（７３）

　注射器を持ったベーカーが、美貢の首を掴んだ。
　身体を強張らせながら抵抗する美貢・・・
　しかし、到底、力では敵うはずはない。
　見る見るうちに美貢の顔が紅潮し血管が浮き出てきた。
　ベーカーが、美貢の首に浮き出た血管に針を刺す。

「ウゥッ・・」

　ベーカーは、手際よく注射を打つと美貢の首から手を離し、何もせずに、メアリーのいるソファに戻った。

「・・・え・・・？・・・な・・・」

　そして固くなったメアリーの乳首を弄び始めるとメアリーは絶叫し始める。

「ウアァァァァァー・・も、もっと強く摘んでぇぇぇぇーっ！」

　メアリーは腰を浮かせながら凄いスピードでバイブを出し入れをする。
　バイブに掻き出された愛液が卑猥な音を立ててソファに飛び散った。

「ンオォォォォォォォォーーー・・・・・・グゥァァァァァァァァァー・・・」

　メアリーは、腰を突き上げながら早くも昇天してしまった。
　ガックリと腰を落とすとバイブを蜜壷に入れたまま自ら乳首を摘み余韻に浸っている。
　ベーカーが、肉棒を握り締め上下しながらメアリーに刺さったバイブを抜いた。
　そのバイブを口に咥えてメアリーの愛液を舐め上げていく。

「んー・・・いい味だぜ。」

　美貢は、この二人の異様な行為が信じられなかった。
　想像できない恐怖が体中を包み始める。
　美貢は、ゆっくりと立ち上がり再度ロックを外そうとするが全く外れない。

「無駄だぜ。電子ロックだからな。」
「わ、私をどうするつもりなの？」
「ああ、今からアンタを性の虜にさせてやるぜ。」

　美貢は、もはや逃げられないと判断したようだ。
　そして、ベーカーの言葉に怒りを込めて言い返す。

「ふん、それこそ無駄な行為よ。私は不感症なの。何をされてもイカないわ。」
「さて、それは、どうかな？」

　美貢は、恐怖を抱きながらも二人の座るソファに近づいた。
　落ちている自分の下着を穿き、服を着始める。

「おいおい、お嬢さん、すぐに脱ぎたくなるから無駄だぜ。」
「馬鹿言っちゃいけないわよ。そんな気にならないわ。なる訳ないわよ。それより、あなた達は、いったい何者なのよ。何でこんな事するの。」

　その時、美貢の身体に変化が起き始めた。
　子宮の奥から強烈な疼きが走ったのだ。

「アウッ」（？・・・そ・・・そんな・・・）
「お、効いてきたかな。」

　美貢は、強気の顔を見せてベーカーを睨んだ。
　しかし、ベーカーが自身で握る肉棒を見て、さらに体が疼き始める・・・・・

（うくっ・・・そ、そんな・・・・）

　美貢は、疼きに耐え切れず、遂にしゃがみ込んでしまった。
　ベーカーが、不適な笑みを見せながら美貢に近づいてくる。
　美貢は、逃げようとするが動くことが出来ない。
　ベーカーが、美貢を押し倒して仰向けにさせた。
　特に荒っぽくされているわけでもないが体が抵抗できない。
　ベーカーは、美貢のスカートを再度脱がすと大きく足を開いた。

「ほぉー、お嬢さん、ショーツが大きなしみを作ってるぜ。」

　美貢は、その言葉に一層、亀裂から蜜が沸き始めた。

「な・・・なんで・・・そ、そんな・・馬鹿な・・・」

　メアリーが、ベーカーに質問をした。

「ベーカー、ひょっとしてオビファルピンを打ったの？」
「ああ、こいつは効くからな。」

（オビファルピン？）

　先ほど打たれた注射の液体だ。
　しかし美貢には効いたことのない名前だった。

「どうだい、お嬢さん、欲しいって言えよ。俺は犯すような真似はしたくない。君から入れてと言わなければ入れないさ。さぁ、言いたいだろう、言えよ。」
「だ、誰が言うもんですか。」
「いいや、言うよ君は、絶対にね。この薬が効かなかった奴は、今までいないんだ。この薬は、視床下部の抑制を無意識に極度に開放させるのさ。そして性欲に関する感覚が異様なまで敏感になり、性欲中枢が意識を超えてしまうんだ。我慢できる奴をオレは今まで見たことが無い。当然、ウサギちゃん、あんたも例外ではないはずだ。」

　美貢は、ベーカーの説明を聞いても意味が解らなかった。
　しかし、既に全身が性感帯になってしまっている。
　いや、言葉だけでも感じてしまう状態だった。

　ベーカーが、メアリーの使っていたバイブを美貢の手に握らせた。
　しかし、美貢は、握ったバイブを放り投げる。

「ゥゥッ・・・」
「ふっ、その強がりが、いつまで持つかな？」

　そう言うとベーカーは、ソファに座りなおした。
　メアリーが興味を持ちながら美貢を観察し始める。

「フフッ・・我慢する顔って最高・・・性欲を我慢するってのは苦痛よね。」

　そう言いながらメアリーは、既に怒張をしているベーカーの肉棒に跨った。
　手で握っても指が回らないほどの太さだがゆっくりと蜜壷に導くと腰を落としていく。

「ウゥゥ・・・オォォ・・・太いわぁぁ・・・アハァァ・・・」

　メアリーの蜜壷が裂けんばかりに広がっていく・・・・・
　美貢は、目を瞑ってその行為を見ないようにした。
　しかし、不思議な事に目に焼きついて頭から離れない。

（駄目・・・違うことを考えるのよ・・・・）

　美貢は、必死で性行為以外のことを考える。
　しかし、一向にベーカーの肉棒が頭から離れない。
　美貢は、自ら苦痛を与えることを思いついた。
　手探りでバッグを探ると中からホックピンが出てきた。

（こ、これで・・・）

　美貢は、それを外し針の先を乳首に刺した。

「イッ・・・・・・？・・・・ァァ・・・・・」

　一瞬、痛みが走ったものの、痛みが快感に変わってしまうのだ。

（そ、そんな・・・）

　美貢の蜜壷は、すでに快感と熱で盛り上がり、ショーツを通り越して液体が染み出ていた。
　美貢は、さらに痛みを与えようと乳首に針を突き刺していく。
　しかし、全てが最高の刺激に変わってしまうのだ。
　美貢は発作的に針を思いっきり刺した。

「イギィィィー・・・ッ・・ウゥゥ・・・」
「おい、おいメアリー、見ろよ。お嬢さん、ホックピンを乳首に貫通させちまったぜ。」

　メアリーを下から突き上げながら口笛を吹くベーカー。
　メアリーも美貢の行動に一層、蜜壷を収縮させていった。

「あぁ、いい・・いい、その苦痛の顔・・堪らないわぁぁ・・・・」

　美貢は、もはや成す術もなくのたうち回った。

「お嬢さん、我慢しちゃ身体に悪いぜ。早く欲しいって言えよ。」

　美貢は、必死でもがくが体が言うことを利かない。

「ゥゥ・・・・・」

　メアリーが、ベーカーから離れて女芯を擦りながら美貢に近づいた。
　大きく足を開いて苦痛に耐える美貢の股間に息を吹きかける。

「アォォォォォォォォー・・・」

　遂に美貢が声に出して快感をあらわにした。
　メアリーは、転がるバイブを拾って美貢に持たせる。
　美貢は、今度は離すことなく震える手でバイブに見入った。

　自らゆっくりとショーツをずらす美貢・・・・
　ショーツと蜜壷の密着部に透明な液体が糸を引いて伸びた。
　手にもったバイブを無意識に蜜壷に挿入させていく美貢・・・

（だ、・・・・駄目・・・入れちゃ・・・）

　しかし、我慢に耐え切れずに、いや無意識に蜜壷にバイブが向かっていく・・・・・

「ングゥゥゥ・・・」

　その瞬間、美貢の性欲が一気にはちきれてしまった。

　メアリーが、再度ソファに座っているベーカーに跨って美貢を眺めた。
　美貢は、涎を垂らしながらバイブを動かし始めた。

「ウゥゥゥゥー・・・オ、オ、オ○ンコが、気持ちいぃぃぃぃぃー・・・」

　決して快感を得ることがなかった美貢が感じ始めている。
　しかし美貢には、そんな意識は全くない。

　メアリーが、ベーカーの肉棒を蜜壷に埋め腰を上下し始めた。
　太い肉棒に押され大陰唇が厭らしくめり込んでいく・・・

「クゥゥーー、裂けちゃいそぉぉーーー・・・」

　メアリーの言葉に美貢が、すぐさま反応を示すと、バイブを入れたまま、四つん這いで二人に近づいていった。
　美貢は、二人の結合された部分に顔を近づけた。

「あぁぁー・・・凄い・・凄いぃぃぃ・・・ぁぁ・・」

　美貢はそう言いながら、メアリーの蜜で濡れたベーカーの肉棒に舌を滑らせた。

「オォォッ・・いいぜ・・・」
「ミクさん、私のルビーも舐めてよ。」

　メアリーの注文に美貢は、躊躇せず従った。
　メアリーの女芯を唇で挟むと思いっきり吸引していく。

「オォォォーゥ・・・イイ、イイワァァァ・・・・」

　美貢が、結合しているメアリーの足を持って上に押し上げた。
　メアリーは、薄笑いを見せてベーカーから離れる。
　美貢は、メアリーの愛液がベッタリとついた肉棒を口に咥えた。

「オガァ・・アガァ・・・」

　まるで拳でも入れられたように美貢の口が広がった。
　とても息が出来そうもない。
　しかし、美貢は肉棒から口を離さなかった。
　白目を剥きながら肉棒に執着している・・・・

　メアリーは、それを見ながら後に回ると美貢の菊門に指を入れた。

「ングァ・・」

　腰を激しく振りながら反応を示している。
　メアリーは、蜜壷に刺さったままのバイブを抜くと未だ濡れていない菊門にそれを一気に刺しこんだ。

「ウングゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・」

　強烈な痛みが美貢の体中に走った。
　だが・・その痛みも数秒後に快感に変わってしまう。
　メアリーが、美貢の菊門からバイブを抜くと肉棒から口を離し美貢が叫ぶ。

「いやぁぁぁー・・・抜かないでぇぇー・・・入れて、入れて、あぁぁ・・・もう一度、お尻に入れてぇぇぇぇぇぇぇー・・」

　メアリーは、美貢の言葉を無視して指を蜜壷に入れた。

「ンァァァ・・・いいぃ、それもいいぃぃぃ・・・」

　メアリーはさらに指の本数を増やしていく。
　そして、とうとうメアリーの掌が手首まで埋まってしまった。

「アガァァァ・・・うぅ、うぅ、うぅ・・・き、気持ちいぃぃ・・」

　メアリーは、中で手を動かし始めた。
　美貢の蜜壷は、これ以上なく広がり下腹部もメアリーの手の挿入で膨らみを見せている。
　蜜壷に入れた手を抜き挿しする湿った音が部屋中に響き渡った。
　美貢は、何度もベーカーの肉棒を舌から掬い上げるように舐めている。

　メアリーが、さすがに疲れてきたようだ。
　拳を美貢の蜜壷から抜いた・・・

「やだぁぁぁー・・抜かないでぇぇ・・入れて・・入れてくださいぃぃー・・」

　美貢の蜜壷の淵が切れて血が滲んでいる。
　しかし、痛み自体が快感に変わってしまい、全く嫌がる様子を見せない。

「手がふやけちゃうわ・・・ベーカー、そろそろ入れてあげたら？」
「ああ、そうするか。」

　ベーカーが、メアリーの言葉で立ち上がった。
　美貢は、ベーカーにしがみつき肉棒を離さない。
　それを見たメアリーが、無理やり美貢を引っ張った。

　美貢は、背中から倒れこんでしまう。
　しかし、足を大きく開き腰を突き上げていた。

「入れてください、ここに・・ここに入れてぇぇー・・・」

　ベーカーは、立ったまま美貢の両足首を持ち、さらに大きく左右に足を開いた。
　メアリーが、ベーカーの肉棒を握ると美貢の蜜壷に導いている。
　そして、ベーカーは、美貢の蜜壷に肉棒を一気に挿入していく。

「グガァァァァァーー、アハァァァァァァァァァー・・・」

　まさに減り込むという形で肉棒が中に挿入された。
　逆立のような状態で美貢が絶叫した。

　べーカーが、美貢を少し下ろし気味にすると顔だけが上に向くことができた。
　メアリーは、美貢の声を閉ざすように顔に跨る。
　美貢は下からメアリーの亀裂を手で掻き分けて舌を躍らせた。

「ァァァー・・・イイ・・・イイ、ァァァー・・」

　しばらく、その状態で挿入を繰り返していたベーカーが膝をついて美貢をおろした。
　メアリーが、蜜壷を美貢の顔に押し付けながらベーカーとディープを繰り返す。

　美貢の乳首は、カチカチになり女芯は突起し薄皮から食み出ていた。
　そして、ベーカーが、美貢の陰毛を指で摘みながら無造作に抜き始めた。

「アウゥッ・・・アウゥッ・・・ウゥゥゥ・・」

　抜くたびに蜜壷の内部が収縮しベーカーの肉棒を締め付けてきた。
　しかし、美貢にとっても、それは快感だった。
　何十回と抜かれただろうか、既に恥丘の陰毛は無くなりかけ、数箇所の毛穴から赤く小さな血が浮かんでいた。

　メアリーは、美貢の舌での刺激で尿意を催していた。
　咄嗟に体の向きを変えると蜜壷を大きく開き、中腰で美貢の口にめがけて小水を飛ばし始めた。
　美貢は、悦びの表情で口を大きく開けメアリーの飛沫を受け止めていく。

「ンンー・・・アガッ・・・・ゴボッ・・・」

　ベーカーが、挿入するたびに美貢の恥丘と下腹部が大きく膨らみを見せる。
　何十、何百回と出し入れを繰り返すベーカーに昇天が近づいてきたようだ。

「メアリー・・・下の穴に入れてみるぜ。」
「ええ、いいわ。」

　その言葉にメアリーが美貢の顔から腰を離し自らの蜜壷に指を入れた。
　ベーカーが、美貢の蜜壷から肉棒を抜き菊門に当てる。

「ンアァァー・・・抜かないでぇぇぇーっ！」
「慌てるなよ、ベイビィー・・さ、行くぜ。」

　メアリーの目が、期待と歓喜で輝く・・・・
　激しく女芯を摩り蜜壷の中で指を暴れさせていた。

「アァァ・・ベーカー、早く、早く入れなさいよぉぉー！」

　メアリーの催促に、ベーカーの肉棒が一気に美貢の菊門に挿入された。

（７４）

　ベーカーの肉棒が一気に半分ほど美貢の菊門に埋まる。
　ピッっという小さな音で美貢の菊門が裂けたことがわかった。

「ウギャァァァァァァァァァー・・・」

　これ以上開かないくらいの口を開け大声で叫ぶ美紀の苦痛の表情にメアリーの蜜壷から潮が飛び散る。

「ンオオァァァー・・・いい、いいわぁ、その苦しそうな顔、いぃぃぃぃー・・・・」

　メアリーが、指を蜜壷に入れて気の狂わんばかりに掻き混ぜている。
　足がガクガク震えると快感でメアリーは膝をついてしまった。

　そして、苦痛で絶叫したはずの美貢が、菊門に埋まったベーカーの肉棒を握り更の奥へ入れようとしていた。

「もっと、もっと、もっとぉー、・・・あぁぁ・・もっと奥まで入れてぇぇー・・・」

　ベーカーは、美貢の要望どおり更に奥へ侵入していく。
　裂けた菊門からは血が流れている。
　しかし美貢は、指を全て蜜壷に入れて更に刺激を求めた。

「・・ォ・・・ォ・・・・アゥ・・・オァ・・・ガ・・・イ・・・イィ・・イ・・・・・イ・・・イ・・・・・・・・・イグゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー・」

　美貢の小穴から、勢いよく飛沫が上がった。
　ベーカーが、美貢の菊門から肉棒を抜くと、大きく開いて絶叫する美貢の口に大量の分身を流し込んでいく。
　美貢は何度も喉を流しながら飲み込んでいた。

　ベーカーの分身は、なかなか止まらない。
　既に２０秒が過ぎようというのに、まだ放出をしていた。
　美貢の掌は、興奮なのか既に手首まで埋まっている。
　ベーカーの肉棒の先に口をつけ、まるでストーローで吸うように分身を喉に流し込んでいた。

「ア・・ォ・・・・ングァ・・・・・・・」

　美貢が、目を充血させながら、ゆっくりと、そして満足そうに気を失った。
　ベーカーは、大きく息を吐きながら美貢の手首を蜜壷から引き抜く。

「ふぅー・・・久しぶりのグッドレディだったぜ。」

　息を弾ませ蜜壷から愛液を垂らしながらメアリーも答えた。

「私も興奮しちゃった。苦しみ喘ぐ顔は最高のエクスタシーを得るわ。」

　そう言うとメアリーとベーカーは、美貢に下着と服を着せ元の通りにすると、ベーカーに担がれながら車に乗せられた。
　そして、ベーカーは、トローチを美貢の口に入れる事を忘れなかった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「しょ、所長・・・・・俺が・・・俺がですか・・・」
「ああ。」

　遠藤と鏑木は、美紀の居酒屋の２階で二人きりで話をしていた。
　遠藤は、修平と康平から聞いた話を鏑木に説明し終わった所だった。

「お前の分析能力、調査の実力は超一級品だ。」
「し、しかし・・・」
「このオファーは、半端じゃない。実は常務のお兄さんには、以前からどうだと言われていたんだ。これを受けるという事は、言ってみれば政府・・・それも内閣調査室の一員となる。だが身分上は太平洋社員だがな。当然、優秀な人材を集めたセンター員の中でもさらにトップクラスの者しか俺も選抜できない。そして何日かの教養も必要になる。」
「・・・・常務は何と？」
「俺に一任するとは言ってくれた。だが、そうなると太平洋以外の業務や任務も受け持つ場合がある。しかしだ、日本を代表する企業である太平洋グループがそれを不動とする事も出来る。特に変な意味ではない。日本の有益のためだ。」
「・・・・・」

　鏑木は戸惑っていた。
　しかし、自分の力をこういう世界で試したいという気持ちも無い訳ではない。

「鏑木、世界の情報の実力はどれくらいかわかるか？」
「・・・は、はぁ・・・一応、勉強はしていますが・・・」
「例えば、ＣＩＡはどうだ。」
「はい・・・・ＣＩＡは、Central Intelligence Agency の略で、いわゆる米合衆国中央情報局と言いまして、世界で１番有名な情報機関で総勢約三万人の局員がいます。　
　主な活動は、テロリストの情報やその他危険分子の情報を集め、その情報を大統領や国の安全保証に関る人間に渡す事なんです。
　大統領直属の機関で旧ソ連との冷戦を背景に国家安全保障法に基づいて発足したんですが、ソ連が崩壊し今では世界最大の情報機関となりました。海外での情報収集、政治工作が主な任務ですが集めた情報はあらゆる政策の最高決定機関の国家安全保障会議に提供するようになっています。 」
「他にもあるのか？」
「ええ。主だったところでは、ＤＩＡ、合衆国国防情報局 やＮＲＯ、国家偵察局とかＦＢＩ、連邦捜査局などがあります。そしてＮＳＡ、国家安全保障局もそうですね。
　しかし、公にされていない秘密情報組織は、まだ、かなり存在すると思います。」
「・・・なるほど。そして、一流の能力を持ったものが集まるんだな。」
「はい、反面、それだけではなく実働部隊では、戦闘員、破壊工作員など能力に加え腕っ節が立つ者も多くいます。専門分野で分担しているんです。」
「ふむ・・・・・なるほどな。」
「所長、常務のお兄さんも、そういう方なんですか？」
「ああ、一応、世間には知られていない非公式の組織だ。表上は官房付の調査官だが存在を知っているのは、内閣のトップ閣僚と国家公安委員のメンバーの一握りだ。」
「なぜ、センターにオファーが？」
「常務が、ほぼ完成に近づけたセンターの実力を知っているからだ。」
「と、いうと・・・・」
「他の企業には、これほどの組織はない。」
「なるほど。他国のトップ企業にはあるのに、日本はそういう意味ではかなり後進国ですからね。今まで無かったのが不思議な位だと思います。」
「そうなのか。」
「ええ、政府直属の情報部職員がスリーパーエージェントとして潜入してるんです。」
「スリーパーエージェント？」
「はい。つまり、長い年月をかけてその国に住み着き、全く怪しまれない経歴と身分を隠蔽して工作する人間です。」
「・・・・日本の企業にも・・・・いるのか？」
「間違いなくいます。」
「・・・・・・・」

　遠藤は、鏑木の言葉に決意を固めようとしていた。

「・・・鏑木・・・・・これからヌクヌクした生活をしていくか、それとも太平洋はもちろん日本企業の危機を保持・保護し国益に貢献するか。お前の本心を聞きたい。今のところ候補は、お前と香坂に亜美君だ。」

　鏑木は、暫し下に俯いて無言状態だった。
　遠藤が、再度声を掛けようとした時、顔を紅潮させ鏑木が頭を上げた。

「・・・・所長・・・・・・・自分の能力を試したいと思います。」
「鏑木・・・俺もとことん付き合うぞ。」
「はい。」

　遠藤は、明日にも早速、修平に連絡を入れることにした。

　翌日、遠藤は、裕二と亜美を所長室に呼び寄せ、昨夜、鏑木に説明した事をそっくりそのまま二人に話し始めた。

「所長・・・・ぼ、僕が・・・・」「私がですか？」

　裕二と亜美が驚きながら遠藤に答えた。

「ああ。鏑木は承諾した。」
「鏑木さんも・・・」
「んむ。鏑木の能力は半端じゃない。あいつの頭脳、いや分析技術は世界の情報組織に十分に匹敵する。」
「それは認めますが、僕は特に、これといって・・・・」

　遠藤は溜息をつきながら話を続けた。

「香坂、お前、まだ自分に気づいていないのか？」
「え？」
「香坂、いや、亜美君も天性的な心通力がある。」
「・・・は？」
「それは鍛えようにも鍛えられない生まれ持った力なんだ。」
「・・・・・」
「それはな・・・・・対人間に接する時に非常に役立つ技術だ。」
「技術・・・・・ですか？」
「そうだ、技術だ。」

　裕二も亜美も何となく話のニュアンスで遠藤の言いたい意味を理解できた。

　裕二は、武道、とりわけ格闘に長け、相手を威圧できる力と冷静さがあり、亜美は父親譲りの洞察力と苦境に屈しない精神力を持っている。
　そして何より、二人とも相対する人間に気含の様な不思議なオーラを醸し出し、それを自信の感性で自由に操れる事が出来る数少ないタイプの人間なのだ。
　
　遠藤が二人の答えを待った。

（裕二・・・どうする・・・・）

　裕二は、自問自答しながら結論を探った。
　亜美も同じなのだろう、遠くを見るような目で考えを廻らせている。

　裕二の耳に亜美の鼓動が聞こえた。
　そして亜美も裕二に同期し心を感じた時だった。

「所長、やります。」　

　二人が同時に返事をし、その返答直後に互いに目をあわすと納得したように裕二と亜美は頷きあった。

「よし、昼から鏑木と内調の荒尾室長に会いに行く。」

　遠藤の顔が、言葉と共に精悍に引き締まった。