ある時、マイクとハイディーが血相を変えて家にやって来た。
　ドーラの考えている事が全く分からなくなってしまった。と云うのだ。
　この頃始まった小学校の英語教育の一環で、ハイディーも非常勤英語教師になっていたから、ダーラとツェレイヅァは、わたしの処に入り浸りだった。
　ダーラは１５歳。思春期に入り、反抗期を迎えていた。
　・この時期の女の子は扱い難い。

　長男のジョシュアの反抗期は、マイクの必死のコミニュケーションとキャッチボールやバスケットボールなど、スポーツに打ち込ませて、簡単に乗り越えられた。
　その後、ジョシュアはアイデンティティーを確立したいと云って、アメリカの大学を出て、そのままアメリカで就職してしまった。

　しかし、ダーラの反抗期時となると、女の子であるだけにマイクやハイディーの思惑とは違った路線を歩いて行ってしまった。大人しいレディーに育てたかった様だが、なんと、マイクが辞めてしまった旅客機の機長を目指していた。
　その為、ダーラは運動にも気を遣っていたし、理数系、地理、社会学などに打ち込み、およそ思春期の女の子には似つかわしく無い行動をとった。
　そんな目標こそ出来たものゝ、中学生最後の歳に二つ下のツェレイヅァも中学生、さらに５歳年下の小学生のジョアンナに手が掛かって、ダーラにまでハイディーの手が回らなくなり、ハイディーが二言目には、『ヨッシーォ（わたし）やドゥリー（わたしの女房）に聞いてご覧なさい！』と遣ったのが、ダーラの両親への反抗心の火に油を注いでいたらしい？
　ダーラにしてみれば、両親の愛情や後押しが欲しいのに、幾ら仲良くしているとは云っても、他家の、おじさんやおばさんを引き合いに出されるのは、納得がいかない事だったろう！・？・・・事ある毎にハイディーに反発した。
　しかし、寮生活の航空大学へ入ってしまうと、他人だらけの中では、親への反抗心を出す訳には行かず、如何にデリケートな女心の反抗とは云っても、自然に消滅していった・。

　洋の東西関係無く、思春期頃の娘達の考えている事は、大人には、特に親には期待があるだけに、その真意が分かり難い。
　ジョシュアと共にダーラも手を放れてしまって、寂しくなったマイクは大学の講師を引き受け、迎えられていた。
　こうなると、家庭を守るのはハイディー一人背負い込んでいました。

　ツェレイヅァの反抗は、キッチッとダーラの２年後に始まった。
　高校受験の大事な時期だった。
　幾ら仲良くしている友人、隣人がいると云っても、周りの知り合いは殆どが日本人だった。
　その中では仲良くしていても、子供達はストレートに云うし、眼の色、肌の色からハッキリ違うから『自分は日本人とは違う！』と、意識せざるを得なかった筈だ？
　『外国人』・。
　その意識は、ツェレイヅァの心から消える事は無かったし、町の人達の眼からも、そのフィルターを外される事は無かった・。

　その所為か？・フィールズ家の人々も『外国人』を常に意識していた。
　この事は、フィールズ家の後見人として、陰日向無く尽くして来たのに・・・。と多少の寂しさをも感じざるを得ない処があった。

　ジョシュア、ダーラ、ツェレイヅァ、ジョアンナの子供達を、実の娘達の幼少時と重ねて見ていたわたしは、複雑な気持ちを抱いていた。
　その実の娘達も小さな孫を抱いてくるようになっていたし、フィールズ家とは親戚以上の付き合いをしていた積もりだった。

　あの教会に来る、他の外国人達とも仲良くやっていたし、後見人を引き受ける事も少なくなかった。
　しかし、「郷に入りては・・・。」なんてことわざは、多くの外国人には通用しない。
　知り合ったら直ぐに「ト・モ・ダ・チ・！」と云い出して『トモダチだからあれをしてくれ！』『コッチもしてくれ！』と。図々しく頼み事だけを羅列するインド人達。
　・・・迂闊に、『家族ぐるみで付き合いたい。』なんて云ったら、わざわざフィリピンから大家族の全てを呼び寄せて、『旅費は招待でしょ！』と云い放つ、恐ろしいフィリピン人達・！
　言葉で表現することが全て！・自分の希望を第一とする考え方が常識で、ニュアンスや周囲の状況を勘案する日本人の感覚とは、大きな常識の違いが見えていた・。

　わたしの常識の殆どは、破壊されていった・。
　世界に通用するわたしの常識とは・・・？
　人種、国籍が違うと、恐ろしくも、こちらの常識とは懸け離れていることもある。
　云う言葉、使う単語には細心の注意が必要だった。
　
　それでも、フィールズ家はわたしに取っても特別だった。
　・出会って直ぐに子供達が屈託無く接してくれたことで、わたしは、結婚してもナカナカ孫の顔を見せてくれない実の娘達以上に、フィールズの子供達を可愛らしく感じてしまった。
　・・・ただの甘いおじいちゃんに・。


　始めて会ってから１１年の年月が過ぎ、子供達の話す日本語は全く日本人と変わらなくなった。・英語より日本語の方が使う頻度が高いから、納得はするものゝ、英語に日本語訛が出来てしまったような気がして、アメリカに帰ってから苦労するだろうと思っていた。

　いつもの様に家にやって来たマイクが、血相を変えていた！
　昂奮が冷めず、私達と接する事で落ち着こうとしているのがハッキリと分かった。
　一瞬でマイクの状況が普通でないと察したわたしは聞いた。
”What mater Mike？！！”
”We lost a daughter！”
”What mater！・Whom？！”マイクの処には３人の娘がいる・ドーラの飛行機事故が頭をよぎった。・そうなのか？！
”・・・Teratha！”
　ツェレイヅァを失ったと云う・！？
”By traffic accident？”
”No！guy ・・・Japanese guy！”
　日本の男が何を？・・・・男！・そうか！・おとこかぁ！・ツェレイヅァがバージンを捨てたのかぁ！・まだ子供だと思っていたのになぁ・・・。

　父親ってのは、娘の事となると、直ぐに取り乱してしまうモノなんだなぁ！
　自分がティーンエイジャーだった頃を思せ！・・・だよ・。
”Don't angry Mike．She is very popular，isn't she？・Remember your age！”
”・・・But she is my ・・・・・・・！・My・・・．”

　マイクの気持ちは分かる。・・・どんな男が相手なんだろう？・頭の良い子だから、変な男じゃないだろうなぁ・。
　どうやってマイクをなだめようか・？
「マイク！・君はハンサムだし、若い頃は持てただろう？・幾つで女性を経験した？」
「１６歳だったよ・。」
「なぁんだぁ！・・・それなら、オロオロするなよ！」
「男と女は違うだろぅ！」
「ォィオイ、それじゃぁ差別だよ！・男だって女だって、Ｓｅｘに興味を持つのは同じさ。・むしろ女の方が早い内に多くを知っているものだろ？・もっと若い時だってショウがなかったよ。」
「・・・！」
「・・・それよりどんな男かを確かめなよ！・あれだけ頭の良いツェレイヅァが相手にしても良いと思ったなら、変な男の筈はないだろう？」
「悪くはない・・・。だけどまだ、ハイスクールも出ていないんだぞ！・まだまだ親のスネ囓りなんだ！」
「マイク！・いま云ったじゃないか。君も１６の時だって！・君は一人前の仕事なんて出来ていたかい？」
「親が、マイクが『悪くない』と思える男なら、許して遣りなよ。・今の君は、親のエゴの塊だよ！」
「だけどあの時、私は真剣に愛していた！」
「ツェレイヅァは真剣じゃぁ無いのかい？・そんなの親に分かるのかい？」
「・・・・。」
　ア〜ァ、親ってのはみんなこんなモンだ。・自分の事は全部棚の上に上げちゃって・。
「真剣なのか、聞いてみたかぃ？」
「『一応、愛している。』なんて答えるんだよぉ。」
「オロオロするなよ。・自然に時は流れて行くもんだ・。君は娘を失ってなんていない！レディーを手に入れたのさ！・・・そう云えば、ダーラは？」
「ダーラは・、分からない・・・。」
「オィオィ！・ダーラの方が奔放だろう？二つ上だし・。航空大学じゃぁ、周りは男だけだぞ・！」
「！！・、聞いてみた方が良いかな・？」
「落ち着いて聞けば教えてくれるだろうなぁ？・今みたいにオロオロする様だと、正直には云い難くなるよ！」
「・・・ァア、ダーラかぁ！」マイクの憔悴は見ている方が気の毒になった。
　節操、貞節は軽々しく捨てるべきモノではないが、人間も生き物である以上、自然の本能からの呼び声に無視ばっかりは出来ないんだ。
　理性だけで立ち向かうのだけど、幼い理性が何処までもは立ち向かえない事は、マイク自身が経験して来ている事だ。

「落ち着いて聞かなければ駄目だよ。・ハイディーに手でも握ってて貰えよ。」
「なんでハイディーが出て来るんだよ！・関係無いだろう？」
「大いに関係あるね！・・・マイクの最愛の人だろう？信頼もしている。その人に傍に居て貰っても落ち着けなかったら、君の愛は偽物だよ。」
　これはわたしの策略だった・。・・・例え親の立場を貫こうと思っても、愛を意識して愛を探ることを誹謗は出来ないだろう・。と、思った。
　
　
　その日は納品日なのに仕上げが終わらないで、いつまでもパソコンと格闘を続けていた。
　メモリーが足りないのか？ファイルを大きくし過ぎてしまったのか？・極端にスピードが落ちてしまって、パソの計算を待つばかりで思う様には先に進めなかった。
　そんな時に限って、良くフリーズもする・。
　また保存したところからのやり直し・・・！
　わたしは既にイライラが募って、一触即発の危機的状況にいた。
　そんな時に、ツェレイヅァが事務所に入ってきた。
「ハァ〜ィ！」だって！
　一応返事はしたが、パソにイライラして振り向きもしなかった・。

「パパに、巧いこと云ってくれたんだって・？」
「・・・ツェレイヅァが酷く起こられない様にさ。『歴史は繰り返す』だよ。」
「・・・忙しい？」
　背中で聞いても、振り返る余裕はなかった。
「ウン！・チョット待ってて・。締め日に原稿が出来上がっていないんだ！」
「アシスタントの人達は？」
「もう帰ったよ・。」Ｂ倍の写真原稿を仕上げるのに必死だった・。
「・・・・。」ツェレイヅァは黙った・。
　勝手知ったわたしの事務所だ。
　ツェレイヅァは自分のカップを取り出して来て、冷蔵庫をのジュースを注いで呑んだ。
　そして、ベッドソファーを平らにして横たわった・・・。
　ツェレイヅァの動きは気配で分かっていた。
　しかし、１時間・２時間・、２人共声を交わす事も無かった・。
　やっと原稿が仕上がって、２ギガを越える大容量を圧縮、メールで発信すると、わたしはツェレイヅァが来ていたことも忘れてキーボードに突っ伏した・。

　・と、・・・？
　衣擦れの微かな音・？
　夢の中だと思った。
　・リズ・ヴィシュアウスがブランケットを掛けてくれている。
　彼女の眼の周りは真っ暗！・・・だが、チャンと消化されたメイクだ。
　濃いシャドーの中にも、自然なグラデーションが為されている。
　血を啜った後の様な真っ赤な唇・。
　青緑の明るい瞳に見詰められると、その眼が限りなく拡がって、宇宙の様になり、わたしを吸い込んでいく様な気がする・。
　あの悪女メイクがわたしには溜まらない。・へそ曲がりだから、何でも云う通りに丈する女は気に食わなかった。女は男のアクセサリーじゃぁないし、アクセサリーとしても、その手は流行らなくなっている。
　女としての自我を持って、男を振り回すような小悪魔、小魔女。そんなイメージがリズ・ヴィシュアウスにはあった・。
　ヴィジュアル的にも素晴らしいと思っていた。
　熟女好みのわたしだが、危うくネットの年端も行かない彼女にのめり込みそうだッた。

　シュ〜・シュッシュッシュ〜〜・・・・・
　また衣擦れの音・？
　デスク周りしか電気を点けてない事務所。デスクを離れた処にまでは灯りが届かない。
　チョット居眠りだったのか、グッスリ寝てしまったのかが分からない・。
　表が暗いと思ったら、9時を回っていた。
　今の衣擦れの音は？・・・夢の中から聞こえているにしては、実感が強かった・。
　・・・んっ・！・・・ツェレイヅァ！
　頭を上げると夢うつつのまま振り返った・。

　薄暗く、光の届かない事務所の隅・。
　ハッキリは見えない一隅にボウッと白い柱・？
　その下にかろうじて床に届いた光の中に、何か布のような・？黒っぽい塊？
　白く光沢がある布が、アシスタントの机に載っていた・！

　人間のような姿が見えてきた。
　！・・・総身に一糸まとわぬ、白く浮かび上がる女体があった・！
「・な・、何をしているんだっ！」呆気にとられた。呆気にはとられたが椅子ごと、女好きのわたしは後ろに向き直っていた。
「・・・・・。」裸の女体は黙りこくったままだった。
「何なんだっ！」驚いたのと、裸の女体への昂まり！・・・頭の中が混乱し、声が震えていた。
「・・・ン・。」聞き覚えのある吐息・？
　眼がハッキリして来ると、スレンダーな裸身が白く浮かび上がって来る・。
　明るいブロンドの髪、ミドルティーンのまだ育ちきらないバスト、ボディーシェープまで見え出して来た！

　ツェレイヅァだった！
　暗闇の隅から一歩ずつ近付いて来るに従い、全てがハッキリして来る。
　あの憧れに近くなった、リズ・ヴィシュアウスのヌードに勝るとも劣らないスレンダーなプロポーション！・白人特有のキュッと締まったウェスト、そこからヒップへと流れる曲線は扇情的という言葉がピッタリだ。その上、日本食を主にしたハイディーの成せる技か？白人にはあり得ないと思っていた、肌の柔軟性が見せる滑らかさ・。
　こんなにスムースな肌は白人には珍しい！
「・・・！」アァ、なんて事だ！
　わたしは言葉を失っていた・・・。
　明るい青味の掛かった緑の、底の無い、奥深い瞳がリズ・ヴィシュアウスと重ならせた・。
　眼の白さを強調する黒く囲ったアイメイク・・・血を啜ったかの様に赤い唇・・・。
　暗闇から浮き出して来る白く知的なプロポーション。
　リズ・ヴィシュアウス・？
　もう少し幼女っぽい。・？
「そのメイクは・？」リズよりも艶っぽく見えるメイクに不思議な感じがした。
「おじさんの好みが分からないと思っていた？」
　小魔女・！？
「おじさんの好みなんか、みんな承知しているわよ。」
　まさに小魔女！・・・それ以外の言葉が消えてしまった・。
　全身から力が抜けて行った！！！

「どうして？・・・・・」つぶやく様に、やっと絞り出した言葉だった。
「おじさんに抱いて欲しいの・。」
　ツェレイヅァの言葉は用意されていた、練習を重ねたことが分かる言い方だった。
「出来る訳ないだろっ！・・・わたしが・幾つだ・と、思っているんだっ！・年寄りをからかうなよ・。」頭に血が上って、云う事が途切れてしまった！
「わたし、・魅力ある？」
「充分だよっ！・・・充分魅力的だっ！」
「どんな風に？・きれい？・セクシー？・クール？」
「ツェレイヅァは全部持っているじゃないか！・beautifulだし、sexyだし、cool なのも知っているよ・。Charming little witch！」
「ウソッ！・そんなに魅力があったら、マッサーオもっとわたしを見ていてくれる筈よ！」
「見ていたさぁ！」
「ウソッ、わたしね・ぇ・、・マッサーォに誉められながら撮って貰っている、モデルさん達を羨ましく思っていたの・・・。」
「・・・羨ましく・・・？」

「・・・だってぇ・、わたしぃ・、マッサーォ、撮っている間中モデルさんしか見ていないでしょう？・・・もっと、わたしを見て欲しかったわ！・大好きだったんだもの！」
「云う事を聞いてくれるおじさんだからだろぅ？」女房持ちの老年とも思えるわたしに、『十代の娘が好き』なんて、考えろと云う方が無理だ！
「違うわっ！・・・だったら、こんな事までしない！」ジリッ、ジリッと、近付いて来るツェレイヅァが叫ぶように云った。・今にも泣き出しそうに切羽詰まった顔をしていました。
「わたしを見て欲しいのっ！・マッサーオに愛して欲しいのっ！」
「愛しているよ。・むかしから・・・。」
「違うッ！・・・トモダチの娘としてじゃなくて、女としてっ！」咽に支えた言葉を吐き出すように、一気に云った。
「・・・わたしとじゃ、無理だよ！・・・幾らなんでも、凄い歳の差だよ！・ツェレイヅァの恋人だなんて！・マイクになんて云えば良いんだっ！？」わたしには目尻を吊り上げて、こちらを睨み付けるマイクとハイディーの顔が容易に想像された。
「そんな事無いわっ！ 後２・３年経てばわたしだって大人よ！マイフェアレディーだって、おじさんと若い女の人だったわ！・ハイソサエティーのアスティアとグレースだって、・わたしとおじさん位は離れていたじゃない！」
「アスティアとグレースは、こんなに離れてなかったんじゃないかなぁ？」
「いいのっ！・わたしが好きなのっ！愛してるのっ！」
　もう、感極まった眼には涙が浮かんでいた・。
　それにしても参った！
　・・・娘の様に思っていたツェレイヅァの告白がわたしへとは！
　学校でも、あんなに人気者だったじゃないか。

「そんなに前から愛を知っていて、それ以外の男の子と、・・・したの？・マイクが心配してたじゃないか。」
「おじさん、・『バージンは嫌だ！』って云ってた・じゃない？・・・」
「わたしが！？・いつ？」
「・・・ほら・！・・・グラビアに使うって云ってた、ハイティーンの女の子達のヌードを撮ってた時よ・！」
「ハイティーンのヌード・グラビアなんて、いつでも撮ってるよ。」
「そうよね、随分見学したもの。・わたしがヨッシーォの写真を撮る処を見せて貰い始めた頃よ・。」
「小学校の時から来ているじゃないか！・そんな頃の言葉を覚えていたの？」まさか！
・あの頃は、助手達と、・・・普段なら口にしない様な事まで、云いたい事を云い合っていたっけ！・・・この子達は小さかったし、女の子の前で話す話しではないから、この子達がいる前では御法度だったはずだ！

「何も知らないバージンじゃ、全てに手が掛かるだけで嫌だ！って、云ってた事もあったじゃないっ！」恥ずかしそうに顔に赤味を増して、続けて云ってきた。
「・・・・・。」随分気を付けていた筈なのに、 ・・・あの軽口をツェレイヅァは聞いていたのか！？
　背筋を悪寒が走って行った！

「それであの時、バージンを捨てたのか？」
「バージンを捨てたのはあの時じゃないわ！・・・わたし・、とっくにバージンじゃないわよ！・もう、何人もの男の人としたわ。・・・もう１０人は経験しているのよ。」
「なんだって！・そんなっ、・・・なんて馬鹿な事を・・・・・。」
「わたしね、もっともっと沢山の経験をするわ。」
「馬鹿な事を言うなっ！・・・ウゥ・もっと自分を大切にしなさい。」
「凄く大切に思っているわ！・・・わたしは素敵な女性になりたいの。」
「素敵な女性って・？・・・もっと自分を大切にしなければなれないよ。」
「頭の悪い女は玩具にしかならない。・・・おじさん・前に云ってたわ。だから必死に勉強したの。」
「本当に良く勉強したんだね、・・・ハイスクールの先生達も『県下でも競争相手の無い、ダントツのトップだ！』って、驚く位だったんだもんね。」
「・・・。おじさん嬉しかった？」
「もちろんだよ！・自分の事より嬉しいに決まっているよ！」そうだ！・この一件で、一編にツェレイヅァの可愛さが増したのだった。

　ツェレイヅァの学業は、彼女の住んでいる町でも有名だった。
　兄弟姉妹と友人達と、遊んでいるのを見掛けられる度に、街のお母さん達が『アア云う、格好良くて、綺麗で、出来る娘と付き合いなさいよ！』と、息子達にハッパを掛けている。
　との、うわさ話はわたしの耳にも届いていた。
　ツェレイヅァは町中の眼を惹き付けてもいた。