１１

「ふっ、風花、いったい何を…」
　突然ベッドに押し倒されたわたしの前に、風花の…わたしと同じ顔が迫ります。
「声を出さないほうがいい。外に聞こえるかもしれないぞ？」
　わたしの肩を押さえつけたまま、風花がいいます。
「ふふっ…聖架は可愛いな。弓華とはまた違った意味で」
「はっ？」
　わたしはまた間の抜けた声をあげてしまいました。
「あなたとわたしと弓華は、三つ子で同じ顔じゃないですか」
「そういう意味じゃないさ。さあ、はじめるか」
　そういうと風花は、いきなりわたしの法衣のスカートをめくり上げました。
「きゃ…んぐっ」
　必然的にあがりそうになる悲鳴を、風花が口を押さえて止めてしまいました。
「声を出さないほうがいい、と言ったはずだぞ？」
　脚も下着もあらわにされたわたしは、口を押さえられたままの状態で、ただ顔を赤くするしかありませんでした。
「んっ」
　風花の体が、わたしの上に重なりました。その右手がわたしの左肩をつかみ、動きを取れなくしています。
「あっ」
　自由になっている風花の左手が、わたしの太ももをなぞるようになでていくと、わたしはその感触に思わず声をあげていました。
　先ほどのような、間の抜けた声ではなく、はっきりとした声。
「あっ、やっ」
　風花の手は、とても優しくわたしの下半身を撫でていきました。その手が触れるたびに、わたしの中で心地よいとすら取れる感触が広がり、声を出さずにはいられなくなってしまいます。
「なかなか敏感だな。ここはどうだろう？」
　風花の言葉の直後、わたしの体の、人には言えない場所から、考えたこともないような感触が湧き上がりました。
「ひぁっ！？」
　ひときわ大きい声をあげてしまいました。わたしは顔を真っ赤にし、風花に反論します。
「どこを触っているんですか！？」
「尋問する、と言っただろう？聖架は素直じゃないからな。体に尋問しているのさ」
　人差し指で下着の上から亀裂をなぞりながら、風花が答えます。わたしは目を閉じて、ひたすら快感に抗うしかありませんでした。
「んっ…あっ…」
「ほら、染みになってきたぞ？汚れると困るから脱いでしまおうか？」
　するりするり、と下着が脱がされていくのが分かりましたが、わたしは現実を受け止めるのが怖くて、目を閉じたままでいました。
「もう、濡れている…やはり体は正直だな？」
　目を閉じた暗闇のなかで、風花の声が聞こえました。わたしは今、実の妹に大事な部分を直視されています。それが恥ずかしくて、全身が熱く火照るのを感じずにはいられませんでした。
「風花ぁ…」
　わたしは泣きそうな声になっていました。
「綺麗だな。ここはわたしより小さめか」
「ひぅっ」
　亀裂の上のほうを優しくつつかれ、わたしはさらに声をあげてしまいます。風花はいったいどこでこんな技術を覚えたのでしょうか。
「どうだ、気持ちいいか？」
「き、気持ちよくなんか…っ」
　反論しようとしますが、風花に責め立てられているわたしの体を襲っているのは、間違いなく快感でした。それも、今まで生きてきたなかでまったく感じたことのない、性的快感…。
「それじゃあ、これはどうだろう」
　風花のその一言は、わたしをすごく不安にさせます。次はいったい何をするつもりなのでしょうか。…とそんなことを考える余裕などもちろんあるはずもなく、彼女によって、わたしの両足が少し広げられていきました。
　そして彼女自身もゆっくりと体を起こし、仰向けに寝かせられているわたしの足元へと離れていきます。
（あ…はぁ…お、終わった…ですか…？）
　一瞬そう思いましたが、すぐにそれは間違いだと気づきました。風花が、先ほど少し広げたわたしの両足の間に、顔を差し込んできたからでした。
「ちょっ…！！」
　思わず顔を起こし、止めようとした瞬間、わたしの股間から暖かい感触が走りました。
「あ…」
　あらぬ場所にキスされ、わたしは脱力しました。風花の手がわたしの太ももを押さえ込み、わたしは抵抗できません。
　くちゅ…。
「ひっ！」
　優しく舌を触れられると、またしても快感がわたしの中を駆け抜けていきました。わたしは声をあげるとともに体を大きく反らせてしまいます。
「風花、風花…そんなところ、舐めちゃだめで…」
　そう言おうと思った瞬間、風花の舌がわたしの中へ滑り込んできました。いやらしい音がしたのがわたしにも分かりました。
「ああっ…！」
　妹の舌がわたしの膣内に入り、優しく突き上げるように動くと、わたしはさらに厭らしい声をあげ、快感に身を悶えさせていました。
　再び外へ出て行った舌は、もう一度亀裂全体を満遍なく攻め立てると、亀裂の上のほう…もっとも敏感な場所を集中的に責めてきました。
「ひあっ！やっ…」
　ぴちゃぴちゃ、という音が、わたしの快感を余計に引き立てているのが分かります。わたしはただ髪を振り乱し、頭を振って抵抗しようとしていました。
　しかし、本当に抵抗の意思があったかどうかも分かりませんでした。
「…聖架、脚が開いてきているぞ。気持ちいいんだろう？わたし以外の『誰か』にこういうことをされたいだろう？」
「あ、ああっ…すごい、気持ちいい…気持ちいい…はぁぁ…っ」
　わたしはもはや風花の与えてくれる刺激の虜になっていました。自分の意思とは無関係に脚を開き、風花の指や舌を受け入れ、そして体中を貫く快感に体を晒していました。
　肌の上を指がなぞるだけで、背筋がぞくっ、と反応しました。
「誰か、好きな人にこういうことを…いや、それ以上のことをされたいと思っているだろう？」
　風花は容赦なく指と舌、そして言葉でわたしを攻め立ててきます。とはいえ、わたしの頭の中はもうパニックに等しい状態になっていました。
「だ、誰も…好きになってなんか…好きに、なってなんか…はぁぁ…っ！」
　わたしは、若輩とはいえ聖職者です。そのわたしが、誰か一人を好きになるなんて…。
　風花の舌が音を立ててわたしの秘所を刺激し、そして指はすっかり膨らんだ肉芽をつまみ、コリコリと優しく擦り上げてきます。
「ふぁああっ！！」
　わたしはもう、我慢ができませんでした。最後に風花がわたしの膣内に舌を差し込んだとき、わたしの頭の中で何かがはじけました。

　びくん、びくん、とわたしの体が何度も跳ね上がりました。秘所からは液体が溢れ、風花の指の動きにあわせてくちゅくちゅと音を立てていました。
「聖架…イったようだな。…気持ちよかったか？」
「あ…はあぁ…あ…」

（風花さん、気持ちよかった？）
　わたしの頭の中で誰かの声が響きました。
「…はい、とても…」
　その声の主は、あの日わたしを助けてくれたあの人の声でした。わたしの胸の中にわだかまり続けていた、あの人の声…。
「…ああ、わたしは…わたしはシスターにあるまじきことを…誰かを好きになるなんてことを…」
　
「お前の信じている神様は、人間の最低欲求を捻じ曲げてまで純潔を望んでいるのか？わたしを含めて、生きている限り好きな人の一人や二人できるさ。お前が常にシスターであり続ければ、誰を好きになろうが、誰と交わろうがかまわないんじゃないのか？」
　下着を替えているわたしの横で、風花が言いました。まさかあんなことをされるとは思いませんでした。
　教会の中は何事もなかったかのように静かでした。先ほどまで、あんなことがあったなんて思えないくらいに静かでした。
「…驚きました」
　初めて風花を振り返ると、わたしは自分の感想を素直に述べていました。
「わたしにも、こういう感情が…その、『性的欲求』というのが…あったんですね」
「当たり前だ」
　わたしの感想に、風花は微笑するとともに、分かりやすい返答を返してくれました。
「あれだけ膣内から粘っこい液体を出しておいて、『性欲がありません』なんていわせないぞ？」
　わたしは真っ赤になりました。
「自分から脚を広げて『気持ちいい』を連呼…」
「分かったからやめてくださいってば！」
　なんであんなことを言ったりしたんでしょうか、と半ば後悔しながら、わたしは風花を止めていました。
「…それに、わたしは…わたしは恋をしていました。わたし自身にもよくわからなかったんですね。今まで、そんなことなかったから…」
「聖架に見初められた幸せな男というのは、何処の誰だ？」
　おそらくは興味本位で聞いているでしょう。しかし、今のわたしは誰よりも素直になっていたようです。
「ふぅ…」
　わたしは深呼吸で息を落ち着かせてから答えていました。
「…時久、純水という人です…弓華のクラスメイトのようで…」