（１０７）

−　３ヵ月後　−

　昨日まで降っていた雨もやみ、外は陽が昇り始めている。
　今日は、爽快な秋晴れが予想されていた。

　昨夜、亜美は実家で、康平、礼子と家族３人だけで最後の一夜を過ごしていた。
　今日は、香坂裕二との待ちに待った結婚式の日であった。

「おはよう。上がるわよー。」
「あら、澪さん、愛子さん、いらっしゃい。」
「礼子さん、亜美ちゃんは？」

　訪れてきた、澪と愛子が亜美を尋ねた。

「それが、まだ降りてこないのよ。」

　既に着物を着終わっている礼子が、苛立ちながら答えた。
　そこへ、美紀と恵美子も家に上がりこんできた。

「あら、美紀さん、恵美子さん、待ってたわ。」
「おはよう。・・・・あれ？　亜美ちゃんは？」
「まだ、降りてこないのよ。亜美ぃっ！早くしなさい。何やってるのっ。」

　礼子が、和室で声を張り上げる。
　階段を下りてくる亜美の足音が聞こえた。
　和室に顔を出す亜美・・・

「ごめんなさい、色々と準備が・・あ、みんなどうしたの？　まだ時間が・・・」
「どうしたじゃないわよ。お母さんが、わざわざ呼んで来てもらったのよ。」
「・・・・・・」

　咄嗟に亜美の脳裏に礼子の言わんとすることが解されていく・・・

　康平が、行方不明になった、あの時・・・・
　亜美が思春期を迎えるまで、毎日のように家に訪れ、励ましてくれた女性達が礼子の呼びかけで、一早く、亜美の晴れ姿を見ようと来てくれる事になっていたのだ。

　礼子が真剣な表情で亜美に囁いた。

「判るでしょ。貴女やお母さんが、今あるのは、恵美子さん、美紀さん、澪さん、愛子さん、皆のおかげなのよ。私達の家族同然なんだから。」

　礼子の言葉に亜美が一人ずつ皆の顔を見つめた。
　うっすらと涙が浮かんでくる。

「そ、そうよね。・・・・・・そうよね。」
「いいから、早くしなさい。」
「だって、まだトイレに・・・」
「後でいいじゃない。お化粧を早くしないと着物が着れないでしょう。」

　そこへ、礼子の姉であり隣に住んでいる叔母の優子も上がってきた。

「あら、皆さん、お揃いね。・・あら、亜美っ、まだお化粧済ましてないの？」
「そうなのよ、お姉ちゃん・・・」

　優子は、亜美の着付けを頼まれていたのだ。

「もう、早くしないと式場に遅刻するわよ。」
「はぁい！」

　亜美は、全員に囲まれながら急いで化粧を開始した。
　とは、いっても女性が、７人も集まれば、黙ってはいられない。
　昔話や思い出話を繰り返しながらの会話が始まった。

　その頃、康平は、朝食の後、寝室に上がり短い手紙を書いていた。
　亜美と裕二に、渡すつもりでペンを執っていたのだ。

（よしと・・・）

　あっという間に書き終わった康平が、冷めたコーヒーをすすりながらボードに飾られている、家族３人で撮った写真に視線を移した。
　まだ、生まれたばかりの亜美が礼子に抱かれている。

（・・・・・・・・・・・・時が経つのは、早いな・・・）

　康平は、小さく笑みを浮かべると、和室で騒がしく喋る声に気がついた。

（ん？・・・・・そうか、みんな来てるのか。）

　康平は、ワイシャツを着てネクタイをはめるとタキシードを抱えて階段を下りていった。
「よおっ、みんな・・」
「あぁーっ、康平さん、まだ駄目よぉっ！」
「ぇ・・」

　澪が、和室に入ってきた康平を追い出した。

「まだ、駄目よ、康平さん。もうじき亜美ちゃん、着物を着終わるから。」
「そ、そうか・・・・・」

　和室では、女性らがクスクスと笑いを見せている。
　そして優子が、最後の留め帯を締め終えた。

「さ、いいわよ。」

　亜美が、ゆっくりと立ち上がった。
　裕二の母親から譲り受けた白無垢の花嫁衣裳が眩しく映る。
　振袖部と重ね羽織りは、銀糸で施された模様が華やかに輝いていた。

「き・・綺麗よ・・・・亜美ちゃん。」

　今まで騒がしかった女性らは、花嫁衣裳を纏った亜美をじっと見つめた。
　皆も、亜美の幼い頃の想いが、奥から沸きあがってくるのだろう。
　目に涙を浮かべながら、無言でじっと亜美を見つめていた。

　亜美も、そんな皆の視線を感じて胸が熱くなった。

（みんな・・・・・・ありがとう・・・ありがとう・・・・）

　礼子が、間をとって康平を呼んだ。

「あなた、入ってきていいわよ。」

　礼子の声に、皆は気を使って和室を静かに出て行く。

「おう、終わったか・・・・ぇ、皆、何処へ・・」
「康平さん、居間で待ってるわ。」

　美紀の言葉で、康平は気がついた。

（・・・そ、そうか。）

　和室に入ると亜美が正座をして康平を待っていた。

　康平は、照れながらも礼子の横に腰を下ろした。

　亜美をじっと見つめる康平と礼子・・・・・・
　３人は、しばらく沈黙したままだった。

　康平と礼子の脳裏に、過去の出来事が走馬灯のように巡っていく。

　礼子が自然と康平の膝の上に手を乗せた。
　その時・・・・

「お父さん・・・・・・お母さん・・・・・・・・・ありがとう。私・・・・・・・・二人の子供で本当に幸せでした。今日、・・・・・私・・・・・・・裕二さんの妻になります。」

　康平が、礼子の甲の上に手を重ね合わした。
　そして、康平は、亜美に優しく言葉を返した。

「亜美、本当の幸せを掴むなら、お前を取り巻く全ての人を愛する事だ。」

　亜美は、康平を見つめた。
　康平の今まで見とことのないような真剣で、且つ、それ以上ない優しい顔をしっかりと脳裏に刻み込んでいく。

「今日、家族同然だった人達が、お前のために朝早くから来てくれた。」

　康平の真意ある言葉に、亜美の瞳から遂に涙が零れた・・・・

「お前の一番大切な時期に、お父さんは居なかった。でも、お前という人間をここまで育ててくれたのは、お母さんはもちろん、そう言う人たちの愛だ。」
「・・・・・うん。」
「お父さんと、お母さんの生き方、愛し方は、一風変わってたよな。でも、敢えて言うのなら、自分達の生き方を他人に隠さない事だ。」
「・・・・・・お父さん・・・・」

　礼子も康平に続いて言葉を掛けた。

「亜美、幸せになるのよ。貴女が貰ったように・・・・・・・・・貴女も愛を与えられる女性になりなさい。」
「・・・うん・・・・うん・・・・・」
「亜美・・・・・・・・頑張れよ！」
「・・・・はい。」
　
　沈黙を制すように康平が呟く。

「さ、茶でも飲んでから出発しよう。」

　康平が和室の戸を開けて居間に入ろうとした。
　足音が響き、皆が慌ててソファに座ろうとしている。

　皆、ハンカチで目頭を必死で押さえていた。

（き、聞いたやがったな・・・・こいつら・・）

　康平が、大きく咳払いをすると、女性らは、涙を浮かべながらも照れくさそうに顔を上げた。
　澪が、康平に声を掛けた。

「康平さん、やっぱり貴方って最高っ、素敵だわ。」

　愛子も続いた・・・・

「亜美ちゃんが、成長するわけよ。」

　二人の言葉で皆が、再び騒がしくなった。
　ああだ、こうだと話題が広がっていく。
　集中攻撃を浴びているのは、やはり康平だった。

「お前らも結婚しろよっ！　恵美子だけじゃねぇか、結婚したのは。」
「４０過ぎた女を誰が貰ってくれるのよ。」
「そうよ、それに康平さんに貰った愛の思い出だけで十分生きていけるわ。」

　美紀と愛子が、拗ねながら声を張り上げる。

「ったく・・・」

　そこへ、康平と礼子の親族が続々と集まってきた。
　康平の兄、恭平夫婦、修平夫婦が皆に簡単な挨拶をして早速、亜美を見に行く。

　礼子と優子の母親を迎えに行った一男が、今ほど家に到着した。
　久しぶりに会う祖母に亜美も嬉しさから涙が止まらない。

　甲斐が、亜美を乗せていく高級リムジンを運転して訪れた。

「おう、亜美ちゃん、凄い車借りてきたぞぉー！」

　亜美より先に全員が、カーテンを開けて、その車を眺めた。

「わぁー、私も乗りたぁーい。」
「お前は、後ろのマイクロバスだ。」

　康平に、そう言われた、美紀が冗談っぽく背中を叩いた。

　全員が、騒ぐ中、式場に向かう時間が近づいてきた。

「あなた、そろそろ行かないと。」
「そうだな。」

　支度をして家を出ると全員が玄関に集まった。
　そして最後に甲斐と恵美子に手を引かれ亜美も玄関を出てくる。
　古風に恭平の妻、久美子が送り酒を差し出し、修平の妻、静江が火打石を叩いた。

「久美子叔母さん、静江叔母さん、ありがとう・・・」

　後ろを振り向いた亜美は、家にも頭を下げた。
　そして、亜美を囲む全員にも丁寧にお辞儀をする。

「皆さん、今日は、よろしくお願いします。」
「亜美っ、門出だ。笑顔で出て行け。」

　恭平の言葉に亜美はしっかりと頷く。
　全員が拍手をしながら、車に乗り込む亜美を見送った。
　続いて康平と礼子、そして付き添いの恵美子も乗り込んだ。

「じゃ、一男さん、マイクロバスのほうを頼みます。」
「ああ、わかった。」

　皆は、亜美たちを見送ると、さっそくマイクロバスに乗り込み、はしゃぎながら式場に向かった。

（１０８）

　式場に到着した亜美たちが、係員の誘導で玄関に乗り付けた。
　甲斐のはからいで、今日は式場を貸しきってあった。

　甲斐と恵美子に手をとられ亜美が車から降りてきた。
　康平と礼子も、後に続き式場に入っていく。

「亜美っ！」

　ホールの真ん前で裕二が亜美を出迎えた。

「裕二さん。」

　裕二が亜美の方に歩み寄った。
　裕二が、じっと亜美を見つめる・・・・

「亜美、・・・・・綺麗だ。」

　恵美子が亜美の手を裕二に差し出した。

「裕二さん、亜美ちゃんを控え室まで。」

「はい。」

　裕二は、康平と礼子に頭を下げると亜美の手を握り締めた。

「裕二君、亜美をよろしくお願いします。」

　康平と礼子も、裕二に頭を下げた。

「はい。私は亜美を・・・・生涯の糧とさせて頂きます。」

　裕二はそう言って、康平と礼子に返礼をした。

　裕二に手を引かれて歩く後姿を康平と礼子は、瞼にしっかりと焼き付けていった。

「あなた・・・・」
「ああ、遂に離れていったな・・・・・・感無量だよ。」

　礼子は、優しく笑顔を見せながら康平の腕をきつく握り締めた・・・・・

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　いよいよ、式が開始された。
　式は、両家の親族だけで行われていた。

　カメラを抱えて動き回る一男に、優子がオロオロしている。

「あなた・・・駄目よ、式中に。」
「何言ってんだよ。俺は亜美の小さい頃から写真を撮り続けてるんだ。そして、今日が最後の撮影だ。何としてでも亜美の晴れ姿を撮るぞ。」
「でも、あなた・・・」
「義姉さん、いいんですよ。一男さん、どうか亜美を撮ってやって下さい。」

　子供のいない一男と優子にとって、亜美は自分達の娘同然の存在だった。
　康平も、そんな一男と優子の気持ちを察していたのだ。
　そして、何よりも、そんな一男と優子を心から有り難く思っていた。

　優子は、康平の言葉に小さく頷いた。

　神殿で愛を誓う裕二と亜美に、康平と礼子をはじめ、親族が温かく見守りながら無事、二人の式が終了した。

　既に披露宴会場前のフロアーでは、続々と招待客が集まり、ドリンクサービスを受けながら楽しい会話が交わされていた。
　康平は、裕二の父、総一郎と二人で招待客の挨拶に回った。

　裕二と亜美が、式場から姿を表した。
　それに気づいた同僚や友人が声を上げながら、一斉に二人を取り囲んでいく。

「うわぁー・・・亜美・・き、綺麗・・・・」
「ありがとう。」
「亜美、今日は歌わせてね。」

　洋子が、大きいお腹を抱えて叫んだ。

「係長、赤ちゃんが出てきちゃいますよ。」
「大丈夫だって。歌いたいのよ私は！」
「いや、洋子、酒がまずくなるから今日はやめておけ！」
「裕二君、ぶっ飛ばすわよ！　それに何、その漫才師のような羽織りは？」
「何だと、お前こそ、ぶっ飛ばすぞ。」

　皆が、３人の会話に大笑いした。
　翔子が露出度の多いドレスで亜美に自慢する。

「亜美、今日は、私もいい男を見つけるわよ。」
「頑張って。しかし、翔子・・・・凄いドレスね。」
「そうかな。」

　翔子も、あのレイプ事件以来、かなり落ち込んでいたのだが、最近、人が変わったように垢抜けし、亜美も喜んでいたのだ。

「亜美さん！」
「み、美津子課長っ。」
「おめでとう。・・・昨日帰ってきたの。」
「課長・・・ありがとうございます。遠いところから・・・・」
「ふふっ、でも、あと少しで終わるし、また一緒に仕事できるわね。」
「はい。」
「今日は楽しみにしてるわ。」

　写真を撮ったり、久しぶりに会う友人と会話をしたりと、裕二と亜美は、披露宴が始まるまでの僅かな時間を楽しく過ごしていた。
　そして、暫し休息の後、披露宴開始の放送が流れた。

「香坂、亜美君、披露宴の演出は、俺と西田が仕切ったからな。楽しみにしててくれ。」
　裕二と亜美は、鏑木から内容を聞かされていなかったのだ。
　鏑木の言葉に、裕二と亜美は礼を言いながら控え室に戻った。

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　なんと司会は、センター長の遠藤が勤めていた。

<新郎新婦の入場です。>

　本社の社長も出席しているためか声が緊張で甲高く聞こえる。
　盛大な拍手と共に、仲人の製鉄専務の後に続き裕二と亜美が入場してきた・・・
　二人が進む道の左右には、センターの同僚や友人がクラッシュコーンや花吹雪を掛けながら祝福をしている。
　何しろ驚いたのが、仲人の後に続く本社社長の姿だった。
　東堂・黒木両本部長の必死の依頼で社長がカラフルな装束を着込み二人を引導したのだ。
　しかし、もっと驚いたのは、康平と礼子だった。

「・・・・・・しゃ・・・社長・・・・どうも席に居ないと思ったら・・」
「あなた・・・ちょ、ちょっと、社長さんに、あんな格好させて・・・」

　太平洋グループの社員も驚いてはいたが、至極好評なようだ。
　歓声が響き拍手も大きく鳴り響いている。

「ま・・・・しょうがないぜ。」

　席についた後も、センターの若手男性社員と裕二の同期２０名が、晒しを巻いた足袋姿で和太鼓を振る舞い、仲人の挨拶ではバックミュージックで女性社員が、琴を奏でた。
　何度も湧き上がる拍手喝采で披露宴は徐々に盛り上がっていく。
　両家からの祝辞も色々な思考がなされ、全く飽きる事のない宴になったいた。

　東堂と黒田両本部長における酒飲み合戦に沸き、製鉄幹部対本社幹部の仮想大会で全員が腹を抱えた。洋子の音痴な歌に、恥ずかしさから鏑木がトイレに立ち、新郎新婦の、お見受け披露では、裕二と亜美が嫌というほどキスをさせられた。

　徐々に酒量も増え、楽しく賑やかに終盤を迎えていった。

　裕二の挨拶に続き、亜美の両親への感謝辞も終え、皆が感動で涙を啜る。
　そして、４時間にも渡る長い披露宴が盛大に終了した。

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　衣装を私服に着替え、裕二らは、すぐさま二次会へ、
　康平らも、両家親族、会社関係者を招いて同じく二次会へと別れた。

「香坂君、亜美っ。」

　酔いで顔を赤くした康平が、式場の玄関前で二人を呼び止めた。

「なに、お父さん？」
「ああ・・・二人に手紙を書いてきた。明日、飛行機の中ででも読んでくれ。」

　裕二と亜美に手紙を渡して、康平はバスに乗り込んだ。

「お父さん・・・」「常務っ・・・・」
「香坂君、常務じゃない、義父さんだ。」

　そう言って、康平は笑いながら背を向けた。

　裕二と亜美は、目を合わせて微笑んだ。

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−　翌日夕方　−

　裕二と亜美は、友人に見送られ飛行機に乗り込んだ。
　離陸後も最後まで、二人に手を振ってくれている同僚に顔をほころばせていく・・・

「ふぅー・・・やっと落ち着いたよ。」
「でも、昨夜はビックリしたわ。洋子係長が急に産気づくんですもの。」
「ああ、でも、鏑木さんの方が焦っていたぞ。ここで産むなよぉーってな。」

　二人は、声を出しながら笑いあった。

「今ごろ、生まれてるだろうな。」
「ええ、向こうに着いたら電話してみましょうよ。」
「そうだな。」

　飛行機が水平飛行に入ったとき、裕二が思い出したように亜美に喋りかけた。

「亜美、そういえば、常務・・・ぁ、いや、お義父さんから貰った手紙・・」
「あ、そうだったわ。」

　亜美は、バッグから康平から受け取った手紙を取り出した。
　裕二にも見えるように手紙を近づけていく。

「あら、凄く短いわね。」

　裕二君、亜美へ　

　腹を抱えて笑いあい、

　　　真剣に、喧嘩しあい、

　　　　　声が枯れるまで泣きあい、

　　　　　　　目を見つめあって語りあい、

　　　　　　　　　遠慮なく迷惑を掛けあい

　　　　　　　　　　そして、一生懸命愛しあいなさい。

　　　　未だ、私と礼子も到達していない、愛欲の向こう側を

　　　　君達二人にも必死に探ってほしいと願っています。　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　荒尾康平

　亜美と裕二は、天の啓示にも似た、康平の言葉を何度も読み返した。
　自然と手を握り合う亜美と裕二・・・
　手紙を折りたたんだ亜美が裕二と顔を合わせた。

「裕二さん・・・」
「亜美・・・・」

　吸いつけられるように、二人の唇が重なっていく。
　客室乗務員が、優しく微笑みながら二人の隣を通り過ぎていった。