（８１）

「鏑木課長」

　香川が鏑木の席により小声で囁いた。

「例の予防薬ですが試作ですけど出来ました。」
「なに、そうか。」
「ええ、意外と時間が掛かってしまいましたが、試作と言っても、ほぼ完璧に近いそうです。」
「さすがだな・・・よし、これでうちのセンター員に飲ませれば予防にはなるな。」
「ええ。・・・では、課長、また。」
「ああ、サンキュー！」

　そこへ、ふらつきながら、書庫から出てきた横山が、オフィスに戻ってきた。

「おう、横山、何処に行ってた？」

　鏑木から声を掛けられ済まなそうに頭を下げる横山・・・

「すいません、気分がすぐれなくて・・・」
「・・・そうか・・・ま、いい。資料情報の統計を抽出したいんだ。出してくれ。」
「はい、わかりました。」

　鏑木が横山の席に移動し作業を見守りながら抽出を待った。
　横山は、キーボードを叩いているが誤動作が多い・・・そして指も、少々震えていた。

（・・・？・・・横山・・・・・）

　普段なら数秒で終わる作業に横山は手間取っている。

「横山、熱でもあるのか？」
「・・い、いえ・・・大丈夫です。」

　鏑木が、怪訝な表情で横山を観察した。
　ふと、横山を見た鏑木が、首筋に赤黒い点が浮かんでいるのを確認した。

（・・・ん？・・・・・な、・・・まさか・・・）

「横山・・・お前、左側の首どうした？」
「え？・・・首ですか？」

　横山は、手で首筋をなぞるが既に血は止まっている。
　鏑木が、横山の作業を止め、自らキーボードを操りパス変更設定のキーを押した。

「か、課長・・何を・・・」

　鏑木は、横山の声を無視し、任意のパスを簡易的に打ち込んだ。

「課長・・・」
「横山、ちょっと来い。」

　鏑木が、横山を連れてセンタービル地下にあるカバーオフィスに連れて行った。
　横山を部屋に入れる鏑木・・・
　鏑木は、遠藤に報告すると共に、再度、香川にも連絡をとり、至急、地下オフィスにくるよう伝える。

「課長・・・何なんですか？」
「横山、全く悪気は無いんだ。しかし、しばらくここに居るんだ。」
「え・・・私は、大丈夫です。仕事に戻らせてください。」
「今日は、もういい。黙って俺のいう事を聞け。」

　鏑木はそう言うと、ここのオフィスに備え付けのパソコンを起動させ抽出作業の経過記録を調べた。

（んー・・・７回か・・・不正抽出はされていないな・・・）

　電子署名が無い事を確認した鏑木は、胸を撫で下ろした。
　そこへ、遠藤と香川が同時に部屋に入ってきた。

「どうした、鏑木？・・・・ん・・・横山っ・・」

　遠藤に振り向く鏑木・・・
　香川も不思議そうに鏑木を見つめた。

「所長・・・横山がオビファルピンを打たれたかもしれません。」
「な、何ぃ・・」

　香川も驚きながら横山を見た。

「横山・・・お前・・大丈夫か？」
「か、香川・・・い、一体・・・お、俺は・・・」
「心配するな、すぐ助けてやる。」
「た、助けるって・・・」

　鏑木が、遠藤に質問をする。

「とり合えずどうしましょう？　急に横山が居なくなると怪しまれますし。」
「んむ、今、メアリーは？」
「香坂と会議室でミーティングしてます。」
「そうか・・・」

　遠藤は、急な決断を迫られていた。
　まさか、こんなに早く部下を占有する動きをとるとは思っていなかったからだ。
　放置すれば情報がメアリーに伝わってしまう。

「遠藤、横山が扱うパスは？」
「はい、先程、念のために私が変更しておきました。経過も、ここで調べましたが不正抽出はありません。」
「よし。香川を残して俺たちは、一旦戻る。香川、頼むぞ。」
「はい、わかりました。」

　オフィスに戻るまでに、遠藤が鏑木に詳細を命令した。

「わかりました。課員には、横山を出先に行かせたと言っておきます。」
「んむ。俺は、常務に報告して許可を得てくる。」
「わかりました。」

　遠藤は、そのまま本社に出向いていった。
　オフィスに戻った鏑木は、課員に横山を外勤させて夕方まで戻ってこない事を伝えると、自分も出かけるといってセンターを出て行った。

　ちょうどそこへ、打合せを終えた裕二とメアリーが会議室から戻ってきた。
　横山が居ない事に気づくメアリー・・・

（？・・・何処に行ったのかしら・・）

　メアリーは、こっそりと管理係の女性に横山の所在を尋ねる。

「ええ、課長令で外勤にでましたけど。」
「・・・そう・・」

（発作が出たら面倒ね・・・）

　しかし、メアリーは横山を探しようが無い。
　やむなく自席に戻ると作戦を練り始めた。

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「なに・・管理係長が・・」
「ええ。」

　本社の常務室で、遠藤は、康平に相談を持ちかけていた。

「しかし、メアリー自体は、俺が直接協力をすることは出来ないぞ。」
「・・・・」
「一企業人の俺が加担したとなるとＣＩＡどころか、こじ付けされてでも、国際裁判になりかねん。」
「・・・そうですね・・・」
「それより、追い出しを図るとなるとマーベラスが面倒だ。当然、美津子君もやばくなる。説明にも時間が掛かるし信用するかどうかだ。マーベラスといえどもＣＩＡには敵わんからな。・・・・ただ・・・一つ・・・・・・・。」

　康平は、腕を組んで天井を仰いだ。

「・・・・・・・・・・・常務・・・・」
「・・・・遠藤・・・・今日、早速、ニューヨークへ飛んでやる。」
「え・・・でも、何を・・・」
「まあ、任せておけ。こうなる事を予想して俺なりにシュミレートしておいたんだ。」
「・・・じょ、常務・・・」
「今後、お前は、兄貴から直接助言を貰え。」
「・・・・・・・解りました。」

　遠藤は、康平に頭を下げて常務室を出た。

（・・・・美津子・・・・）

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「横山っ！　何やってるんだ。やめろっ！」

　香川の制止を振り切って横山は自慰に耽った・・・
　腕を掴む香川を突き飛ばす横山・・・・

「横山・・・」

　横山の耳には、香川の声は聞こえていないようだ。
　必死に肉棒に執着し握っている手を激しく上下している。
　体が痙攣し、顔も紅潮していた。
　横山は、なす術もなく呆然と横山の行為を見ているほかなかった。

　ちょうどそこへ、鏑木が研究所から戻ってきた。

「な・・・ど、どうしたんだ。」

　香川が鏑木に事情を説明した。

「そうか・・・やはり・・・・・・。香川、香坂を呼んでくれ。例の物が出来た。」
「解りました。」

　香川の返事と共に横山が呻き声を上げて分身を放出した。
　がっくりと肩を落とし気を失う横山・・・・
　香川は、横山を見ながら硬い表情で受話器をとった。

　香川の連絡で地下オフィスに入ってくる裕二・・・
　中の様子を見て即座に事を理解したようだ。

「鏑木さん・・・・」
「ああ、横山がやられた。」
「いつ？・・・」
「おそらく昨夜だろう。・・・それより、香坂。先日、依頼しておいた物が完成した。」
「え？」

　鏑木が、小型のクリアケースからメアリーの髪と同色でチップを仕組んだ髪の毛を取り出して香坂に見せた。

「これを何としてでもメアリーに装着しろ。」
「・・・・・・解りました。」
「今から、横山にも装着してみる。見ておくんだ」

　鏑木は、そう言うと気を失っている横山の頭部に、もう１本の髪の毛をもって近づいた。
　細い金属製の棒に髪を挟み横山の頭部に当て軽く棒の後ろにある突起を押すと簡単に頭皮に食い込み髪が収まった。
　それを軽く引っ張り香坂に見せる鏑木・・・・

「どうだ、このように、少々、強く引っ張っても簡単には抜けない。」
「なるほど・・・」

　鏑木が胸ポケットから低周波の受信器を取り出す。

「香川、横山の近くで喋ってみろ。」
「・・はぁ・・・」

　香川は、横山の頭部に向かって声を出した。

「あー・・・聞こえますか・・・」

　鏑木が、軽く頷きながら裕二に答える。

「バッチリだ。」
「凄いですね。・・・しかし、気づかれないようにするには・・・」
「俺に考えがある。」

　鏑木はそう言って香坂と香川に耳打ちをした。

（８２）

「え？・・・メアリーが、昇天する寸前に髪を引っ張ればいいんですか？」
「ああ、刺激痛は快感時に飽和されるんだ。その瞬間に頭皮に刺せ。」
「・・・・・解りました。」
「それから、香川、管理・調査の課員に薬を配っておけ。メアリーに気づかれるな。」
「はい。」

　鏑木は、詳細を打合せすると香川を残して裕二とオフィスを出た。

　一方、３課と特命課のデスクでは、メアリーがイラつきを覚えていた。

（・・・遅いわね、まさか外で自慰して警察に捕まってたりして・・・・）

　しかし、仮に、そうであってもメアリー自体には、特に問題はなかった。
　ただ、作戦を練り直す手間が増えるだけである。
　何十種類の方法と専門家によるシュミレートで常に実践的作戦を遂行するＣＩＡのやり方は、高い確率で目的を果たせるようにマニュアルもパーフェクトに近いのだ。
　そういう意味では、メアリーも、イラついてはいるものの、さほど焦りを感じていないようだ。

　その頃、遠藤は、修平に詳細を説明し今後の行動の助言と許可を得ていた。

「・・・つまり、メアリーは、重工を直接攻撃する事は出来なくなったわけだな。」
「ええ、事前に鏑木が操作をしてセキュリティーや事務構造、株券等、全ての甘い点を強化指導してホールを閉じました。」
「そうか。」
「しかし、センター員の誰かを抱え込まれると困るんです。」
「なるほど、つまりメアリーは、間接的に情報の集まるセンター員にターゲットを絞る事によって追い出されても保険を掛けたわけか。」
「ええ。」
「だとすると、メアリーを追い出すための工作が必要だろう。」
「そうです。実は、今夜、常務がマーベラスに飛んでくれるそうなんです。仮にメアリーを追い出しても当初、提携公約した事を維持するために。」
「康平が・・・しかし、裏で動かない事には、あいつもやばいんじゃないのかな。」
「はぁ・・・私もそう思ったのですが、常務は、任しておけと・・・。」

　修平は、一瞬、康平の無謀な行為に眉をひそめたが、天性的なインスピレーションと駆け引きに長けている性格を読み康平なりの作戦があると感じていた。

（！・・・・あいつめ・・・・ひょっとして・・・・）

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　その頃、康平は、ある一人の男と渡米のため空港に来ていた。
　康平の横には、口髭を蓄えた中年紳士が並んでいる。
　精悍な表情に、がっしりとした体躯・・・
　そして冷静な雰囲気を醸し出しながらも一寸の隙も無いイメージが一層、その男を引き立てていた・・・・・・

「康平、今回だけだぞ。」

　その男は、元国連諜報員で荒尾兄弟の長兄、恭平だった。
　国連を退職し、昨年、帰国してからは、妻、久美子とコーヒーショップを営んでいた。

「ああ、すまない兄貴・・・ただ、部下を見殺しに出来んからな。」
「相変わらずな奴だ。・・ま、すぐ済ませるぞ。久美子が一人じゃ大変だからな。」
「義姉さんには、また謝っておくよ。」
「久美子も言ってたぞ。礼子さんと亜美をもう悲しませるなって。」
「ふっ、俺はもう危険な真似はしないさ。」
「どうだか・・・これ自体が危険だろうが。」
「だから、頼んだじゃないか。」
「・・・・お前らしいぜ。ところで、亜美が内調外勤になったらしいな。」
「ああ。一樹も頑張ってるようじゃないか。修平兄貴も褒めてたぜ。」
「・・・・ま、一樹の事は修平に任せてあるからな・・・・・さ、行くぞ。」
「ああ。」

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「つまり、修平さん、メアリーを落とそうと思います。」
「んむ。今が、その時期かもしれん。長引くと厄介だ。最悪、ＣＩＡ日本支局が動いたら俺たちが対処しよう。」
「ありがとうございます。」
「言ってみれば、プロ相手の初仕事だ。お手並みを拝見させてもらうよ。」
「解りました。」

　遠藤は、修平に礼を言ってセンターに戻ることにした。

　車を運転しながら遠藤は思った。
　不正規の作戦であるためＣＩＡといえども下手な行動は取れるはずない。
　遠藤は、こちら側に有利であると判断を高めた。
　そして、バックには、修平がいる。
　マーベラス社への説明は、康平が引き受けてくれた。
　ある意味、この好条件で失敗する訳には絶対いかないと気を引き締めていた。

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「横山、体調はどうだ？」

　香川が、意識の戻った横山に予防薬と調和抱抗剤を飲ませて、いままで横山本人に起きた事を説明し終わったところだった。

「ああ、多少、頭痛があるが大丈夫だ。しかし、メアリーが・・・」
「ああ、全て事実だ。今、俺が説明した事を忘れるな。」
「んむ。で、どうすればいい？」
「もうじき、所長が帰ってくる。それから指示を仰ごう。」
「解った。・・・それにしても俺は・・・格好悪いな・・・」
「言うな。お前に限らず誰でもそうなるさ。」
「しかし、考えるほど、腹がムカついて仕方が無いぜ。」

　香川は、横山の肩を叩いて辛抱しろと慰めた。

　しばらくして鏑木と裕二が部屋に入ってきた。

「香川っ、どうだ？」
「あ、課長・・先程、気がついたところです。今までの経過と内容を横山に説明しておきました。たぶん、もう大丈夫です。」
「課長・・・申し訳ありませんでした。」
「なに、お前に落ち度は無いさ。それより、香坂と作戦を練ったきた。」

　そこへ、センターに戻った遠藤も現れる。

「あ、所長っ、横山が気がつきました。」
「そうか・・・・」

　遠藤は、香川に目で合図を送った。
　横山に自分らが内調外勤だと察せられることを考慮してだ。
　香川は、横山を別室に移動させ指示があるまで動かないことを伝えた。

　遠藤が、静かに、そして冷静に言葉を発した。

「いま、内調の室長から許可を得てきた。メアリーを潰す。」
「そうですか。」
「鏑木、作戦はどうだ？」
「はい、では、いまから説明します。」

　遠藤、そして裕二と香川が鏑木を囲んだ。

「まず、横山に接触する可能性と香坂が仮に失敗した事を予想して頭皮にチップを埋めました。そしてメアリー本人にも香坂に誘わせて埋め込みをさせる予定です。」
「んむ。センターから追い出しても行動を把握するためだな。」
「もちろん、それもありますが、まずは太平洋の防御のためです。大丸造船が復調の兆しを見せはじめました。おそらくメアリーが協力して、初期復興の準備段階を押し進めた可能性があります。」
「なるほど・・・」
「センターから追い出されても居場所はあるわけですから手は抜けません。」
「んむ、その先の計画は万全だな。」
「はい、もう太平洋全ての関連会社には、隙はないはずです。・・・・ただ・・・」
「スリーパーか・・・」
「ええ、日本支局のベーカーが、それを担っているようです。」
「よし、ベーカーも潰そう。」
「え？・・・どうやって・・・・ですか？・・まさか・・・」
「いや、殺しはしない。ＣＩＡから足を洗わせればいい。」
「・・・・・」
「ふっ、廃人にしてやればいい。奴は、その仕打ちを受けるに相応しいことを今までやってきたからな。これから奴は、死ぬまで地獄を味わせるんだよ。」
「どういう手を使ってですか？」
「ベーカーの得意な性的行動を真似てみるか？」

　そういって笑う遠藤に、鏑木も理解を示した。

「ははぁ、目には目を・・ですね。解りました。では、私も、それなりに作戦を考えてみます。」
「ああ、頼むぞ。・・・よし、まずは、メアリーからだ。いつやる？」
「はい、明日、香坂がメアリーを誘う事になっています。」
「よし、解った。俺は、香川と大丸造船にトラップを仕掛ける。」

　遠藤の言葉に頷く裕二と鏑木・・・・
　裕二は、再度、鏑木から念入りに方法を聞くと作戦を確認して万全を期すことにした。

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　業務を終え、帰宅したメアリーは、ベーカーに電話をして自宅マンションに呼び出していた。

「で、その横山という男はどうなったんだ。」
「それが、課のボスが何度も電話を入れてるんだけど連絡が取れないのよ。」
「まさか、どこかで、ぶっ倒れてるんじゃないだろうな。」
「どうかしら・・・それとも、センターに勤めるほどの男だから自ら命を・・・・」
「それはないだろう。それより先に性欲が思考を抑制しちまうぜ。」
「・・・ま、いいわ。横山が駄目でも違う人間を見つければ。」
「早くしたほうがいいぜ。内容は判らんが本社の常務がマーベラスに飛んだそうだ。」
「アミの父ね・・・しかし、ボロは出ないわよ。」
「早めに手を打てよ。明日にでも早速、ターゲットを絞らないと。」
「明日は駄目よ。ユウジが誘ってくれたんだもの。」
「何っ？・・おい、気をつけろよ。あの男は、センターのエースって噂だぞ。」
「大丈夫よ。食事して、ちょっと遊ぶだけだから。」
「いいか、メアリー・・・今後、センターの人間をこのマンションに入れるな。日本のＩＴ技術は世界屈指だ。盗聴されたら見張りをつけられると一緒だからな。」
「ベーカー、私を誰だと思ってるのよ。技術エージェントよ。それとも何、身体にでも盗聴器をつけられるとでもいうの。」
「いや、念のために言っただけだ。お前の優秀さは俺も知っている。」
「常に行動は、焦らないことが基本よ。」
「・・・・・わかった。ただ忘れるな。俺は、お前の相棒だ。」
「ええ、迷惑かけないわ。」

　ベーカーは、不安とイラつきを覚えながらもメアリーのマンションを黙って後にした。

（さぁー、明日は、ユウジのコックを・・・）

　メアリーは、服を脱ぎ捨てると笑みを浮かべながらバスルームに足を運んだ・・

−　亜美のマンション　−

「アゥゥゥゥゥ・・・・・・」

　裕二の激しい突き上げで、亜美は全身に鳥肌を立てていた。

「も・・もう・・・ゆ、裕二さんっ・・・キテッ・・・アァ・・キテェェェェェー・」

　裕二は、亜美を背中から寝かせるとピッチを上げていった・・・

「アゥゥゥゥゥゥ・・・イィ・・・・イィィィィ・・・・アァァ・・・・・ゆ・・ゆうじ・・・・さ・・・ァァ・・イ、イクゥゥゥゥゥゥゥゥー・・」

　亜美は、激しく全身を震わせながら昇天した。
　裕二の腰に巻いた両足から徐々に力が抜けていった・・・
　亜美の蜜壷の中はリズムよく収縮を繰り返し余韻に浸る裕二が、亜美を抱く手に力を入れていく。

「・・・相変わらず最高だな・・・亜美・・・」
「・・・・・裕二さんも・・・・」

　裕二は、亜美を抱き起こすとシーツを亜美の肩から覆い被せた。

「何か飲むか？」
「うん・・・じゃ、ペリエを。」
「よし、とってくるよ。」

　裕二は、ベッドから降りるとキッチンに向かった。

　ペリエと缶ビールを持って戻ってきた裕二に亜美が明日のメアリーとの事を問い掛けた。

「それより裕二さん、さっきの話だけどバレないの？・・・どうも心配だわ。」
「ああ、刺すタイミングが難しいな。」

　そう言って栓を抜きビールを一口飲む裕二を見て亜美が一案を提じた。

「ね、裕二さん、鏑木課長は快感と痛みが飽和するって言ってたけど、もしもの事を考えて、反対に痛みを与えてみたらどうなのかしら。」
「ん？・・・どういう事だ？」
「つまり、裕二さんがメアリーの髪を抜けない程度に引っ張るのよ。」
「何で引っ張るんだ？」
「裕二さんも感じている振りをするの。その快感の動作として引っ張るのよ。」
「・・・・なるほど・・・そうか、わかったぞ。同じ痛みだから気づかれにくいという事だな。」
「うん。更に快感を得ていればね・・・・・ちょっと私で試してみる？」
「いいのか？」
「ええ、バレることを考えればこれくらい何てことないわよ。」
「よし、亜美、やってみよう。」
「いいわ。」

　そうして、裕二は亜美の言うとおり、刺すタイミングと髪を引っ張られる痛み、そして同時に刺す痛みの違いが判るのかを時間をかけて何度も試し始めた。