（１０９）

−　３年後　−

「亜美、遅れるぞぉっ。」
「え、もう、そんな時間？・・・・あなた、勇斗に服を着せて。」
「おう、わかった。」

　裕二と亜美は、今まで済んでいたマンションを引き払い、康平と礼子の住む隣の土地に家を新築し、今日から新生活を迎えていたのだ。
　二人の間に、長男、勇斗が生まれたものの保育所に預ける事が多く、礼子も、そんな孫の勇斗を強く気に掛けていたことも理由の一つだった。
　当初、遠慮がちに拒否をしていた裕二と亜美だったが、礼子の強い希望もあって、二人は、考えに考えた結果、１年前に隣に移り住む事を決めたのだ。

　そして、昨日、完成した新築祝いと引越し祝いを兼ねて夜は大宴会となっていた。
　センターの仲間や親戚が集まり夜中まで楽しい宴を行っていたのだ。

「勇斗っ、こっちを向けっ・・」

　忙しく服を着せる裕二を見ながら、庭から礼子が上がり込んできた。

「おはよう。上がるわよ。」

　礼子が、裕二に声を掛けた。

「あ、おはようございます。」
「裕二さん、私がやってあげるわよ。」
「すいません。義母さん・・・」
「いいのよ。早く自分の支度を済ませなさいよ。」
「申し訳ないです。」
「気にしないで。それより、こっちへ引っ越してきてくれたし、これから楽しみだわ。」
　亜美が、家事を終え居間に走ってきた。

「ゴメンね。お母さん。」
「ふふっ、任せなさいって。二人とも今日は辞令でしょ。早く行きなさい。」

　偶然にも裕二と亜美は、３月初旬の内辞で、それぞれ昇格を決定していた。
　当然、今まで以上にセンターでの業務が多忙になる事は目に見えている。
　それを承知してか、礼子自ら、勇斗が幼稚園に上がるまでの間、面倒を引き受けると言ってくれたのだ。

「お父さんは？」
「まだ寝てるわよ。昨日の引っ越し祝いで飲みすぎたのよ。それより、あなたたちも、大丈夫なの。目が赤いわよ。」
「ええ、ちょっと頭痛がしますが・・・・」
「フフッ、気をつけてね。」
「じゃ、義母さん、お願いします。」
「いってらっしゃい。」

　裕二と亜美は、玄関を出ると車に乗り込んだ。

「忘れ物ないか？」
「ええ。」

　裕二は、車をスタートさせた。

「・・・しかし、亜美・・よくよく考えると確かに助かるよな。」
「そうね。保育所に預けるより血の繋がった家族のほうが良いに決まってるもの。」
「おばあちゃんっ子になったりしてな。」
「ふふっ、有り得るわ。それに男の子は、初めてだから凄く喜んでるし。」
「優子さんも居るしな。しかし、昨日はビックリしたよ。」
「本当に。センターの仲間が居るのに恥ずかしいったらなかったわ。」

　昨夜、寝かかった勇斗を風呂に入れてくれるよう声を掛けた亜美だったが、礼子と、礼子の姉の優子が、我先にと急ぐあまり、その場で自分の服を脱ごうとし康平と一男から怒鳴られていたからだ。

「これから毎日、義母さんと優子さんと取り合いになるぜ。」
「いい意味、私たちにとっては安心だけどね。」
「・・・・だな。」
「それより、今日から業務体制も大きく変わるって言ってたわね。」
「ああ。本部長が直々に説明するって言ってぞ。」
「どうなるのかな？」
「さあな。・・・・まあ、情報部がなくなるわけじゃないし。」
「・・・・」

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　既に本社から、本部長の東堂が辞令交付のためセンターに到着していた。
　センター員は、最上階の講堂に集合していた。

「よし、集まったかな。」
「ええ。」

　センター長の遠藤が、東堂の横に並んだ。

「それでは、ただいまより辞令交付を行う。今回の昇格は１４名だ。」

　遠藤に続き本部長の東堂が辞令を読み上げた。

「おはよう。それでは名前を読み上げるから前に出てくれ。」

　東堂が順次、昇格者を読み上げた。

　第一課長の京本と第三課長の野口が次長職に昇格し本社に栄転となった。
　遠藤の妻、美津子が第二課長から本社庶務課長に移動、鏑木がセンター次長兼第一課長を、西田がセンター次長兼第三課長を兼務する事になった。

　第二課長は単独で、本社から移動した大鷲悦子、そして裕二が特命課課長に昇格し初めて裕二の直属の部下になる特命係長として、太平洋研究所から配属された桜木昭三が就任した。
　洋子は、補佐に昇格し、引き続き調査・分析を担当する事になった。

　亜美が業務係長、翔子は情報係長に昇格、そして草刈聖子が分析係長に任命された。
　裕二はともかく、洋子、亜美、翔子の３人は、大抜擢の昇格であった。

　東堂は、次々と名前を読み上げていく。

「以上だ。特に女性の昇格が目立ったが、皆も周知しているように実力に合わせた人事異動になっている。そして、新たに５０名ものセンター員を増強してくれた。
　これに伴って、一昨年、太平洋グループが買い取った向かいの産業ビルを改築し、第二ビルとして運営していく。来週から早速業務開始できるよう準備してくれ。」

　皆が、新たな方式にざわめいた。

「それでは、センター第二ビルに移る課を発表する。」

　遠藤が東堂から書類を手渡された。

「まず、第二センターは、センター次長の鏑木と西田が二人で仕切ってくれ。」
「はい。」「はい。」
「それに伴い、第一課の調査・分析、第三課の業務・情報係は、第二センターに移り、こちらには、第二課の外交・管理係と特命課だ。単独部署単位で動く事が多いため、効率を図るために二手に分かれる事にした。全員の今まで以上の業績を期待する。」

　遠藤の説明が終了し、それぞれがオフィスに戻っていった。

「裕二さん。」
「亜美、別々になっちまったな。」
「ええ、それより業務とは思わなかったわ。」
「ああ、・・・・・大変な部署だぜ。実行部隊だからな。」
「でも・・・頑張るわ。」
「んむ。期待に応えろよ。」
「ええ。」

　早速、新係長の亜美は、前係長からの引継ぎのため会議室に急いだ。

　そして、午後からは亜美を始めとする第二センター移動課員の大引越しが開始された。

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「ふぅー・・・よし、今日はこれくらいにしておくか。」

　鏑木が西田に声を掛けた。

「そうだな。荷物はほとんど運び終わったが、システム構築やサーバー移動は時間が掛かるからな。まあ、この仕事は鏑木、お前にしか出来んから頼むぞ。」
「ああ。引越しで時間を潰せんからな。なるべく急ぐよ。」

　西田が、作業をする課員に終了を告げた。

「亜美君っ」

　鏑木が、デスクに座る亜美に声を掛けた。

「はい。」
「どうだい、今夜うちで互いの昇格祝いを兼ねて家族同士で晩飯でも食おうか。」
「ええ、喜んで・・・じゃ、今から裕二さんに電話します。」
「ああ。」

　亜美は、向かいのセンターに電話をして鏑木からの誘いを裕二に告げた。

『わかった。じゃ、勇斗を迎えに行ってから鏑木さんの家に行くよ。』
「うん。あ、お父さんから貰ったワイン持ってきてね。」
『洋子に飲ませるのか？・・・ちょいと、もったいないけど・・』
「ふふっ・・・じゃ、私は、洋子補佐と先にいってるから。」
『了解』

　亜美は、笑いながら電話を切った。

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「では、４人全員の昇格を祝って・・乾杯っ！」

　４人は、グラスを重ねて合った。

「ふぅー、美味いっ。」
「それにしても香坂、お前一人だけが、第一センターだな。」
「ええ、まあ、伸び伸びとやらせてもらいます。」
「それにしても、大抜選だぜ。それだけ期待が掛かってるという事だ。」
「ええ・・・頑張ります。しかし、亜美の業務係には驚きました。」
「ああ、女性では初めてだからな。」

　亜美が、緊張した面持ちで裕二を見た。

「香坂、色々とアドバイスをしてやれよ。」
「ええ、そのつもりです。」
「でも、裕二君とすれ違いが多くなるんじゃない？」

　洋子の言葉に亜美も頷く・・・

「そうなんですよ。でも、勇斗もお母さんがいるし支障は少ないんですけどね。」

　そう言って亜美は、鏑木と洋子の長男、京太郎と遊ぶ勇斗を見つめた。

「・・・でも、あの二人気が合うわね。」
「お互いに男の子でよかったわ。京太郎も勇斗君が来ると喜んでるもの。」
「そうですね。たまには、家にも遊びに来てくださいよ。」
「ええ、そうするわ。」
「ところで洋子補佐は、もう二人目作らないんですか？」
「だって、エッチ出来なくなるじゃない。」

　鏑木が、ビールを吹きこぼした。
　大笑いをする裕二と亜美・・・

「洋子っ！・・・・・ったく・・・・お前は・・」
「ゴ・・ゴメン・・・・」
「相変わらず、正直な性格ですね、補佐。」
「・・・そう言う亜美はどうなのよ。」
「ええ、毎回、イカせて、もらっ・・・ぁ・・・・・」

　俯きながら笑いを堪える鏑木・・・・
　裕二は呆れながらビールを一気に喉に流し込んだ。

　これが引き金となり、亜美と洋子の痴話に拍車が掛かっていく。
　裕二と鏑木は、やけくそ気味に話に加わっていった・・・・・・・

（１１０）

　センター第二ビルへの引越しが終了し、本日より本格的に独立した業務が開始された。

　第二センターでは、最初の仕事である囮作戦が練られていた。
　太平洋傘下の富士機械工業に業務係長の亜美を派遣させ、常々噂されていた幹部職員の技術漏洩を明確にすることだった。

　太平洋研究所で発明された技術を多忙な太平洋機会に代わって富士機械工業に委託したのだが、個人的な利益収集疑惑が掛けられている製造部長の川辺卓巳の身辺、並びに行動を掴むためだった。

　次長の西田が、亜美に説明をした。

「亜美君、一応、君を太平洋機械からの派遣職員という事で富士機械工業の管理部に潜り込んでもらう。随時、収集した情報は、こちらに流してくれ。」
「わかりました。」
「管理部は、独身者が多いが、君の判断で危ない場合は手を出してもかまわん。」
「はい。」
「あと、管理部に限らず、富士機械は、横着な社員が多いから気をつけてくれ。この際、実態を明らかにして、太平洋傘下から外れてもらってもいいんだ。」
「徹底的に調べてきます。」
「んむ。調査係の矢野君も、３日前、既に派遣で総務課へ潜り込んでいる。彼女と連絡を密にしながら、鏑木次長に情報へ伝えてくれればいい。」
「わかりました。それでは行ってきます。」

　亜美は、準備を済ませて富士機械に出向した。

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　富士機械工業に着いた亜美は、管理部長の柴田幸雄と共に幹部の挨拶をし管理部に戻ってきたところだった。

「今日から、しばらくの間、ここで仕事をする事になった太平洋機械の香坂亜美君だ。みんな、仲良く頼むよ。」

　全員が、亜美を拍手で迎えた。
　亜美の、ここでの主な業務は、配送した部品のデータ管理とリスト作成だった。
　亜美が、手始めに今までの書類を見ながら、驚きと溜息を同時に吐いた。

（何ていう無茶苦茶なデータなの・・・）

　何気なく、周りを見渡すと卑猥なホームページを見たり、競馬新聞を読んでいる者もいる。
　女性社員に肩を掛け、ニヤつきながら耳打ちする者もいた。

（これで、給料貰ってるなんて信じられないわ。）

　亜美は、杜撰なデータをリスト化する作業を開始した。
　しばらく、モニターに集中していると総務課に潜り込んでいる矢野雅子からシークレットメールが届いた。
　鏑木の技術で亜美と矢野の使うパソコンを単独操作できるようにしておいてくれたのだ。

【香坂係長、ご苦労様です。今のところは、主だった動きはありません。それから管理部の水野宗一という男性が製造部長の川辺の手先です。】
【それで、水野の情報は？】
【既婚ですが、かなりの遊び人です。女性の弱みを握っては、食い物にして遊んでいるみたいですよ。】
【そう、で、吐きそう？】
【やり様によっては。】
【わかった。ありがとう。また情報よろしく。】
【了解しました。】

　その時、亜美は、自分を見ている視線を感じた。
　その男こそ、いま矢野から情報を貰った水野宗一だったのだ。

（・・・・なるほど、見た感じ遊び人風ね・・）

　亜美と目が合った水野は、ウィンクを送ってきた。
　意味ありげに、軽く笑みを返す亜美・・・

（ククッ・・・マブい女じゃねぇか。是非とも頂きたいもんだぜ。）

　その後、亜美は、一切顔を上げずにデータ作成に集中した。
　見る見るうちに過去のデータをリスト化させていく亜美・・・
　周りは相変わらず、好き勝手な事をして時間を過ごす社員ばかりだ。
　亜美は、溜息をつきながら席を立ちトイレに向かった。

　用を済ませ、化粧を直した亜美がトイレを出ようとすると、水野宗一が、待ち構えたように前に立っていた。

「やあ。」
「こんにちは。同じ管理部の人ですね。・・・で、何か御用？　ここは女子トイレよ。」
「まあね。・・・ねぇ、君、今夜、飲みに行かないか？」
「え、いきなり、お誘い？」
「俺とじゃ嫌かい？　飽きさせないぜ。」

（プッ・・・いまどき、そんな台詞吐かないわよ。）

「どうだい？」
「んー、どうしようかな。主人と子供が待ってるし。」
「えぇー、結婚してるのっ？」
「あら、独身に見えた。・・・でも水野さんも既婚なんでしょ。」
「ああ。ま、そんな事はいいさ。それより俺の虜にしてやるからさ、自信あるんだぜ。」「へぇー。」

（・・・馬鹿っぽい男・・・）

　水野は、壁にもたれる亜美の頭上に手をついた。
　亜美は、笑いを堪えているものの水野を引寄せるためのチャンスを狙っている。
　そして、亜美は、徐に水野の股間に手を伸ばし軽く肉棒を握ってみた。

「これで何人もの女性を楽しませたわけ？」

　水野は、亜美の大胆な行動に驚くものの歓喜を隠せない。

「まあね。試してみるかい。」
「本当に満足させられるかしら。」
「ああ、試そうよ。君も嫌いじゃないんだろう？　旦那で満足してないんじゃないの。」

（ふんっ、裕二さんのセックスは、半端じゃないわよ。）

　心の中で、そう囁いた亜美は、自分で顔を染めてしまった。
　しかし、水野には、そうは映らない。
　亜美が興奮して顔を染めたと勘違いしたのだ。

「ねぇ、いいじゃないか、今夜付き合ってよ。」
「しかし、初対面で大胆なのね。」
「そうかな。いまどき普通だよ。」

　そう言いながら、亜美のヒップに手を伸ばしてくる水野・・・

「スゲェ、張りがあるね、君・・」

　亜美の拒まない態度に水野は、更に亜美のスカートの中に手を入れてきた。
　ガーター越しに亜美のショーツの中心部を指で擦る水野・・・
　女芯を探り当てると、軽く擦り始めた。

「駄目よ・・水野さん。」

　亜美は、横に移動すると水野をすり抜けて管理部に戻った。

「おい、待ってよ・・・」

　亜美は、振り向く事をせずに手だけを振って歩いていった。

（・・・くっそー・・・・しかし、それにしても、凄ぇ、いい女だぜ。これを逃したら、絶対に後悔するな・・・よぉーし、いつもの手で・・）

　水野は、亜美のショーツを撫で上げた指の臭いを嗅ぐと、陰険な笑みを見せながら亜美の後を追ってオフィスに戻っていった。

　亜美は、データ整理を再開していた。
　そこへ水野が近づき、亜美の後ろから小声で囁いた。

「ねぇ、香坂さん、書庫に過去の書類が溜まってるんだ。手伝うから、ちょっと、一緒に見てくれないかな。」

（・・・・何か企んでるわね・・・）

　亜美は、そう思いながらも水野の企てに乗ることにした。

「ええ、いいわよ。」

　亜美は、水野と共に地下にある書庫に向かった。

「ここだよ。」

　水野の後から中に入る亜美・・・
　ドアを閉めると同時に水野が亜美に抱きついてきた。

「ちょっと・・・水野さん、やめて。」
「減るもんじゃないし、やらせろよ！」

　亜美は、抵抗するが水野は諦めない。

「わかった、わかったから離して。」
「わかったって、どういう意味だ。」
「やらせてあげるから・・」

　水野は、亜美を壁に押し付けると首に手を押し当て問いただした。

「変な真似をするなよ。怪我するぜ。」

　亜美は、頷いた。

　水野が、亜美のスカートを捲し上げた。
　ブルーのショーツが品良くガーターの上に納まっている。
　水野は、亜美のショーツを膝まで下ろすとポケットからデジタルカメラを取り出して、亜美の全身をカメラに収めた。

「な、何するの？」
「俺の言う事を聞かないと、この写真をばら撒くぞ。」

　水野は、カメラをポケットに仕舞うと亜美の股間に顔を埋めた。

「アンッ・・・イヤッ・・・」

　水野は、舌で亜美の女芯を掬っていく・・・

「すげぇ・・・堪らん臭いだぜ・・・」

　亜美は、呆れながら水野のされるがままになっていた。

（しかし、馬鹿を通り越してるわね・・・・・フフッ、でもスリルあって面白いわ。）

　亜美は、閉じていた足を広げて水野を挑発した。

「ふっ、君も結局は望んでいたんだろう。」

　水野は、そう言うと指を蜜壷に入れて再度女芯を唇で挟んだ。

「ぅぅぅ・・・」

　水野は亜美の股間に没頭している。

（ァッ・・駄目、駄目・・）

　亜美は、我に返って気を集中した。
　手の平を水野の頭部に当て短い呼気と共に気を当てた。

「グッ！」

　水野は、声を上げて尻餅をついてしまった。

「な、何をやりやがったっ！」
「フフッ、身体が動かないでしょ。」

　亜美は、ショーツを上げスカートを下ろすと水野を押し倒して仰向けにさせた。
　そして、スラックスのベルトを外し下半身を丸出しにさせる。

「何するっ！　やめろっ！」
「あら、やりたいんじゃないの？」

　水野の肉棒は、怒張していた。
　亜美は、水野のポケットからデジタルカメラを取り出すと、先程撮った自分の写真を消去し、代わりに水野を撮り始めたのだ。
　さらに頭部に腰を近づけ水野の顔と、亜美自身の股間部を写す事も忘れない。

「て、てめぇ・・・た、ただで済むと思うなよ。」

　亜美は、無視して水野を撮り続けた。
　そして、水野の肉棒を握ると、ゆっくりと上下し始めたのだ。

「や、やめろぉーっ！」
「出したいんでしょ、水野さん。」

　亜美は、再度スカートを捲りショーツをずらして水野の顔の上に密着させた。
　そして、袋部分を揉みながら優しく肉棒を扱いていく。

「ンググッツ・・・・うぅぅー・・・」

　あっという間に水野の肉棒が脈打ってきた。
　亜美は、腰を上げると擦るスピードを更に速めた。
　数秒後、水野は呻き声と共に分身を自分の下腹部に爆発させたのだ。

「うわぁー、沢山出したわねぇー。それにしても早いわね。私、早漏は嫌いなの。」
「クッ・・・クッソ・・・」

　亜美は、自分の蜜で濡れた水野の顔と下腹部に発射させた姿をデジタルカメラに収めるとカメラの記録媒体を抜き取りポケットに仕舞いこんだ。

「水野さん・・・私の言う事を聞かないと、この写真をばら撒くわよ。」

　笑顔で言う亜美に、水野は悔しさを隠しきれずに呻いた。
　プライドが高く、特に女の前では念入りに気を使う水野にとっては屈辱の瞬間だった。

「クッ・・お、覚えてろよ・・・」
「この期に及んでまだ強がるの？」
「・・・・か、身体を元に戻せっ！」
「直に戻るわ。じゃぁね、楽しませてくれてありがとう。」

　亜美は、そう言って書庫を後にした。
　しかし、オフィスには戻らず屋上に上がっていく。
　そして亜美は、センターに電話を入れた。

「もしもし、香坂です。」
『亜美君か？』

　電話に出たのは鏑木だった。

「はい。いま、製造部長の川辺が使っている管理部の水野という男と接触しました。かなり、大胆で遊び人風の男でしたが、ちょっとからかって怒らせておきました。」
『よし、それでいい。俺の調べたところによると水野という男は、気の弱い上っ面だけの男だ。ただ陰険な性格らしいから帰り道は気をつけるんだ。』
「わかりました。」
『あと、川辺の女房は、スーパーマンに任せる事にした。』
「スーパーマン？」
『ハッ、ハッ・・・君のご主人様だよ。』
「まあ・・気の毒に・・・・」
『そう言うな。それが香坂の仕事だ。』
「わかりました。では、そろそろ退社時間ですので作戦通りに。」
『んむ。気をつけろよ、亜美君』
「はい。」

　亜美は、電話を切ると裕二にシークレットメールを送っておく事を忘れなかった。

　オフィスに戻ると、水野が物凄い形相で亜美を睨んでいる。
　亜美は、それを無視し、帰り支度を済ますと澄ました顔でフロアーに降りていった。
　水野も亜美の後を追いかけるが、周りには退社する者が多く、おいそれと亜美に声を掛ける事は出来ない。
　水野は、チャンスを伺いながら亜美の後をつけることにした。

　亜美が表通りを過ぎ駅に向かう奥路に入ったとき水野が声を掛ける。

「おい、待てよ。」
「あら、ついて来たの？」
「・・・女だからといって容赦しないぜ。・・・メディアを返せ。」
「あら、何故？」
「何故じゃねぇーだろうが・・」
「返してほしければ、私の言う事を聞く？」
「舐めんじゃねぇーぞ、こらっ。」
「水野さん、あなた言ってる事がおかしいわよ。強姦まがいに私の身体を触り、卑劣な写真を撮って、それをばら撒くと脅しながら、いざそれを反対に私にやられたからといって怒っても、私には、全く聞く耳は持たないわよ。違う？」
「ウルセェーッ！・・・・何なら、腕ずくで取ってもいいんだぜ。それから、大事な家庭と仕事を失いたくなかったら俺の言う事を聞いたほうが身のためだぞ。俺の一言で、お前程度を落とすのは簡単な事なんだ。一生後悔したくなかったら素直に返すんだな。」
「あなたこそ、私が家族に訴えれば困るんじゃないの？」
「・・うぅ・・くっ・・・女房なんか関係ねぇーっ！」

（・・女房・・・？）

「水野さん、妙に拘ってるわね。」

　亜美の言葉に水野の顔が激しく歪んだ。

（・・・ははぁーん・・・・この男、恐妻家じゃないかしら。）

　亜美は、水野にカマを掛けてみる事にした。

「水野さん、あなたの奥さん以外には見せないから安心して。」
「な・・な、な・・・・テメェーっ！」

　水野は、大声を上げて亜美に襲い掛かろうとした。
　しかし、その瞬間、背後に強烈な恐怖が襲い掛かった・・・・・・・