| ８．苛立ち 智香子は久しぶりの腕枕に頭を乗せ、徹に寄り添うように抱かれている。 「もぉ、、、」 照れつつも頬を膨らませながら、智香子は徹に抗議の目を向ける。 「ん？」 笑いながら、徹が応じた。 「あんな風に、、、恥ずかしいじゃない、、、」 「良いじゃない。夫婦なんだから」 「だって、、、」 「痴漢に襲われて声を上げなかったら、こんな風になるよって言う、、、」 「ばか、、、」 智香子は徹の体に顔を埋めながら、すっかりしぼんだペニスを抓った。 「痛たたたっ！」 「変な事した罰です！」 「智香子だって感じたくせに」 「感じたなんて、、、ばか！」 智香子はクルッと体の向きを変え、徹に背を向けた。 「怒るな、怒るな」 徹は笑いながら智香子を後ろから抱き寄せた。 「何か変なモノがお尻に当たってるんですけど、、、」 「ん？痴漢じゃないの？」 二人は小さく笑い、裸のまま眠りに付いた。 「えっ？送別会？」 「えぇ、テニスの橋本さんが旦那さんの転勤で」 「そうなんだ。行ってくれば？こっちは大丈夫だから」 「うん、、、」 智香子は夫の言葉を思い出しながら、着替えを始めた。 いつもならジーンズを基本にするのだが、送別会の事を考え服を選ぶ。 「ん〜〜〜」 ふわっとしたフレアスカートにブラウス、黒のパンストを合わせタンスから取り出す。 久しぶりの飲み会に少し浮かれながら、着替えを済ましジャージとラケットをバッグに詰めた。 「良し、、、忘れ物無いわね、、、」 いつものように出かける準備を済ませ、智香子は駅に向かった。 「来た来た、、、んっ？？」 体育館の見える公園で待ちかまえていた菅原は違和感を覚えベンチに座り直した。 いつもなら挨拶を交わしそれぞれ別れ、智香子は駅に向かうはずだった。 智香子の服装もジーンズ姿ではなく、スカートを履き４〜５人で固まって駅に向かう。 「、、、、ちっ」 菅原は智香子の混じる集団に気付かれないように、首を傾げながら後を追った。 「、、、なんだ？何かあるのか？」 駅に着いた集団は、何時もと逆方向の電車に乗り込み智香子もそれに習った。 夕方の上り電車は混雑も少なく、奥様連中がワイワイと話を続ける。 4つ目の駅で電車を降りた集団は、駅前の小洒落た居酒屋へ姿を消していった。 「ちっ、、、何なんだよ！」 菅原は周囲の目も気にせず声を発し、電柱に蹴りを入れた。 「痛っ、、、！」 そんな菅原に関わらないように誰もが見て見ぬ振りをして通り過ぎる。 ”畜生！畜生！畜生！覚えてろ！！” 菅原は居酒屋の入り口を睨み、駅に向かって歩き始めた。 ９．接触 檻の中の虎のように行ったり来たり歩き、時計を見ては悪態を付く。 待ち合わせに遅れる彼女を待つかの様に、菅原は駅前で智香子を待ち続けた。 赤く染まった空は、黒い闇に包まれネオンが輝きを増し、人を飲み込んで行く。 「、、、遅い！何時までやってるんだよ！」 見飽きた居酒屋の入り口をもう一度睨み、菅原は再びうろうろと歩き回る。 ”畜生！こっちは無職だってのに、飲み会かよ！” やり場のない怒りが渦を巻き、腹の中で黒く固まり異臭を放つ。 ”畜生！！何で俺ばっかり！” 駅の柱に寄りかかり、腕を組んで居酒屋の入り口を睨み付ける。 「、、、んっ？」 居酒屋の入り口に影が伸び、影に続いて人が出てきた。 一人、また一人と居酒屋の前に集まり、最後に智香子が姿を現した。 「、、、、！」 菅原は柱の影に隠れるように一団が動き出すのを待った。 智香子の一団は輪になり、通行人の邪魔をしながら楽しげに話している。 ”さっさと解散しろよ！何時まで待たせンだよ！！” 菅原の思いが届いたかのように、一人が手を挙げ輪から離れる。 それに続くように、駅に向かって集団が歩き出した。 柱を回り込むように菅原は智香子を見つめ、切符を買うために動き出した。 改札をくぐり智香子は手を振っている。 下り電車に乗るのは智香子ともう一人の女だった。 「ちっ、、、」 菅原は二人の後に続き階段を登り始めた。 数メートル先でお尻が揺れ、スカートから伸びる引き締まった足が階段を上がっていく。 ”・・・・” 無言のまま菅原は後に続き、一つ隣の列に並んだ。 夕方のラッシュほど混雑は無く、所々からサラリーマンの笑い声が聞こえる。 ”何が不況だ・・・酒なんか飲みやがって・・・” 電光掲示板に目をやり、直ぐ来るであろう電車を菅原は俯いて待った。 甲高いブレーキ音と共に電車はホームに入船し、乗客を吐き出しては飲み込んだ。 車内は夕方と違い、サラリーマンの汗の匂いとアルコールの匂いが混じっている。 菅原はドア側に立ち、ちらちらと隣の入り口に立つ智香子達を見つめた。 ”降りろ！さっさと降りろ！！” 小さく笑い声を上げては、周囲を見渡しばつの悪そうな顔をする智香子。 その顔はほんのりと赤く染め上がり、女の色香が漂っている。 気付かれないように智香子を盗み見しながら、妄想の中の智香子に重ね合わせた。 ”直ぐに、いつものように感じさせてやるよ・・・” 智香子を妄想の中で痴漢し、犯し、性を吐き出すのが、最近の菅原の日課だった。 菅原の中の黒い固まりがゆっくりと下腹部に落ち、ペニスを膨らませていく。 電車がゆっくりとブレーキを掛け徐々に速度が落ち、次の駅が間近な事を知らせる。 ”降りろ！降りろ！！” 睨むように智香子の前に立つ女を見つめると、二人は小さく手を振った。 ”良し！！！” ドアが開くと同時に菅原はホームに降り立ち、智香子の立つ入り口へ向かった。 「すいません、すいません！」 半ば強引に乗客に紛れ、割り込み菅原は智香子の後ろに向かった。 「ちょ、、、」 「なに、、、」 乗客達は小さく声を上げたが、それ以上関わりを持とうとはせずドアの方向に向き直る。 菅原は智香子の後ろに立ち、天井を見上げながら心の中でガッツポーズを決めた。 |
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| 2010.6.16掲載 |
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