３　１９９３年８月

　あれから７年が過ぎた。
　午後、空港に着くと、テレビや新聞は一斉に政権交代、新内閣発足のニュースを流していた。インフォメーションカウンターの中で、手持ちぶさたにしている女性係員が、ほおづえをついてロビーのテレビを見ている。篤郎は、空港からすぐにレンタカーで実家に向かった。父がどんな顔をするか想像するとおかしかった。
　父のことは、先月、東京で雅士から聞いた。雅士はいまや地元経済界でも名の知れた若き社長として、全国の青年実業家団体の会合に出席するため上京したのだった。その夜は新橋のバーで互いの近況やら、友人の消息話に花を咲かせた。
　尾崎と小島の不動産会社は倒産して一家ともども夜逃げしたらしいとか、新島館がつぶれたとか、ろくな話もなかったが、不意に、
「ところで、お前の父ちゃん、元気だってな。」
　と言った。篤郎は、雅士から父の話題を振られるとは思わなかったので、
「いや、最近は連絡もしてないが、病気をしたとは聞いてない。」と言うと、雅士は
「違う、違う、そういう元気じゃない。下の方、下の方。」と股間を軽く叩いた。篤郎は眉をひそめた。
「今年か来年還暦だからな。そこそこだとは思うけど、何か噂があるのか。」
「そこそこどころか、絶倫、絶倫。」
「何だい。」
「何だいとは何だい。息子にも知らせてないのか。何十歳も年下の若い女を孕ませたらしいぞ。」
「えっ？」
「やっぱり初耳だったか。いや、事業の方は順調らしいし、地元財界での人望もある。不倫とか、そういうことじゃないし、ああいう艶福家になりたいものだと俺たちの間でうらやましがっているヤツが何人もいるよ。」
「そうかい。いや、訴訟沙汰、警察沙汰になってたら大変だと思って。」
「心配だったら、見に行ってやれよ。」
「どういう女、そいつ？」
「それは知らない。お前の父ちゃんのことだから、身許の固い女じゃないの？」
　そう言って、雅士はゴクリとウィスキーの水割りを飲んだ。篤郎は、その意見には賛成だった。無口で実直な父は、男盛りの時期をずっと独り身で過ごしてきた。当時から女がいたのかもしれないが、息子の自分にはそんなことはおくびにも出さず、浮いた噂一つ立ったことがない。雅士の言っているとおりであれば、それは今の父にとって一番の幸福かもしれなかった。
　実家の近くまで来ると、そこかしこの家の壁や塀に「地元の声を県政へ　まるやま」と書かれたポスターが張ってある。いかつい顔に無理に笑みを浮かべたような表情に篤郎は見覚えがあった。彼は今度は県議選にでも出馬するのだろうか。１５年前の、あのウグイス嬢は今、どうしてるだろうか。そんなことがふと頭に浮かんだ。篤郎は、車を実家の前に止めた。あたりには人影一つない。
　実家の戸口には鍵がかかっており、ここにあるはずの父の車もない。鍵を開けて中に入ってみた。中はむせかえるような暑さで、息が詰まるようだ。冷房のスイッチを入れると遠くでグォングォンと鳴る音がした。冷蔵庫にはビール瓶がいっぱい詰められてはいたが、食料らしいものはない。新聞も洗濯物もない。およそ生活臭というものがなかった。篤郎は、すでに父は愛人とどこか別のところに住んでいるのだろうと思った。近所の人に聞き回るという手もあるが、借金取りでもなし、聞くだけ野暮というものだ。
　篤郎は、しばらく２階の自室でテレビを見ていたが、誰が訪れるわけでもなく、そのうちに日も暮れ、腹も減ってきた。とりあえず飯を食おうと外へ出た。国道沿いのファミリーレストランで食事をしながら、父の会社の工場に寄ってみることを思いついた。中学になってからはほとんど行ったことがないが、小学生の頃までは父について行って、従業員に遊んでもらったものだ。篤郎は、そんなことを思い出した。
　ファミリーレストランを出て、国道を西に向かった。工場のあるはずの近くまで来たが、昔は一面の田んぼであった地域が住宅街に変わっており、とまどってしまう。国道から見えるはずの工場がどこにもない。目印になるものもない。ままよ、と適当なところでハンドルを切り、住宅街の中に入った。ぐるぐる同じようなところを回ったあげく、犬の散歩をさせていた通りがかりの女性に道を尋ね、やっと方向が分かった。
　工場に着いたのは、午後八時半頃だ。篤郎が工場の敷地に車を乗り入れると中はがらんとしていたが、工場の建物の近くに、父の車が止まっているのが見える。その横に車を止めた。住宅街の中を走っているときには気がつかなかったが、このあたりは照明灯も少なく、闇に包まれている。ただ、事務所のある２階につながる階段のところと、それを登り切ったところにある入口の蛍光灯がボーッとついていた。
　篤郎は、カン、カン、カンと音を立てながら階段を上っていった。入り口のガラス戸からのぞくと、事務室の明かりは消えており、扉には鍵がかかっている。
　確か、事務室の奥に、父が仮眠に使ったり、従業員の休養に使われたりする和室があるはずだ。車がある以上、ここにいるはずなのに、この時間、何をしているんだろう。賊が押し入ったか、あるいは急病で倒れたか、少し悪い予感がした。
　そのとき篤郎は、以前父が「お前は一応跡取り息子だから」と、工場の鍵を渡してくれたことを思い出した。それがここの入口の鍵なのかどうかは分からなかったが、ポケットからキーホルダーを取り出し、それらしきキーを選んで差し込んでみると、うまい具合にカチャッと鍵が開いた。
　中からスーッと涼しい風が吹き出してくる。冷房が効いているようだ。篤郎は静かに戸を閉め、暗い事務室の中を一歩一歩注意しながら歩いた。まるで事務所荒らしだな、と自分がおかしく思えた。

　初めは、発情した猫が迷い込んでいるのかと思った。「あーーっ、うおーーんっ」という長い声が奥から漏れている。よく聞いてみると、それは女の声だった。しかも、愉悦の淵をさまよっているときのものだ。篤郎は吸い寄せられるように近づいていき、靴を脱いで和室への上がり口の板間に上がった。そして、慎重に襖を細く開けてみた。
　こちらを向いて父が安楽椅子に腰を下ろしていた。両膝を立て、足を大きく開いている。その足の間に全裸の女が膝をつき、前屈みになっていた。その両手は兵児帯のようなもので後ろ手に縛られている。大きくパンと張った尻の間、ちょうど女陰がある部分に黒いヴァイブレータがぶち込まれており、そこから出ている細いコードはうねうねと伸びて父の手にあるコントローラにつながっていた。
「うぐっ、うほっ、おおーん」
　女の声と上下動するその頭の様子から、その口に父の巨大な陽根をほおばっているに違いなかった。父は椅子の背もたれに身を預け、頭を後ろにそらせて女の奉仕を受けていた。その口元の動きは、ゆっくりと「よし、よし」と言っているように見える。
　快感を受け止めるのに疲れたのか、時折女の腰が下がった。すると、黒太いヴァイブレータが女壺の奥深くに侵入し、その甘美な痛みに女は思わず腰を浮かせ、よじらせるのであった。その動きが父の全身に深い快楽を与えているようだ。
「うおっ、おっ、おっ」
　突然、女は伸び上がり、エロチックにその女体をねじらせ、上下動した。父がヴァイブレータの動きを早めたのだ。モーター音が一段と高まった。
「そら、そら、はなすな。」
　身を起こした父は、女の背中と首の後ろに手を添え、元の姿勢に戻した。そして、今度は両手で女の頭を押さえつけた。
「いくぞ。」
　最初はゆっくり、そしてだんだん激しく自分の腰と女の頭を打ちつけながら、父は頂点へ上り詰めていく。
　低い雄叫びを上げながら、父は果てた。女は、腰から上の部分を激しく揺すぶりながらその後を追った。そして、両膝を横に倒し、頭を父の膝の上にもたせかけて、ハァハァと喘いだ。その横顔に見覚えがある。
　激しい二人の息づかいが静まるのを待って、篤郎は、襖を大きく開け、ずかずかと部屋の中に入った。突然の物音にびっくりして、慌てた女は父にぴったりと身を寄せ、怯えたようにこちらを向いた。父はゆっくり目を開けた。
「よお、帰ってきたか。」
　父は、満面の笑みを浮かべて言った。篤郎は、二人に近づきながら、父に負けない笑顔で挨拶を返した。
「ただいま、父さん。そして、お久しぶりだね、菜都美。」
　菜都美は、誰だか分かると、恥ずかしげに顔を伏せた。しかし、成熟した女体の美しさは隠しようがなかった。ほどよく肉が付いた首から肩に向けてのライン、両の鎖骨が描く曲線、男の目を釘付けにする豊満な乳房、その中央に位置するほどよい大きさの乳輪と乳首、それらが菜都美の呼吸に合わせて動くさまは、むしゃぶりつきたくなるほどキュートだ。そして、胸の下から紡錘形にふくらむ腹部は、その中に新しい命を宿していることを示している。
「今、何ヶ月？」
「６ヶ月だ。」父が誇らしげに答えた。
「いつから、こういう関係に？　もしかして、見合いの前から？」
「まさか。そのずっと後だ。親が破産して家も取られ、行き先がないんで河野の紹介で雇ったんだ。」
　父は菜都美の尻の間に手を伸ばすと、ヴァイブレータを女陰から抜いた。
「はあうっ」
　叫び声を上げて身をよじる菜都美を見ながら父は言った。
「年は取りたくないな。菜都美はまだ気をやっていないんだ。お前、やってくれないか。」
「いいのか？」
「頼む。こんなこと、お前にしか頼めん。」
　そう言ってから、父は菜都美に命じた。
「ちゃんとご奉仕しなさい。」

　篤郎は、服を脱いで菜都美の背後に回る。そして首筋から肩にかけて唇を這わせていく。
「ああ、だめ、そんな」
　他人の視線を感じながら性行為を行うことにためらいを感じたのか、菜都美は逃れようとする。その両肩をがっちり押さえつけ、今度は肩から首筋へと舐め上げた。
「うう、あっ」
　恥ずかしさと新たな快感を感じて、菜都美は思わず悲鳴に似た高く小さな声を漏らした。篤郎は、白い陶器のような柔肌を唇と舌で楽しみながら、十本の指を、女の肩から二の腕へ、二の腕から胸へ、蜘蛛のように這わせていった。
　子を宿し、ふくらみきった両の乳房を手でおおい、揉み上げた。菜都美の極上のバストは、ほどよい弾力と温かさをもっている。少しねじって、ぱっと離すとプルンッと揺れて元に戻る。下に手を添えてユサユサ揺さぶると心地よい質感が伝わってくる。最高だった。
　もうたまらなくなり、篤郎は菜都美を仰向けに転がすと、上にツンとそそり立つ乳房にむしゃぶりついた。女は白い喉元をコクコク動かせながらもう恍惚の表情を浮かべている。コリコリする乳首を口の中で転がしたり、甘噛みすると、「あっあっ」と喘ぎ声を出した。すでに羞恥心はどこかへ消え、快楽へ身を任せ始めている。
「あはうっ、くっ」
　いきなり手を陰裂に突っ込まれ、菜都美の躯は大きく揺れた。ただの一すくいで、十分な量の愛液が手指についてきた。篤郎は、それを両の乳房に塗りたくる。
　それから女体にまたがり、すでに固くなっている男根を乳房の間に横たえた。
「ほう。」
　篤郎が両手で菜都美の大きな乳房を掴み寄せ、肉棒を摩擦させ始めたとき、父は身を乗り出してそのさまを眺めた。愛液はほどよい潤滑油となり、弾力に富み、温かい乳房に包まれ、こすられて、欲棒はビンビンにその体積を増し、熱を帯びてくる。
　篤郎は、精が下腹に溜まるのを感じて、立ち上がり、菜都美の上体を起こした。そしてその前に仁王立ちになった。
「これが欲しいか。欲しくないか。返事しろ。」
　愛液にまみれ、大きく勃起している男根を菜都美の目の前で振り回した。
「はい、ほ、し、いです。」
　興奮でかすれた声で、菜都美は答えた。
「じゃ、しゃぶれ。」
　先ほどの口淫であふれ出た父の精液の痕を口の周りに残しながら、菜都美は篤郎の固いシャフトの先端に舌を絡ませた。それから、少しずつ口の奥へ呑み込んでいく。すばらしい感覚が篤郎の体を走り始めた。父の調教を受けたせいか、男根の愛し方が格段に上手くなっている。チュウチュウ音を立てて肉棒をしゃぶりながら、男の反応を確かめるように、下からこちらに視線を向けている。両手による刺激があれば、すぐに昇りつめ、射精していたことだろう。しかし、菜都美の両手は後ろで固く縛られたままだった。飢えた子供のように欲棒をしゃぶりつくす女の動きに合わせて、愛液がべっとりついた大きく豊かな乳房が品よく揺れている。
「もういい。」
　菜都美の口淫テクニックを十分堪能した後、篤郎はやさしく彼女の頭に手を添えて陽根を口から離した。そして、少し後ろへ下がり、足を伸ばして座った。上体を少し後ろにそらし、両腕で支える姿勢を取った。女から乳房と口の愛撫を受け、これ以上はないというほど勃起した肉剣が、そそり立っている。
　そのポーズのまま、篤郎は菜都美に言った。
「下の口で奉仕しろ。返事は？」
「はい、ご、奉、仕します。」
　後ろ手に縛られた菜都美は、膝立ちのまま、向かってくる。豊満な乳房をブルブル揺らし、柔らかい女体をよじりながらにじり寄るさまは十分蠱惑的だ。父は、女の背後から、その背筋の溝の動き、尻の動きをじっと見ている。
　篤郎の両足をまたぎ、女はこちらに進んでくる。そして、男根の真上まで来ると、腰を落とした。しかし、それだけでは、股間の濡れそぼった花園にうまくそれを迎えることはできない。女は焦らされて泣きそうな顔になり、鼻を鳴らした。
「手伝ってやろうか。」篤郎は聞いた。
「はい、お、願、いします。」
「どうして欲しいんだ？」
「あ、あの、い、入、れ、て」
「何を？」
「うっ、お、チ、ンチン」
「どこに？」
「ううっ、うっ、お、マ、○、コ」
「よし。」
　菜都美が腰を下ろす動作に合わせて、篤郎が片手を肉剣に添えて膣口にあてがってやると、それはゆっくりと女の体内へ没入していく。
「はっあっああ」
　待ち焦がれた快感を迎え入れることができた菜都美は、深いため息に似た声を長々と上げた。いったん男根の侵入を中程で止め、少し腰を浮かし、また戻すというような動作をした。久しぶりに味わう菜都美の肉壺は、熱く煮えたぎっている。媚肉は複雑に肉棒にからまり、無数の触手が蠢いているようだ。
「は、うーーん」
　腰を浮かせて上下動を繰り返していた菜都美は、いまや欲棒の全体を呑み込み、その感触を女陰全体で感じていた。頭を振り、ときには反らし、目を閉じ、歯を食いしばり、かと思うとハァハァと口を開けて喘いだりして性感の炎に灼きつくされていく。
「ああっ、ああっ」
　篤郎が下から腰を突き上げるようにして抽送を始めると、菜都美はその動きに呼応して腰を前後上下に振り出した。髪が大きく揺れ、乳房がタプンタプンと上下に激しく振動する。蜜壺は拡縮を繰り返し、男根は壺の内部を引っかき回し、快感をいやが上にも高めた。精の溜まりが爆発しそうな感覚を覚えた。
　篤郎は、すばやく体をずらして女の股の間から足を抜いた。突然肉棒を失っても、蜜壺は反応を続け、太腿を伝って蜜液が一本、糸を引いて伝わり落ちた。菜都美の躯はぐらぐら揺れ、今にも崩れ落ちそうだ。
　篤郎は、めくるめく快感に気が遠くなりつつある菜都美を抱きとめ、今度は仰向けに寝かせた。その尻に、近くにあった座布団を二つ折りにしてあてがう。そして、篤郎は、菜都美をＭ字型に開脚させて、その花園を露わにした。以前よりも花弁は大きく、びっしょりと甘露を浴びてキラキラと輝いている。中心部に向かって襞が幾重にも重なり、滾々と愛液をたたえている。快楽の真珠は充血して勃起し、ヒクヒクと息づいている。女盛りの頂点を迎えて、菜都美の花園はこの世で最高の淫景を現出していた。
「あ、ああ、あーーっ、う、う、あーーーっ」
　淫秘な部分を篤郎に口で刺激され、菜都美は深い歓喜のよがり声をはばかることなく響かせた。ジュルッ、ジュップッと、愛液を舐りとる音がこれに重なる。
　菜都美が足に力を込め、伸ばそうとするのを必死に押しとどめながら口淫を続けた。
「あっ、あっ、いっちゃう、いっちゃう」
　菜都美は、絶頂に達する後戻りのできない一本道に入ったことを告げた。篤郎は口を離し、菜都美の腹部を圧迫しないよう床に手を突いて、肉剣を熱い火口に押し当てた。
「は、うぅ、きて、きてっ」
　最後の抽送に向かって、肉剣がズプーッと淫肉を切り裂き、中に分け入ったとき、菜都美はうわごとを口にしながら腰を押しつけてきた。ズンッ、ズンッと突き入れると、白みがかったような粘液が放出され、肉棒に付着した。抽送に合わせて菜都美の躯は淫らにしなり、両の大きな乳房がぶつかり合ってパンッパンッという音を出した。篤郎は、胎内の子の父が見ている前で、美しい妊婦を嬲り続けることに、興奮を覚えた。
「あっあっ、もっと、う、かまわないで、もっと、きて」
　菜都美がはね上げられた両足をバタバタさせて、もっと深い結合を求めてきた。
　篤郎はその淫靡な言葉に思わず我を忘れ、女の腰にあてがった座布団をはねのけると、妊婦の上にのしかかり、いやらしく盛り上がった乳房を手でいたぶり、柔肌を舐め回し、肉壺の奥の奥まで肉棒で突きこね回す。
「も、もう、だめ、いく、いくぅ」
　ひときわ高い声を上げて菜都美は体中からどっと発汗し、ギュッギュッと蜜壺を収縮させた。たまらず、ドッと精液が中にぶちまかれ始めた。熱い精の噴射を浴びて、菜都美は長く尾を引く叫び声を上げ、汗ばんだ女体を極限までのけぞらせた。ドピュルルル、ドピュルルルッ、溜まりに溜まった篤郎の精液が菜都美の肉壺に注ぎ込まれていく。急速に萎えてゆく男根を惜しむかのように菜都美は自分から腰を律動させてきたが、力尽き、ぐったりと畳の上に崩れ落ちた。真っ赤に咲き誇った媚肉の間から大量の白い淫汁が吐き出され、次から次へと糸を引いて下に落ち、池となっていく。躯を時折細かく震わせながら、菜都美は絶頂の極みを堪能していた。
「おお、おお、可愛いもんよのう。心底気をやった女の顔は、ほんまに綺麗なもんよ。」
　父が近づいてきて、深い喜悦に打ち震える菜都美の顔をのぞきこんだ。
「ほう、これ、見てみい。よほどよかったんじゃの、よがり乳を噴き出しとるわい。」
　父の言うとおり、菜都美の両の乳首から、薄い乳汁が滴り出している。この上もなくエロチックな光景だ。父は両手を伸ばし、菜都美の胸をまさぐるようにして乳汁をすくい取った。そして、手のひらをお椀のように口にもっていくと、ペロペロ舐めた。
「おお、うまいわ。極上じゃ。」
　顔を上げた父は、満足気に大きな笑い声を部屋に響かせた。

（了）