| ３５ 「…というわけなんだ」 翌日の朝、わたしたちは居間に顔を揃え、弓華に居間までの事情を説明することになった。死んだことになっている父さんまで来たということは、今までの事情をすべて弓華に話さなくてはならない、ということだった。 もちろん、バッド・スクエアのことは話さなかったが、『会社経営の上で誰かに狙われたから、自分が死んだことにして危険を回避していた』と、取ってつけたような説明をするはて、説明は終わったし、俺は会社に戻ることにするよ。後始末はたくさん残っているしな」 「え？お父さんかえるの？ここで皆で泊まっていけばいいのに」 「おいおい。お前たち三人の共通の恋人が一つ屋根の下で寝るというのに、父親の俺がいるのは悪いだろう」 弓華と聖架の顔がかぁ〜っと赤くなっていくのがよく分かった。 「もっとも、純水くんが誰と結ばれるかは、彼に任せるしかないがね」 父さんは父さんで、早々と『結婚承諾』宣言をしている。とはいえ、この状況では認めざるを得ないだろうが…。 父さんが帰ってしまい、取り残される形になったわたしたち四人は、なんとなく重い雰囲気に包まれてしまった（無論、悪い意味での重い雰囲気ではないのだが）。 そんな中、弓華がやっと口を開いた。 「あのさ…今回のことで一つ、わたしがすごく怒ってることがあったんだけど、お父さんいたせいで怒れなかったんだけど…怒っていい？」 「怒るのに許可がいるのか」 弓華の言い方にわたしがそう返すと、純水が吹きだし、聖架が笑いを必死にこらえている様子が見て取れた。しかし、そんな二人とは裏腹に、弓華の顔は真剣そのものだった。 もちろん、彼女が何に怒っているのか、わたしには痛いほどよく分かっている。 「…わたしたち、姉妹だよね。同じ日に生まれた三つ子だよね…だから、純水くんのことも含めて、いろいろあったけどうまくやってこれた、隠し事なんて一つもないと思ってた…でも…」 わたしは顔を伏せざるを得なかった。 「…どうして…っ、どうして、わたしたちに何も言わなかったの？風花姉さんが、もって後一、二年の命だ゛なんて、わたしちっとも知らなかった。ううん、そんな重い病気にかかっているなんて…知らなかった…」 「弓華…」 泣き出さんばかりにまくしたてる弓華に、わたしはどう声をかけていいか分からなかった。 「確かに、それが分かっていてもわたしには何もできなかったと思う…でも、風花姉さんと一緒に悩むことだってできたはずなんだよ？風花姉さんは、わたしも…おねえちゃんも、そんなに信用できなかったの？」 「弓華、おやめなさい」 弓華の言葉がわたしの胸を突き刺す中、聖架が弓華の肩に手をかけて止めた。 「…だって、このまま風花姉さんがいなくなるなんて、わたしは嫌だよ…絶対、嫌だよぉ…」 「弓華。これ以上風花を苦しめるのはやめなさい。風花はもう、十分に苦しんだはずです。わたしたちにはもう、彼女を責める権利なんてありません」 「それは、そうだけど…」 「それでも…わたしはこの短い命の中で…聖架や弓華と一緒に生まれてくることができた。そして、純水に出会うことも恋することも…そして処女を渡すこともできた。これ以上幸せな人生はないだろう、と自負しているさ」 わたしはそう言った。弓華は泣きそうな顔でわたしを見つめていた。 「自分の人生に一つも悔いがない、などと馬鹿げたことを言うつもりはないさ。でも、わたしは幸せにこの世から離れることができる。もちろん、お前たちや純水と離れるのはとてもつらい。だから…」 そこまで言うとわたしは、純水に目を留め、歩み寄る。 「…思い出をたくさん、持っていくことにしよう」 わたしは笑顔を作りつつ、床に座り込む純水に抱きついていた。 「あーーーーーーっ！」 という、弓華の頓狂な声が上がる。 「…な、何をやってるんですか、もう…」 わたしたち二人のすぐ近くまで寄ってきた聖架が、恥ずかしそうに言った。しかし、その目はわたしの手が優しく握ったモノをしっかり見ている。 「そ、そうだよ、こんなときに」 弓華もまったく同じだった。なんだかんだいっても、わたしが今していることを止めないのは何故だろうか？ 「気にしなくていいさ。いつものことだ」 「いや、いつものことでもない気がするけど…」 わたしの行為を見下ろしながら、純水もためらいがちに声を漏らす。しかし、その言葉とは裏腹に、わたしの手の中のモノは固く立ち上がっていて、血管が浮き出てしまっていた。 「風花さん、そんなにしたら、出ちゃうよ」 そんな言葉を聞きつつ、右手にきゅっ、と力を入れると、純水の先端から液体が溢れてきた。 「ふふっ…相変わらず、体のほうは正直だな」 「嬉しそうに言わないでよ」 弓華の小言を背中に受けながら、わたしは純水のそれに顔を近づけ、溢れた液体を舐め取っていく。 「んっ…んんっ…ふぅ…」 固く張り詰めた先端を舐めるだけでは飽き足らず、わたしはいつしか純水のモノを口の中に含んでいた。 「…風花、そろそろおやめなさい」 「…んっ…」 わたしの肩に聖架の手が乗せられる。それを受けて、わたしはようやく体を起こす。 「もう…いきなり何をやってるのよ」 顔を真っ赤にした弓華が即座に文句をぶつけてきたものの、わたしのほうは別に気にとめたりはしない。 「…さて、風花が離れたところで、純水さん」 「ん？」 純水のほうは、わたしに取り出されてしまったモノをしまおうとしているところだったものの、聖架に呼びかけられて手をとめてしまったため、ズボンからはみ出てしまっている。 「…その…わたしも…ちょっとだけ、味見してもいいですか…？」 とても恥ずかしそうに漏れた聖架の言葉に、弓華がひっくりかえった。 「やれやれ…わたしが言ってようやく素直になったものの、今度は自分の欲望に素直になりすぎだぞ、聖架」 「ふふっ…そうかもしれませんね。でも…わたしだけが純水さんを好きだというわけではないのですから、わたしも少しは積極的にならないと純水さんに忘れ去られてしまいますから」 冗談交じりにそう言った…と思いたかったのだが、聖架の目は冗談っ気は一切なく、大真面目だった。相変わらず恥ずかしさに顔を赤くはしているが。 「さあ、純水さん、ベッドに座ってください」 「え？あ、う、うん」 なぜか従順な純水がほほえましい。もしかしたら、今の聖架には純水を逆らわせないオーラか何かがあるのかもしれない。 「…そう、わたしだって…風花に負けないくらい純水さんが好きなんですから」 ベッドに座った純水の前にひざまずいた聖架がぽつりと呟くと、何を思ったか彼女は、服のボタンをはずして自分の乳房をいきなりあらわにしてしまうのだった。 |
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| 2007.10.20掲載 |
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