１．はじまりの時

　響子は、重い足取りでマンションの入口にたどり着いた。
　先日、届いた手紙の指示により足を運ばざるをえなかった。

　響子は、二十歳で結婚し幸せな家庭に恵まれ、１６才になる娘がいた。
　夫は、いつも出張がちであるが、まじめな人であった。

　その手紙には、最愛の娘の悲しい出来事が記録されていた、高校に通うようになったばかりであるが、林の中で男と女が絡みあっている写真は、紛れもなく娘の美津子であった。
　誰にも知らせず、このマンションへ来るよう指示されていた。娘のためにも秘密裏に解決しなければならない、なんとしても世間に公表させる事はだけは避けたかった。

　響子は、思い切ってインターホーンのボタンを押した。
　玄関は、すぐに開いた。
　玄関に現れたのは、浅黒い顔をした４０代後半の男であった。その奥には、もう一人の男がいた。

　男たちは、川田と森田である、二人とも近くの商店街で小さな店を持つ仲間である。
　数日前、偶然にもレイプ現場を目撃してしまったのである。林の中で、見かけない制服を着た高校生の男女が争っていた。
　とっさに、持っていたカメラで撮影したのは、川田であった。偶然にも、今にも結合しようかという瞬間を女の顔と共によく取れていた。
　しかし、そのレイプは未遂に終わったようであった。
　興奮しきった男は、行為の前に勢いあまって発射してしまったのである。
　このときを、逃さなかった女は、男を振り払い必死に走って逃げさった。
　男も、悲しい足取りで女を追うこともなく去っていった。
　川田たちは、現場に向かった。
　そこに、赤い小さな手帳が落ちているのを見つけたのは、森田であった。
　生徒手帳のようである。
「これは、面白い事になりそうだぜ、森田さん」と言ったのは川田であった。
「何が面白いんだ、たかが高校生のレイブ未遂じゃないか」・・・・

　翌日二人は、手帳にあった住所に出向き家族を確認した。
　買い物に出かける響子を見た、美人である。
「やろうじゃないか、おまえの計画どうだ川田」
「いい女じゃないですか、森田さん」
　そして、とうとう、この日がやって来たのである。