（５５）

　翌日、徹夜で調査等の仕事を続けていた裕二は、朝食を済ませ、出かける用意をしていた。

「香坂っ！」

　第三課長の野口が裕二を呼んだ。

「はい。」
「亜美君と翔子君がまだ出社していないんだが、お前知らないか？」
「え？　いえ、昨日はセンターに泊り込みでしたしので、一緒では‥‥‥」

　裕二と野口が、一瞬、視線を合わした。

「！」
「や‥‥‥やられたかっ！」

　裕二と野口の感が的中した。
　遠藤が険しい顔をして裕二と鏑木を呼んだのだ。

「香坂、‥‥亜美君と翔子君が奴らに捕まった‥‥‥狙いは、香坂、お前だ。」
「‥‥‥俺との関係を‥‥‥」
「ああ、奴らなら調べる事くらい容易いかもしれん。」
「所長‥‥」

　遠藤が、即座に頭を回転させる。
　そして、胸ポケットからチップを取り出して裕二に渡した。

「香坂、これを持って行け。最悪の場合は、渡しても構わん。」
「し、しかし‥」
「大丈夫だ。太平洋の情報は抹消してある。」
「はい‥‥‥‥場所は‥」
「東環状線沿いにある桜湖の別荘だ。奴らは２グループに別れている。俺は、西田と、もう片方の連中を追う。恐らくディックがいるほうだ。」
「解りました。」
「急げ。」

　裕二は、気を入れ直して早速、桜湖の別荘に向かった。
　車を飛ばす裕二の横で鏑木が重い口を開いた。

「香坂‥‥‥亜美君は‥‥」
「鏑木さん、言わんで下さい‥‥‥覚悟は出来ています。」
「‥‥‥香坂‥‥」

　鏑木は、表情を変えずに答える裕二を見て唇を噛んだ。
　裕二の心の中を読み取り、裕二の葛藤を理解したからだ。

　東環状線Ｒ２に乗ると鏑木が、なにやら鞄から機械を取り出し作業を始める。

「鏑木さん、何ですかそれ？」
「ああ、これは、奴らと、もう片方の通話を盗聴する機械だ。動きが察知できれば、お前も色々と駆け引きしやすいだろう。」
「鏑木さん、すいません。」
「香坂‥‥俺は、頭を使ってやる。」
「はい、お願いします。」

　それから、裕二と鏑木は、一切、会話をすることなく桜湖に向かった。
　１時間程すると湖の南側に１軒の別荘が見えた。

「香坂、あれだぞ。」
「ええ。」
「俺は、周波数を合わす作業をする。後は、インターコムで連絡を取り合おう。」
「解りました。」

　裕二は、車を止めると鏑木の作業を待った。
　１時間内に２回ほど、別荘から携帯の電波が発せられた。
　素早くキャッチし周波を合わせる鏑木‥‥‥‥

「よし、ＯＫだ。」
「車は、壊しておきました。」
「‥‥‥よし、入ろう。」

　鏑木は、機械を別荘の木陰に隠しアンテナを立てた。
　裕二は、堂々と玄関から入っていく。
　鏑木が、ロックを掛けて部屋を見渡した。

「香坂、上にいるようだ。」
「はい。」

　二人が階段を上がっていくとかすかに声が聞こえた。
　それは、女性のうめき声だった。

（くっそったれが‥‥）

　裕二は、声が聞こえる部屋のドアの前で立ち止まった。
　鏑木も、隣りのドアに手を掛ける。
　インターコムで裕二に合図を送る鏑木‥‥‥

「香坂、俺は、こっちの部屋を確認する。」
「解りました。」

　鏑木がドアをあけ部屋に入ったとたん、強烈なキックが鏑木の腹部を襲った。

「グッ‥‥‥ゥッ‥」

　中から黒人が出てきた。ジョンと呼ばれる男だ。
　気を失った鏑木を軽がるかついで裕二に声を掛ける。

「遅かったな。その部屋にいるから入れよ。」

　裕二は、歯軋りをしながら部屋を開け中に入っていく。
　後ろから鏑木を担いでジョンも続いた。

「クッ！」

　中では、亜美と翔子が全裸にされソファとベッドに括りつけられていた。

「亜美っ、翔子君っ！」

　そう、言葉を発した瞬間、裕二の首にスタンガンが当てられ裕二も気を失ってしまう。

　ジョンとサムが、裕二と鏑木を縛り上げた。
　そして、裕二が、ジョンに強引に覚醒させられた。

　亜美と翔子はグッタリとして横たわっている。
　隣りでは、鏑木が口から血を流していた。

「鏑木さんっ‥‥どうしたんです。」

　鏑木は苦しそうにしており言葉が出ないようだ。
　呼吸がおかしい。

（クソっ‥‥さっきの蹴りで肋骨が折れてるな‥‥）

「おい、俺の隣りの男のロープを緩めてくれ肋骨が折れて呼吸がしにくいんだ。」
「そうか‥そりゃ気の毒に‥‥」
「おい、この男は動けん。緩めるくらいはいいだろうっ。」

　そう言った裕二の頬にサムの拳が飛んできた。

「グッ‥‥」
「俺の仲間を合計５人もカタワにしたんだ。我慢しろよ。」

（‥‥‥なに、ほざいてやがる。）

　サムは、横たわる翔子に近づくと、うつ伏せにして腰を高く上げた。

「おいっ！　何をするっ。‥‥亜美‥‥おい‥‥」

　裕二の、声に目を向けるも身体の自由が利かないようだ。

「ゆ、裕二さん‥‥‥‥く、薬を打たれて‥‥」
「何っ‥‥‥」

　そんな裕二と亜美の会話を無視してサムの怒張した肉棒が翔子の蜜壷に深々と刺さっていく。

「いやぁぁぁー‥‥もう‥やめてぇぇー‥」

　翔子の言葉に、裕二は、既に何度か二人が弄ばれた事を理解した。
　裕二の怒りが身体中に廻った。

　サムが激しく翔子の蜜壷に肉棒を出し入れしている。
　それを見たジョンは、亜美に近づいた。
　もはや裕二は、声が出なかった。
　怒りだけが纏わりつき、冷静さを失おうとしている。

＜香坂、先を考えろ。冷静さを失ったら負けだ。＞

　遠藤の言葉が瞬時に脳裏を掛け走った。

（落ち着け、裕二‥‥今は、今は、しょうがない‥‥‥）

　裕二は、自分に言い聞かせるようにし、ジョンの行動を視線を離さず見入った。

　ジョンが、亜美を逆さに担ぎ上げて下半身を真上に向かせた。
　亜美の腹部を抱えこみ蜜壷に顔を埋める。
　亜美は、声を出す事を我慢した。
　裕二は必死で手を動かすが、今回は関節を外す事さへ無理なほどきつく縛られている。

（亜美‥‥絶えろ‥‥絶対に声を出すな。）

　裕二の思いを理解しているのか亜美は声を発しなかった。
　ジョンが、亜美の蜜壷を指で開いて、舌で嘗め回している。

「ングゥゥーーーー‥‥」

　翔子が苦痛の声を上げた。
　サムが、顔をゆがめて翔子の中に爆弾を発射させたのだ。
　そのまま倒れこんだ翔子が嗚咽を漏らす‥‥‥

「翔子‥‥泣いちゃだめよ。‥‥コイツらがつけあがるわ。」

　亜美の言葉に、翔子は歯を食いしばった。
　サムが、亜美を弄ぶジョンのところに移動した。

　頭を下に向ける亜美の頬を片手で締めていく。
　亜美は苦痛で口を開いた。
　そこへ、サムの肉棒が無理矢理、突っ込まれた。

「ゥッツ‥ングググッ」
「サム、手を離すと食いちぎられるぜ。」
「ああ、そうだな。」

　サムは、そう言うと根元まで刺し込んでから亜美の口から肉棒を抜いた。
　サムが、瓶ビールをラッパ飲みしながら椅子に腰掛ける。

「ミスター香坂、あんたのフィアンセは、ナイスボディーだな。やっぱり日本女は最高だ。まだ、とことん楽しませてもらうぜ。」

　サムが、そう言うと、ジョンは、亜美の身体を仰向けにさせて両足を肩に担いだ。

「香坂、あんたの綺麗な彼女のココを頂くぜ。」

　そう言うと、ジョンは、肉棒を亜美の蜜壷にあてがい、ゆっくりと挿入していった。

「おぉぉぅ‥‥凄ぇぇ‥‥‥‥ナイスなプッシーだぜ‥」

（くっそったれっ‥‥）

「亜美ぃーっ！　俺を見ろーっ。」

　亜美は、顔を顰めながらも裕二の方を見た。
　涙を我慢しているように見えるが亜美は、必死で歯を食いしばっていた。

「亜美、俺とお前は一心同体だっ！」
「！‥‥‥うんっ‥」

　裕二の後ろで倒れている鏑木が、苦しそうにインターコムで喋りかけてきた。

「‥‥こ‥香‥坂‥‥‥‥」
「鏑木さん‥‥‥」
「タ‥タイピンを‥外して俺の‥‥く、口に咥えさせろ。」
「‥‥わ、解りました。」

　裕二が、手探りで鏑木のネクタイを手繰っていく‥‥‥
　タイピンを外すと指でタイピンの根元を抜き指で挟んだ。

「香坂、‥‥床に‥‥さ、刺せるか？」
「ええ。」
「よし、刺‥せ‥‥‥後は、俺が口‥‥で拾う。」
「はい。」

　裕二は、鏑木の言う通りにした。
　気付かれぬよう、ゆっくりと身体を移動した。
　しばらくすると、裕二の手首に振動が伝わった。
　鏑木が上手く口に咥えてロープを切り出したのだ。

　復調したサムが、再び翔子の蜜壷に肉棒を挿入し始めた。

「イヤァァァァァァー‥‥」

　サムは、翔子の身体が沈んでしまうほど腰を打ちつけている。
　翔子は、嗚咽と衝撃で胃の中のものを吐き出し始めた。

（翔子君、もうちょっとだ‥‥我慢してくれ。）

（５６）

　サムは、気を失った翔子に構わず遠慮なく腰を打ちつけていた。
　その時、ジョンが呻き声をあげて亜美を寝かせると肉棒を顔の前に持っていく。
　ジョンは、肉棒を擦りながら亜美の顔に分身を発射した。

「ウオォォー‥‥」

　声を上げながら亜美の顔に塗りつけるように肉棒を押し当てていた。

「グゥゥ‥‥たまらんぜ‥‥」

　ジョンは、まだ分身を出し続けている‥‥‥
　その時、サムも翔子の蜜壷から抜き亜美に近づく。

「ぅぅ‥ジョン、俺もだ‥‥」

　ジョンは、亜美の乳房に肉棒を押し付けて分身を発射した。
　亜美の乳首を回すように塗りつけていく。

「ふぅー、最高だぜ‥‥‥‥‥‥サム、俺にもビールをくれ。」
「ああ。」

　ジョンは、サムからビールを受け取ると一気に喉に流し込んでいく‥‥‥

　ちょうど、その時、携帯のベルが鳴った。サムが携帯を取り会話を始める。
　裕二の耳にも電話の会話が流れている。
　相手は、ボスのディックだった。

『どうだ、そっちは‥‥』
「ボス‥久しぶりにいい思いをしています。」
『そうか、今から、そっ‥‥‥？‥‥だ、誰だっ‥‥』
「え？‥ボス‥‥ボスッ‥‥チッ、切れちまったぜ。」

（所長が踏み込んだか？‥‥）

　裕二は、咄嗟にそう思った。
　その時、裕二の手首を縛るロープが緩み始めた。

「こ‥‥‥香‥‥‥坂‥‥‥‥」
「か、鏑木さんっ‥‥」

　インターコムから流れる鏑木の声が途切れた。

「‥‥げ‥‥限‥‥界だ‥‥」

　そう言うと再び鏑木は気を失った。

（鏑木さん、これなら外せます‥‥）

　ジョンが、サムに問いただしていた。

「ボスが、どうしたんだ？」
「解らん、切れちまったぜ。まあ、また掛かってくるだろう。」

　そう言うとジョンとサムは、ビールを飲みながら会話を始めた。
　サムが、翔子の菊門に指を入れてジョンに話し掛けている。
　サムも笑いながら、亜美の蜜壷に指を入れては、馬鹿話をしていた。

（こいつら‥‥‥‥‥‥）

　裕二のロープが外れそうになった。
　その瞬間、裕二の身体中の筋肉が一気に盛り上り怒りが部屋中を包んでいく。
　その雰囲気にジョンとサムも気付いたのだろう。咄嗟に裕二を見た。

　裕二の身体中から醸し出す迫力に気付いた亜美は身体が痺れ始める。
　そして、知らず知らずのうちに、脳裏に康平と礼子の顔が浮かんでいた。
　なぜ、この状況で、二人を思い出したか自分でも判らない。

＜亜美‥お前は、間違いなく俺と母さんの血を引いてる‥‥‥＞
＜亜美‥‥‥貴方は香坂さんのものになるのよ。心を預けなさい。＞

　裕二の雄叫びが響いた。

「ウオォォォォォォォォォォォーーッ！」　

　ジョンとサムが、裕二の鬼の様な表情に怯み始めた。
　しかし、縛ってあるため動けるとは思っていない。
　ジョンが強がりを見せて言い放った。

「‥‥フッ‥‥叫んでもロープは外れんぞ‥‥」

　しかし、二人の意に反して、裕二がロープを引き千切って立ち上がった。

「亜美ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーっ！」
「ナ‥‥ナニッ‥‥」

　裕二の声で、亜美の目に精気が戻った。
　動かないはずの身体に力が漲る。

「裕二ぃぃぃぃぃーっ！」

　亜美が、隣りにいるジョンの身体を蹴り上げた。
　勢いよくベッドから転げ落ちていくジョン‥‥‥‥

（あ、亜美っ‥‥‥）

　裕二は、亜美の雰囲気に驚愕した。
　明らかに以前の亜美ではない。
　何事もなかったように涼しい眼で裕二を見つめた。

　裕二と亜美の身体から、異様なオーラが同調して見えない魂が醸し出されていた。
　その雰囲気にジョンとサムは、全く動けないでいる。

　亜美が、裕二に近づく‥‥
　そして、裕二が、亜美を抱きしめた瞬間、互いの鼓動が調和したのだ。

　亜美が、裕二の腕に抱かれながら囁いた。

「裕二さん‥‥‥私‥‥何か‥身体中が‥‥‥‥‥‥変な‥‥の。」

　そう言うと、裕二の胸の中で亜美は気を失った。
　裕二は、亜美を鏑木のいる壁に静かにより掛けた。

　後ろでは、慌てふためきながらジョンとサムがズボンを穿いている。
　裕二は、後ろを振り向くと低い声で言い放った。

「早く穿け。待っててやる。」

　裕二の身体の筋肉が更に隆起していく。
　そして、目が据わった‥‥‥‥

　慌てて着替えたジョンが、裕二に飛び掛ってきた。
　裕二が、フルパワーで胸部を蹴り上げるとジョンは両手でブロックをした。
　しかし、裕二の蹴りは、ジョンの腕をへし折り、更に胸部に食い込んでいく。

　口から血を吐き床に倒れるジョン‥‥
　肋骨が何本か折れたのだろう。
　しかし、裕二は手を抜かない。
　渾身の力を込めてジョンを持ち上げると後頭部を抱え思いっきり壁にぶち当てた。鼻が潰れ鮮血が噴出す。
　もう一度立たせる裕二、既にジョンの意識は朦朧としている。
　裕二は、膝を股間に打ち込んだ。
　ジョンの身体が宙に浮き異音がつんざく‥‥‥

「グガ‥ガガ‥‥ッ‥‥‥」

　睾丸が潰れる音がサムにも聞こえたようだ。
　ジョンは白目を向き泡を吹いて床に崩れ落ちた。
　しかし、それでも裕二は容赦をしない。
　気を失ったジョンの股間をかかとで思いっきりけりつけた。
　身体が跳ね上がるジョン‥‥
　肉棒を座滅したようだ。

　裕二が、無表情でサムに近づく。
　サムは、裕二の雰囲気に圧倒されて身体が震えていた。

「ヘ‥‥ヘ‥ヘル‥‥‥‥プ‥‥‥」
「おい‥‥掛かって来い‥‥‥‥‥掛かって来いよ。」

　サムの足が、ガタガタと震え出す。

「掛かって来いぃーっ！」

　裕二の怒鳴り声で反射的にサムがパンチを放ってきた。
　裕二は、サムの腕を取り逆に腕をしならせた。
　太く乾いた骨折音が響き、腕が逆に向いている。

「ウギャァァァァー‥」

　その声に、亜美が、薄っすらと眼を開き始めた。

（‥‥‥ゆ‥‥裕二さん‥‥‥）

　裕二が、泣き叫ぶサムに、近づいた。
　サムは、瞬時に殺気を感じたのだろう。
　ナイフを抜き暴れるように振り回し始める。
　しかし、裕二は、臆するでもなく振り回すサムの手を軽々と掴んだ。
　裕二の手がサムの手首を締め付ける。
　痛みで蹴りを出すが裕二は、全く動じない。

　そして、遂に骨が軋みサムが悲鳴を上げながら裕二に蹴りを上げた瞬間、その握った手を蹴ってきたサムの大腿に振り下ろした。
　二重の悲鳴でサムが失禁と共に床に崩れていく。

「おい、祈りを捧げろ‥‥‥今から男を捨てる事に‥‥‥‥」

　転げ回るサムの背を上から踏むと裕二は、まるでサッカーボールを蹴るように足の爪先をサムの股間に食い込ませた。

「グギャァァァァァァァァァァァァー‥ッ‥ッ‥ッ‥‥」

　サムの股間から血が流れ出してきた。

　しばらく仁王立ちのように立ち尽くしていた裕二に、亜美の視線が突き刺さる。
　後ろを見ずとも亜美である事を裕二は察した。
　裕二が前を向いたまま亜美に声を掛けた。
　裕二の目には涙が、溜まっていた。

「亜美っ、‥‥‥お前は、俺の全てだ。これからもずっと‥‥‥‥死ぬまで。」
「‥‥‥裕二さん‥‥‥‥私は、‥‥‥私は‥‥‥貴方のためなら‥」

　亜美は、背中から裕二に抱きついた。
　今、二人の持つ魂が、互いの心の奥に入っていった事を裕二と亜美は確認した。