２２

「風花姉さん、帰っちゃった…」
　わたしは、あっという間に去っていった風花姉さんの背中を、ぽかーんと見送っていた。
（…わたしと純水くん、どうなっちゃうんだろ…）
　とりあえずわたしは彼氏でいられるみたいだけど、どう考えたってヘンだよ、こんなの。だって、三つ子姉妹で全員が全員、同じ人を好きになるなんて、そんなありえないことが起こるなんて。
　ぽかん、としてるのは純水くんも同じだけど…。
（でも…おねえちゃん、気持ちよさそうだったなぁ、いいなぁ…）
　わたしは、ベッドで眠ってしまっているおねえちゃんの顔を見ながら、物思いに耽っていた。
　そういえば、わたしが処女喪失したときは、とにかく痛いだけだったっけ。
（あ、やだ、思い出しちゃったよぉ…）
　思い出したのは、おねえちゃんが『ああーっ』と悲鳴をあげながらイッたときのこと。わたしはああいうふうに絶頂に達していないのが悔しかった。
「…弓華ちゃん」
「は、はいっ！」
　どきっ、として大きな声で返事してしまったのへ、純水くんも驚いていた。
「僕…変なのかな。変だよね、多分」
「変じゃないよ。わたしたちこそごめんなさい。みんなで純水くんを好きになっちゃうなんて、わたし、思っていなかった」
「でも…僕は多分…みんなのことが好きなんだと思う。誰か一人を選んでなんて、いまさらできないと思う」
「そうだよねぇ…」
　わたしは、言いながら大きな大きなため息をついた。わたしも対象の一人に入っているとはいえ、実の姉二人が恋敵となると分が悪いのはよく分かっている。
　おねえちゃんみたいに優しくもないし胸もないし、風花姉さんみたいに強くもカッコよくもないし、一番特徴がないのがわたしだし…。
「…ねぇ、それじゃあ、わたしのことも好きだって思ってくれてるの？」
「うん。告白の時はびっくりしたけど、弓華ちゃんのおかげで、学校に来るのが楽しくなったし、楽しみにもなった」
　嬉しくて、胸がいっぱいになった。わたしは純水くんに駆け寄ると、飛びつくように抱きついていた。
「わたしも、純水くんのこと大好きだよ…っ！」
「…ありがとう」
　その胸に顔を埋めると、純水くんの手が優しく頭を撫でてくれた。

「…ね、風花姉さんのかわりに、わたしに…してくれる？」
　胸に顔を埋めたまま、わたしはそう言っていた。前と同じで、胸の鼓動を止めることができそうになかった。
「あんなの見せられたら、わたしだって…したくなっちゃうよ」
　恥ずかしいから、そのまま胸に顔を埋めていた。自分の下腹部に熱がこもっているのがよく分かる。
「弓華ちゃん」
「ね、お願い」
「…うん」

「ね、どういう風にしたらいいかな？ベッドはおねえちゃん寝てるし」
　何も考えずに『してほしい』と言ったわたしは、場所がない事実に気づいた。本来そういうことをする場所（？）のベッドはふさがっている。ということは…。
「…床、かな」
　純水くんもなぜか申し訳なさそうに答えた。
「えーと、じゃあ、横になるね」
　そう言いつつ横になると、やっぱりカーペットの下はフローリングなのか、とても固く感じる。
（…って、こんなところで濡れたりしたら、カーペット汚れちゃうよね）
「痛くない？背中」
　純水くんは、カーペットよりもわたしの心配を優先してくれた。
「ん、大丈夫だよ」
　わたしはそう言った。
「純水くんは？その、できそう？」
　なんて聞いていいのかよく分からず、わたしはそんな聞き方をした。
「うん」
　わたしは返事を聞くと、目を閉じた。相変わらず胸の鼓動は高いままだった。
　制服のスカートがそっとめくりあげられるのが分かる。
「…弓華ちゃん、濡れてる」
「あんまり見ないでよぉ…」
　わたしは目を閉じたまま顔をそらせた。
「脱がせていい？」
「うん」
　はずかしかったけど、脱がしてもらわないとできないことだし…。
　わたしの返事を待ってから、純水くんの手の感触を感じた。優しくするり、と下着が下ろされる。
「胸も触っていい？」
「えっ？あっ？どうぞどうぞ。そんなに触るほどないけど…」
「そんなことないよ」
　純水くんの一言に、わたしはなんとなく嬉しくなった。今度は上着がめくりあげられ、ブラジャーを上に持ち上げられる。
（ああ、わたし見られてる…裸見られてるんだ…）
　よく分からない理由で興奮してしまっている自分がいた。目を開くと、純水くんの目はわたしの一部分に集中している。
「足、広げて」
「…うん」
　純水くんに言われて、わたしは膝を曲げて足を左右に広げる。もう、さえぎるものは何もない。
　…と覚悟を決めていたら、いきなり指で刺激された。
「ひうっ」
　かなり間の抜けた声をあげたと思う…。すぐに入れてくると思っていたわたしは不意の一撃を受け、声をあげてしまった。
「あっ、やっ…」
　優しく指を膣内につきこまれ、わたしはすぐに快感におぼれてしまった。
（ああ、純水くん上手だよぉ…こんなに感じちゃうなんて）
　今度はゆっくりと、わたしの胸に手がかぶさる。わしづかみにはせずに、優しく、手を置くような感触。
「い、純水くん…我慢できないよ…もう、入れてぇ…」
「うん。痛かったら、言ってね」
　純水くんの声を聞いて、わたしはあの激痛を思い出した。でも、自分自身の熱を抑えられるはずもなく、わたしは足を広げて迎える体勢に入っていた。

　くちゅっ、ずるっ、という感じで、太くて堅いものがわたしの中に入ってきた。
「ひあああっ！！」
　痛くなかった。凄まじい快感で、わたしは床の上でのけぞっていた。
（嘘っ！？）
「あ・・・あ・・は…か…はぁ…っ」
　もう声に出すこともできず、わたしは解読不可能なあえぎ声を上げるしかなかった。
「だ、大丈夫！？」
　わたしの声をどういう意味に受け取ったんだろう？純水くんはやっぱりわたしの体を心配してくれる。
「あ、ううん…痛いんじゃなくて、すごく、気持ちよかったの、気持ちいいの…」
「本当？」
「うん」
　やっぱり、前の時にわたしが痛がっていたのを覚えていたみたいで、かなり気を遣ってもらっていたみたい。
　わたしのほうは、前の激痛がまるで嘘のように純水くんのモノを（ややキツいものの）受け入れていた。
「純水くんは？どう？」
「うん、弓華ちゃんの中、とても狭くてあったかい…もう少し奥まで入れていい？」
　わたしはその言葉にうなずいた。
　ゆっくりと両足を広げられ、純水くんの体がわたしの上にのしかかる。
「ふぁっ…！」
　純水くんのモノが、ずんっ、と奥まで突き上げてくるのが分かった。ぐじゅっ、と嫌な水音がした。わたしは子宮口に先端が当たる快感に、背中を弓なりにのけぞらせて反応していた。
「やあぁっ、奥に当たってるぅッ！大きい、大きいよぉっ！」
「弓華ちゃん、動くよ」
「えっ！？」
　突然、純水くんが体を引いた。とたん、膣壁と陰茎がこすれあって、凄まじい快感を生み出す。体に電撃が走り、わたしは喘いだ。
（あっ…奥に入っただけでもあんなに気持ちいいのに、動いたりしたら…わたしどうなっちゃうの！？）
　そんな風に考えている矢先に、純水くんが動き始めた。ゆっくりとした前後運動に、わたしの膣が締まったり緩んだりを繰り返す。
「あっ、はぁっ、あんっ…あぁ…」
「弓華ちゃん、溢れてる」
「だめぇ、そこ見ないでぇ…」
　固いモノで何度も刺し貫かれ、わたしの膣内で分泌された愛液が外へ溢れ出てしまっていた。
　胸に置かれたままの手が、先端をやさしく揉み解してくるのへ、わたしはさらに声をあげて反応していた。
（おねえちゃんも、風花姉さんも、こんなふうに気持ちよかったんだ…）
「あっ、すごい、激しいっ！」
「弓華ちゃん、もう…」
「えっ？あっ、な、膣内で…出して…、そのまま出してぇっ！」
（わたしは一体、何を言ってるんだろう…）
　前にわたしの体にふりかかったあの液体を、体の中に受け止めたらどんなに気持ちいいだろう。わたしの頭の中はもう、それだけでいっぱいだった。
　わたしは自分から純水くんの体に足を絡ませ、腰が逃げていかないように支えていた。
（欲しい…純水くんの精液、中に欲しい…）
「ああっ、ダメだよ弓華ちゃんっ！」
「いいの、今日大丈夫だからいいのぉ！」
　わたしが上げた悲鳴混じりの声にあわせて、乳首がきゅっ、とつままれた。
「ひうっ！ダメっ、乳首でイッちゃう、ダメぇ…！」
「あっ、出る…ッ！」
　純水くんの声が上がるのと同時に、わたしはその背中に腕を回していた。どくんっ、と体の中に熱いものが溢れてくるのが分かる。
　それと同時に、わたしの体の中を言い知れぬ快感が突き上げ、わたしの頭の中が真っ白になった。
「あっ、熱いの！熱いのいっぱい出てるっ！イっちゃう、イっちゃうよぉーー！」

「あっ…はぁ…んっ」
　とても長い射精が終わると、わたしはようやく快感から開放された。ただ、純水くんが離れたあとでも、わたしの体は熱く火照り、さっきまでの余韻を深く残している。
「あっ…すごかった…あんなに…気持ちいいなんて…」
「大丈夫？」
　床にぐったりとしてしまったわたしを見下ろしながら、純水くんが心配そうに聞いてくる。
「うん…大丈夫」
　体のことなのか妊娠のことなのかよく分からなかった。
「今日は、大丈夫な日だから…あ、すごい、白いの垂れてる…」
　少し体を起こして、足の間を覗き込むと、入り口から白い液体が…純水くんが吐き出した精液が溢れていた。
「…カーペット、汚しちゃった…ごめんなさい…」
　息も絶え絶えになりながら出た言葉が、それだった。

「…ゆ、弓華、何を、やってるんですか…っ！？」
「！？」
　突然予想もしなかった声に、わたしは飛び起きた。…と同時に、股間から白い液体が飛び散った。
「お、おねえちゃん、いつおきたの！？」
　振り返ると、さっきまで寝ていたおねえちゃんが起きている。ベッドの上に座り込んで、わたしたちを見ていた。
「せ、聖架さん？」
　純水くんのほうもびっくりしている。…終わってからでよかった。
「そ、そのっ、中にしてしまったということは…っ、後で…こ、ここここ子供とか、子供とか子供ができちゃうとかそういった、ししし、心配が…」
「落ち着いておねえちゃん」
　自分のことじゃないのに慌てふためいているおねえちゃんを見て、わたしはなんだか吹き出しそうになってしまった。
「わたし、今日大丈夫な日だから、ね？」
「…え？そうなんですか…？」
　ぴたっ、とおねえちゃんの動きが止まった。けれども、今度はベッドから（いつものおねえちゃんからは想像できないくらい軽やかに）すっ、と下りてわたしの肩を掴むと、　「…って、それって、最初からそういうことをして、な、なな、中にしてもらうつもりだったってことじゃないですか…ッ！」
「あっ！」
（あ〜、バレちゃった…）
　わたしは頭を掻いた。事実、それを覚悟…というか期待して今日もお邪魔しちゃったところもあるんだけど、それを風花姉さんたちに邪魔されちゃったわけで…。
「…ごめんなさい…」
　わたしは素直に二人に謝ることにした。

「…やってしまったものは仕方がありませんが…」
　はあぁ〜、というとてつもなく大きな大きなため息をつきながら、おねえちゃんが顔を上げた。
「でも…わたしにも、今みたいにしてもらう権利はある、ということですよね？」
「へっ？」
　おねえちゃんの言うことの意味がよく分からず、わたしは気の抜けた返事を返していた。冗談かと思ったら真顔だった。
「…次の安全日には、わたしだって…」
　ぼそぼそと呟くおねえちゃんがちょっとだけ怖い。
「…あのさ」
　わたしは一つ気づいたことがあって、二人に呼びかけた。
「なんですか、弓華？」
「…みんな裸だから、服、着ようよ。なんだかみんなでしてたみたいだよ…」
「あっ…」
　考えてみれば、おねえちゃんはセックスの後失神、裸で眠っていたわけだし、わたしたちは行為の直後。だからみんな裸…。
　純水くんが自分の体を見るなかで、おねえちゃんの目も純水くんの一部分に一転集中していた。
「…すごい…」
　頬に手を当て、どこか恥ずかしそうに、でもうっとりしているかのような表情。
（あ、本当だ…さっきわたしの膣内に出したばかりなのに、もうこんなに大きくなってる…）
　わたしの目も思わず純水くんのそこに止まってしまった。
「…純水さん」
「はい」
　どこかトロン、とした目で見上げられ、なぜか敬語で返事する純水くん。
「これが、わたしの中に入っていたんですよね？」
　おねえちゃんがのろのろと這うようにして、純水くんの足元に座り込み、『それ』を見上げる。
「…は、恥ずかしいよ、聖架さん」
「…未だに信じられません。こんなに大きいのが、こんな小さな隙間に…」
（おねえちゃん、言ってることすごく過激なんだけど…）
　自分の体と純水くんを見比べるおねえちゃんが妙に色っぽく思える。普段の清楚さとギャップがあるせいで余計に際立ってるのかもしれないけど…。
「…確か、風花はこうやって…んっ」
「うあっ、せ、聖架さんっ！」
「あーっ！」
　わたしと純水くんが二人同時に声を上げた。おねえちゃんが何を思ったのか、純水くんのを口に入れてしまったからだ。
「んっ…んんっ…」
　ちゅっ、ちゅっ、というイヤらしい音が響いている。本当に吸ったり舐めたりしてるみたいだけど…。
「んはぁっ…やっぱり、風花みたいに上手くはできないです…」
　いったん口から出すと、純水くんのモノを右手で支え、今度は先端を丁寧に舐めとりはじめた。
　わたしは、ぎこちないおねえちゃんの行動に魅入ってしまっていた。