第1章　大人の契約�@

------ピンポーン・ピンポーン------------ピンポーン・ピンポーン------
「まったく、朝からうるさいな〜」
　大学の授業が休みの木曜日はいつも朝寝をきめこんでいる俺は、この執拗な呼び鈴に目を覚ました。時計を見ると午前10時過ぎた所だ、数回は無視したものの、呼び鈴はまだ鳴り続けている。

------ピンポーン・ピンポーン------------ピンポーン・ピンポーン------
（まったく、誰だよ〜）
　俺はすこし腹を立てながら、無愛想に部屋の玄関ドアを開けた。

「はい、なんですか？」
　そこには、甘い柑橘系の香りのする女が立っていた。
　歳は30台後半、身長は160ｃｍ前後だろうか、歳の割にスリムで色白、白いブラウスにベージュのジャケット・ショートスカート姿、口元に小さなホクロのある上品そうな女性だ。
　結構、美人だが見覚えはない。
（なんかのセールスかぁ？）
　そう思った次の瞬間

「おはようございます、先生、昨夜、お電話させていただいた田中です。昨日は夜分遅くに無理を申し上げてすいませんでした。でも、どうしてもお願いしたくて今日は、押しかけて参りましたの（笑）」
　この女性は照れ笑いして俺に頭を下げた。

「ああっ！昨夜の田中さん・・・・・」
　俺は、やっと彼女が誰か理解した。彼女は昨夜俺に電話してきた女性だ、いや正確には、田中という中学生の母親である。

　俺は、21歳。身長180ｃｍ、体重75ｋｇ、高校時代は、バスケット部で鍛え体力には自信がある。体力に任せて高校3年には猛勉強をし、おかげで今は、都内の某有名国立大学
に通う3回生だ。
　遊ぶ金欲しさに大学1年の時にアルバイトで始めた家庭教師が評判を呼び、中学生を子供に持つ母親の間では、俺が家庭教師につけば有名高校に合格できるという噂がたっているらしい、おかげで今や月曜日から金曜日まで、大学の授業が終わると、毎日どこかの中学生宅へ家庭教師に行くという忙しい生活を送っている。
　それが原因で、彼女にもふられ、この数ヶ月女と縁がない。

　そんな事とは関係なく、新たに「うちの子供の家庭教師に来て欲しい」という電話は今でも頻繁にかかってくる。もちろん、これ以上家庭教師をやれる時間などなく、それを理由に断っているのだが、こうやって諦めの悪い母親はどこで調べるのかわざわざ俺のアパートまで押しかけてくる。
　今、俺の目の前に立っている田中という女性も、そんな母親の一人だ。ただこの女性が今まで押しかけてきた母親と少し違うのは、美人で俺の好みの女だということだ。

「先生、昨夜お話した後で、私、少し考えたことがありますの、つまり・・・」
　彼女は挨拶もそこそこに、いきなりドア越しに話をはじめた。

「まあ、田中さん、玄関で立ち話もなんですから汚い所ですけど、よかったら中へ入りませんか」
「あら、よろしいかしら、それじゃあ失礼します」
　彼女はそう言って俺に招かれるままに俺のアパートに部屋へ入って来た。俺はとっさにまだ俺の体温で温かいであろうベッドの上に置いてあった自分の下着を慌ててかたづけ、彼女を部屋の中まで案内した。

　俺の部屋は、アパートながら築3年と新しい。1ＤＫといかにも学生用の間取りだがちゃんとシャワーとトイレが付いている。おかげで家賃も結構高いが、これも家庭教師のアルバイトのおかげだ、支払いには困らない。
　玄関のすぐ横にシャワー、トイレがあり、奥に台所と9畳ほどの部屋がある。俺はこの部屋の隅にベッドと机を置き、部屋の真中には小さな透明のガラステーブルを置き、そのまわりの床にクッションをおいて座ることにしている。

「汚いところですが、よかったらどうぞ」
　俺はそのテーブルを指さし、彼女にそこへ座るよう案内した。男臭かったであろう俺の部屋は、彼女の甘い柑橘系の香水の香りに包まれ少しばかり爽やかになった気がする。この部屋に女性が入るのは久しぶりだ。

「まあ、先生、お一人でお暮らしなっているのに綺麗にされていらっしゃるのね」
　彼女はそういいながら、ガラステーブルの横に座った。俺は彼女が座ったのを見届けてから、背中越しに彼女の視線を感じながら、すぐとなり台所へ向かった。

「コーヒー御一緒にいかがですか？僕、今まで寝ていたので、まだ眠くて・・・・」
　そういいながら俺はコーヒーメーカーにコーヒ−豆を入れ始めた。

「あら、そうでしたの、ごめんなさい・・・、あっ、先生コーヒーなら私が入れて差し上げますよ」
　そう言って座っていた彼女は再び立ち上がり台所の俺のところへ近寄ってきた。
　俺の横に立ち、コーヒーを作る俺の手元を覗き込む彼女。
　横に立った彼女にふと目をやると、その豊かな乳房が目に入った。
（いい胸している、90�p以上はあるな、Ｄカップってところか、おもったより背は低いな）

「いや、こんな時間まで寝ている僕が悪いんですけどね（笑）」
「先生、今日、大学は？」
「ああ、今日はお休みです、毎週木曜日は授業がないので・・・」
「まあ、羨ましい・・・大学生ってお休みが多くていいですわね」
「そんな事もないですよ〜、週に1日、木曜だけですよ、それに最近は家庭教師のアルバイトの方が忙しくて、自分の時間はあまりないですよ」
「あら、それなのにゴメンなさいね、押しかけてきちゃって、でもお出かけされてなくて助かりましたわ」
「そうですね、いつもこの部屋にはいない時間ですから、それを知ってこられたのかと思いましたよ」
　そう言いながら、俺は台所の横に置いてあったコーヒ−カップを2つ手に取った。

「先生、後はやりますわ」
「そうですか？じゃお願いしようかな、もうそろそろ出来るはずですから」
　そう言って僕はコーヒーメーカーを指差し、コーヒ−カップを彼女に渡した。目に入った彼女の手は主婦にしては手入れができていて綺麗な手だった。

「じゃあ、先に座っていますね」
　そう言って俺は、台所を離れ、彼女より先にガラステーブルの横へ座り込み、台所に立つ彼女の後ろ姿を眺めていた。

（いい体をしている。子供がいる女性とは思えない程ウエストは引き締まっている、スリムな体つきにしては大きめのお尻が妙に色っぽい、いい女だ）

　しばらくすると、彼女は出来上がったコーヒーを両手に1つづつ持ちテーブルにやってきた。
　女性らしく膝を折りながら丁寧にコーヒーカップをテーブルに置き、テーブルを挟んで俺と向かい合わせに正座した。
　正面に座った彼女を改めて見ると、白いブラウスから薄っすらピンクのブラジャーが透けて見え、その中に隠れた彼女の乳房は、さっき感じたより更に大きく感じる。また口もとの小さなホクロが、妙に色っぽく、彼女の顔を見て話す俺の欲望をそそる。
　さらに彼女の短いスカートは、透明なガラステーブル越しに彼女の白い足のかなりの部分を露出させしまい、もう少しでそのスカートの中が見えそうで、自然にそこへ目がいってしまう。

「あっ、まあ田中さんもどうぞ」
「ええ、じゃあ遠慮なく」
　俺は彼女にコーヒーを飲むようすすめた。お互い一口飲むと、彼女はさっそく話を進めた。

「先生ね、先程言いかけた話ですけど、先生、土日は時間が空いていらっしゃいません？私、土日に家庭教師をお願いできないなあって思いつきましたの・・・・」
「確かに土日は空いていますよ、でも田中さん、せめて土日は休ませてください。昨夜の電話でもお話したように、僕も平日は毎日、どこかへ家庭教師に行ってるんですよ、だからせめて土日ぐらいは休みたいので」
「先生、そこをなんとか・・・なんでしたら授業料、他の人の２倍お支払いしますわ、どうかしら？」
「いやあ、お金の問題じゃないんですよねえ」
「まあそうおっしゃらずに、何とか・・・先生もお若いんだし、土日のどちらか1日お休みしていただいて、せめて1日は、お時間いただけません？」
　彼女はいたずらっぽく笑いながら僕に懇願する。

「いや、僕が若いから土日の時間が必要なんですよ」
「えっ？どうしてですの？」
「いや、土日は彼女とデートなんですよ」
　俺は断りたい一心でそんな嘘をついた。
（まあ、そのうち彼女もまたできるだろうし、その為にも土日は空けておきたい）

「はぁ〜そうでしたの〜、まあ、私、そんな事考えもしなかったわ〜・・・・・そうですわね、若い人にも色々都合はありますわよねえ・・・・・・」
「ええ、だから僕は今までも土日は断ってきたんですよ」
「そう・・・でしたの・・・」
　そう言うと彼女は黙り込んでしまった。
　その困った表情がまた色っぽい。その色気が俺の中欲望を増幅させる。

　しばらく沈黙が続いたがやはり彼女は諦めきれないようで、さらに続けた
「先生、実はうちの子、中学校の先生に計徳高校の合格ラインギリギリだと言われているんです、でも、本人は計徳高校への進学を望んでいますし、ご承知のとおりあそこは大学までエスカレーターで進学できる高校でしょう、大学だって一流だし、後のことを考えれば、どうしても行かせてやりたいんです。ですから私も必死で、何とか助けてやりたいって思っているんですの、だから先生、どうかお力をお貸しいただけません？」
　彼女はなおも、食い下がってくる

「田中さんねえ〜、あそこは超難関校ですよ、その上、受験まであと1年ないでしょ？　時間さえあれば合格まで導く自信はありますけど、もう時間がないですよ」
「ええ、それも承知です、ですから、私、先生に家庭教師をお受けいただけるのでしたら何だってさせていただく気でいますわ、ですから、どうか助けると思ってお願いできません？」

（えっ？「何だってさせていただきます」？そうか、彼女、俺に何でもするって言うのか）

「何でもする」----　その隙だらけの一言が俺の頭の中で繰り返され、やがて俺の彼女に対する俺の欲望を暴走させた。

「わかりました、田中さん、よく分かりましたよ、じゃ1つだけ条件があります」
「そうですか！嬉しい〜！先生。何でもおっしゃって下さい、出来るだけの事はさせていただきます」
　嬉しそうに俺の顔を見る彼女。

「じゃ率直に条件を言いましょう。受験まで時間もありませんから、僕は彼女と合うのをやめて当分、土日の両日を使って家庭教師をしましょう。その代わり・・・・その分、田中さん、あなたが僕の面倒をみてください、これでどうでしょ？」

　彼女は一瞬、意味が理解できず不思議そうに俺を見つめる

「えっ？先生の面倒を見る？先生、それはどうゆうことでしょう？」
「つまり、田中さん、あなたが僕の彼女の代わりになってくださいってことですよ」
「ええっ？彼女の代わり？？」
「つまり、簡単に言えば、あなたが彼女の代わりに僕のエッチの相手になってくださいって言うことですよ、これが僕の条件です。」

　彼女は驚いた顔つきで俺を見ている。俺はさらに続けた
「具体的に言うと毎週木曜日、僕は大学の授業がないので昼間時間があります、あなたは週一回、木曜に、この部屋にきて、僕のセックスの相手をしてくれればいいんですよ。これが条件です、もしダメならというなら、このお話はなかったと言う事にしてください」
　俺は　わざと彼女を突き放すように言った。

（さっき「何だってする」って言っただろ、難しくは無いことだよ、その股間を俺の為に開ければいいだけだよ）

　やっと話を理解した彼女は、俺から視線をはずし、下を向いて、黙り込んだ。

　彼女の様子を見て、俺は正直喜んだ。彼女が断る気なら、すぐに断るはずだ、ところが彼女は断らずに考え込んでいる。
　俺は目の前のその豊満な肉体がもう少しで、俺の手の中に入って来る、そんな気がしていた。

　俺の狭いアパートに部屋の中で、二人の長い沈黙が続いた。