| ３９ 「んっ、んんぅ…ん…」 （あー、わたし、何やってるんだろう…もう、ヘンになりそう…） 風花姉さんに覆いかぶさられるように押し倒されたわたしは、さっきから抱きすくめられたまま、狂ったようにキスをしていた。 （ふ、風花姉さん上手だよ…女同士なのになんでこんなに気持ちいいの…？純水くんの前で、しかも姉妹でレズなんて、シャレになってないよぉ） 押し倒されたままなす術も無く素っ裸にされたわたしは、キスをされつつ秘所を左手で刺激されていた。 「やっぱり弓華は可愛いな」 やっと唇を離したかと思うと、風花姉さんはそんなことを言った。 「風花ねえさ…んっ！？」 わたしが反論しようとすると、また唇をふさがれてしまった。左手はそのまま激しく動いている。 「んーっ、んっ、んんぅっ！？んっ！」 （ダメ、イッちゃう、イかされちゃう…ダメぇ…） わたしの絶頂が近いことを感じ取ったのか、秘所をまさぐる風花姉さんの指の動きが早くなる。緩急をつけて突き上げられ、わたしは息をするのも苦しい。 「んっ…んんんっ、ぷはぁっ…！？あああっ！？」 絶頂に陥る寸前に唇を離され、わたしは息を吸い込むと同時に真っ白になった。 「ああっ！？あああーーーーっ！」 体中が快感に抗えず痙攣をはじめ、わたしは自由に体を動かすことができず、風花姉さんの微笑を見上げているしかなかった。 「…っ、げほっ、げほっ」 声が途切れるのと同時に、わたしはむせ返って咳き込んでいた。キスを続けていたせいで息が詰まっていたのと、急に息を吸い込みながら絶叫を上げたせいで、空気が変なところに入り込んだのかもしれない。 「・・・けほっ、けほ…ああん、もう、実の姉さんにイかされちゃったよぉ…」 ひたすら赤面するしかないわたしを、風花姉さんがもう一度抱きしめてくれる。 （…風花姉さん、柔らかくて暖かい…本当に、残りわずかの命だなんて、信じられないよ…） 「…大丈夫、弓華？」 「…うん」 そのぬくもりを体で受け止めていると、そんなわたしをヘンに思ったのか、風花姉さんが声をかけてくる。 「…もう、何をやってるんですか、二人とも…」 ベッドの中のお姉ちゃんが、抱き合うわたしたちを見て言った。 「聖架も大丈夫か？さっき盛大にイッていたが」 （えっ？イッてたって…わたし、ぜんぜん気づかなかった…） 「正直、あまり大丈夫じゃありません。体が震えて、まだ起き上がれませんし…」 「そうだろう。わたしも、初めて純水の精液を体の中に受け止めたときは、そうなったものさ。今だって分かったものじゃない」 「…で、いつまで抱き合ってるんですか？」 お姉ちゃんに言われて、わたしはやっと風花姉さんから飛びのいた。純水くんが一番バツが悪そうな顔をしているのは何でだろう。 「…ふぅ、今日はもうやめておこうよ。よく考えたら、わたしたち、朝っぱらからすごいことしてるのよ？」 おねえちゃんが服を着始めたのを見て、わたしはそう言った。 「弓華はいいのか？」 明らかに意外そうな顔をした風花姉さんが、わたしに言った。 「あのねえ、確かにわたしだって…その、したいけど…でも、純水くんが疲れてることぐらい理解できるわよ」 「聖架が激しかったからな」 「わっ、わたしのせいだけじゃないでしょう！？」 責任を丸投げされたおねえちゃんが顔を真っ赤にする。 「いや、今日のＭＶＰは間違いなく聖架だろう。胸も舌も使えるところは全部使ってのセックスというのは、並みの女性ができることではない」 「何のＭＶＰですかっ」 「とにかく、起きたばかりで疲れちゃったらどうしようもないでしょ？第一、わたしたち学校が…」 「あっ！学校のことを忘れてた」 わたしの言葉に、純水くんが驚いて声を上げた。 「ああ、それなら、さっき学校に欠席の連絡を入れておいた。適当にごまかしておいたから気にしなくていいぞ、二人とも」 「か、勝手に休みにしちゃったの！？」 「ああ。どうせ昼くらいまで続くと思っていたものだからな。案外早くに終わってしまったな。まだ十時にもなっていないぞ」 うちの時計を見ながら、風花姉さんが呟く。気が利くのか無責任なのかよく分からない…。 「弓華は成績も悪くないし、今日一日欠席したところで単位に響くこともないだろう？」 「中の下だけどね…純水くんの成績が羨ましい…」 「学校なんか、卒業できればいいのさ。いい学校をいい成績で卒業しても、就職に悩む人間はたくさんいる。 表向き学歴で人を採用したところで、実際に役に立つのは学歴よりも人柄と信頼性だ。少なくともわたしはそうやって採用してきたつもりだ」 （さ、さすが社長…） わたしは妙に感心させられてしまった。 「とはいえ、高校に行っていないわたしが言ってもまるで説得力がないんだが…」 「そんなことないよ。風花姉さんがそう言ってくれるおかげで、わたしは安心して学校を欠席できるし」 （なんか、それも間違ってる気がするけどね） 「純水くん、大丈夫？」 「うーん、さすがにちょっと疲れた…かも」 わたしたちが全員服を着ている間、純水くんがずっと黙っていたのが気になって、わたしは声をかけた。 顔にはあまり出していないものの、朝からアレだもんねぇ…。加担したとはいえ、純水くんにちょっと同情してしまった。 「…で、風花姉さんとおねえちゃんだけは、やけにツヤツヤしてるわけね」 「い、言うようになりましたね、弓華…」 苦笑いをかみ殺しながら、おねえちゃんが言った。 「…それよりも、どうするの？学校は休みになっちゃったし」 純水くんの質問に、わたしたちは互いを見合わせた。 「ふむ…ここでぼーっとしているのも、確かに芸が無いな。とりあえずは…」 風花姉さんが腕を組んで考えると、すぐに顔を上げて言った。 「腹ごしらえだな。そういえば、まだ朝食を食べていない」 わたしは後ろにひっくり返りそうになった。風花姉さんってば、大真面目な表情で言うんだもの。 でも、確かに朝起きてからすぐお父さんからの話があって、お父さん帰ってからすぐああいうことになったから何も食べていない。 「…まったくもう、ちょっと待ってて、作るから」 わたしが立ち上がると、風花姉さんが手でとめた。 「いや、わたしが作るさ。言いだしっぺだからな」 「風花姉さん、料理作れるの？」 「見くびってもらっては困るな」 わたしの質問に、風花姉さんが苦笑した。別に馬鹿にしたわけじゃなくて、普段社長業がある風花姉さんが、率先して『料理を作る』と言い出したのがちょっと意外だっただけなんだけど…。料理なんてしてる暇あるのかな…。 「もちろん、口に合うかどうかは分からないが…もし不安なら、知り合いのシェフを呼ぶが」 「よ、呼ばないでよ、たいした材料ないんだから！っていうか、なんで知り合いにシェフがいるのよ」 「仕事上、いろいろな人間と付き合いができるからな。思いつく職業の人間は、大抵携帯のメモリーに収まってる。 シェフ、警官、医者、宝石商、弁護士、ヘリパイロット、自衛隊大佐…」 「ちょ、ちょっと、貿易会社にあからさまに関係ないのが混ざってる！？」 わたしがあわてて声をかけると、風花姉さんはこともなげに 「おっと、これは失言だった。忘れてくれ」 と言ってきた。 （今の話が本当だとして、風花姉さん、なんかとんでもない仕事してるんじゃ…） 邪推しないわけにはいかないけど、まさかねぇ…。わたしは、少し考えてやめた。 「お、おいしい…」 「え、ええ、わたしよりも数段…」 数十分してテーブルの上に並べられた食事は、わたしが想像したよりもはるかに出来がよくおいしかった。 「材料上簡単なものしかできなかったが、こんなものでも腹の足しにはなるだろう？」 （こんなものでもって…風花姉さん、やっぱり完璧人間すぎるよぉ…。どうやったら社長やってる傍らで料理まで上達するのよ…） わたしは、遅い朝食を口に入れながらため息をついた。そして同時に、『佳人薄命』『美人薄命』という言葉が頭をよぎっていく。 わたしはそれを頭の中で必死に振り払うと、『何か話を振らなきゃ』、とおねえちゃんのほうを向いた。すると…。 「純水さん、あ〜ん…」 「あ、あ〜ん、って…」 タコウィンナーを箸でつまみ、純水くんの口元へ持っていってるおねえちゃんがいた。さすがに、純水くんも戸惑うばかりで口に入れようとはしなかったけど…。 「ちょっと、何、新婚夫婦やってるのよっ！」 「あ、一度やってみたかったんです」 「ほら、あ〜ん」 「あ〜ん」 真横から突き出されたウィンナーを反射的にぱくっと口に含んでしまってから、わたしは横を見て青ざめた。 「ぷっ…」 「弓華はいつも素直だな…こんなに見事に引っかかってくれるとはわたしも思わなかったぞ」 どこか嬉しそうな風花姉さんが、可笑しそうに笑った。と同時に純水くんが吹きだした。 「ああ、もうっ！いつかお化け屋敷に放り込んでやるんだからっ！」 口に入ったウィンナーが飛び出していきそうな勢いでまくし立てると、わたしは残ったご飯を口の中に放り込んだ。 「そ、それだけは勘弁してほしいところだな」 真面目に困った顔をする風花姉さんを見て、わたしはなんとなく和んでしまった。そういえば弱点らしい弱点もあるんだっけ。 （…といっても、あの遊園地でのできごとって、風花姉さんの体に相当負担かけていたわけよね…知っていればあんなところに連れていかなかったのに） わたしが一瞬そんなことを考えると、風花姉さんがそれを見透かしたかのように 「心配しなくてもいいさ。今日明日に終わる命じゃない。それに、確かに苦手だということも分かったが、それ以上にあの日は…楽しかった」 …と、言ってくれた。 「さて、食事も終わったところで、弓華」 「はい？」 全員で（なぜか純水くんも交えて）片づけを終えたわたしたちは、再びテーブルについてこれからのことを話し合う。 「今日は本当にいいのか？」 「何が？」 風花姉さんの妙な質問に、わたしはぽかんとして答えた…ものの、すぐに何のことだか気がついて顔を赤くした。 「い、いいってば！」 「意地にならなくてもいいんだぞ？純水だって、腹も膨れたことだし十分体力も回復してるはずだ」 そういわれて、わたしは思わず純水くんの方を見てしまった。 （うぅ、やっぱり、わたし本人はしたいと思ってる…けど、ねぇ…） 純水くんもやっぱり困ったような顔をしていた。それはそうよね…いくら全員恋人にしちゃったとはいえ、いっぺんに三人も…。 （やだ、濡れてきちゃったじゃないのよ…風花姉さんのせいだからね…！） 「弓華ちゃん…」 「え、あ、ああ、風花姉さんの言うことを真に受けなくてもいいんだからね、わたしはわたしで、後でしてもらえれば…」 （…って何言ってるのよ！後でしてもらえればいいなんて、思ってないんだから！） したいならしたいで、はっきりそういえばいいのに、それができないわたしは口が回らなくなってしまっていた。 そのセリフを受けてか、風花姉さんにもおねえちゃんにも『やっぱりしたいんじゃないか』とばかりにニヤニヤされてしまい、顔が熱くなっていく。 「…やっぱり、いいかな、純水くん…？」 太陽がもうすぐ真上に上ろうという中で、わたしはついに純水くんにその言葉を吐いていた。 |
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| 2007.11.28掲載 |
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