４．再訪

　静子の部屋は出たが、俊一はなんとなくそこを去りがたい気分だった。
　とりあえず、時間をつぶして、広美よりも遅く帰ろうと思ったが、行くところがない。
　食事はした。
　一人で飲むほどお酒が好きなわけではない。
　といって誰かを誘う気にもならない。
　コーヒーは、けっこう飲んだのだが、仕方ない。
　俊一は、夕刊を買って、またコーヒーショップに入った。

　政治も経済も野球もサッカーも興味はない。
　風俗面を斜め読みする。
　目隠しをして縛られた女性の写真が目に入った。
　ＳＭクラブのなんとか嬢。
　顔を写さないための目隠しのようだ。
（目隠しか…いったいどんな気持ちなんだ？）
　静子が連れてきた男だから、どこの誰ともわからない相手というわけではないが、それでも、それを簡単に受け入れられるものなのか。
　また、同じ思いがこみ上げてくる。
（本当はセックスが好きなんだ、あの女は…。なのになぜ、俺としなかったんだ？）
　結局、そこに行き着く。
（ああ、くそ！むちゃくちゃにしてやりたい）
　俊一は、今すぐ家に帰って、広美を嬲りたい気分だったが、今となってはもう遅い。
　すでに彼女が先に家に帰っている。
“こんな時間までどこで何をしてた？”は、逆に俊一のほうだ。
　キレるきっかけがなくなった。

　店の子が、灰皿を取替えに来た。
　小さな灰皿に吸殻が山だ。
　俊一は、広美が帰ったかどうか、静子にメールを入れた。
　電話が返って来た。
「静子です」
「広美…帰った？」
「帰ったわよ。そうね、２０分くらい前かな。もうすぐ着くんじゃない？」
「いや。まだ外なんだ」
「そうなの？」
「ああ…」
「どうしたの？元気ないみたい」
「そうか？」
「ねぇ、もしかして後悔してる？」
「さぁ…よくわからない」
　弱気だ。
「どこにいるの？」
「駅前の喫茶店」
「まだ、ここにいるの？」
「ああ」
「ねぇ」
「ん？」
「来る？」
「行っていいか？」
「エレベーターに乗る前に連絡して」
「わかった」
　俊一は、また静子のマンションに向った。

　エレベーターホールで、“着いた”とだけメールを入れた。
　おそらく鍵を開けておいてくれるのだろう。
　俊一は、チャイムも鳴らさず、ドアノブを回した。
　開いている。
　俊一は、黙って、静かにドアを開けた。
　ドアを開けると、玄関に静子がいた。

　裸で…
　玄関に向って足を大きく開いて…
　仰向けに横たわっている。
　首輪に目隠しまでして…

　俊一は息を呑んでしばらく立ち尽くした。
（何でもお見通しか…）
　俊一は、ズボンのファスナーを降ろし、ペニスをつかみ出すと、静子の手を取ってそれを握らせる。
　静子は、ぎゅっとそれを握り、握ったまま上体を起こし、口に含んだ。
　静子の舌が、ねっとりと俊一の先端に絡みつく。
　静子も俊一もしゃべらない。

　俊一は、静子の首輪についた赤いロープを引いた。
　静子は、四つんばいで俊一の後をついていく。
　静子は、ソファに腰を下ろした俊一のベルトをはずし、ズボンとトランクスを脱がすと、俊一の前に肩膝を立てて座り、俊一の足を持って靴下を脱がした。
（静子…・・・）
　静子は、俊一の足の裏を自分の乳房に当て、乳首をこすりつける。
　右足…そして左足。
　そして今度はその足の指を口に含み、足の裏を舐め、かかとに軽く歯を当てる。
（派遣でソープにでも行ってたのか？）
　静子は、俊一の足を抱え、股の間に挟んで、足首から徐々に上へ上へと上がってくる。
　ようやく俊一のペニスに手が伸びた。
　それはすでにもう天井に向いている。
　静子は立ち上がり、腰を曲げ、天井を向いた俊一のものを上から飲み込んでいく。
　まっすぐ根元まで静子の口の中に納まった。
　もう、これ以上、じっとはしていられない。
　俊一は、立ち上がり、静子の背中を壁に押し付けると、両足を抱え上げて挿入した。
　壁に押し付けているので、そう重くはないだろうが、静子の足は浮いている。
　俊一に上下に揺られる。
「ああぁぁぁぁ」
　静子が声をあげた。
　宙に跳ね上げられて、落ちてきては突き刺さる。
　静子もこれは初めてだが、そう長く続けられるものでもない。
　俊一は、静子を前に抱えたまま、ベッドまで運んだ。

　両手を俊一の腰に回し、仰向けの静子のほうが腰を動かした。
　俊一がつくと、奥まで入ったところで、静子が腰を左右に振る。
　静子にきつく引き寄せられ、俊一は動けなくなった。
「ああ…いくわ、いく…俊一…俊一、俊一」
　静子が俊一の名前を呼び続ける。
　いい響きだ。
「ああ…いく…いくぅ」
　静子の両足に力が入り、ぎゅっと俊一を締め付けた。

５．誰だ？

　静子は、俊一を挟みつけたまま硬直したかのようにじっと固まったまま足の力を緩めない。
　俊一の首に腕を回して、ぎゅっと抱きついたままだ。
　静子の心臓の鼓動が、乳房越しに俊一の胸に伝わってくる。
　なんとか俊一は放出せずに留まった。
　まだ、足りない。
　もっともっと興奮したかった。

　俊一がむっくりと上体を起こすと、静子は腕を解いた。
「シャワー浴びるよ」
「どうぞ」
　俊一は、少し間をおきたかった。
　俊一がバスルームを出ても、静子は裸のままベッドに横たわったままだ。
　静子の並んで横になると、静子は体を起こした。
「ねぇ」
「うん？」
「目隠ししていい？」
「目隠し？僕に…？」
「ええ」
　静子がアイマスクを俊一にあてる。
　目隠しをすればどうなるのか興味はあった。
「いいけど…」
　静子が俊一に目隠しをする。
「腕を縛っていい？」
「縛るの？」
「どんな気分か、味わって」
「ああ」
　俊一は静子や広美がしたように腕を上に伸ばした。
　静子がその腕を軽く縛り、ベッドの脇にある金具に留めた。
（ふっ…なるほど…こんな感じか）
　腕が頭の上で固定されると、お腹から下が、ものすごく不安になる。
　見えないとなおさらだ。
　正直、いい気分ではない。

　きれいにしてあげると言ったとおり、静子が小さくなった俊一のものを口に含んだ。
　静子は、それを口の中、舌先でくるくるといいように扱う。
　くすぐったいような、そうでもないような…なんとも妙な気分だ。
　俊一は腰を引いて逃げるが、静子の口がそれを追いかけた。
「ちょっと、待っててね。わたしはシャワー浴びるから」
　そう言って、静子が離れる。
（放置か…）
　急にピアノの音がした。
“音楽でも聴いてて”ということなのだろう。

　なにもすることのない俊一は、ここに来る前に、広美に対して抱いた気持ちを整理しようと思ったが、ここに来たときとは、もう気分がまるで違っている。
（どうでもいいか…）
　正直言って、広美のことを考えるのが面倒になっていた。
　どのくらいの時間がたったのか、また、口の中にペニスを咥えられた。
　音楽のせいで足音が聞こえなかった。

　静子なのだろうが、俊一は、せっかく目隠しをしているので静子ではない別人だと思おうとした。
（誰がいいか…もしかして広美だったら？）
　自分がそうしたように、これがもし広美だったら？
　そんなことはありえないだろうが、それはそれでおもしろい想像だ。
　そんなことを想像したせいか、なにか口の中の感触が、静子とは違うような気がしないでもない。
（まぁ、ちっちゃいからな…）
　いつもなら、ぱんぱんに張り切った肉棒での感覚だが、今は、最小の状態だ。
　しかも、時間が経過して、さっき、静子に舐めてもらったときより鈍感なっている。
　感覚が違って当然だ。

　小さいままのペニスを丁寧に舌で転がす。
　少しは多きくなったが、勃起と呼ぶには程遠い。
　さっきは放出はしていないが、その寸前までいった。
　回復するには時間がかかる。
　今度は、何かでそれを擦りだした。
（何だ？…顔か？）
　顔で俊一のペニスを擦っている。
　初めての体験だが、なかなかいい感じだ。
　ペニスの付け根がきゅっと痛んだ。
（こりゃ、やりすぎ警告だな）
　俊一のペニスがいくぶん大きくなって擦りやすくなったのか、鼻のラインにあわせてぷっくりした頬をぎゅっと押し付けて擦る。
（できるかも…）
　まだふにゃふにゃしているが、確実に固さを増してきているのが自分でもわかった。

（えっ？）
　足音がした。
（誰だ？）
　動こうとする俊一の足がぎゅっと抱えられた。
　同時に、俊一の口に誰か女の口がかぶさる。
（女？だれだ？…広美？まさか…）
　キスしてきた女が耳元で囁いた。
「わたしよ」
　静子の声だ。
（じゃぁ、舐めてるのは誰？）
「びっくりした？お友達が来たのよ」
「誰？」
「内緒」
「まさか…」
「後で紹介するわ」
　そう言うと、静子は俊一の顔にまたがり、俊一の顔に股間を押し付けた。
　暖かくじゅわーっとした感触が俊一の顔の上を行き来する。
　顔を擦られ、顔で擦られる。
　俊一のものがむっくりっと立ち上がり始める。
　もう一回したい。
　俊一は切にそう願った。

　俊一の足を静子が両脇に抱えて、俊一のお尻を浮かす。
　顔に擦り付けていた女は、浮いた俊一のお尻の下に枕を差し入れて、俊一のお尻の穴を舐め始める。
　ペニスは、今度は静子の口の中だ。
　もう一回したいという俊一の願いはかないそうだ。
　静子の口の中で俊一のものは、どんどん膨らんでいった。

６．サプライズ

　静子が俊一にまたがった。
　騎乗位も悪くない。
　下から揺れる乳房を眺めるのは好きだが、今はそれを見ることはできない。
　両腕を伸ばし、乳房を揉むこともできない。
（縛られるってことは、何もするなということか…）
　快感にあえぐ女の表情を見るのも男の快感のひとつだ。
　ペニスからの直接的な快感などたかがしれている。
　目をふさがれては、楽しみは半減する。
　おまけに手を使えないのでは、さらに半減だ。
（こりゃ、男には向かないな）

　静子が俊一に覆いかぶさるように口を近づけ、俊一の舌を吸う。
　不意にベッドがぐっと沈んだ。
　誰かがベッドに乗った。
（誰だ？）
　静子が、さらに身体を前に倒し、俊一に密着させる。
　開いた俊一の足の間に誰かが入った。
「ああ・・あああ・・」
　静子のうめき声。
　同時に、俊一のペニスを裏側からなぞるように男のものが静子のアナルから侵入してきた。
（男か？）
　俊一は緊張した。
（うっ…しかし…）
　まさに初めての体験だ。
　ＡＶなどでは前後二穴に同時に挿入するのをよく見るが、実際に自分がそれを体験するとは思ってもみなかった
　予想に反して、それほど圧迫感が増したようには感じない。
　ただ、動きは完全に伝わってくる。
（顔で擦られた後は、ちんぽで擦られてる…）
　俊一は、少し緊張した。
　身動きが取れないので、外に出すということはまず無理だ。
　２度目なので、そうすぐにやってくるとは思えないが、後ろの男よりも先に放出するわけには行かない。
　ただ、興奮を無理に抑えようとすると、勃起が継続しないかもしれない。
　これでしぼんだら、もう今日はたたないような気がした。
（いかないように…なえないように…やっかいだな）
「俊一」
　静子の声だ
「目隠しはずすわね」
　男がいるはずだ。
　俊一は、また緊張した。
　静子が俊一の目隠しをはずすと、俊一は、後ろを見た。
　男ではない。
「お友達の千佳ちゃん」
「千佳です」
（女だったのか）
「彼女男なの」
　静子が意外なことを告げた。
「男…なのか？」
　千佳が静子から離れて俊一の横に並んだ。
　とても男とは思えない。
　声だって女だ。
　俊一はなんと言っていいのか言葉が出なかった。

　俊一の目の前で、千佳は静子に舌を絡ませた。
　顔を見ている限り、女同士のキスだ。
　なかなかエロティックな光景だ。
　静子が千佳の体の上にかぶさっていく。
　俊一は、静子から離れて、まじまじと千佳の股間を覗いた。
　まぎれもなく男のものがついている。
　勃起している千佳のものを握って静子はそれを自分の中に導く。
　俊一は挿入されているところを見るのは初めてだ。
　異様な興奮が襲ってきた。
　俊一は、静子が上になって舌をからませている二人の口の間に自分のペニスを割り込ませた。
　千佳の口と静子の口で肉棒がサンドイッチされた。

「はぁ・・あああ」
　静子の息が荒くなる。
「あああ・・・・・」
　俊一のペニスは、上下から舌で強く圧迫されているが、俊一はさらに静子の頭を押さえ、二人の口と密着させた。
　静子の唾液が容赦なく千佳の口の中に流れ込む。
　二人の女の口をこんなふうに使えるなんてそうあることではない。
　ここで出すと、さすがに今日はもうこれで終わりだ。
　静子の豊満なお尻を眺めながら、挿入している千佳のアナルに出すというのも捨てがたい魅力ではあったが、この状況は、それを上回っている。

　静子の口が大きく開いた。
　千佳が静子を跳ね上げるように突き刺している。
　静子の少し反った背中のラインと豊満なお尻のふくらみは、それを見ているだけでもそそられる。
　俊一は、さらに上下に重なった二人の乳房の間に手のひらを差し込み、上下の乳首の感触を楽しんだ。

「わぁぁあああぁあぁああ…」
　達してしまったのか静子、横を向いた。
　俊一は、それでもかまわずに静子の頬と千佳の口でペニスを挟んで擦る。
（ここで、出すぞ…）
　俊一は激しく腰を前後させるが、さすがに２回目だと、精子もずいぶんと奥のほうから運ばれてくるという感じだ。
　かれかけた泉の底深くから、やっと汲み上げて来た精液が、ようやく肉棒の根元までやってきた。
｢口に出すよ｣
　俊一はそう言って、止った。
　じわーっと奥から熱いものが上がってくる。
　それは、飛び出すことは無く、先端からにじみ出て静子の頬を伝って千佳の口の中に流れ落ちた。

「わたしもいくよ。いい？」
　千佳が静子に言う。
　とっくにいってしまった静子の返事はない。
「ああああ」
　千佳の体が固まった。
「ふーっ…ふーっ…」
　しばらくして荒かった静子の息がようやく落ち着き始めた。

　おもむろに静子が起き上がり千佳の顔をまたいだ。
　千佳は口を大きく開け、静子の股間から流れ出す自分の精液を口で受け止めた。