７．

　俺は泥のように眠りにつ落ちた。涼子が股間に飛び散ったの俺の精液を洗いに風呂場に行ったところまでは覚えていたのだが…
「起きて！起きて！」
　涼子が俺を揺り起こした。
「おかあさんが…おかあさんが…」
　泣きじゃくりながら一生懸命に紙切れを見せようとした。
　奇麗な女性らしい文字で書かれてあった。

　これ以上、あなたに迷惑をおかけするわけにはいきません。
　警察に出頭します。昨日のことは私一人でしたことにしてください。
　
　少しの間だけ涼子のことをお願いします。
　ごめんなさい
　　　　　　　　　　玲衣

　どうやら、俺に被害が及ぶと考えたのだろう。
　でも、まだ外には組関係の奴らがうろちょろしているはずだ。
　俺は別に熱血漢でもないし正義の味方でもない。なにより喧嘩は弱い。昨日のアパートでの一件は偶然が重なっただけだ。
　あのヤクザ、もしかしたら死んでいるかも知れない…殺人罪をかぶせるわけには行かない。
　考えるより先に身体が動いてしまった。

　置き手紙を読むまで名前さえ知らなかった母親の、可愛らしい顔が思い浮かんだ。
　罪を被らせるのも、ヤクザに捕まってひどい目にあうのも阻止しなければならない。

「涼子ちゃん、お母さんを助けに行く。涼子ちゃんはここにいて待っていて。できる？」
　涼子は懇願するような瞳で俺を見つめて頷いた。
「涼子、ここで待っているから、お母さんを助けて！」
「もし、6時間経っても帰ってこなかったらホテルの人に言って警察に連絡してもらうんだ。できる？」
「うん。」
　か細い身体を強く抱きしめて耳元で言った。
「大丈夫だよ。心配しなくていい。必ずお母さんと一緒に帰ってくるからね。」
「うん。」
　俺はホテルの人間に気付かれないように注意しながら、ホテルを出た。

　とりあえず近くの警察に行こう…　
　なんだか、正義の味方になったようで少し調子にのっていたのかもしれない

　その時、猛烈な衝撃を後頭部に感じた。
　地面に倒れるまでの瞬間に、人相の悪そうな男達の姿がチラリと見えた。そのなかに包帯だらけの昨日の男もいた。

　目が覚めたのは、組事務所だった。俺は床に転がされていた。

　母親…玲衣さんはソファーに座っていた。
　俺が目覚めたのに気がつくと、悲しそうな目で俺を見た。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
　俺は何か言おうとしたが口の中が切れていてうまく喋れそうになかった。血の味がしてズキズキと痛んだ。

「お、お目覚めですか。」顎に包帯を巻いた男が近づいてきた。
　ドスっ！
　腹部に蹴りが入った。
　失神しそうになったが、余りの苦痛のためにそれもできずにのたうった。
　昨日、俺がモップで顎を砕いた男がさらに背中を蹴ってきた。
　余りの衝撃で俺はゲロを吐いた。

「やめておけ！」
　貫録のある男が制した。どうやら組長らしい男が俺に近づいてきた。

「この人には治療費と慰謝料をたっぷり払ってもらわなきゃならないんだ。」
「それと、奥さんには借金をちゃんと返してもらわなきゃね。」

　包帯の男は俺の顔を蹴ってから椅子に座った。

「なぁ、奥さん。俺達は親切で金を返してやったんだ。その親切を踏みにじったらダメだよ。」
「それに兄さん、エライことをしてくれたね〜。飯田の顎は整形手術しないともとに戻らんそうだ。」
　飯田という男は笑おうとしたが、傷の痛みでもだえた。

　最悪を絵に描いたような結末だ。　昨日の夜は天国だったのに。

「奥さんは美人だから、すぐにでも借金が返せるのにな〜。ちょっと我慢すれば…３年ほど我慢すれば借金なんかすぐに返せる。」
「この、おにーさんの払う慰謝料も奥さんの稼ぎだとすぐに返せる。」

　奥さんは涙をこらえながらコクリと頷いた。　

「最初から、覚悟をしてりゃ、こんなことにならなかったのにな。」
「じゃあ、奥さんが売り物になるかどうかちょっと試させてもらうか。」

　奥さんは震えながらイヤイヤと訴えた。しかし、数名の男に抱きかかえられて隣の部屋につれていかれそうになった。
「おい、遠慮することはない。このおにーさんの前で試していいぞ。」
「いやぁぁ！！！」
　玲衣さんは叫んだ。
　ビリビリ！
　ブラウスが破られた。
　一人のゴリラみたいな男が上着を脱いだ。背中一面に入れ墨が彫ってある。
　数人の男が玲衣さんを押さえ込んでいる。
　唾をぺっと手のひらに吐いて、男は自分のイチモツにこすりつけた。
「やめて！」
　男は俺のほうにいったん振り返った。巨大だった。どす黒く俺の倍以上はある肉棒だった。
　そしていびつな形をしている。どうやら真珠を埋め込んでいるみたいだ。
　玲衣さんは完全に押さえ込まれているのだが、必至に抵抗しようとしていた。
「田中のが入れば、どんな男のものでも大丈夫だ。あとは具合のよさだな。」
　兄貴分らしい男がそういった。組長は、俺の背後でなにかごそごそしていた。
　飯田は笑おうとしてまた苦痛に身を悶えた。
　真珠の男が玲衣さんの豊かな乳房をみて声を上げた。
「へぇ〜　まるで処女みたいな乳首だぜ！」
「やめて、お願いです！やめてください！。」
　玲衣さんは身体をよじろうとしているけど押さえ込まれている。

「田中ちょっとまて、一緒に感じさせてやろうじゃないか。」
　組長は俺のズボンを他の組員に脱がさせた。
　俺も数人に身体を押さえられ、尻を持ち上げさせられた。
　まさか、俺も犯されるのか？
　醜い下半身をさらけ出した組長が俺の腰をつかんだ。
　俺は尻の穴に力を入れた。
「組長、早くしてください、俺、我慢できないっす。」
「まぁ、まて…」組長と呼ばれた男は唾で俺の尻の穴を濡らした。
　ああ、最悪だ…
「組長まだですか、入れちゃいますよ。」
　田中は玲衣さんの足をこじ開けて身体を沈めよう苦労していた。
　玲衣さんが最後の抵抗をしているのだ。
　その時、俺の尻を持っていた組長の手が俺を突き飛ばし、素早く動いて田中の後頭部を杖のようなもので殴った。
「俺の言うことに、はむかうんじゃねぇ」
　田中の後頭部から血が噴き出した。
　組長は倒れた田中の頭を杖で殴り続けた。
「ちょっと目をかけてやれば図に乗りやがって！」
　玲衣さんを押さえつけていた男達が組長を抑えようとした。
　なぜ、組長がそんなに怒っているのかわからない。が、彼の男根はだらしなくしなだれていて子供のように小さかった。

　田中が、うぉお！と叫びながら組長に刃向かった。俺を押さえていた男達も二人を制止しようと力を緩めた。

　組長は杖を振り回して近寄る組員を見境なく殴っている。
　田中は止めに入った男達の顔面をこぶしで殴っている。

　このチャンスを逃したら、最後だ。

　俺は下半身をむき出しのまま、残っている力を振り絞って立ち上がった。
　そしてはだけた胸と下半身を小さな布で隠そうとしている玲衣さんの元に走り寄った。
「行こう！」

　俺は下半身をむき出し、玲衣さんは残った少しの布を身にまとっただけの姿で組事務所のドアから出た。
「あ、逃げる！」
　一人の男が叫んだが、騒ぎにかき消された。
　それでも数人が追いかけてこようとしたので、俺はドアの前にあったモップをノブにはさんでドアが開かないようにした。
　なんだか、モップには助けられるな…
　案外冷静でバカなことを考えている自分に驚いた。
　玲衣さんも俺も恥ずかしいなんて言ってられなかった。
　なるべく人通りの多いところまで玲衣さんの手を引っ張って素足で逃げた。

　俺達は警察官に保護された。
　俺と玲衣さんは別々に事情聴取された。
「事情はわかりました。あなた達の行っていることは間違いありませんね。」
　刑事さんが表情を和らげて部屋に入ってきた。
「ホテルで待っていた娘さんも保護しましたよ。」
　俺は警察から借りていた服に着替えて取調室から出た。
　玲衣さんも警察から借りたのだろう。地味な服装で涼子ちゃんと廊下で待っていた。
「あいつらのことなら大丈夫です。大勢のけが人を出しているし、マル暴に連絡してあります。」
「あなた達に近づいただけで、すぐに動くからと脅しておきました。」
「それに奥さんの借金も法定利息以上だ。これ以上びた一文も返す必要はない。なんなら、過剰利息分の返還請求を出しておいた方がいいな。」
「そうしておけば、奴らは絶対に近づかないはずだ。」

　俺達は何度も頭を下げながら警察を出た。

　玲衣さんは緊張が解けたのだろう。ぼろぼろと涙を流しながら俺の右腕を強く握った。
　涼子は左腕にしがみついてきた。

　俺はアパートに戻って部屋を片づけた。俺は引っ越すことにした。玲衣さんと涼子ちゃんの母娘も引っ越すだろう。
　警察はああいったけど、手続きが済むまで安心できないと思ったのだ。
　実際には、あの組事務所では組長が田中に殴られて重症になったらしい。あの二人は愛人関係だったと警察の人は苦笑いしながら説明してくれた。

　荷物をまとめたけど、俺には金もなければ行くあてもない。組立工場の期間従業者の申し込みを考えていた。
　そうなると寮暮らしだ。金を貯めてやり直すことができる。身も隠すことができるだろう。
　でも母娘はどうするつもりだろう…
　二人を養うだけの力がないのが残念だ。涼子の青い色香と玲衣さんの熟した色気には未練いっぱいだが、どうしようもない。
　それに、どちらか一人を選ぶこともできない。
　母娘関係も壊したら可愛そうだ。
　俺らしくない考え方で、性欲を抑えようとしていた。

　トントン

　部屋の薄いドアが揺れた。
　奴らの仕返しか？　俺はあまりの驚きで飛び跳ねた。
「どちらさんですか？」
　俺は逃げる体勢でドアむかって震える声で返事をした。
「あのう…私です…すみません。入れてくれませんか。」
　玲衣さんだった。

　化粧も落ちて髪の毛もバラバラのままで精も根も尽き果てた姿を想像していたが、玲衣さんは身なりを整えて薄暗いドアの前で立っていた。
　化粧をしなくても充分に可愛らしいのだが、薄化粧をして清潔な感じの服に着替えていた。
「警察から借りた服をいただけませんか？　明日、私が返してきますから。」
　なぜか、俺から視線をはずしたままで小さな声で言った。
　あんな、あられもない姿を見せたのを恥ずかしがっているのだろうか？
　俺はなにもなかったように明るい声で言った。
「明日、一緒に返しに行きましょうよ。みずくさいな。」
　玲衣さんは後ろ手にドアを閉めて部屋に入ってきた。
「やっぱり、引っ越すんですか？」
「うん」
　二人の間に気まずい空気が流れた。
「涼子ちゃんは…涼子ちゃんはもう寝たんですか？」
「はい、いろんなことがあって…　あの娘には心配かけて…可愛そうに…」
　小さく声を震わせて泣きそうだった。
　俺はまた明るい声で言った。
「とにかく、めでたしめでたしです。警察の言うことは信じていいみたいですよ。」
「じゃぁ、どうして引っ越すんですか？」
　蚊の鳴くような小さな声で玲衣さんは言った。
「だって…」
「おかしいかも知れないけど、私、あなたに助けてもらって…」
　しどろもどろになりながら訴えようとしていた。
　俺は玲衣さんを引き寄せて抱きしめた。
「ごめんなさい…」
　玲衣さんは弱い力で俺を引き離そうとした。
　俺は強く抱きしめた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
　そういいながら俺の背中に腕を回してきた。

　ふくよかな胸が押しつけられた。家の洗面所ででも身体を洗ったのだろう。石鹸の匂いが立ち上る。
　小さなアゴに手を添えて可愛らしい顔を持ち上げた。目を閉じて少し身体を震わせている。
　まるで少女のようだ。
　耳を軽く噛むと身悶えた。

　あぁん

　息を吹きかけたり、舐めたり噛んだりすると、どんどんと玲衣さんの身体の力が抜けていく。
　たたんであった、せんべい布団に玲衣さんの上半身を預けるようにした。

　ブラウスのボタンをはずして、ブラジャーをはずして豊かな胸をあらわにした。ピンクで小さな乳首がびんびんに立っている。
　口に含むと　俺の頭に手を回して引き寄せた。

　あぁん

　身体をくねらせ身悶えている。
　しかし、少女のように恥じらいを残している。右手を口元に持っていき声を押し殺そうとしている。

　しかし、俺のほうは昨日からのことが頭の中を駆け巡って行為に没頭できない。
　また、ドアを開けて涼子ちゃんが入ってくるかもしれない。
　昨日からいろんな状況に恵まれているけど、満足いくかたちでのフィニッシュをむかえていない。
　玲衣さんの中に俺を入れたい。そしてこの成熟した身体の中に俺の欲望のすべてを放出したい。
　しかし、勃起しないのだ。
　そのぶん、執拗に愛撫を続けた。こんな色っぽくて可愛い女性が身悶えた姿をみていれば、そのうち勃起するだろう。
　しかし、甘かった。

「おねがい…もっと強く抱いて…」

　懇願する玲衣さんの声がますますプレッシャーになった。
「ごめん、緊張して…ごめん…」
　俺は身体を引き離した。

「そうよね…ごめんなさい、私、自分のことばかり考えて…ごめんなさい…」
　玲衣さんは服を急いで着ようとした。

「ちがう、愛してる。なんか変だけど、たった一日しか経っていないけど玲衣さんのことを愛している。だけど…」
「無理しなくていいの、ほんとうにごめんなさい…」
「勘違いしないでよ。玲衣さん、俺、玲衣さんを幸せにしたいけど…」
「けど…なに？」
「いろんなことがあっただろう。身体もこころもショックを受けているんだ。」
「玲衣さんみたいに美人で可愛くて素敵な女性が、俺なんかに好意を寄せてくれているなんて信じられないし…」
「もしかして、今日の出来事で玲衣さんも冷静じゃなくなって俺に抱かれようってしているんじゃないかと…」
「俺のほうは、前から玲衣さんのことみて、素敵な女性だなぁ〜って思っていたけど…」
「それに、俺、定職ないし。」「引っ越すのも寮があるってことで期間契約社員だし…」
「組長にオカマ掘られそうになったし。こわかったし…」
　俺は思いつく限りの言い訳を続けた。
　どれも本心だった。そのうち、とまらなくなってしまった。
「涼子ちゃんも可愛いし、玲衣さんとならずーっと抱きあっていたいし…警察からの帰りに、このまま親子になれたらなぁ〜って思ったし…」
　玲衣さんはじーっと俺の顔をみつめていた。
　さすがに涼子ちゃんとの部分は隠すことができたけど、それ以外の自分の気持ちをすべて吐き出すことができた。
　玲衣さんはブラウスのボタンを留めようとしていた手で、ボタンをはずしはじめた。
　ブラジャーをはずすとあの豊かな胸がぷるんとはじけた。
　立ってスカートをおろし、薄いパンティーを脱ぎ捨てた。
「あなたが本気で私を好きなら…今夜だけでも私を幸せにして。」
「え？」
「もしかしたら、あなたのいうとおり私は今日のことで気が動転しているのかも知れない。」
「でも、あなたが私を…私たちを助けてくれて感謝しているの。そして感謝の気持ちを伝えたいの。」
「あなたを愛するかどうかはわからない。前の夫に裏切られてから男なんて信用していないから。」
「でも、今夜はあなたに抱いて欲しいの。私を幸せな気持ちにして欲しいの。」
「それ以上は望まない。お願い、今夜一晩、私を幸せな気持ちに浸らせて。できなくてもいいの、抱きしめてくれるだけでも…お願い…」
　表情は笑っていたが、大きな瞳からはポロポロと涙がこぼれ落ちた。
　成熟した身体の上に、少女のような表情をして泣いている玲衣さんを愛おしいと思った。
　そう、15歳の娘の母親には見えなかった。まるで少女だ。
　それもとびきり上等の美少女だ。身体の線は崩れていない。
　豊かな胸とくびれた腰。背は低いのだが小さな顔なので均整がとれている。涼子の少女っぽい身体とは対局にある美しさだ。涼子は美人な顔なのに15歳には見えない幼さが漂っている。
　その母親は、成熟した身体にアンバランスな少女のような顔で幼さを持っている。

　俺は玲衣さんの身体をお姫さまのように抱き上げてキスした。
　そして、俺が寝ころんで、そのうえに玲衣さんを騎乗位のかたちで座らせた。
　玲衣さんは俺の顔をみた。ギンギンに膨張した肉暴が玲衣さんのあそこを圧迫しているのを感じたのだろう。
　涼子ちゃんには悪いが、ほんとうに玲衣さんを愛しはじめていた。
　今晩一晩でもいい。おれにとって人生最高の夜にしようと思った。