第５章

１．見られたい

（俊一は、どんな顔でわたしを見るんだろう？）
　広美は、家が近づくにつれて不安になってきた。
　小心な俊一が、わたしが他の男とするのをＯＫしたと聞いて平然としていられるはずがない。
　たとえ、自分で仕掛けたとしても普通にいられるはずがない。
　広美の脳裏に不機嫌さをおし殺して平静を装った俊一の顔が浮かんだ。

（でも、本当に俊一だったんだろうか？）
　それを確かめる方法はない。
　ちょっと重い気分で広美が帰ると俊一はまだ帰っていなかった。
（先に帰ったのに…）
　そうは思ったが、正直、広美は、俊一がいなくてほっとした。

“仕事で遅くなる”
　俊一からメールが入った。
（静子さん以外にも他に女がいるの？わたしが浮気したから、自分も…なのかしら？）
｢疲れた｣
　誰もいない部屋で、ぽつりと独り言を言った。
　激しく興奮すればそれだけ疲労も激しい。
　広美はいろいろ考えるのが面倒になっていた。

　俊一が帰ってきたときには、広美はもう寝ていた。
　いつもの寝顔だ。
　自分で仕組んだにもかかわらず、結局、嫉妬を抑え切れなかった自分。
　もし、あのまま帰っていたら、どうなっていたか。
　おそらく、こんな気分で平然と広美の寝顔を見ていられなかっただろう。
　俊一に広美を咎める気持ちはなくなっていた。
　いや、あったのかもしれないが、考える気にならなかった。
　さすがに俊一も疲れた。
　寝つきの悪い俊一だが、横になった瞬間に意識もベッドに吸い込まれてしまった。

　俊一が目覚めたときには、広美はもう出かけていた。
　料理教室だ。
　ずいぶん眠ったのだろうが、それでも、頭がボーっとしている。
　シャワーでも浴びようかと起き上がった瞬間に頭痛がした。
（やりすぎだよな）
　首筋がかちんかちんに固まっている。
　俊一は、シャワーを熱めにして首筋を自分でほぐした。
　肩もこっている。
　よほど上半身に力が入っていたんだろう。
　昨夜のことを思い返した。

　むくっとペニスが頭をもたげる。
　手が自然にペニスに伸びた。
　別にオナニーをする気はないが、昨夜の興奮を蘇らせるために、放出しない程度にペニスを刺激した。
　ペニスへの刺激が、興奮を高める。
　ペニスへの刺激そのものが快感というわけではない。
　男にとっては性的に興奮した状態が快感なのだ。
　直接的な刺激が快感を呼ぶ女とは違う。

　俊一は、バスルームを出てコーヒーを入れた。
　目を覚ますつもりだったが、また、眠くなった。
　１５分程度の睡眠が頭痛に効くことは経験上知っている。
　そのころには、コーヒーが効いて目を覚ましてくれるだろう。
　俊一は、バスタオルを身体にかけて目を閉じた。

　ずいぶん遠くで広美の声がしたような気がした。
「こんなところで寝ちゃって…」
　広美が目の前で俊一を覗き込んでいた。
「ああ…、おかえり」
　俊一は、すぐ近くの広美の顔を手で引き寄せてキスをし、そのままぐいとひっぱって、広美を自分の体の上に乗せた。
「だめよ。お友達が来てるの」
「はじめまして。料理教室でいっしょになった静子っていいます」
　俊一の視界の外で声がした。
　聞き慣れた静子の声だ。
（静子…来たのか、うちに？）

「いらっしゃい。すいません。こんな格好で…」
　俊一は、静子に顔だけ向けて挨拶した。
（もっと驚いて慌てるべきだったかな？）
「早く服を着て…」
　俊一は、下着だけの格好だ。
　俊一は、広美から離れ、ベッドルームに入った。

「いいわね。広美」
　静子の声が聞こえた。
「何が？」
「いつでもどこででもって、わたしそういうの大好き」
「静子さん、すけべ」
「でしょ。自分でもそう思うわ。昼間、明るいところでされるとすごく興奮するのよ」
　会話は、俊一に筒抜けだ。
　わざと聞かそうとしているのかもしれない。

「静子さんは…ご主人は？」
　俊一もその会話に加わる。
「いますよ」
「いつでもどこででもって、ご主人の話ですか？」
「あら、いやだ。聞こえちゃいました？」
（聞かしたくせに…）
「玄関とか外とか…」
（玄関って…それは僕でしょ）

「外で？」
　広美が驚いて聞き返す。
「ええ。公園とか駐車場の車の中とかうちの庭とか…」
「庭？」
　今度は俊一が聞き返す。
　俊一は、静子のマンションしか知らない。
「ええ。庭でときどき」
「ご近所から見えない？」
　広美が興味深そうに聞く。
「見えるかもしれないわ」
「見えるかもって…」
　平然と答える静子に広美は驚いて言葉がない。

「あっ、そうそう、明日、うちでランチパーティーするんですけど、よかったらいらっしゃいません？バーベキューするんです。その庭で…。」
　まるで野外セックスに招待されているような響きだ。
「静子さんに誘われたの。どう？明日」
　広美が、静子の話を引き継いだ。
　それが、静子の訪問の趣旨のようだ。
「バーベキュー…ですか？」
　俊一は、困惑した。
　静子の夫に会うのは、気がひけるが、それを口にするわけにはいかない。
　何しろ、広美の前では、静子とは初対面なのだ。
「僕らだけですか？」
「ううん。他にも何人か来ます。わたしのお友達とか、主人のところでバイトしている学生さんたちとか…」
「そうですか。…普通のバーベキューですよね？」
　まさかとは思ったが、俊一は念のためにそれとなく静子に訊いてみた。
「さぁ、どうかしら。いつでもどこででもっていう人だから、普通じゃないかもしれないけど…」
「そうなんですか？」
　静子が言うと、冗談とは思えない。
（もしかして野外で乱交？）

「ご主人もいつでもどこでもだって、広美から聞きました」
「僕が？」
「ベランダでするんでしょ？」
「静子さん、だめ」
　広美が慌てて制止するが、間に合わない。
「いえ、まぁ、そんなこともたまには…」
「うちの主人も誰かに見られてるかもしれないっていうのが好きみたいです」
「あなたが…じゃないんですか？」
「あら、いやだ。主人が…っていうことにしておいてください」
「そうですか。じゃぁ、まぁ、そういうことにしときましょうか」
「お宅は？ご主人の趣味？それとも広美さん？」
「わたしじゃないわ」
　広美が笑いながら割り込んだ。
「あら、そうだっけ？またして欲しいって言ってなかった？」
「静子さん。そんなこと…」
　広美がうつむいた。
（広美が、またして欲しいって…？嫌じゃないのか？）
「広美さんね。見られたいんですって」
　静子が、俊一の耳元で囁くが、それは広美にも聞こえている。
「だめよ、静子さん。言っちゃだめ」
「あなたに…ですか？」
「誰でもいいから、人に見られたいって」
「そんなこと言ってないわ」
「誰でもいいんなら、あなたでもいいわけだ」
「そうね。どうなの？広美さん。わたしでもいいの？」
「何言ってるのよ。ふたりで勝手に。わたし、そんなこと言ってないってば…」

　俊一が立ち上がった。
「やだ、嘘。静子さんが勝手に作った話よ」
　俊一は、広美の前に立ち、広美に口を寄せる。
　コトバとは裏はらに、広美は逃げずにあごを上げる。
　俊一は、広美をソファに倒した。
　広美はもう何も言わない。
（見られたいのか？そう言えばいいのに…）
　俊一は、広美の顔をじっと見つめたまま、広美のスカートに手を入れた。
　広美の足が開き、お尻が浮いた。
　俊一が太ももまで脱がせたショーツを静子が広美の足から抜いた。

２．借りていい？

　俊一は、半ば強引に広美を裸にした。
「だめよ。あなた、やめて…」
　広美が小声で抵抗するが、俊一はひるまない。
　静子が、“広美は人に見られたい”って言ったのだ。
　まったくの嘘ではないだろう。
　それに、ここでやめたら二度とできなくなる。
　白のフレアスカートだけを残し、上半身を裸にしたところで、俊一は、広美を立たせ、ぎゅっと抱きしめてキスをした。
　広美の背中の向こうで静子がじっと見ている。
　俊一は、舌をからませながら、広美のスカートをまくりあげていく。
　広美の息が荒くなった。

「スカート、しわになっちゃうわね」
　静子が、近寄って広美のスカートに手を掛けた。
「静子さんに脱がしてもらおうかな。いい？」
　俊一の言葉に、観念したのか広美は、うなずいた。
　静子が、広美のスカートを下ろす。
　俊一は、広美の股間に手を割り込ませ、指を入れた。
「はぁーっ」
　広美の吐息が俊一の耳元にかかる。
　熱い。
　本当に見られたかったようだ。
　俊一の指が２本、苦も無くすっと中に納まった。
　じゅぼっと音を立てて俊一が指で広美の中の熱いものを掻き出すようにする。
　広美は、少し腰を引いた。
　広美のひざが今にも崩れそうだ。
　座り込もうとする広美を俊一はもう一方の腕で支えた。
「広美、溢れてるぞ」
「あーっ、だめ、言わないで」
　静子が、広美の股間を覗きこむ。
「ほんと。すごく濡れてる。溢れそうよ」
「静子さん…」
　俊一は、広美の向きを変え、静子のほうを向かせた。
　背中から前に手を回して乳房をつかみ、もう一方の手は股間に伸ばした。

「広美、顔を上げて、目を開けて」
　広美は、うつむいて目をつむっているのだろう、静子に言われて、広美が顔を上げる。
「ああ、静子さん、見ないで…」
「見て、だろ」
　俊一が広美の耳元で囁く。
「恥ずかしい」
　俊一は、広美の手を自分の股間に導いた。
　広美は、ズボンの上から俊一のものをぎゅっと握り締める。
　静子が楽しそうに笑みを浮かべている。
　いつものあの笑顔だ。

「広美、ズボンを脱がして、舐めてくれ」
　俊一が、広美に今まで一度も言ったことのないようなことを言った。
　広美は、振り返ってひざまずき、俊一のベルトをはずし、ズボンとトランクスを下ろす。
　従順な広美に俊一は驚いた。
（こんななら、もっと前から…）
　俊一は、ソファに腰を下ろした。
　俊一のペニスは、すでにいきり立ってまっすぐ立ち上がっている。
　広美が、それを頬張った。
「お尻を上げて…」
　しゃがみこんでいた広美が、足を伸ばしお尻を上げてうしろに突き出す。
「静子さんが見てるよ。お尻を振って…」
　小さく広美のお尻が左右に揺れた。
　俊一は、広美の頭を両手で固定して、さらに広美に命じる。
「自分で開いて、よーっく見てもらえば…？」
　広美の手が後ろに伸び、お尻の肉をそれぞれの手で左右に広げる。
「広美のおま○こ、丸見えよ。お尻の穴も…ねぇ、触っていい？」
　静子は、俊一に聞いた。
「いいですよ。弄ってやってください」
　静子の指が、広美のアナルを押さえる。
「舐めてもいい？」
「どうぞ」
　静子が、広美の股間にぴったりと顔をつけた。
「あああぁぁぁーー。はぁーっ」
　広美の膝が震える。
　口も俊一のものを頬張ったままで動かない。

「ベッドに行きますけど…」
　俊一は、静子のそう言って、広美を抱き上げた。
　お姫様だっこなど、初めてだ。
　俊一は広美を仰向けで寝かせると、すぐに足を抱え、挿入する。
「ああっ…」
　広美が顔を左右に激しく振る。
　いきそうだということなんだろうが、いつもより早い。
　広美は、俊一の両腕を引っ張って小刻みに震える。
「あああああ・・・」
　背中をのけぞらせた広美の口に静子の口がかぶさった。
　いつのまにか静子も裸だ。
　広美が静子に手を回し抱きついた。
　俊一の目の前で、広美と静子が抱き合って舌を絡ませている。
　今日は、どこかのだれかではない。

　静子が、広美の上に乗った。
「広美、ご主人を借りていい？」
　静子が俊一にも聞こえるように話す。
「いいわ…して」
　俊一は、縦に並んで二つのおま○この今度は、上のほうに挿入する。
（女は、それが誰だかわかると静子は言ったが、どっちが誰かはわからないな）
　違いはあるが、違うというだけでどっちが静子でどっちが広美なのかは認識しづらい。
（僕が、鈍感なのか…男ってのはそういうものなのか…）

　だが、俊一にそんな余裕があったのは、最初だけだ。
　あまり長く、広美をほっておくわけにもいかない。
　俊一は、静子のお尻を押さえ、早く激しく突き上げた。
　静子が広美から唇を離す。
「はぁああっ」
（早く、いってくれ）
　俊一は、奥のほうからいまにも出てきそうな精液をぐっと奥に押し留めて耐えた。

「ご主人、お返しするわ」
　突然、静子が俊一から離れて、広美の横に並んで横たわった。
　俊一は、広美を静子のほうに横向きにして、再び広美に挿入する。
「あっ…はっ…」
　俊一ももう限界だ。
「広美、いくぞ」
「ああ・・・いって」
　俊一は出る直前までがまんして広美の中にとどまったが、さすがに危険だ。
　ぐいっと最後に奥深く突き入れて、さっと抜いた。
「ああああ」
　どこに出すか？
　広美と静子の口が重なっている。
　俊一は、すでに放出状態のペニスをぎゅっと握り締め、重なった広美と静子の口の間に割り込ませた。
　受けたのは広美だが、静子も俊一のものに口を寄せる。
　俊一は、あらんかぎりの精液をそこに流し込みたい気分だ。
　俊一の精液を受けた広美の口に静子が舌を入れた。
　見ているだけでぞくっとする光景だ。
　広美の上に乗った静子が、広美の身体に舌を這わせる。
　首筋から、乳房へ、乳首からおへそへ、くすぐったいのだろう広美はお腹をひっこめて耐える。
　そして広美の股間へ。
　俊一が離れても広美と静子の行為は終わる気配はない。
　静子が逆向きになって、広美に向かってお尻をせり上げていく。
　広美の舌が静子のクリを捕らえた。
　広美の横にいる俊一も手を伸ばし、静子のお尻の肉を左右に広げる。
　静子の股間は丸見えだ。
　拡張されたアナルが大きく広がる。
　俊一はそこに舌を差し入れた。
「はぁぁぁ…」
　ぴくっと一瞬、静子の動きが止まったが、広美の股間にうずまった静子の頭がまた動き出す。
　今度は、広美の動きが止る。
「あああぁぁぁ」
　広美が頭を振る。
　俊一は、広美の頭をまたぎ、まだ回復していない肉棒を広美の口と静子の股間の間に差し込んだ。
　ぬるっとした暖かい感触が上下から伝わる。
　いい感触だった。
　肉棒の付け根の奥に軽い痛みを感じる。
　昨日から、やりすぎだ。
　わかってはいるが、がまんできるものでもない。
　徐々にまた俊一のものが大きくなり始める。

「ああ」
　小さく声をあげて、広美が横を向いた。
　いったのかもしれない。
　俊一は今度は横を向いた広美の頬にこすりつける。
　顔で擦られても、もう広美はそれをいやがらない。
　頬の柔らかさが気持ちいい。
　ペニスの先端が、ようやく張ってきた。
　このまま広美の顔に出すのも悪くはないが、そういうわけにもいかない。
　さっき静子はいってない。
　広美の顔を諦めて、俊一は、まだ完全ではないが、静子に挿入した。

　広美の顔の真上での行為だ。
　加虐的な気持ちが湧き上がってくる。
　俊一は、静子のお尻をつかんでホールドして激しく突き立てた。
「ああ・・あん・・あああ」
　静子が声をあげる。
　その声が、だんだん大きくなる。

　静子が、四つんばいで身体を支えられなくなって、ぴったりと広美の上にくっついてしまう。
　俊一の付け根にぶらさがった袋に広美の鼻があたる。
　俊一は、静子の両腕を後ろに引っ張って、倒れた上体を引っ張り上げた。
「あああああ・・・」
　静子も腰を振る。
　俊一は、最後をいっきに駆け上がる。
「あっ…あっ…あっ…」
　俊一の動きが激しくなった。
「うっ」
　ぎりぎりのところで俊一は、外に出した。
　静子は中でもいいのだが、広美の前では初対面だ。
　そんなことができるはずもない。
　俊一のものは、下にいる広美の顔にかかったはずだ。
　驚いたことに、その俊一のものに広美の舌が絡まった。
（広美…）
　顔に出されることを嫌がっていたはずなのに…。
　俊一は、広美の舌の感触をもっと楽しんでいたかったが、今度は急速に縮んでいく。

　俊一は、広美の横に広美とは逆向きに横たわった。
　真ん中に逆向きの広美を挟んで三人がベッドに横たわった。
　俊一が、広美を静子のほうに向かせ、足を上げる。
　広美のお尻の向こうに静子の顔があった。
　俊一は、広美の足の間で静子にキスをした。
　広美に隠れた内緒のキスだった。