１．

　ナツミは都内の有名私立女子校に通う、高校１年生だ。さらさらのセミロングの髪が華奢な白い鎖骨に絶妙な長さでかかり、あどけない少女にそこはかとない色気を感じさせる。
　幼い顔の割には白い夏服のブラウスを押し上げる胸はなかなか豊かで、ブラジャーの線がうっすらと透けて見える。

　ナツミは今時の格好をしていても、どこか清楚な感じが漂う美少女だった。透き通るような白い肌と、黒目がちの瞳がそんな印象を与えるのかもしれない。すらっとした足を、惜しげもなくさらしているが、制服のチェックのスカートは下品なほど短いわけではない。

　いつもの朝、通勤客でごったがえす電車にようやく乗り込んで、ナツミはほっと一息ついた。夏になると満員電車は特に苦痛だ。汗で濡れた乗客の腕同士がぶつかったりなんてした日には本当にぞっとする。

　暑苦しいおじさん達に囲まれるよりも、体半分ドアの方がまだマシと思って、ナツミは最近、いつも同じ乗車口のドア付近に乗っている。しかもナツミのいる右側のドアは、いったん閉まると３０分は開かないのだ。
　冷たいドアにくっついて力を抜いていると、いくらか気分がすっきりする。高校生になって都心の学校に通うようになってからまだ3ヶ月、満員電車にはなかなか慣れない。

　しかし、今日は、いつもと違った。
（ん！？）
　ナツミのスレンダーなむきだしの太ももの間に、何かがするっと入り込んでいる。超ミニというほどではないけれど、膝上２０センチのスカートがまくりあがってるような気がして落ち付かない。
（気のせい？後ろの人の荷物が入っちゃったのかな……）
　ナツミは身動きせず、しばらくうつむいてじっとしていた。それがいけなかったのかもしれない。
　ナツミが抵抗しないとわかると、おもむろに生暖かい感触が太ももにじかに触れ、いやらしい動きを開始しだしたのだ。

（チ、痴漢だ……！）
　初めての経験に、ナツミはますます身を硬くする。パニックしながらも、思考はぐるぐると回る。
（どうしよう！？この人痴漢ですって、言おうか！？）
（で、でも、そんなことしたらあのコは痴漢されたコだ、っていう目でみんなから見られるんだ……。制服で高校名だってばれるかもしれないし……。）
（それに、もし痴漢だって告発して、後で仕返しとかされたらどうしよう！？）

　ナツミはその間もじっと耐えていた。身じろぎ一つできなかった。無理もない。高校生になったとはいえ、3月生まれのナツミは、まだ15歳になったばかりなのだ。
（あっ、）
　お尻をなでまわしていた骨ばった感触のいやらしい手が、スカートをかきわけて手前に回ってくる。
（だ、だめっ）
　ナツミの心の叫びも虚しく、容赦ない手が、ナツミの一番敏感な部分をつっ、と弾いた。
　ひくっ。
　ずっとうつむいていたナツミの顎が瞬間的に思わず上がった。
　ナツミは真っ赤に頬を染めて、あわててうつむき直す。冷たいドアに額を冷やすようにくっつけて、気持ちを落ち付けようとしたけれど、無駄だった。
　痴漢が、ナツミのあからさまな快感の表情に気を良くして、欲望を満たす動作を遠慮なく開始しだしたからだった。

　背中からしっかりと抱え込まれ、スカートの中をまさぐられる。薄い下着の上から、スリットをやわやわとなでられ、あそこがじっとりと濡れてくるのがわかった。
（あっ……、はぁ、はぁ……。濡れてきちゃった……どうしよう……恥ずかしいよぉ……）

　停車駅はまだ先だ。逃げることも叶わない。
（やっ……）
　突然の、予期していなかった感触に、ナツミはびくっと身をすくめる。痴漢の開いていたもう一方の手が、ふいにナツミのみぞおちから右胸の方へと、なでまわすように進路を進めてきていたからだった。いつのまにか、ブラウスがスカートから引き出され、じかに侵入してきた手が、１５歳とは思えない、ナツミの豊満な胸を揉みしだく。
　大きな胸をしっかりと包みこむ、フルカップのブラジャーをおもむろに押し下げられると、すっかり立ち上がった乳首がはちきれんばかりに飛び出してきて、薄いブラウスを押し上げたのがナツミにもわかった。

（やあんっ）
　痛いほどにとがった乳首をきゅっとつままれ、ナツミは身悶えした。ナツミの感じやすいところを攻めあげる痴漢の動きは容赦がない。上と下から敏感な性感帯を刺激されて、ナツミはもう限界だった。
（もっ、もう、だめぇぇ……変になっちゃう、んっ……はぁんっ）
　だが、これだけでは終わらなかった。

（う、うそ）
　ナツミの愛液でびしょびしょになった下着が一瞬の隙を突いて押し下げられ、骨ばった指がじかにもぐりこんできたのだ。
「んぁっ」
　ぬちゃっという音が聞こえた気がした。抑えきれない声が漏れてしまう。
　今までとは比べ物にならないくらいの刺激に、びくんっと体がはねあがる。

　下着をくぐりぬけてきた指はしばらくナツミのスリットにそって指を上下し、これ見よがしに愛液を指で掬い取るような動作をする。ナツミは男に「この淫乱な女め」、と笑われているような気がした。
　だが痴漢されて、自分のあそこが異常なくらいぐしょぐしょに濡れているのは事実だから、ナツミは羞恥に唇をかみしめるしかない。

　痴漢はナツミの一番敏感な部分に掬い取った愛液をぬりこめるようにした。いきなりの強烈な刺激に、ナツミは「あんっ」という抑えきれない声をもらし、びくびくっと体を痙攣させる。
（あっ、あん、はっ、はぁっ……やっ……ど、どうしよう声がでちゃう……やっ）
　じかにクリトリスをこねまわされ、ナツミは立っているのも精一杯だった。
　
　ナツミのすぐ右隣りに陣取っていたサラリーマンの中年男性が、明らかにこちらを窺っていた。ナツミが痴漢にあっているのはわかっているだろうに、とがめるでもなく、興奮した表情であからさまに盗み見ている。
　桃色に上気した頬で眉根をよせ、切なげな息を吐くナツミの痴態を見せられればそれも、無理ない話だった。
（あっ、やっ、はぁっ……も、もしかしたら、とんでもなく、はあッ、淫乱な女のコだと、思われてるのかも……）
　羞恥心で死にそうになりながらも、頭の中が白くなって、もう何も考えられない。ナツミは息を荒げ、びくっびくっと小刻みに体をゆらすことを止められなかった。

『次はー、白井坂ぁー、白井坂でございます。長らくのご乗車、お疲れ様でございました。お忘れ物のないよう……』
　到着の駅を知らせるアナウンスにナツミはようやく我に返る。いつのまにかブラウスはスカートの中にしまわれ、先ほどまでナツミの秘所を思う存分蹂躙していたいやらしい手は、跡形もなく消えていた。
　今振り返れば、きっと犯人がわかる。だが、ナツミは恥ずかしさと恐怖で、自分を好き放題した男の顔を結局見ることはできなかった。

　ドアが開き、乗客達がいっせいに押し出される。
　いつもの朝の情景。一瞬、白昼夢でも見ていたのかと錯覚しそうになる。だが絞れそうなぐらいぐっしょり濡れてしまった下着の感触と、内部から湧き上がって来る体のうずきが、これが現実に起きたことだと主張していた。

「また明日、同じ場所で。花野女子高の雪村ナツミさん。」

　フラフラと歩き出していたナツミは、背後からかけられた信じがたい言葉に、雷に打たれたように振り帰った。だがそこには皆同じにしか見えないスーツ姿に身を包んだサラリーマンの群れがあるだけで、ナツミは茫然自失するしかなかったのだった……