−３−

　授業を終えると、さえない成績しか残せなかった野球部の部室に寄った。
　受験勉強を理由に３年になってからは、まともな練習もしていない弘志は、後輩たちに軽く挨拶を済ませると帰宅した。
　白い大きな洋館も、弘志には淡いピンクに染まっている。
　みんな出掛けているのかシーンとした空気のフロアーを超えて自室に上がると、さっそく机に向かい苦手な英語の教科書を開いた。
　コンコン
「…はいっ」
　誰もいないと思っていた弘志は、背中をビクンとさせて振り返るとあわてて返事を返した。
「早かったのねぇ」
　顔を見せたのは玲子、手には泡立つコーラをのせたお盆を持っている。
「まぁ、もう勉強してるの…えらいわねぇ」
「帰ってからお茶もしてないでしょ…コーラでもどうぞ」
　ひとり捲くし立てるとコップを差し出してくる。
「誰もいないかと…」
「そう、今日はあたしが担当、昼からは講義もないし」
　机に広げた英語の教科書を、玲子はチラッと覗き込む。
「英語？」
「うん」
「英語ならまかしといて…得意なんだから」
　夕食までの時間で、玲子を先生に英語を済ませたが、弘志は昨夜のことをどう切り出そうかと考え続けていた。
「ねぇ、昨日この部屋に来た？」
「いいえ、来ないは…どうかしたの」
「寝てるあいだに誰か来たみたいなんだ」
「寝てるのに、どうして分かったのよ」
「…ドアの閉まる音で目覚めたから」
「そう、誰かしら？…あたしじゃないことは確かね」
（きっとそれ、おかあさんだわ）
　玲子は不思議がってはいるが、なぜか薄笑いを浮かべている。
「そんなことより、食事終わってからもするの？…勉強」
「うん、そのつもりだけど」
「それじゃ、８時からね」
　玲子は、夜の侵入者については曖昧なまま部屋をでてしまう。

「入るわよ」
　約束どおり８時になると玲子が弘志の部屋に押しかけてくる。
「よろ…」
　返事を返す弘志が振り返ると、そこには玲子だけでなく姉の静香も立っている。
　思わず声を詰まらせてしまう。
　シャンプーの淡い匂いがたちこめるだけでも弘志にはピンクの靄がかかる思いなのに、静香も玲子も大きな胸をこれ見よがしに揺らして牝の甘い香りを振り撒いてくる。
「勉強、そんなに慌ててないんでしょ」
　そういう玲子は男物と変わらぬネルのパジャマ姿、静香の方はどう呼べばいいのかも判らないような大きな一枚布を羽織っている。
「まあ、そうだけど」
　意図がわからず曖昧な返事の弘志。
「さっきの話だけど」
「ん？」
　夜の侵入者のこととは知りつつ弘志は気にしてない事のようにとぼけている。
「昨夜のことっ」
「うん」
「ドアの音しか聞いてないって言ったわよね」
「そうだよ」
「ほんと？」
「あぁ」
「変じゃない…それ」
　静香が口をだす。
「ドアの音だけで、部屋に入ったなんて……他にも何かあるんでしょ」
　美人姉妹が迫ってくるように問いただす。
「なんで？」
「ドア開けて覗いただけじゃないっどうしていえるのよ、何かないと…どうなのよ」
「うっ」
「正直に答えた方が良いわよ」
　二人して弘志に迫っている。
「…わかったよ、わかったから」
　弘志の決断に満足して丸テーブルを囲む椅子にそろって座る。
「さあ、こっちに座って、話なさい」
　静香は母親のような口調でいう。
「二人して、…そういうって事は、薫おばさんなんだね」
「…そのことは後よ、何があったか話なさいよ」
「うん、…」
　弘志は、昨夜の目覚めの衝撃を話し出す、着ていた服が脱がされていた事、パンツの乱れに赤い紅。
「まあ〜」
　紅の話になるとさすがに驚いたように姉妹は二人合わせて声をあげていた。
「じゃぁ、寝てる間にペロペロされちゃったのね」
「まっ、そういうこと」
「やっぱり、何かあると思ったわ」
「うふふ」
　姉妹は顔を見合わせてうなずいている。
「今日は、いいもの見せてあげるわ」
　静香が意を決したようにいう。
「そろそろ、いい時間よ」
　玲子も乗り気である。
「ついてきて、音出さないように静かにしてるのよ」
　姉妹はドアの操作も音を出さないように忍び足で移動する。
　行った先は、薫おばさんの部屋を越えて隣の部屋、静香がいくつかの小さなランプのスイッチを入れると、生暖かい空気を入れ替えるためか玲子が窓を開ける。
「さあ、ここよ念のため大きな声は出さないで」
　壁側には光が当たらないように奇妙な方向に光を調整した静香は、諭すようにいうと、姉妹は二人してベットに上がり、大きな額に納まった裸婦像の絵を壁から引き剥がす。
「あっ」
　弘志は自ら口に手をやると、股間をムズムズさせていた。
　うすうす予測はついていたとはいってもあまりに強烈なシーンが写っていた。
「あらっ、ちょっと遅かったみたいだわ」
「まあ、もう…」
　姉妹も予測を超えた展開に驚いた。
　そこには、高く重ねたクッションに頭を乗せて、薄いネグリシェをしっかりたくし上げると、恥ずかしげもなく大股びらきで股間をさらしたうえゆっくりした動きで異物が出し入れされている。
　そのうえ、薫は天に舞う恍惚の表情で淫婦そのものなのである。
「どお、気に入ったかしら」
　静香は大きく疼かせた弘志の股間にいきなり手を当てる。
「よせっ…」
　戸惑う弘志にかまわず撫ぜさすってくる。
「ここに一緒に住むんだからしっかり裸の付き合いをしてもらうわ…さあ、ベットに」
　弘志を中央にして姉妹ふたりが挟み込むように寝そべるとクッションを重ねて弘志の頭を上げさせる。
　真向かいにはガラス越しに写る薫が手を休ませることなく動かせて、出入りする異物は粘液でキラキラした輝きを見せている。
「これね…紅が付いてたの」
　玲子が弘志の股間をあらわにすると、いきり立った肉棒をきつく握り締めてくる。
　静香がベットの脇の装置を何やら操作する。
「さあ、これでどう」
　小さなイヤホンを弘志の耳に当ててくる。
「ステレオじゃなくてもいいでしょ、こんなの」
　画面の薫の上下する腰の動きに合わせるように「あっ…、うっ…」と淫らな喘ぎが聞こえている。
「いいのか、こんなこと」
　股間をヒクつかせながら問う弘志に玲子は、いよいよ唇を寄せてくる。
「うっ」
「べつにっ、悪いことじゃないわ…キスしたことあるの？」
　弘志のパジャマを剥ぎ取った静香が自らの大きな布も投げ出すと、大きな胸の硬くなった乳首を弘志の胸に重ねると唇を寄せてくる。
　両手に花、そのうえに視界には、股間に異物まで含ませて身悶える牝。
　純粋培養されてきた弘志には、強烈過ぎる刺激だった。
「だめっ、だめだ…うっ」
　弘志は玲子の口腔にぶちまけてしまう。
　ビクッと身体をおののかせた玲子は、それでも口を離さずにいる。
「まあ、もう出しちゃったの」
　目の前の静香。
「若いから、まだまだ大丈夫よ…ね」
　ゴクンと喉をならした玲子。
「そうだけど、もう少し我慢すること覚えてもらわないと…」
（こっちは、楽しめないは）
「まだまだ、これからじゃない…お姉さん」
　弘志のなえかけた肉棒に、手をこまねいた玲子は交代を促した。
　姉妹が上下の場所を入れ替わり静香が弘志の股間に手をやると、肉棒の根元を痛いほどしっかり挟み込み、結び目に舌を転がせて咥えこむと唇で張出したエラを往復させてくる。
「くぅ〜」
　意味不明の呻き声を上げる弘志は、たちまち肉棒を復活させている。
「ほら、やっぱり大丈夫じゃない」
　玲子は自慢げにいう。
　姉妹の行動に弘志は言葉もなく翻弄され、湧き上がる強烈な快感のなか初体験に驚いている。
「私が先にいただくわ」
　すすっと身体を起こすと咥えていた肉棒を持ち替えて片膝立ちのお知りを下げていく。
　いまにも童貞が失われるというのに弘志の視線は、激しさを増した薫の上下に動く腰と前後する手に釘付けで、静香の声すら聞いていない。
「うっ」
　熱く柔らかいものに包まれた感覚に、放出感を必死の思いで耐えた弘志は、やっと静香の行為に気づいていた。
　予想を遥かに超えた激しい動きをみせる静香の腰は、それも予想を外して前後に蠢いている。
「うっ」
（出し入れするんじゃないのか…何かが当たる）
　弘志は強烈な快感に我を忘れていく。
「（あっ…気持ちいい…イくぅ〜〜）」
「僕もぉ〜」
　弘志もイヤホンからの声に合わせてイきはてる。
「もお〜、いやだぁ〜……おかあさんに合わせてイっちゃったわ」
　静香はスネてみせる。
「まだまだ、大丈夫よ」
　とりあわない玲子。
「まあ、ほんと…今度は上になってぇ」
　弘志は画面に背を向けて、静香にいどんでいく。
「ほら、ここよ」
　静香に案内されて、やっと挿入をはたした。
　恐る恐る腰を振る弘志は、一突きごとに反応する静香のようすに異様な征服感を味わった。
「あっ、イきそう」
　叫んだのは弘志。
「だめ、まだだめよ…早すぎるわ、ほら、動いて」
　静香はせっついていくる。
「だめだ」
「いいわ…少し休みましょ、このまま」
　そんなやりとりを何度か繰返しても、弘志は静香を征服しきることはできなかった。
「あ、イくぅ」
　猿の交尾のように腰を振りイきはてる弘志。
「あら、あたしも楽しみたかったのに」
　ひとり取り残された玲子は、ひにくいっぱいにいう。
「また、今度があるさ」
「まぁ、いつの事かしら」
　征服感を思い出して強気の弘志しに、冷たい静香。

　画面はすでに眠っているのか、薫は布団に潜り込んでしまっている。

つづく