（１１５）

「ゆ、裕二さ・・ん・・ぃぃ・・・・ぁぁぁ・・・・いぃ・・・あぁぁぁ・・・・」

　亜美は、後ろから裕二に、強烈な杭を打ち込まれていた。
　シーツを握り締めて激しく腰を振り続けている。

「ウゥゥゥ・・・・き、気持ち・・・いぃぃ・・・」

　裕二は、亜美を抱き起こすと座位にして跨らせた。
　亜美は、貧欲に裕二の舌を貪ってくる。

「ぁぁ・・・もっと・・・もっと・・・強くしてぇぇ・・・」
「・・・クッ、亜美っ・・・これ以上、動くと爆発しちまうぜ。」

　亜美が、妖艶な表情で裕二を見つめる。
　ほんのりと顔を紅潮させ潤んだ瞳に、裕二は、一層掻き立てられていく。

「ちょ、ちょっと休憩しようか？」
「アン・・・もぉぅ・・・」
「ところで、何ともないのか？」
「ええ、裕二さんは？」
「ああ、違和感はないけどな。それより立つのか心配だったよ。」
「アハハ。」

　裕二と亜美は、先週に、お互いが避妊の手術を受けたのだ。
　亜美自信、仕事に執着したいという希望もあり、お互いが話し合っての結果だった。

「しかし、あんな簡単にパイプカットできるんだな。」
「そうなの？」
「ああ、３０分と掛からなかったぜ。」
「へぇー・・・」
「ところで、亜美・・・そこの毛・・・・」

　裕二は、亜美の恥丘の陰毛を指さした。

「あ、これ？・・・フフッ・・昨日、洋子補佐と美容クリニックへ行ったの。エステと違ってレーザーで毛根を焼いちゃうから絶対に生えてこないのよ。」
「いや、生えてこないはいいんだけど、何でそんな事したんだ？」
「だって、裕二さん、くしゃみするじゃない。それに舐めやすいと思って。」
「・・・・・・・」
「なによ、その顔・・」
「ぇ、いや・・・その・・・割れ目が丸見えだなと思って。」
「おかしいかな？」
「いや、まあ、正直言うと、そそるけどな。」
「フフッ。でも、洋子補佐なんて上の毛もほとんど無くなったのよ。」
「洋子が・・・・プッ・・・」
「ねぇ・・そんな事より早く続きしようよ・・・」

　そう言って亜美は、まだ衰えていない裕二の肉棒を口に含んだ。
　亜美の長い舌が、肉棒の根元に絡みつき、絶妙な感触で先の部分までをスライドをしていく。

（よく、根元まで咥えれるもんだな・・・）

　裕二は、腕を伸ばして亜美の蜜壷を刺激した。

「んぅ・・・・んー・・・んぅぅぅぅぅぅ・・・」

　その夜、遅くまで亜美の絶叫が途絶える事は無かった。

−　翌朝　−

「亜美・・・遅れるぞ。」
「んー・・・・」

　寝返った亜美の亀裂からうっすらと裕二の分身が流れたきた。

（そうか・・最後に出して二人とも寝ちまったんだ・・・・）

　裕二は、まだ寝そべっている亜美の菊門を指で突付いた。

「アンッ・・・イヤン・・・・・」
「早くしろよ。いつも義母さんに頼ってて申しわけないぜ。」
「・・・ん・・・はぁぃ・・」

　亜美は、ゆっくりとベッドから起き上がった。
　まだ眠気が覚めないのか裕二にもたれかかってくる亜美・・・
　ツンとたった亜美の乳首が腕に触れる。その感触が、裕二は妙に心地よかった。

「さ、勇斗を見てくる。」
「うん・・着替えて朝食作るわ。」

　亜美と裕二は、それぞれ日課となっている分担に取り掛かった。

　朝食も終わり、勇斗とじゃれる裕二を亜美はコーヒーを啜り、笑いながら見つめていた。

「勇斗ぉー、おばあちゃんよぉー。」

　礼子が、声を掛けて庭から上がり込んできた。
　勇斗も最近は自分から礼子に駆け寄っていくようになっている。

「おはよう。」
「お母さん、今日、勇斗の予防接種だからお願いね。」
「任せなさいって。」
「じゃ、義母さん、お願いします。」
「いってらっしゃい。」

　裕二と亜美は、目を合わせると笑いながら家を出た。

「しかし、義母さんも、おばあちゃんって言うほど歳に見えないな。」
「そうかしら・・・でも確かに若くは見えるわね。」
「あっ、そういえば、先日、用があって本社に行ったんだが、その時に義父さんと会ってな。喫茶室でコーヒーを飲みながら面白い話しを聞いたんだ。笑ったぜ。」
「どうしたの？」
「いつだったか忘れたらしいが、勇斗を連れて義母さんと買い物をしていたら、本社に勤める女性社員に、偶然会ったらしいんだよ。」
「うん・・・それで？」
「その女性が、義父さんが愛人とその子供を連れていると勘違いしたらしくて、本社で噂になっちまったんだとさ。」
「アハハッ。」
「専務が、噂にビックリして、義父さんに確認をしたんだが、義父さんも身に覚えがないから首を傾げていたらしいんだ。」
「で、どうなったの？」
「そこへだ。勇斗を連れて義母さんが、たまたま本社に顔を出したんだよ。」
「へぇー、珍しいわね。」
「何でも義母さんが、財布を落として困ってたから借りに訪れたらしいんだ。」
「ああ、そういえば、前にそんな事言ってたわ。」
「それが、また大変だったんだ。その女性社員が偶然にも、また義母さん見て、常務の愛人が、会社にまで乗り込んできたってふれまわったらしいんだよ。」
「・・・何となく、先が解ってきたわ・・」
「それが専務の耳に入り、義父さんも不思議に思って、専務と一緒に、ロビーまで降りていったんだ。」
「ふん、ふん・・・面白くなってきたわね。で？」
「専務と義父さんが、そこへ現れると皆が興味深々に見入っていたらしい。」

　既に亜美の顔は、笑いで崩れていた。

「当然、専務は、直ぐに気がついたさ。何度も会ってるし義父さんの女房だって。そして、義母さんを見て、やあ、奥さん、お久しぶりです。って言ったんだ。」
「・・・ゥ・・ププッ・・」
「続いて義父さんが、孫の勇斗ですと専務に説明したとたん一斉に、そして隠れるように社員が姿をくらましたらしい。」
「キャハハハっ・・」
「しかし、その女性社員は、顔が真っ青で震えてたらしいぜ。そりゃそうだろう。女房と孫を愛人と勘違いして、本社連中に言いふらしちまったんだからなぁ。」
「でしょうね。」
「義父さんは、その女性に何も言わなかったが、専務からは、かなり怒られたらしいぞ。」
「でも、可愛そう。何ていう方なの？」
「いや、名前までは聞かなかったが・・・」
「しかし、おっちょこちょいな人ね。」
「しかしな、本社連中も義母さんを見て確かに愛人に見えなくもないって言ってたらしいぜ。」
「どういう事？」
「顔や姿が歳相応に見えないのさ。つまり、若く見えるって事・・」
「お母さんが聞いたら喜ぶわね。」
「ま、確かに俺が見ても若く見えるがな。」

　亜美が裕二を見ながら囁いた。

「・・・裕二さん・・・お母さんと間違いを起こさないでね。」
「・・・・・」

　軽蔑した目で見る裕二に、亜美は舌を出しながら目をそらした。

「ったく・・・・お前という奴は・・・」
「ごめんなさい。」

　裕二は、亜美を第二センターで降ろしてから第一の地下駐車場に向かった。

　皆に挨拶をしながら裕二は、オフィスに入った。
　それに気づき、遠藤が声を掛けてきた。

「香坂、ちょっと来てくれ。」
「はい。」

　裕二が、所長室に入ると一人の女性が椅子に座っていた。
　女性は、入ってきた裕二を見て軽く頭を下げる。

「座ってくれ。」

　裕二は、遠藤と女性を挟んで横に腰掛けた。

「本社職員の酒井由香君だ。」

　裕二も軽く酒井に挨拶をする。

「仕事ですか？」
「んむ。実はな、荒尾常務からの依頼なんだ。」
「え・・・そうなんですか。」
「ああ、ここは、お前に頼むしかないと思ってな。」

　遠藤の説明に裕二が耳を傾けた。
　この横に座る女性は、前太平洋物流社長の酒井富美子の養子だった。
　酒井富美子は、同じく、元太平洋製鉄の酒井藤吉社長の妹で初代センター長を務めた人間なのだ。

　酒井は、生涯独身を通し、昨年、病気のため５８歳で亡くなったのだが、養子にとられた由香は、その意思をついで太平洋に入社したらしい。
　その、酒井富美子の莫大な遺産を手に入れた由香だったのだが、それを知っている何者かが、由香を脅しているというわけだ。

「なるほど、簡単に言えば、恐喝ですね。」
「いや、恐喝どころか、根こそぎぶん取ろうとしているんだ。」
「・・・・」
「お前も知っていると思うが、彼女の義母は、このセンターを作った創始者だ。常務も酒井さんには、大変お世話になり可愛がってもらったといっていた。」
「ええ・・聞いた事があります。」
「更に、酒井さんは、低迷していた物流分野をたった一人で日本を代表する会社にまで育て上げたグループの大貢献者だ。」
「ええ。」
「元来、非常に質素で生活も派手を好まず、贅沢しない性格だったのだが、それに比例して資産は莫大だ。彼女は、酒井さんの養子になってから、懸命に酒井さんに尽くして、信用も絶大だったんだ。当然、全財産を引き継いのだが、それを狙ってか、頻繁に危ない目に会っている。」
「で、守れと？」
「それだけじゃない。狙ってくる相手をつきとめて片付けてほしい。」
「・・・・」
「理由は、それだけじゃない。彼女は、確かに、おっちょこちょいだが、非常に優秀な社員だ。現在、社員トップリストの中でも上位にいる。つまり、将来のリーダーになるべく社員として太鼓判を押されている。」
「なるほど、わかりました。」
「既に、第二センターの方にも頼んでおいた。今回は、グループ内部も疑わなきゃいかん。」
「そうですね。」
「今日から早速掛かってくれ。」
「はい。」

　裕二は、酒井由香に今までの経過を全て聞くため地下にある会議室に場所を移した。

（１１６）

　裕二は、由香と共にエレベーターに乗り込んだ。

「・・・あ・・・あのぅ・・・」
「え・・・何だい？」
「香坂さんって・・・荒尾常務の・・・・・」
「ええ、義理の父になるけど・・・何で？」
「すみませんっ！」
「え・・なにが？」
「実は・・・・」

　由香は、裕二に謝った理由を説明した。

「はははははっ・・・・そうか、君だったのか。」

　先程、亜美と話していた、康平の愛人騒動の勘違いの主は酒井由香だったのだ。

「物凄く恥ずかしくて・・・・・・でも、祖母から荒尾常務は凄い男だって常々聞いていたので、そんな人が、奥様が居るのに愛人を連れている事がどうも納得いかなくて、私、別に言いふらしたわけではないんです。偶然、隣に座る同僚に話したら、だんだんと話が大きくなってしまって・・・。」
「そうだったのか。いや、常務も気にしていないさ。そもそも、今回の件も常務から直々依頼してきたって言う事だし、世話になった君の義母に恩を返す意味もあったんじゃないかな。君も別に気にすることないさ。」
「は、はい・・・」

　裕二と由香は、地下の会議室に入った。

　裕二は、由香を座らせると早速話を聞く事にした。
　由香は、丁寧に日付や内容を手帳にメモしていたのだ。
　裕二は、その手帳を読みながら由香の話にも耳を傾けた。

「なるほど・・・まず、電話は頻繁に掛かってくるわけだ。」
「ええ・・ほとんどが寄付とか援助とか・・今は電話を切ってるんです。」
「酒井前社長が亡くなってから男性が君に近づくようになったんだね。」
「そうなんです。」
「でも、確かに君は、綺麗だし、スタイルもいいし、遺産狙いではなく、誘われて不思議な事ではないよ。」
「・・・・で・・でも・・・」
「でも・・・なんだい？」
「私、施設で育ったんです。当然両親の顔も知りません。」
「？・・・・・それが、何か関係あるのかい？」
「私、１２年前に、酒井富美子の養子になってから、色々な事を学び得ました。そして長年一緒に暮らしているうちに、生き方、考え方に感銘を受けて・・。そのうちに、私も酒井富美子のような女性になりたいって思い始めたんです。ああいう生き方をしたいと思い始めたんです。いえ、目指そうと思ったんです。」
「だから？」
「・・・男の人が嫌いではないんですが、結婚しようとは思わないんです。」
「・・・・」
「その・・つまり、私も生涯、独身を通そうかなと・・・」
「失礼だけど、君、歳は？」
「２４です。」
「更に失礼な事を聞くが、その・・・・経験というか・・・つまり・・」
「香坂さん、私は身体に欠陥があるわけではありません。男性経験もありますし、セックスも嫌いではありません。」

　由香は、そう言うと顔を真っ赤にして手で覆った。

「いや、し、失礼・・・・・ただ、その若さで独身を決めてしまうのもと思って。」

　由香は、顔を伏せたまま話を続けた。

「・・・・・・義母は、私が成人してから、いつも口癖のように言っていたんです。女も男並に肩を並べて仕事をしようと思うなら、色んな男と寝るのも勉強だって。」
「へぇー、酒井さんもトッポイ事を言う女性だったんだね。」
「男を知らないと、大きい仕事は出来ないって。上に立って男を使えないって。」
「なるほど・・・考えが突出しているな。」
「でも、財産目当ての男となんて、そんな関係になりたくないんです。」
「そりゃ、そうだろうね。」

　裕二は、由香に近づいてくる男性を全て聞き出す事にした。
　そして、調査係に電話をし詳細を早速送ってもらう事にしたのだ。
　太平洋グループ全ての社員の詳細は、既にデータ化されており連絡も早かった。

　裕二が、送られてきたデータを読み始めた。

（んー・・・特におかしいところはねぇーな・・・・）

　裕二は、鏑木に電話を掛けた。

「あ、鏑木さん、香坂です。ちょっと頼みが・・・」
『いま送った男性社員の最近の身辺調査だな。』
「さすが鏑木さん・・・」
『もう、お前の頼みは大体の事は理解できるようになったぜ。』
「ははっ、恐れ入ります。」
『少し時間をくれ。課員を使って１週間ほど彼らの行動を調べさせてみる。あと、本社以外の男達は、一から調べないといけないから時間が掛かるぞ。』
「ええ、わかりました。お願いします。」
　裕二は、電話を切って由香に説明をした。
「当分は、普通にしててくれ。何かあったら直ぐに俺に連絡をしてほしい。」
「わかりました。」
「よし、とりあえず本社まで送っていくよ。」
「すみません。」

　裕二は、由香とともに地下会議室を出ると、駐車場に向かった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　裕二が、勇斗を膝に抱きながら亜美に今日の事を話していた。

「へぇー、その人がお父さんの噂を・・・」
「ああ。」
「独身ねぇー・・・私もお父さんから、初代センター長だった酒井さんの話は、聞いた事あるわ。確かに凄い女性だった事は、話でも解るけど。彼女も、よほど感銘を受けたのよ。それに養子といえども家族だしさ。」
「ああ、性格は、おっちょこちょいだが、仕事も出来るし意志も強い。」
「私も、今日、西田次長から、酒井由香さんにしつこく迫る男の会社に潜り込んでくれって、命令を受けちゃたわ。」
「しょうがないぜ、業務係の仕事だからな。」
「そうね。」
「まあ、そんなに難しい仕事じゃないし早く片付くだろう。」
「だといいわね。外での仕事は神経使うもの。」
「まあ、頑張れ。係長の腕の見せ所だぜ。」
「フフッ・・・あ、勇斗寝ちゃってるわよ。」
「おう、そうか。寝かせてくるよ。」
「うん、お願い。オマタ開いてベッドで待ってるから。」

　裕二は、ずっこけながら勇斗を抱いて居間を出て行った。

>>>>>>>>

　亜美が、丹念に裕二の肉棒を愛撫していた。
　背中からまわる裕二の指が亜美の最も感じる部分に当たっている。

「・・・ンー・・・ハゥッ・・・・・ぁぁぁぁ・・・」
「亜美、大洪水だぜ。」
「いや・・・・言わないで・・・・」

　亜美は、肉棒を握ると袋部分を口に含み下で転がし始めた。
　張りのある形良い乳房が、スライドする口にあわせて優雅に揺れていた。
　裕二は、亜美のくびれた腰を掴むと正面に向きを変え、ゆっくりと肉棒をスライドさせる。

「ンググッ・・・・ゥゥゥ・・・」

　亜美の喉元が、裕二の肉棒で膨れ上がる・・
　しかし、亜美も苦痛を感じることなく舌をスライドのあわせて肉棒に絡めていた。

「くっ・・・凄すぎるぜ・・・・・亜美・・・」

　亜美の蜜壷からは、愛液がベッド上に糸を引きながら零れている。
　裕二は、亜美の口から肉棒を抜くと仰向けになって亜美を誘った。

　妖艶な瞳で裕二を上から見つめる亜美・・・・
　裕二に跨ると、片手で蜜壷を広げて肉棒に腰を落としていく。

「・・・ゥゥゥゥ・・・・アァァァァ・・・・アァァ・・・」

　亜美は挿入と同時に、激しく腰を振り始めた。

「あ、亜美・・・暴れすぎだぜ・・・」
「ぅぅ・・・い、いやっ・・・・」

　亜美は髪を振り乱しながら快感に浸り続けた。
　そして、数分と立たないうちに目の焦点が定まらなくなってきた。

「い、いきそ・・・・いきそう・・・よ・・・」
「お、俺もだぜ・・・」
「もぉ、駄目ぇぇ、駄目よ・・・ぁぁ・・いくぅ・・・・・・ぁぁぁぁ・・・ウッ・・・いく・・・ぁぁ・・！・・ゆ、裕二ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーっ・」

　亜美の絶叫と共に、裕二も奥深くに分身を爆発した。
　亜美は、裕二に倒れ込み舌を求めた。

　蜜壷に力を入れ、裕二の分身を搾り取っていく亜美・・・・

「・・・ぁぁ・・・熱い・・・熱くて・・・・気持ちいい・・・」
「・・・最高だぜ、・・・・亜美・・」

　亜美は、いつまでも裕二にしがみつき愛の体温を吸収していった・・・・

−　翌日　−

「亜美君、とりあえず先方の会社には事情を説明し了解を得ておいた。職務研修という事で出向し、青葉健二の身辺を徹底的に洗ってほしい。」
「解りました。」

　西田から、命令を受けた亜美は、酒井由香に交際をしつこく求めている男性、青葉健二の勤めるＫＫI食品の総務部に今日から派遣されることになった。

「今現在、解っている青葉健二のデータだ。よく読んでおいてくれ。」
「はい。」

　亜美は西田から資料を受け取ると、簡単に目を通した。

　青葉健二、２９歳　独身
　ＫＫＩ食品総務部、庶務課、庶務係長。
　現在、会社名義のマンションに住んでいる。
　勤務成績は優秀で、社の信頼も厚い。
　また、ハンサムでスポーツも万能なことから女性社員にも人気が高く、青葉を嫉む男性職員も少なくない。

　特に、同期入社の者からは、あらゆる意味で敬遠されていた。
　趣味は、音楽鑑賞と読書
　風俗店に頻繁に通っている形跡がある。

（音楽・・・読書・・・・・・本当かな・・・・・）

　西田が、亜美に呟く・・・

「金がいる趣味と言えば、そう言えなくもない。」
「そうですね。」
「ま、それだけでは、証拠にならないし、特に酒井君を困らせてるとは思えない。」
「・・・・」
「ただ、鏑木が出したデータでは、この青葉健二が一番怪しいんだ。」
「というと？」
「他の人間も調べたんだが、殆ど義援団体や単なる宗教団体ばかりで、個人では太平洋本社の連中ばかりなんだ。つまり、本社の人間である可能性は極めて低い。」
「そうですよね。センターの怖さを知っているし。つまり、普通の迫り方をしているだけですよね。」
「ああ、運がよければという程度でアタックしているだけなんだ。本社以外からの個人では、青葉健二と大学時代の同級生なんだが、同級生は、酒井君が莫大な遺産を相続した事など知らないんだ。」
「という事は必然的に、青葉健二と・・」
「それだけでは確定できないが、可能性は極めて高い。それに、付き合ってる連中が、普通じゃないんだよ。」
「・・・・え？」
「みな、青葉の友人なんだが、よくない噂や危険な人物が多い。」
「なるほど。しかし、何故、他社の青葉が酒井さんを？」
「企業研修会で酒井君と一緒だったらしい。」
「なるほど。企業研修会は１ヶ月ありますから、青葉が、酒井さんの事を知る事も簡単ですね。」
「いや、酒井君は話していないというから偶然かもしれん。まぁ、随時、君には、青葉の情報は送るようにするよ。」
「解りました。では、次長、行ってきます。」
「んむ、酒井君のガードは、裕二が担当している。頼むぞ、亜美君っ。」
「はい。」

　亜美は、連絡用の小型端末機をバッグに入れると、さっそくＫＫＩ食品に出かける事にした。