それから3日後、合格発表の日。 智之は来ていない。受かるのは当然だった。 幸恵はTVカメラも混じる大きな集団の中にいる。 合格発表の掲示板が正門から少し離れた場所に定刻立てられた。 （0125、0125、・・・、0125、あ、あった。智之様とこれから3年間、一緒・・。） 智之の番号は3つ大きい数。当然のように0128はある。 幸恵は初めて教えられていた智之の家に向かった。 受験番号を確認する以上に心がざわめき始める。 智之の家はごく普通の2階建ての住宅。 地方公務員の父が智之のこれからの教育を考え、県庁所在地に建てたもので、その父親はこの県の地方に単身赴任している。 母親はパートに出ているらしく、土日のみが一家が揃う日で後のウェークディーは母親と2人暮らしらしい。 今日は智之、一人が自宅にいる。 （わたし、智之様に何を求められるかしら。全て受け入れよう。・・ずっと夢見ていた事。キスされるかしら。・・・もっと・・・。智之様の言う事にわたしが逆らうことなんかできやしない。・・全て喜んで・・・。） 智之の家に向かう中、携帯で母親に合格を知らせた時以外、幸恵の「処女」は、これから起こるであろうことを夢見がちに考えていた。 運命の玄関に着いた。自分の姿を確認する。 制服の幸恵はそのスタイルを含め美少女だった。 少しの自信がわく。 「エイ。」チャイムを掛け声と共に押した。 「ハイ、野中です。」 智之の声だ。 「あ、あの幸恵です。先に言います。智之様は当然ですが、私も受かりました。」 「そうか、おめでとう。じゃ、入ってくれ。2階に上がり、最初の右の部屋が私の部屋だ。」 「わ、わかりました。」 一人の美少年と一人の美少女がベッドに一緒に座っている。 「幸恵、改めておめでとう。」 「はい、智之様は当然のことですが、おめでとうございます。」 「うん、そうだね。2人が一緒に同じ高校に行ける事がよかったね。」 幸恵は智之が椅子に戻りながら言う言葉を聞いている。 椅子に座り、ベッドの幸恵を智之が評した。 「幸恵、綺麗になった。やっぱり「良い素材」だったな。」 「ありがとうございます。・・・」 ほんの数秒間の沈黙。 「幸恵、私は君に指一本触れなかったが、今、君に何を望んでいるかわかるか。」 幸恵は十分に賢い。 指一本触れなかったが前置きなら、答えは幸恵の全てが欲しいと言う事以外答えがない。 「わ、わたしをお望みですか。全て差し上げます。」 智之が少し笑った。 「そうだね。君は今日から私のものだ。それで良いのか。」 「ハ、ハイ。」 幸恵は答えると同時に制服のボタンに手をかけた。 長い時間の作用として差し出すべきものは、いくら15,16の娘にも理解できる。 幸恵は智之に手を、時間を、かけさせたくないと言う気持ちから、ダイレクトなアクションを起こした。 智之は椅子に両手を載せ、その上にアゴを置き、美少女の行動を見ている。 少年には、「女を抱いた」（或いは、それ以上も、以下も）経験はなかったが、その知性を反映させた冷静な光が瞳には浮かんでいた。 やがて、幸恵の身体の全てがその瞳に写る。 幸恵は、まっすぐに智之を見つめ、真っ白で美しい曲線をもった身体のどの部分も隠さない。 智之はじっくり幸恵を「鑑賞」していた。 そしてつぶやく様に告げた。 「下の毛は邪魔だな。バスルームで剃り落としてきなさい。」 「わかりました。智之様。」 知的な「主」の言葉は幸恵の行動にすぐ移され、丸裸で階段を下りていく。 幸恵には智之の好まないものは全て不要であり、まして自分自身にそれがあることはもう許すことなどできるはずがない。 バスルームは意外に広い造りとなっており、洗面所から持ってきた智之かその父親が使うであろうシェービングクリームと剃刀を手に幸恵は片ひざを付いた。 薄い恥毛はクリームの中に混じって、幸恵の剃刀の動きに合わせタイルの上に落ちていく。 幸恵の感情には何も変化が起きなかった。 （早くしなければ・・・。） それだけの考えのみ頭にあったが、全てを剃り上げ、シャワーで流した後、立ち上がってその部分に目をやる。 半熟の割れ目は幸恵の目に入らない。 手で剃り残しを確認する。 スベスベした地肌の感触のみだった。 バスタオルで水滴を拭い、すぐに2階に駆け上がる。 智之は何か日記のようなものに書き込んでいた。 美しい裸の娘は完全に無視される。 「智之様、全部剃り落としました。」 幸恵はドアの前に立ち言った。 その言葉に智之がやっと振り返る。 「あぁ、奇麗になった。こっちに来なさい。ただし、そこから這って来なさい。」 （はって、はってってどう言う意味かしら。お側に・・・。・・・あ、手をついて。） 4つ足の姿にも、幸恵には抵抗がない。 智之の側に行かなければ何も起こりようがなかった。 何も頭を過ぎらない本能と言うべき少女の行動は機敏である。 智之の座る椅子の下に幸恵が膝を付き、少年を見上げた。 その顎を智之の手は上を向けさせキスをした。二人とも初めてのこと。 少女の頭は更に空白となり思考が定まらない。 幸恵は智之の首に腕を回そうとした。 （もっと、もっと・・・。） その腕を智之が解き、再び床に付けさせる。 「幸恵、そのままでいろ。」 再び、鋭利な頭脳を持つ少年は机に身体を向け、ボールペンを走らせ始める。 その下で美しい少女は学校でもよく見る姿勢で書き物をする少年を見つめ続けていた。 ただし、少女が裸であること、そして、智之と二人でいることだけがいつもと違う。 そして、この少年は裸の美少女を目の前で、悠々と書き物をしている。 ここも普通とは少し違うのだろう。 智之は3ページほど新しい「日記帳」に書いただろうか。そして、その本を閉じた。 白紙のままの表紙にその書物のタイトルを付けようとしているようだ。 良いタイトルが浮かばない。 智之は幸恵をじっと見つめた。 「立ちなさい。」 幸恵は素直に立ち上がった。 智之の手は少女を自由にできる。 片手で柔らかい乳房を撫で、くびれたウエストに沿って指を走らせた。 「女」の柔らかさを実感する。 更にヴァギナに手を当てる。 幸恵は声は出さないが、その表情は手の行方で様々な表情となり、ヴァギナに智之の手が触れた時、両手で顔を隠した。 スリットに指を上下させながら智之が命じる。 「こっちを見ろ。」 幸恵は唇を噛み締め、智之を見つめる。 目が合って、数十秒。 智之が表紙にタイトルを載せた。・・・あなた色。 二人のストーリーはまさに新書の1ページ目を開くかの様に始まろうとしていた。 「幸恵、できたよ。これが君のこれからだ。君の人生は僕のものだ。そんな事を書いた。」 「君は十分僕にふさわしい。君も望んだ事だと思っているけど、君は「僕の色」に染まることができるよな。」 智之はいつもの一人称を「私」から「僕」に変えて、幾分の優しさを込め問いかける。 幸恵は裸で立ち尽くしたまま、智之、いや、支配者の言う事を聞いていた。 質問には答えが必要だった。 シチュエーションは漠然ではない。 16の美少女は既にその処女を投げ出している。 そして、支配される事を長い時間待っていた。 今の必然は恋焦がれた男に抱かれるだけのはずだが、その男は書き物をし、手に届く場所にある何とも引き換えようがない美しい女体に触れもせず、女に質問し回答を求める。 幸恵は質問の意味を考えた。 その意味は自分の心、身体以外、例えば、「人生」は「命」を指すのか。 幸恵は智之を勝ち取った。 2年間の想いは遂げられた。 二人にはこれからも一緒の時間が続く。 （答えなければ・・・。人生・・・差し上げます。） 「ハイ、幸恵は「あなた色」に染まります。一生・・・。」 また少しの時間が流れ、智之は幸恵の体を引き寄せた。 今度は少女の顔が男の上にある。 少女は口を、舌を吸い、2年間の想いのありったけを伝えるかの様に男の顔を舐め回し、時にセーブが効かず噛んだ。 智之は幸恵のするがままにまかせている。 幸恵は自宅への道を歩いていた。 結局抱かれないまま、一冊の本が新しい荷物となった。 「今日は君の家でも合格祝いだろう。もう帰りなさい。そして、寝る前のベッドでこれを開きなさい。」 幸恵の家は大騒ぎだった。 県内で最も優秀な高校に合格した娘に父親がフレックスで帰る前、高級な腕時計を買って待っていた。 日に日に痩せ細っていく娘の成績は不安定となり、高校どころではないと思い始めた両親は今日があることが信じられないほどである。 しかし、娘は何故か、少し浮かない顔だが、親の目から見ても少し小太りだった体は引き締まり、女性的丸みだけは失わない美しいプロポーション、そして、顔もあごの余分な肉が取れ、元々、可愛い顔だちだったものが、知的な美貌を漂わせる「女」の顔になっていた。 ようやく、幸恵は大騒ぎの両親から開放され風呂につかる。 無毛のヴァギナに手をやり、今日を振り返ってみた。 （今日、抱いて欲しかった。）それのみが少しの不満。 しかし、わずかな時間の後から始まる高校生活は智之と一緒である。 そして、ある意味、二人は特別な関係になったことに幸恵は鏡に微笑んでみせる。 そこには、少し大人びた自分がうつっていた。 （私、奇麗・・・かしら。智之様・・・とお似合い・・・？） 久しぶりにまじまじと鏡を見た幸恵は「美しさ」を確認できた。 美しい娘が鏡に呟く。 （あなた色に染まります。） パジャマで自分の部屋に戻る。 早く1ページ目を開きたい。 二人の秘密をもっと・・・。 早速ベッドに潜りこみ、本を手にする。 「あなた色」その表紙が眩しい。 5分も見ていただろうか。 表紙に幾つも問い掛けた。 （私をどんな色に染めて頂けるのですか・・・。いつも、お側においてくれるのですか・・・。私を一生愛して下さいますか・・・。） 最後の問いかけに何故か少し戸惑いを憶える。 （私は愛されるのかしら。いつも愛する立場。・・・それはそれで本望だけど・・・。） 1ページ目を開いてみる。 『すぐにコメントを書きなさい。思ったとおりに。』 「私が求めるもの」と2行目に書かれ、後は3つ、箇条書きで書かれている。 （お求めのもの・・・私はこれから、少しずつ本当に変わっていくのね。） 幸恵は呼吸が止まる思いで（１）を読み始めた。 （1）幸恵は私のためにいつも美しくあること。誤解をしない様に。「美しい」とは私のためだけだ。他の人間が君をどう思おうが、それはどうでも良い。 コメント： 空白になっている。コメントを書くためのシャープペンを机から持ってきた。 コメント：幸恵は智之様の色に染まります。それが智之様が美しいと思う事なら、それ以外、答えがありません。他の人の事は存じません。私は智之様のものです。 一気に書き終え、幸恵は自分の書いた内容を読み直した。 間違いはないがストレートな文ではない気がする。 次が読みたい。そのため、及第点とし、（2）を読む。 （2）幸恵は私の言う事に一切逆らわない。そう、受験を控えた前の減量にも耐えた。そして、やり遂げた。これからも。 コメント：一切逆らいません。どうぞ、何なりと申しつけ下さい。全て言う事を聞きます。 少し幼い気がする。でも、今度はストレートな文だ。幸恵は次に進む。 （3）幸恵は私の女であることを自覚するように。私が君を一生大切にする条件だ。 遠まわしだが智之が幸恵を「好き」だ、と言っている気がした。いや、そう言う意味だろう。 （私の想いは遂げられた。私は智之様に愛されてる。） 顔が熱る。一気に再び書く。 コメント：幸恵は智之様の女であることをいつも自覚します。私を大切に思ってくださるのですか。 後の文を消そうとする。でも、正直な気持ち。智之の口から聞きたい。 幸恵には消せなかった。 最後に書かれていた。 「次のページは開いてはいけない。1日1ページ。土曜の午後、私の部屋で一緒に読むことにしよう。今日が月曜日、5日分ある。ではお休み。」 「お休みなさいませ。」 幸恵は声にして言った。 卒業式まで学校は休みとなっていた。 それぞれの高校受験が終わるまでの2週間。 幸恵と智之の高校が実質最後の高校入試だが、「敗者復活戦」のような受験がまだ続く。 幸恵は明日学校へ報告に行くつもりだが、智之は行かないだろう。 土曜の夜が次に智之に会う時になる。 次の日の夜、同じ様に「あなた色」の2ページを幸恵が開いた。 （1）には、こう書かれてある。 「幸恵は私のためにいつも美しくあること。誤解をしない様に。「美しい」とは私のためだけだ。他の人間が君をどう思おうが、それはどうでも良い。」 昨日とまったく同じ文章だった。（2）も（3）も同じ。 しかし、幸恵は違う言葉を選ばなければいけない。コメントにはこう書いた。 「今日考えていました。智之様の望む美しさについて。それは「あなた色」です。」 その質問は木曜まで全て一緒。 幸恵の答えは少しずつ過激にと言えるか、積極的になって行く。 木曜日のコメントは全て書くとこうである。 （1）コメント：智之様のおっしゃる美しさが幸恵の美しさです。例えば、下の毛が不要と命ぜられればすぐに処理致しましたように、幸恵には何ら異存はありません。 （2）幸恵は智之様の言うなれば「奴隷」のようなものです。逆らう事など考えられません。 （3）（2）にも書きました。私を大切にして頂けるなら矛盾致しますが、智之様の奴隷女のように仕えます。 幸恵は女であることを智之に懸命にアピールする。 明後日、抱いてもらわなければいけない。 金曜日の夜の「あなた色」は、まったく違う内容だった。 「幸恵、最初と最後の文を読み比べてごらん。明日の午後、私が何も言わなくても、私の望む形で君の処女を私に与えなさい。君には少しずつわかったはずだ。お休み。」 コメント：畏まりました。下の毛は処理して参ります。どうぞ、ご存分に私を「あなた色」に染めて頂けますようにお願いします。 ペンを下ろし、幸恵は考える。 間違いなく彼女は処女だった。 当然、女でもある。明日想いが遂げられる。 （私が裸になってご挨拶して、え〜と、足を拡げて・・・キャー。こんなこと、智之様に嫌われる。そうだわ。智之様がジーンズでも身につけておられれば、私がお脱がししなければ。それとペニ・・ス（恥ずかしい。）を女性は口に含んで、愛撫するって・・・何処かにあったわ。お気に召すかしら。「美しい」のかしら。体中をその前にお舐めしようかしら。・・・お舐めしたい。・・・わからない。どうすれば良いの。） 幸恵は「少女」が「女」になる手順を自分で考えるまでになっている。 ゆっくりと「あなた色」に染められる自分には気づいてはいない。 幸恵は自らを「捧げもの」にする方法をいくつか考えている。 そして、そのいくつかの中のほとんどは彼女の知識にないものだった。 ごく当たり前のこと。 でも幸恵には納得できない。 智之の望む形が最善であり、それ以外の方法は最悪である。 いくつかの大半は幸恵には最善、最悪など判断できないでいた。 土曜の午前中、幸恵はベッドに寝転び考え続けている。 そんな事を「女」が考える事自体には今は不思議に思えない。 江戸時代の「大奥」では、白い薄い襦袢が風呂上りの清潔な身体にのせられ、「女の身体」は「男」に提供される。 「新鮮な果実」はその上で「捧げもの」になる。 そんな場面のいくつかが幸恵の頭を過ぎった。 しかし、智之が求めている事はそんな事ではないはずで、まして、抵抗せず横たわっている幸恵ではなく、自らがその方法を行う事だった。 それが「あなた色」のはずである。 はしたない、恥ずかしい、汚いもない。 智之のために「美しく」なければいけない。 幸恵自身が書いている。 「奴隷女のように仕えます。」 智之の望む「美しさ」は、知的な少年の思考の中で幸恵を確実にそう導いていく。 幸恵にはどうするか、ではなく、どうしなければいけないか、しかない。 それが智之が望む形だから。 いくつかの中の考えは次第に鮮明になってくる。 （美しい「花」が散る姿は、どうであろうと美しいのではないか。） 幸恵の脳裏に少しづつ、沈積される考え。 そうだとすれば、最も淫らに智之にすがる女に成る事が、「あなた色」ではないのか・・・。 やがて午後になり、ピンクのワンピースと薄手の上着、そして、手持ちでは一番大人っぽく、しかも清楚な下着を身につけ智之の待つ部屋に向かう。 今日は明日につながる高架橋でしかない。 明日は違った自分になったとしても、それはそれで一つの現象。 「処女」などの考えはもう幸恵にはない。 智之に「私」を与える日、時間。それが1時間、30分後・・・。 |
| 2012.3.17掲載 |
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