（１１３）

「ねぇ、何か飲む？」

　絵美が、シャワーを浴びてキャミソール１枚の姿でリビングに現れた。

「いや、結構・・・」

　裕二は、退屈そうに煙草を吸いながら時間を潰していた。
　川辺らが退社するまで、あと１時間はある。
　昼から何も食べていなかった裕二は、コンビニに出かけると絵美に言って部屋を出ようとした。

「えぇー・・川辺が来たらどうするのよ。」
「まだ退社前だ、来ないよ。」
「ねぇ、簡単なものなら私が作るから行かないで。ひょっとしてという事があるし。」
「・・・・・」

　裕二は、絵美の言う事も一理あると思った。
　川辺も警戒している事は間違いないのだ。
　川辺なら自由に会社を出ることも可能な身分である。

「そうだな・・・」
「ピラフでも作るわ、待ってて。」
「すまんな。」

　絵美は、そう言ってダイニングに消えていった。

（テレビでも見るか・・・）

　裕二は、テーブルに置いてあったリモコンスイッチを押して溜息をついた。

　しばらくして絵美がピラフとビールを持ってリビングに戻ってきた。
　裕二は、ピラフを頬張りながら絵美の他愛もない話に耳を傾ける。

「ほぉぅ、九州か。俺と同郷だな。」
「そうなのーっ、奇遇ね。」
「ところで、川辺とは、どういう経緯で関係を持つことに？」
「クラブに来るお客さんだったの。でも次第に川辺が指名してくれるようになってさ。そのうち、付き合わないかと言われたんだけど、こういう商売やってるとさ、欲が出てくるのよ。私はお店を持つ夢があったし、当然その話も川辺にはしたのよ。」
「出資してやるってか？」
「ええ。川辺も、私らホステスと付き合うには、お金がいることは解っているからね。川辺だって普通のサラリーマンだし、毎日クラブには通えないわ。ところが、２年くらい前から急に羽振りがよくなってきたのよ。私も夢のために川辺と愛人契約を交わしたわ。でも、川辺もだんだんと私を女房扱いするようになって。でもね・・さっきも言ったけど、沢山のお金をくれるし私も少し我慢すればと言う気持ちが。」
「でも、川辺は女房と別れてアンタと一緒になるつもりみたいだぜ。」
「その話も、たまに聞いていたわ。でも今となっては・・・」
「所詮、あんたも金か？」
「でも、悪事は嫌っ。どうせ、あなたに捕まってオジャンでしょ。それに、仕事辞めてまで一緒にいくつもりは、毛頭ないわよ。」
「・・・・」
「それに、警察沙汰なんて真っ平だわ。田舎の両親に恥じかかせちゃうもの。」
「・・・・・あんたらのような商売は、ギリギリのところで身体を張らないとな。」

　絵美は、いつの間にやらビールからブランデーに切り替えていた。

「あなたも飲みなよ。」
「いや、俺ははいい。」

　絵美は、裕二の座るソファに場所を移した。
　キャミソールの下は上下とも何も身に付けていない。

「ねぇ・・ずっと、あなたを見てたけど・・・男前ね。」
「・・・・・」
「私は、どう？」
「・・・ああ、確かに美人ではある。」
「・・・？」
「しかし、表面だけだ。」

　絵美は、ムッっとした表情を見せた。

「あなた、結婚してるの？」
「ああ。」
「奥さん綺麗？」
「ふっ、どうかな・・・・でも、そんな理由とは別に心の底から愛している。」
「そんな台詞をいえるなんて羨ましいわ。・・・・私も同年代の男に抱かれてみたい。」「・・・・今から、そうなるだろ・・・」

　絵美は、妖艶な笑みを見せながら裕二の手を取り股間に導いていく。
　裕二は、絵美の蜜壷に指を這わせながら考え事をしていた。

（そうだ、どうせなら川辺を徹底的に落ち込ませてやるかな・・・）

　裕二は、瞬時にシナリオを頭に描き出した。
　そして蜜壷から指を抜くと絵美に話し掛けたのだ。

「君・・」
「あん・・・いや・・もっと、いじくってぇー・・・んんぅ・・・」
「前野さん、川辺の前で、ちょっと演技してくれないか？」
「？・・・・演技・・・どういう事？」

　裕二は、絵美に説明を始めた。

「・・・・・・」
「どうだい？」
「つまり、川辺を嫉妬させるためにってこと？」
「ああ。」
「面白そうね・・・・・いいわ。どうせ私も吹っ切れてるし。」
「よし、頼むぞ。」

　裕二は、ネクタイを緩めると、再度、絵美の蜜壷に指を入れ始めた。

「あぁぁぁぁー・・・いぃぃ・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　水野が、自宅の寝室で逃げ回っていた。

「ひぃぃー・・・許してくれぇーっ。」
「ふざけるんじゃないわよ。今まで何人の女と寝たのよっ！白状しなさいよっ。」
「そ、それは・・・・・・・・・な、なんで・・・知って・・・」
「聞いたのよ。あんたに強姦されそうになったって。」

（・・くっ・・・あの女か・・・）

「あんた、誰のおかげで裕福な生活できてると思ってるの。」
「・・・・・・そ、それは・・・」

　水野は、顔を引き攣らせながら律子を見つめた・・・・・

「ところで、あんた・・・・お母さんからチラッと聞いたけど、何かお父さんお手伝いをしてるんだって・・・聞かせてよ。」
「・・・・・ぅ・・・・」
「私に言えないことなの？」
「い、いや・・・それは・・・・」
「言いなさいよ、まだ、殴られたいの？」
「・・・・・・・・・・い、言えん、これだけは言えん。」
「馬鹿じゃないの、私は娘なのよ。仮に知り得たって誰かに言うわけないじゃない。」
「し、しかし・・・」
「言わないと離婚よ。」
「！・・・・・・・わ、・・・・・・・・・・・わかった。だ、だから・・・・り、離婚だけは・・・・・頼むっ！」

　律子も、夫が自分に離婚されれば、裕福な生活から離れてしまうことを理解していた。

「ちゃんと、言えばね。」
「・・・わかった・・・・い、言う・・・・」

　律子は、水野に気づかれないよう、テープレコーダのスイッチを押した。

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　一方、川辺も、自宅で女房の豊子に追い詰められていた。

「何を言ってるんだっ、お前・・・」
「惚けなくていいわよ。若いホステスを囲ってるでしょ。もうあなたとは離婚よ。」
「・・・・・」
「何よ、その顔は。」

　川辺は、笑みを浮かべて開き直った。

「・・・ふ・・・望むところだ。出て行ってやるよ。」
「言っておくけど、慰謝料を貰うからね。」
「な・・・なんだとぉっ！」
「当然でしょ。精神的な苦痛を与えられたんだから。」
「お前みたいな一切生活に困らん金持ちに、なんで慰謝料を払わなきゃいかんのだ。」
「それとこれとは別よ。私以外の女に、それも若い小娘に大金を使ってるんだから。」
「そういう、お前はどうなんだ。しょっちゅう家を空けてるじゃないか。」
「私は、浮気なんかしてないわ。何なら証拠でも掴んでみなさいよ。」
「・・・くっ・・・・」
「弁護士を通じて慰謝料を請求しますからね。ちゃんと払ってもらうわよ。」
「・・うぐ・・・ぐっ・・・・」

　川辺は、真っ赤な顔をして飛び出るように部屋を出て行った。

（くそ・・・あのババァ・・・・）

　しかし川辺は、慰謝料など払うつもりは毛頭なかった。
　それより事が大きくなる前に金を工面しなくてはならない。
　そして律子に説明をし行方をくらませる必要があった。
　川辺は、車に乗り込むと急いであるところに向かった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　数十分後、裕二は、豊子と律子から続けざま成功したという連絡を受けていた。

　裕二は、さっそく特命係長の桜木に電話をした。

「桜木か？」
『あ、課長、いま、川辺が何者かと会っています。』
「何っ！　そうか・・・よし、川辺には一切手を出すな。奴らが別れた後、漏洩した相手の奴だけを押さえろ。」
『解りました。一応奴の車には、盗聴を仕掛けてありますので、会話している録音内容はセンターの調査係に入っています。』
「解った。」

　裕二は、携帯を上着の上に置いた。
　絵美は、ソファに座る裕二の前に跪き肉棒を舌で執拗に弄んでいる・・・・

「前野さん、そろそろ川辺が来るかもしれんぜ。」

　肉棒から口を離した絵美が、裕二を見つめた。

「どうでもいいわ・・・それより、久々にこんな硬いモノを・・・・ぁぁ・・」

　絵美は、再度、裕二の肉棒を咥えると、自ら蜜壷に指を挿入し敏感な部分を刺激しはじめる。
　目は、虚ろで性戯を芯から堪能している様子だ。

　そして、数分後、部屋の電話が鳴った。

「ん、恐らく川辺だぜ。」

　予めテーブルに電話は置いてあった。

　絵美は、肉棒を咥えたまま受話器を取り電話に出た。

「・・んぅぅ・・・・・・・ハイ・・・前野で・・す。」
『絵美か・・・今からそっちへ行く。』
「え？・・・ンムムッ・・ングッツ・・・」
『ん？・・・おい、絵美っ、何をやってるんだ？』
「え？・・ぁぁ・・んぅぅ・・・オ○ンチンをしゃぶってるの・・・・ぁぁ・・」
『な、・・・なに？・・・・・・・バ、バイブでもしゃぶってるのか？』

　絵美は、肉棒から完全に口を離すと話を始めた。

「・・・・・うぅん・・・パパには悪いと思ったけど若い男の人のオ○ンチンを今・・・あぁぁ・・硬くて、最高だわぁぁ・・・。」

　絵美は、再び裕二の肉棒を咥えると、川辺に聞こえるようにわざと激しく音を立てていった。

「絵美ぃぃぃーっ・・・お前・・・ど、どこの男だ・・・許さんぞっ！」
「入れてっ・・・入れてぇぇぇぇー・・」
「え、絵美っ・・・やめろっ！」

　絵美は、裕二の肉棒に跨った。
　そして、裕二に抱きつくと、ゆっくりと蜜壷に肉棒を埋めていった。
　裕二は、受話器を絵美から取り上げ川辺に聞こえるように絵美の口に近づけていく。

「あぁぁ・・・硬くて・・・・ぅぅ・・・大きくて・・・気持ちいぃぃぃー！」
「絵美っ・・・貴様ぁぁ・・・・」
「ぁぁ・・・パパのフニャ○ンなんか比較にならないぃぃぃ・・・」
「クッ・・・・クッソォォー・・・どこのどいつだぁっ！」

　裕二が、受話器に喋りかけた。

「そろそろ、出そうか？」
「あぁん・・・・オ○ンコの一番奥に発射してぇぇぇー！・・・」
『絵美ぃぃぃぃーっ！』

（こりゃ、意外と興奮するな・・・・・・？・・・・へ、変態かも・・俺・・・）

　裕二は、苦笑いを見せて電話を切った。
　そして、電話を切った直後、桜木から連絡が入った。

『課長、ＯＫです。相手を押さえました。要機械工業の人間です。』
「解った。処理してくれ。」
『はい。調査係にも連絡を入れておきました。全て工作は成功したようです。』
「よぉーし、とりあえずは終了だな。」
『はい。では、私は、もうじき所長が来ますので、この男を連れて、要機械工業に向かいます。』
「んむ。所長の落とし方を見て、よく勉強しておけ。」
『そうします。』

　おそらく、川辺は、急いでここに駆けつけるに違いない。

（フッフッ・・・・さてと、じゃ、亜美には悪いが、ちょっと楽しませてもらうか。）

　裕二は、絵美のキャミソールを脱がして真っ裸にすると、乳房を鷲掴みにして肉棒を強烈に突き上げた。

「ンッハァァァァァァァーッ・・・・・・・」

（１１４）

　裕二は、息を弾ませる絵美をソファに寝かし玄関に立った。
　そろそろ、川辺が到着する頃だ。

「ねぇ・・何やってるの？」

　絵美が、股間を押さえながら裕二に呟く。

「川辺がそろそろ来る。奴が入ってきたら俺が片付けるから、徹底的に、卑猥で嫉妬させるような演技に没頭してくれ！」
「・・・演技なんかしなくても、あんた、本当に最高よぉ・・思いっきり虐めてぇ。」
「・・・・・・」

　絵美は、ソファに座り足を開いて裕二に蜜壷を見せている。
　裕二は、あまり度を過ぎても、後々厄介な事になりそうな気がした。

「と、とりあえず打ち合わせどおりに・・・」
「ええ、任せて・・・」

　ドアの外から、慌しく走り寄って来る靴音が裕二の耳に入った。

（来たな・・）

　激しくドアを叩き、ノブをまわす金属音が連続している。

「絵美っ！・・絵美っ、開けろっ！」

　裕二は、ロックを外してドアを開けた。よほど慌てているのだろう。
　シューズボックスに持たれかかっている裕二に気づかずに、土足で飛び込むように部屋に入いっていった。
　絵美は、真っ裸で蜜壷に指を入れて喘いでいる。

「絵美っ、男はどこだぁっ！」

　川辺の手には、ゴルフクラブが握られていた。
　興奮しているのか、顔は真っ赤になり身体も震えている。

「ぁぁ・・・気持ちよかったわ。オ○ンコがこんなに腫れ上がっちゃったぁ・・・」
「ググッ・・・・」
「お、お前と言う奴は・・・お、俺を裏切りやがって・・・」

　川辺は、絵美に飛び掛ろうとした。
　しかし、後ろから裕二に足をすくわれ転倒してしまう。

「ウグッ・・」

　裕二は、頚椎を軽く叩き込み川辺を気絶させた。

　数十分後、下半身裸で椅子に固定されている川辺が、おぼろげに目を覚ました。
　目に飛び込んできたのは、激愛する絵美が、裕二の肉棒にむしゃぶりつく姿だった

「・・え、絵美・・・絵美ぃぃーっ！」

　絵美は、裕二の肉棒を咥えたまま川辺に視線を送った。

「・・・ぁぁ・・・硬くて最高・・・・パパのオチンチンなんか問題にならないわ。」

　絵美は、そう言ってヒップを川辺の方に向けると肉棒を咥えたまま両手で尻肉を開いて濡れそぼった蜜壷を見せ付けた。
　奥からは、透明な愛液が太腿を伝っている・・・・・

　川辺の肉棒も硬さを増しているが垂れたままであった。

「やめろっ・・・絵美っ・・・・」

　絵美は、川辺のほうに向きを変えると、裕二に跨り怒張した肉棒を蜜壷にあてがった。
　川辺は、口をパクパクさせて見つめている。

「・・ぁぁ・・あぁぁ・・・・入る・・・ぁぁ・・入るぅぅぅぅー・・・」
「ぇ・・・絵美・・・・・」

　川辺は、今まで見たことのない絵美の表情に愕然としていた。

「はぅぅぅぅー・・・オ○ンコが壊れそぉぉぉー・・・」

　自ら裕二に腰を打ち付け、乳房を揉みながら川辺の様子をみて興奮していた。

「ぁぁ・・パパ・・見て・・こんなに硬くて太いオ○ンチンが・・気持ちいぃぃぃー」
「や、やめてくれ・・・絵美・・・・絵美・・・」
「ああ・・パパなんかのより、ずっといぃぃぃー・・・」

　川辺は、頭の中が真っ白になっていた。
　悔しさと脱力感、そして失望が全身を駆け巡っていたのだ。

「ぁぁ、、何で、何で、今までパパみたいなフニャ○ンを・・・・ぁぁ・・・」

　絵美は、裕二にもたれかかると女芯を触りはじめた。
　半分以上は、本気の行動に、裕二も複雑な気持ちだった・・
　反面、川辺の目からは涙が流れていた。
　しかし、裕二と絵美から目を離そうとはしない。

「うぅぅ・・・いぃ、いぃゎぁー・・・・・」

　絵美の愛液は、裕二の袋部分にまで到達し床に滴り落ちていた。
　事実、川辺自身も絵美がこれほどまでに濡れて感じている姿を一度たりとも見たことはなかったのだ。

「あぁ・・見てぇ・・パパァ・・・・ここを見てぇぇぇーっ！」
「・・・・ぇ・・・・絵・・・・美・・・・・」
「あぅ、、い、い、・・・・い・いくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅー・・」

　川辺は、絵美の昇天した声と共にがっくりと項垂れ身動きしなくなった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　絵美は、川辺の硬くなったものを手で擦っていた。

「パパ、最後に手で出してあげるわ。」
「・・・・・ゥッ・・・・」

　川辺は、意思に反して、爆発をしてしまった。
　しかし、勢いはなく先から水っぽい分身を床に落とすと力ない声で絵美に呟いた。

「・・・絵美・・・わ、私と・・・・い、一緒に・・・」
「パパ、ゴメンね。私、警察沙汰になるようなことはごめんなの。」
「・・・・・・か、金を・・・」

　服をまとった裕二が、川辺の前に立った。

「川辺よ。既に終わりだ。」
「・・・・・・な・・・なに・・・・・・」
「今ごろ、お前が技術情報を漏らした要機械工業の人間が、厳しい処分を言い渡されてるだろう。」
「・・・お、お前は何者だ？　太平洋機械の人間か？」
「私は、太平洋グループ中央情報センターの特命課長で香坂といいます。」
「な・・・・・・そ・・・・そんな・・・」
「貴方も内の傘下会社の人間だ。私の仕事がどういうものか知っているでしょう。」
「・・な・・・」
「企業マンとして、絶対してはいけないことを貴方はやってしまったんだ。人生の全てを棒に振った事になる。奥さんに協力をさせたのも私です。そして、貴方の娘さんにも手伝ってもらいました。婿の水野宗一が供述した録音したテープも既にセンターに送られて報告書を作成済みです。」
「・・・・そ・・・」
「前野絵美さんにも、今後近づかないように。これ以上罪を重ねない事ですね。」

　川辺は、グッタリと項垂れた。

「さて、前野さん、私はこれで失礼しますよ。あ、そうそう、今のうちに川辺の女房と会って、金を請求しておいたほうがいいぜ。バレる前にな。」

　立ち去る裕二の後を絵美は急いで追ってきた。

「あ・・・・あの・・・・」
「え？」
「・・・あの・・・つまり・・・その・・そ、そう、あの、お暇なときにお店に飲みに来てください。」

　絵美は、店名が書いた自分の名刺を裕二に手渡す。
　裕二は、無言でそれを受け取るとポケットにしまい囁いた。

「前野さん、金に執着する人生なんてつまらんぜ。」
「ええ・・・・・反省してるわ。」
「・・・・いずれ寄らせてもらうよ。」
「その時は、また・・・・わ、私を・・・」

　絵美は、小声で、そう言って玄関を出て行く裕二を見ながらまだ疼く股間に手を持っていった・・・・・

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

−　翌日夕方　−

　第二センターに報告がてら顔を出した裕二が鏑木から声を掛けられた。

「香坂、ご苦労さん。」
「あ、鏑木さん・・・・」
「ニュース見たか。」
「え？」
「川辺が自殺したよ。」
「・・・・・そうですか。」
「ま、自業自得だ。水野も結局離婚されたようだ。」
「悲惨な一族でしたね。」
「ああ、昨日、証拠テープを水野の女房のところに取りに行ったんだが、複数の男と真っ最中だった。」
「は？・・・父親が死んだのに・・・神経疑いますね。」
「世の中狂ってるぜ。」
「しかし、いつになっても、こういう事はなくなりませんね。」
「そうだな。ほとぼりが冷めりゃ、また起きる。自分だけは、見つからないと思うんだろう。」
「そうですね。」
「ところで、香坂、そろそろ仕事も終わるし飲みにいくか？」
「いいっすよ。」
「綺麗な女性がいる店を見つけたんだ。」
「おぉっ、そうすか。是非、連れてって下さい。」

　その時、真後で、偶然聞き耳を立てていた洋子が腕を組みながらゆっくりと囁いた。

「洋さん・・・・裕二君とお出かけかしら？」
「ぁ・・・お、おう洋子・・・実はいま、香坂から無理やり誘われてな。」
「え・・ちょ、か、鏑木さん・・・そりゃ、ないでしょ・・」

　鏑木が慌てて裕二にウィンクをしている。

「どうしたの？」

　亜美が、３人を見つけて近づいてきた。

「あ、亜美、あのね、この二人の男が、キレェーーーな、お姉さんのいるところに今から飲みに行くんだってさ。」
「えぇっ！」
「洋子、お前、聞こえてんじゃねぇーか！」
「あったりまえじゃない。私は地獄耳よ。」
「次長、裕二さん、私達も行きますからね。」

　裕二と鏑木は、視線を合わせながら、がっくりと肩を落として亜美たちに承諾せざるを得なかった。