| 最終章：結婚式 年末年始の長期休暇で帰省している進は律子の奴隷としての心体の成長をクリスマス・イブの夜、満喫し、25日の朝、家に帰らせた。 それは律子の両親に会う日程を、調整させるためと、クリスマスの夜、進の中学の同窓会が開かれる予定だったためである。 26日、律子は月曜でまだ仕事がある。 彼女の仕事納めは28日、そして、仕事始めは1月5日火曜日。 進は9日の日曜までが休日となっており、既に8日の朝の東京便を予約してある。 26、27日は夜に会うことで、28日は休めと言ったが、逆に律子から、「ご主人様、この日は皆さんお昼から、お酒を飲む納会となりますが、結構、私どもは忙しいのです。この日休むと事務所の方にもご迷惑をおかけしてしまいます。」 （そんなものか。） 民間の会社に勤めている進は確かに納会では3時頃から、少しの酒を飲む時間があるが、そんなものは、今は慣習として残っているだけで、仕事が一段落ついた人間は家に帰り、まだ、仕事が残っている人間は一口、酒で口を湿らせ業務に戻る。 女達は終業時間までいるが、この日に残業は求められない。 まぁ、律子の仕事の内容を考えればわからなくもない。 そのため、取りあえず、28日の夜から30日までの外出の許可を両親に取っておくように言いつけ、その理由は律子にまかせた。 25日の夜、中学の同窓会に出るため、会場貸切りのスナックに夜6時に向かう。 進の中学は3年間クラス変えがなかった。 中学のクラスメートと言える連中30人の内、女性が6人、男性が10人出る予定だ。 進の中学は公立で、この県では私立の方に中学、高校とも学力優秀な生徒が集まる。 ちなみに大学、短大まで行ったクラスメートは、男は進の他1名、女は3人しかいない。 その内の3人は進と同じ公立高校で、その高校は県内公立では1番進学率の高い高校だった。 男のクラスメートは高校を出た後、家業を継ぐものがほとんどで、女の場合は高校卒業後、専門学校に行くか、地元の企業に勤めに入り、相手ができると、さっさと嫁に行く。 今日集まる16人中12名が既に家庭持ちである。 進を除く、3人の独身者の中で、ただ一人の女性、宮元 久美が出席することが、わかったため、急遽、この同窓会に出ることにしたようなものであった。 彼女も進と同じ高校だが、文系、理系の違いがあったため、高校では、2,3度、話をした憶えしかない。 進は中学の3年間、久美の可憐な美貌に恋をしていた。 それはクラスの男子生徒全員と言ってもいい。 久美は高校を卒業した後、地元の短大に進み、K県のただ1つの1部上場企業と言える銀行に就職した。 その後、結婚の話も聞かなかったが、やはり、独身でいるらしい。 スナックに大体の数が集まった午後6時半、クリスマス・パーティー兼同窓会が、幹事（家具屋）の演説めいたものから始まる。 「さあ、A中学D組X年卒業のご同窓の皆さん、今宵はクリスマスそして若かりしあの頃、（今だって、若いぞ。・・・そうよ、失礼しちゃうわね。・・やじが入る。）・・・失礼、・・・だから、変なやじいれるなよ。何を言うか憶えてきたのを、忘れちまったよ。」（大きな笑い声） 「まあ、取りあえず、恩師のS先生はご存知のとおり、2年前、他界され、この場にいらっしゃらないことは非常に残念ですが、今宵は先生の素晴らしかったお人柄について、思い出す場とし、先生のご供養のためにも、我々の輝いていた青春時代を語り、そして、飲み明かしましょう。」 （なんか、変なスピーチだな。・・・クスクス。） 「うるさいよ、もう、さあ、一応自己紹介と現状の報告、僕から初めて、右回りに1人ずつ3分間でよろしく。」 進はほとんどの顔を10年以上見ていなかったため、名前から中学の友人を思い出していく。 男の顔はほとんどイメージが、中三時代のもの一致したが、体型が一回り大きくなったものが多い。 女のほうは、所帯やつれをしたものもあれば、あれ、この女、こんなに美人だったっけ、いうのもある。 ちょうど、進が自己紹介を終えたとき、久美が入ってきて、空いている進の隣に腰掛けた。 （よっ、久美ちゃん、我らがアイドル、待っていたよ。） おどけたやじがまた入った。 幹事の家具屋が「宮元さん、ちょうど、自己紹介の番。」 全ての人間の自己紹介が終わり、幹事の音頭で一同が乾杯をした後、場が崩れだし、懐かしい顔と話をしようとそれぞれが動き始めた。 進は隣に座り、席を立たない久美に話しかけた。 「久しぶり、憶えている。」 「憶えているわよ。今川 進君。」 進と久美はブランデーの水割りを飲みながら話し始める。 「へ〜、光栄だね、アイドルに憶えられているなんて。」 「進君、嫌味〜、28歳の女性つかまえて。」 進は久美を観察する。 （そうだな。身長は律子ぐらいか。もっと、背が高く思えたが、私のほうが少し伸びたのかな。体つきはイメージどおり華奢だ。だけど、胸と尻には、女らしい脂がのっている。顔は相変わらず、綺麗だけど、疲れているのか。目も腫れぼったいし、昨日の帰りの律子みたいだ。妙な色気があるな。） 「進君、いやよ。じろじろ見て。」 「いや、変わらないと思ってねぇ。」 「な〜に、言っているの。顔におばさんになったって書いてあるわよ。」 「そんなことはない。色っぽくなったと思ってね。」 「いやだ〜、やっぱり、そんな目で見ていたのね。でも、私もあなたを見て、男らしくなったと思ったけどね。特に目の光がある人に似ているわ。」 「ある人？」 「そ〜う、私の大切な方。」 （お〜い、進、アイドルを一人占めか。その了見はよくないぞ。あそこで、熱い目でお前を見ている主婦達とでも旧交を暖めなさい。） 進は苦笑いを浮かべ、「じゃ、また、後で。」と、久美に軽く言い腰を上げた。 久美も久しい人に挨拶するため、席を立つ。 1時間後、酒も入り、場が騒々しくなってきた。 進はそういう状況が苦手で1人ボックスに座って、水割りを舐めている。 久美がかなり酔って、進の隣にまた座った。 「進さん、こんなとこで、な〜にしてんの。」 進の呼び方が進さんに変わった。 「うん、君のような人について考えていた。私も君に良く似た人を知っているんだ。瞳の色がね。」 久美は進の目を見て、少し怯えた顔になった。 「終わったら、2人で飲み直すかい。」 「・・・はい。」 久美がか細い声だがはっきりと答える。 （やはり、律子と似ているな。でも、律子は私以外に誘われて、ついて行くのだろうか。律子は行かない。自信がある。律子と久美には「同じ部分」と根本で違う部分があるみたいだ。） 「じゃ、Wホテルの前で、1時間後。」 「わかりました。」久美が進を見つめて言った。 「おい、幹事さん、幹事さん。昨日の飛行機で帰ってきたんだ。疲れた。悪いけど、ちょっとお先に。」 「進、2次会の準備もあるんだぞ。もう少し、付き合え。」 もうかなり酔っている幹事が大声で答える。 「悪い、これ以上、飲んじゃうとどこで寝てもおかしくない。今日は勘弁だ。」 会費を渡し、喧騒のスナックから冷たい風が吹く、クリスマスの夜の街に出た。 そこから歩いて、5,6分の場所に進の高校が建っている。 そこへ足を向けた。 （懐かしいなぁ。私はここで何もしていなかった。窓の外ばかり見て考え事をしていたのか。しかし、その内容すら憶えてはいない。3年間通った事だけは確かだが・・・。） 隣には律子が通った私立の女子高が建っている。 ぶらぶらしながら時間を潰す。 約束の1時間後、Wホテルの前に行くと、律子と同じように進を絶対待たせない女が立っていた。 |
| 2011.7.27掲載 |
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