでね。」
「何だとぉーっ！・・・・・汚ねぇーぞ、貴様ら・・・」

　大声を上げる鏑木に、ディックがスタンガンを無造作に突きつけた。

「うぐぅっ・・・」

　鏑木は、強い電気のショックで気を失った。

「いやぁ、残念ですよ。いっそ貴方達を抹殺できれば簡単なんですが、あいにく、正規に入国しましたので拳銃も持ち合わせてなくてね。社からの命令で日本では、大人しく任務を遂行しろと言われまして。」
「・・・・・」
「貴方達は、非常に男気があるし精神的にもタフだ。ですので、止む無く、女性をお借りしてきました。」
「どうするつもりだ。」
「貴方がチップを返すまで甚振ります。」
「ここにはないぞ。」
「でしょうな。」

　そう言うと、ディックが裕二の鳩尾に拳を食い込ませた。

「ぐぉっ・・・・」　
「ジョン、出番だ。お前のビッグコックで女を弄んでやれ。恐らく、香坂さんは、チップを返してくれるだろうよ。」

　黒人のジョンが、笑みを浮かべながら立ち上がった。
　ヘレンが、鏑木に近づき股間を強く握り締める。
　鏑木が、苦痛で眼を覚ました。

「うっ・・」
「目が覚めた？ショーが始めるわよ、貴方も見てて。」

　そう言って、ヘレンは笑いながら床にしゃがみ込む。

「ジョン、ＯＫよ、始めて。」

　ジョンは、無造作に女に近づくと固定したロープを外した。
　しかし、腕は皮手錠で後ろに括られたままだ。
　ジョンが女を立たせた。
　女は、脅えた目でジョンを見ると一気に身体を震え始める。

　ジョンが、ズボンを脱ぎ、座っていた椅子に腰掛けると後ろから女を引き寄せ裕二らに見えるよう足を大きく開かせて持ち上げた。
　ジョンの肉棒は、缶ビールほどの太さがある。

「い、いやぁぁぁーっ！」
「おい、やめろっ、やめろぉーっ！」

　裕二が、大声で怒鳴る。
　しかし、誰も裕二の声に反応せず、ジョンの行為を見ていた。
　裕二が鏑木に振り向いた。

「鏑・・木・・さ・・・・・？」

　鏑木は、ジョンと女を観察するように注視いていた。
　裕二が、囁く・・・

「鏑木さん・・・何とか止めないと・・・」

　しかし、鏑木は、裕二の言葉を無視して視線を外さないでいた。

「ぎゃぁぁぁー！」

　ジョンの肉棒が女性の蜜壷に一気に埋まった。
　後ろから乳房を握り締めながら腰を突き上げている。
　ディックが香坂に言葉を掛けた。

「ミスター香坂、どうですか。凄いでしょう。」
「・・・・た、ただで済むと思うなよ。」
「ふっ、ふっ、ふっ・・・・・強がりは通用しませんよ。」

　ディックは、ジョンに目で合図を送る。
　頷くジョンが、埋まった肉棒を抜くと女を持ち上げて菊門にあてがった。

「や、やだぁぁぁー・・やめてぇぇぇぇぇー・・」

　ジョンは、躊躇うことなく一気に女を肉棒に落とした。

「・！・・ウギギィィィィィィィィィィィィーッ・・・」

　悲鳴をあげる女性・・・
　裕二は、目をそむける様に鏑木を見る。
　しかし、鏑木は、ずっと、その行為から目を離さないでいた。

（？？・・鏑木さん・・・）

　悲鳴をあげながら泣き叫ぶ女の声が耳をつんざく・・・
　ディックは、一切、喋りかけることなく押し黙っていた。
　既に女を甚振り始めて３０分ほど経過しただろうか、やっと鏑木が小さく口を開いた。

「香坂・・・前を向いたまま聞け。」

　裕二が鏑木に小声で返事をする。

「・・・・・はい。」
「縄を解けるか？」
「ええ、・・・間接を外せば何とか。」
「ここから脱出しよう。」
「え、で、でも、彼女は？」
「あの女は、太平洋の社員じゃない。」
「えぇぇー・・・」

　思わず声が高くなるところだった。
　小さく声を絞って鏑木に聞きかえす。

「何故、判るんです。」
「まず、あの黒人の男が女に挿入する時に、既に女の性器が濡れていた。そして、ア○ルに、あの太いのを入れたにも関わらず出血が全くない。大声で悲鳴を上げてはいるが、声質が全く異なっている。演技だ。」
「ほ、本当ですか？」
「ああ、それに、女を犯しているのに、何故、俺たちに聞きただしてこないんだ。普通は、やめて欲しかったらチップの隠し場所を教えろ、と聞いてくるはずだろう。わざと見せてるんだ。奴らの魂胆は、既に飲み込めた。」
「間違いないんですね。」
「ああ、それにな、太平洋グループのニューヨーク支店には日本人の女性社員はいない。現地で採用する女性だけだ。」
「！・・・鏑木さん・・」

　鏑木は、冷静に観察をしながら考えていたのだ。
　裕二は、鏑木の洞察力は勿論の事、瞬時の決断に驚嘆していた。