（９５）

　西田が、裕二の肩を叩き何やら耳打ちをした。

「解りました。」
「俺は、外で待っている。」
「はい。」

　西田は、トラップハウスを出て車で待つ事にした。

　裕二が、煙草を１本咥えると火を付けて纐纈に手渡す。
　一瞬、躊躇う纐纈だったが煙草を受け取り唇に挟んだ。

　大きく煙を吸い込み、長くゆっくりと吐き出した・・・・

「・・・・・・俺の負けだ。・・・・・・・・何でも聞け。」
「纐纈さん、俺は、太平洋グループ中央管理情報センターの社員なんです。」
「・・・・・太平洋グループ・・・・」
「実は、本社の企画部の女性社員を調べていたんです。」

　裕二は、内容を正直に話し始めた。
　纐纈は、一通り裕二の説明を聞くと静かに話を始めた。

「俺は、店の女の事までは解らない。正直、どうでもいいことなんだ。俺の目的は、凛子を殺した香港の組織に潜り込み敵を討つためなんだ。」
「その時、纐纈さんは、凛子さんと一緒ではなかったんですか？」
「俺は、仕事探しのために出かけてたんだ。凛子は、買い物に行ってくると書き置きがあったんだが、それ依頼、行方が全く解らなくなってしまった。数日後、真夜中に見知らぬ女性から、電話で山中に呼び出しがあったんだ。凛子を預かってるとな。俺は急いで行ったさ。しかし、そこには電話の女は居なかった。俺は、車から降りて、ゆっくり道を歩いて探したんだ。凛子は居た。全裸で林道に倒れていたよ。腕には無数の注射痕があった。」
「・・・・・・・・」
「そこには、暴力団のバッチが落ちていた。凛子が抵抗して取れたんだろう。」
「そのバッチが、真木の所属する組の・・。」
「ああ、大田会だ。俺は、近道だと思い・・・・」
「それで、無理に自分を殺してまで用心棒まがいの事を・・・」
「俺の頭で考えつく手は、この程度だ。しかし、何とか手掛かりは掴めた。」
「じゃ、店の女性達の事は・・・・」
「顔は知っているが、特に気にしてなかったし、詳しい事は解らない。」
「・・・・」
「ただ、Ｕの店長、真木紀夫が、頻繁に３０代くらいの女性と会っている。その女が、真木に、若い女を紹介している所を何度か見たことはある。」

　裕二は、パソコンのモニターを見せて企画第三課長の青木順子の写真を確認させた。

「・・・・ああ、間違いない、この女だ。」
「やはり・・・」
「お前も、これを解決するには、俺と同じ奴を相手にする事になるな。」
「纐纈さん・・・・協力してもらえますよね。」

　纐纈は、短くなった煙草を灰皿に揉み消すと静かに立ち上がった。

「俺とお前は、東城先生に学んだ愛弟子だ。言ってみれば兄弟弟子。何でも協力しよう。」
「恩にきます。」

　裕二と纐纈は、握手をして協力を誓った。

「とりあえず、店長の真木には、お前達の事は何も怪しいところはなかったと言っておく。」
「ええ、わかりました。」
「で、俺はどうすればいい？」
「しばらく、今の状態を続けていて下さい。龍栄の詳細とＵに関連している人間を詳細に調べ突破口を作ります。」
「わかった。それから、Ｕと店長の真木を裏で操っているのは、劉富豊という男だ。奴が、大元なんだが、黒幕は他にいる。」
「劉富豊？」
「お前が、さっき言っていた香港シンジゲートの日本を担当する男だ。」
「そうですか。解りました、さっそく帰って調べてみます。」
「ここが俺の連絡先だ。」

　纐纈から連絡先が書いた紙を受け取ると裕二は、纐纈とともにハウスを出た。
　眩しそうに外の明かりを受ける裕二と纐纈・・・・

　裕二は、手に持った２本の棍棒を纐纈に返した。
　受け取った纐纈が、棍棒の底を見せながら裕二に呟いた。
　棍棒の底には、凛子、もう片方には秀樹と彫られている。

「香坂、この棒は、俺と凛子が修行で使った物なんだ。」
「・・・・？」
「この２本の棒で・・・・・・凛子の敵を・・・・・・」
「・・・・・纐纈さん・・・・・」

　纐纈は、真剣な眼差しで棍棒を後ろの腰に仕舞った。
　裕二も、心の中で纐纈に敵を取らせてやりたいと思っていた。

「じゃ、纐纈さん、頼みます。」
「ああ。・・・それから香坂・・・」
「え？」
「トンファの受ける角度が、浅いぜ。だから折れるんだ。」

　裕二は、苦笑いをすると纐纈に軽く頭を下げながら西田の待つ車に歩き出した。

（香坂裕二か・・・・まだ、まだ、伸びるな・・・・）

　纐纈は、裕二に打たれた腹部を擦りながら店に帰っていった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　センターに戻った裕二と西田は、さっそく詳細を鏑木に説明し、龍栄、そして日本を担当する劉富豊の調査を依頼した。

「なるほど、香港のシンジゲートか。」
「ああ、日本の組織の仕業じゃないな。」
「Ｕという店を経営している真木という男は、大田会の人間だ。」
「暴力団か？」
「ああ、しかし、龍栄とは直接関係はない。」
「つまり・・・？」
「相手は、龍栄と、劉富豊に絞っておけば問題ないだろう。」
「俺たちは、どこから探っていけばいい？」

　西田の質問に鏑木が、腕を組んで溜息をついた。

「んー・・・・・どうするかな・・・・」
「とりあえず、早急に龍栄と劉富豊を調べておく。まず、何故、本社企画課の女子社員を使ったのかを調べる必要がある。ちょっと危険かもしれないが、Ｕの真木と企画課の青木順子を締め上げて聞き出すほうが早いと思うんだ。」
「い、いきなりか？」
「んむ。劉富豊を落としても口は割らんだろう。」
「・・・・・解った、そうしよう。」

　西田は、鏑木に再度、早急な依頼をし裕二と共に会議室に入った。

「裕二、俺は、真木を締め上げてくる。お前は、課長の青木を何とか落としてくれ。」
「また、俺が女ですか。」
「これから女性が関わっている場合は全てお前だ。」
「・・・な・・・・」

（マジかよ・・・・・）

「俺は、真木を締め上げてくる。鏑木が調べ終わったら彼女にアタック掛けてくれ。」
「・・・解りました。」

　裕二は、溜息をつきながら鏑木のデスクに足を運んだ。

「おう、香坂、ちょっと待っててくれ。検索だけでも、少々、時間がかかる。」
「はい、解りました。」

　裕二は、暇つぶしに調査係長席に座る洋子の隣に移動した。

「おう、洋子、頑張ってるか？」
「まあね・・・・・でも、畑違いで戸惑ってるわ。」
「それは、しょうがないぜ。どうだ休憩しに行くか？」
「そうね。」

　裕二は、洋子を誘ってロビーの自販コーナーに向かった。
　カップコーヒーを二つ買うと一つを洋子に差し出した。

「ありがとう。」
「・・・・それより大分腹がでかくなってきたな。」
「うん、あと３ヶ月、ちょうど裕二君と亜美の結婚式くらいよ。」
「そうか楽しみだな。・・・・・それより、冴えない顔してるな。」
「だって、洋さんったら最近、オ○ンコに入れてくれないんだもの。」

　ガクっとしながら裕二は答えた。

「洋子、鏑木さんも心配して遠慮してるんだぜ。生まれてくるまで我慢しろよ。」
「我慢できないから、元気出ないのよ。」
「ったく・・・・お前という奴は・・・・・」

　そこへ、外回りから帰ってきた亜美が通りかかった。

「あ、亜美っ！」
「あ、係長・・裕二さんも。」
「おう、今帰りか・・・ご苦労さん。」
「何か相談事？」
「いや、洋子が、エッチ出来ないってボヤいてるから怒ってたところだ。」

　亜美が、笑いながら洋子に声を掛けた。

「係長、ちょっとの辛抱じゃないですか。」
「あんたはいいわよ。毎日、裕二君に甘えれるんだから。」
「フフッ、昨日も裕二さんに気持ちよくさせてもらいました。」
「えっ・・うぅぅぅーっ、羨ましいぃぃぃーっ！」

　裕二が、一気に肩を落とした。

「あ、亜美・・・・・・お前、堂々と言うなよな。」
「フンッ、いいわよね、亜美は。・・・・亜美っ！　今夜は、私と付き合いなさいよ。」
「え、鏑木課長はいいんですか。」
「いいのよ。どうせ帰ってきてもオ○ンコ触ってくれないんだから。」
「アハハハッ・・」

　大笑いする亜美と、淫語を遠慮なく放つ洋子を尻目に裕二は呆れながら立ち上がった。

「あら、裕二さん、もう行くの？」
「お前らの話には付き合っとれんよ。」
「え？　あそ・・・・・じゃ、今夜、係長に付き合ってくるから。仕事頑張ってね。」
「・・・・・クッ・・・・・お、お前らもな。」

　裕二は、半ば呆れながらオフィスに戻った。
　デスクでは、鏑木が涼しい顔をしながらモニターを眺めている。
　裕二は、鏑木の隣に腰掛けると静かに声を掛けた。

「どうですか、鏑木さん。」
「ああ、かなり進んでいる。後は彼女の交友関係だが、いま、調査担当がデータを弾いているから待ってろ。」
「ええ。」

　しばらくして、数人の課員が徐々に鏑木のマシンにアクセスし始めた。
　送られたデータは自動で処理し整理されていく。

（便利なもんだな・・・）

　鏑木が、裕二の表情を読み取って笑いを見せた。

「香坂、作戦は、何事も準備からだ。その準備段階で１００パーセントに近い資料や情報を手に入れる事が出来れば、その任務は限りなく成功に近くなる。」
「そうですね。」

　それから１時間後、データ収集が完了した。

「よし、まとめたぞ。」

　鏑木が、プリントアウトし、裕二に資料を渡した。
　裕二と鏑木の二人は、隈なくデータに目を通していく。
　終始無言だった裕二が、細い吐息を吐きながら呟いた・・・・

「鏑木さん・・・・・」
「んむ、・・・・交友関係が凄いな。」
「３ページ目を見てください。」

　鏑木が、資料をめくって確認をした。

「ほぉぅ、そうか。劉富豊が、資金稼ぎのために１０年前に進出してきたんだ。青木順子を日本での、いわゆる資金調達員にして組織拡大を狙ってるんだ。」
「でも、なぜ青木を？」
「９年前に青木は、プライベートで香港に旅行に行っている。その時点から、彼女の生活が大きく変わっているのが解る。」
「ということは？」
「恐らく、この時に青木が劉富豊に捕まり説得されたと思って間違いない。」
「というと、太平洋の社員を、と言うのは、単に偶然だったんですか？」
「ああ、青木との話で、龍栄は、チャンスと思っただけだろう。企業体なら、そうそうアシはつかないし商売と思われない。」
「・・・しかし、青木は何故、劉富豊の言いなりになったんですかね？」
「普通に考えれば脅しだと思うが、それにしては、青木自身も個人的に手広くやっている。ま、欲心が絶大だったか興味をもったんだろうな。一流の男が、自分に平伏すんだから。」
「この資料からすると、青木本人が手にしてる金は莫大ですね。」
「ああ、今までで軽く１０億は、稼いでいるな。」

　そう言いながら、資料を何気に見ていた鏑木が驚きながら声を上げた。

「な、何ぃっ！」
「どうしたんですか？」
「香坂っ、退社してる女子社員は、現在、全員香港在住だ。」
「えぇ・・？」
「暮らしぶりは優雅だな・・・・売春でもやってるのかな？」
「こちらでの証拠隠滅でしょう。ヤクが絡んでいるのは間違いないですね。」
「なるほど・・・おそらく劉富豊は、日本の担当でもあるが、ヤクの売人なんだ。」
「そ・・・そうか・・・資金源は、ヤクを利用した大規模な売春・・」
「香坂っ！」
「解りました。青木順子を落とします。」
「頼むぞ。所長には俺から報告しておく。」

　裕二は、早速、青木順子に罠を仕掛けるため本社に向かう事にした。

（９６）

　裕二が、終業近くに本社に到着した。
　既に、所長の遠藤から企画部に連絡が入っており青木の残業が命令されていたのだ。

　裕二が、ホールを抜けエレベーターに乗り込もうとした時に中から数人の人間が降りてきた。

「おっ、香坂君っ！」

　声を掛けてきたのは、常務の康平だった。
　隣には社長の洞屋と筆頭専務の遠山も立っている。

「あ、じょ、常務・・・社長・・・せ・・・」
「はは、社長、彼が、もうじき私の娘婿になる香坂裕二です。」
「ほぉぅ、そうかね、君が・・・・・んーむ、なるほど、いい風貌をしておる。」

　裕二は、恐縮しながら丁寧に頭を下げた。
　康平が、裕二の用を問いただす。

「ところで今日は何だい？」
「ええ、実は・・・・」

　裕二の話を聞いて、社長をはじめ康平と専務も苦虫を潰した。

「・・・・ふぅぅー・・・困ったもんだな荒尾君・・」
「まあ、センター員は、優秀ですから直ぐにカタをつけるでしょう。」
「そう願いたいもんだ。香坂君、頼んだよ。」
「はっ。」

　そう言うと、社長らは裕二の肩を叩きホールに向かって歩き出すが、何かを思い出したように立ち止まった康平が、裕二に声を掛けた。

「香坂君、一つ言っておくが、任務を仕事と思って扱うと失敗するぞ。」
「え・・・？」
「んー、つまり、女性を相手する場合は、男の本能で扱うって事さ。亜美には黙っててやるから、好きなようにやってみたらどうだ。」
「は？・・・ど、どういう・・・意味でしょう・・・・」

　康平は、それには答えず、笑いながら裕二に背を向け社長達の後に続いた。

　裕二は、首を傾げながらエレベーターに乗ると康平の言った意味を考えた。

（男の本能で扱う・・・・・・亜美には黙って？・・・・！・・ハハァーン・・・）

　裕二は、苦笑いをしながら康平の言う意味を納得した。

　７階の企画部のあるホールに停まると、裕二は、廊下を抜け、ガラス張りでレイアウトされたオフィスに足を向けた。
　この階のオフィスには、企画部をはじめ、営業部、業務部の部署があり、青木順子に限らず、残業者は多く、まだ活気に満ちている。

（さてと・・・・・どこかな・・・・ん・・・あそこか・・）

　青木順子は、課長席に座り、モニターを見ながらタイプに集中していた。
　一見、真面目風で大人しそうな雰囲気を現しているが、鏑木の調査からも、相当に陰険、且つ、部下を売春婦に仕上げ莫大な報酬を得て豪遊するという極悪な性格をもっている。

（・・・そんな女には見えんがな・・・）

　３７歳になる青木順子は、全く、その歳を感じさせず高級そうな服装とセンスのよいアクセサリーで、一段と女性らしい優雅さを醸し出していた。
　同年代の女性に比べ、飛び抜けて垢抜けしており男性役職者からの人気も絶大だった。

（ほぉぅ、写真よりいい女じゃねぇか・・・）

　その時、裕二の携帯に着信が入った。
　ホールに戻り電話に出る裕二・・・・
　相手は、西田だった。

「課長、どうしました？」
『ああ、いま、真木を締め上げたんだが、とんでもないことが解った。』
「何です？」
『お前と纐纈の先生の娘さんを殺った奴は、劉富豊だ。』
「やはり・・・多分、そうではないかと思っていました。」
『一応、俺の素性は、暴力団絡みと言っておいた。恐らく真木は、劉富豊に殺られるだろう。本社の女性らも店を替わる可能性がある。青木を頼むぞ。』
「解りました。」
『それから、今、鏑木から聞いたんだが、俺は香港に飛ぶ。退社した女性らから、何としてでも真相を聞きだしてくる。』
「気をつけてください。向こうは、敵だらけです。」
『大丈夫だ、所長と一緒に行くからな。後は、鏑木から指示を受けてくれ。』
「解りました。」

　西田の話では、Ｕの店長、真木も殺害の件に絡んでいたらしい。
　誘いを断った凛子は、劉富豊に麻薬を打たれ散々犯された後、山中に遺棄されたとの事だった。
　その時、既に青木順子は、真木とともに劉富豊と関わりがあったようだ。

（こりゃ、纐纈さんが聞いたら相当・・・・・）

　裕二は、企画部長に連絡を入れ青木順子のロッカー室を開けてもらうよう依頼した。
　鍵を持って現れた企画部長が裕二に質問をした。

「香坂君、一体、彼女が何を？」
「部長、詳細は、全てが終わってからセンター長より報告をさせて頂きます。」

　企画部長は、それ以上聞くことはせず、青木のロッカーを開けた。
　裕二は、青木のジャケットの襟に盗聴器を仕込むと再度、ロッカーを閉め鍵を掛けてもらう。

「部長、青木順子の残業を解いていただいて結構です。」
「・・・わかった。」

　裕二は、退社する青木の後をつけ、場合によっては強硬手段をとるつもりだった。

　部長から指示を受け、残業を終えた青木はオフィスを出るとタイムカードを押し本社を出た。

　青木は、駅には向かわず大通りを歩いて行くようだ。
　携帯電話をバッグから取り出し何処かへ掛けている。
　裕二は、感ずかれないように距離をとって後をつけていった。

　しばらくして青木は、観光ビルに入った。
　ホールの柱に隠れて青木を目で追う裕二・・・
　青木は、トイレに入ったようだ。

　１０分ほど待つと、髪型と化粧を変えた青木がトイレから出てきた。
　中ほどにある応接コーナーに腰掛け煙草を吸い始める・・・

（・・・ここで誰かと会うようだな。）

　裕二の予想通り、しばらくして青木の前に一人の男が現れた。
　裕二の方向に背を向けたため男の顔は確認できないが、身なりのいい中年紳士のようだ。
　裕二は、イヤフォンを耳に挿し、青木のジャケットに仕掛けた盗聴器で内容を聞き取る事にした。

<順子さん、待ち遠しかったよ。>

<お金は持ってきてくれたの？>

<もちろんさ。>

　その紳士が、バッグから封筒を青木に手渡した。
　恐らく金であろう。その厚みから相当の額と思われる。

（１００・・・いや、２００万はあるな。・・・）

　男は、青木に金を渡し終えると警戒するように周りを見渡した。

（！・・・・ア、アオイ物産の専務じゃねぇかっ！）

　青木と会っているのは、アオイ物産の専務、大八木礼二だった。
　アオイ物産は、太平洋グループ傘下の企業ではあるが、太平洋物産と肩を並べるほどの収支利益があり、両雄が並んで日本の物流市場を収めているほどの会社だった。

<ありがとう、大八木さん。今夜は、私を好きにしていいわ。>

<もう、我慢できないよ。バイアグラを２錠も飲んだからね。>

<ねぇ、出ましょうよ。>

<そうだね。>

　裕二は、青木との交流を大八木の単独行動に間違いないと思った。
　グループ内は勿論、提携会社、共同企業体、子会社の全てにおいて徹底管理を済ませたばかりであり隙はないはずだからだ。
　青木も企画部に所属するだけあって身内会社の人間のほうが安全と思ったのであろう。

（単なる金儲けで寝るだけなのか？・・・裏があるのかな・・・・）

　青木は、大八木と、少々話し込んだ後、共にビルを出た。
　外に出るとタクシーを拾い二人は車に乗り込んだ。

　裕二も、すかさずタクシーを拾い二人の乗ったタクシーに続く。

「運転手さん、前の車をつけてくれ。」
「え・・あ、はい。」

　運転手は、二人の乗ったタクシーを追った。
　青木と大八木は、車内では会話をしていないようだ。
　二人が向かった先は、港駅にあるシティホテルだった。

　裕二は、代金を払いタクシーを降りると二人を追ってホテル内に入っていく。
　既に、二人は、エレベーターに乗り込んだ後だった。
　階別の点滅表示を見ると最上階の１０階で止まったようだ。

　裕二は、急いで鏑木に連絡をした。
　自分の持つ受信機の周波数を教えて鏑木にも聞いてもらうためだった。

『そうか、解った。録音を掛けておく。それからアオイ物産の大八木専務を洗ってみよう。何か判るかもしれん。場合によっちゃ協力してもらおう。』
「解りました。」

　裕二は、携帯をしまうと耳を澄ました。

　青木は、大八木の腕を組みながらエレベーターから出てきた。
　予約した部屋の前の来ると、大八木は、部屋の鍵を開け中に入っていく。

　青木は、ドアロックを掛けると、大八木に抱きつき接吻を繰り返した。

「んぁぁぁ・・・」
「順子さん・・」

　青木は、すかさずショーツをストッキングごと下げ腰を突き出した。
　大八木は、膝をつき、青木の腰に手をまわすと黒く覆い茂った恥丘に顔をうずめる。

「アフゥゥー・・・・舌を・・・舌を使ってぇー・・」

　大八木が、茂みを掻き分け亀裂を唇で広げた。
　そして、舌で女芯を刺激していく・・・・

「クフウゥゥゥー・・・・気持ちいぃぃー・・・・・・ねぇ・・お尻も・・・」

　青木は、そう言うと壁に手をつき腰を大八木の前に突き出した。
　大八木は、青木の菊門に舌を這わせ指を蜜壷に挿入していく。

「アゥゥゥゥー・・・・・」

　青木は、自ら腰を振り始め大八木の顔に押し付けていった。

　大八木は、器用にスラックスのベルトを外し下半身真っ裸になった。
　そして、膝まで下ろした青木のストッキングとショーツも脱がしていく。

「アンッ・・・・トイレに行きたくなっちゃったわ。」
「そ、そうか・・・順子さん、いつものように、す、する所を見せてくれっ！」
「もぉぅ、大八木さんったら好きねぇー。」

　そう言いながらも青木は、笑みを浮かべ室内のトイレに入っていった。
　大八木は、肉棒を握り興奮しながら青木の後を追っていく。

　洋式の便器にまたがった青木が、大八木の顔を見ながら呟いた。

「大八木さん、もっと顔を近づけて見てぇ・・・・」

　大八木は、無言で数度頷くと、青木の蜜壷に顔を接近させた。

　青木は、大八木を見つめると蜜壷を大きく広げ、直ぐに放尿を開始した。

「ァァァァー・・」

　勢いよく飛び出した小水が便器を打ち付けていく。

「おぉっ・・凄い勢いだよ、順子さん・・・」
「いやん・・・恥ずかしいわ・・」

　大八木は、自ら肉棒を握って上下させていた。
　口を蜜壷に近づけ、舌で青木の放尿を受け取ると分身を爆発させてしまったのだ。

「おぉぉぉーっ・・・・うぐぅ・・」

　小水が止まった青木が、大八木に声を掛ける。

「大八木さん、私のオシッコを拭いてぇー・・」

　大八木は、青木の両足を担ぎ上げ蜜壷に舌を這わせていく。

「アフゥゥー・・・いいぃ・・それ、いぃぃぃー・・」

　淫鄙な音を立てながら大八木は、青木の蜜壷全体を舌で愛撫していった。

　裕二は、１０階のエレベーターホールにある簡易椅子に座って溜息をついていた。

（・・・・ったく、呆れてくるぜ。・・・・はやく肝心な会話を始めろよ。）

　裕二は、イラつきを覚えながらも纐纈の事を思い出していた。

（どうやって説明をするかな・・・敵は取らせてやりたいが半端な組織じゃないし。）

　裕二は、ポケットから取り出した煙草を咥えるとホール横の腰窓から外を眺めて紫煙を吐き出した。