第４章 卍（まんじ）

　次の木曜日、由紀はいつもどおり１０時すぎに俺のアパートにやって来た。いつものように俺の為に食事を作り、俺はその料理を食べ終わり由紀とコーヒーを飲んでいる。時計を見ると１２時少し前だ。いつもならここ時間から由紀とお楽しみの時間なのだが今日はそろそろ、順子が来る。順子が由紀と二人だけの時間を欲しいと言った時のことを考え、俺は予め、由紀に出掛ける口実を作っておく必要があると考えていた。

「由紀、今日は悪いけど、俺、大学でゼミの集まりがあるんだ、だから昼から大学にいかないとならなんだ」
「あら、そうなの。いいわよ、じゃ、私、後でこのお部屋の掃除とお洗濯してから帰るわ」
「ごめんな、先週、言うの忘れていて、家庭教師に行った時も言うチャンスがなかったし」
「いいのよ、気にしなくて、仮にそれを聞いていても来たわよ、ヒロシは最近、私を当てにして掃除・洗濯全然してないんだもん、私気になるわ」
「あっはははは、当たり！頼りにしてます！」
「まあ、私をホームヘルパーさんみたいに思って・・・・・」

------ピンポーン・ピンポーン------------ピンポーン・ピンポーン------

　そう話しをしている由紀の話をさえぎるかのように、玄関の呼び鈴が鳴った。
（順子だ）
　由紀は前回のアキラの一件があって、最近はちゃんと玄関の鍵は閉めている、それでもこの呼び鈴がトラウマになっているのか、少し不安そうな顔をし、俺を見ている。
「僕が出るから、ここにいて」
「ええ」
　そう言って俺は玄関の鍵を開け、扉を開いた、玄関の外には順子が立っていた。
　順子は、いつもと違い今日は綺麗に化粧をし、肩にかかる程長い髪は左右に分けられ、女らしい姿だ。

「おはようヒロシ！先日の-商法総則-の授業ノート見せて欲しいの？上がっていいかな」
「えっ！まあ・・・・いいけど・・・・」
「あれえ〜誰か来てるのぉ？」
　順子は奥の部屋を覗き込みながら、わざとらしく大きな声で俺に話かけてくる

「う・うん、そうなんだ、親戚の人が来てる・・・時々、身の回りの世話しに来てくれるんだ」
「ああ、そう親戚なんだ、じゃあ、気を使わなくも大丈夫ね、書き写すだけ、すぐだからノート貸りていい？」
　そう言って俺より先に部屋に入って行った。順子の後を追うように俺も部屋に入る。

　見知らぬ女性が入ってきて一瞬たじろぐ由紀、しかし順子は由紀に向かって、すかさず
「あっ、初めまして！ヒロシ君のご親戚の方ですね、私、ヒロシ君の単なる友人で中村順子っていいます。念のため、単なる友人ですから誤解の無いように！（笑）」
　そう言って丁寧に頭を下げた。

　由紀もその順子の丁寧さに影響を受けたのか立ち上がり
「ヒロシの・・・お・・・・叔母の田中です、いつもヒロシがお世話になって・・・・ます」
　そう答えた。

「いえいえ、お世話なんてとんでもない、こうやって、いつもヒロシ君のノートを当てにして何とか落第を免れているバカな友人なんです、いつもは大学でノートをお借りするんですが、今日はもう時間なくて、友人にアパートの場所聞いてやって来てしまいました。」
「そうですか、私はいいですわよ、気になさらないで下さいね」
　由紀も、何とか受け答えしている。

　俺はその二人の会話の間に、順子の話につじつまを合わせる為、適当にノートを探し出し、それを順子に差し出した。

「これだよ、どうする？俺、これからゼミの集まりがあって大学に行かなきゃならないんだ、だから、このノート持って帰ってもいいし、叔母がいるから、その間にここで書き写して帰ってくれてもいいし、どっちでも都合にいいようにしてくれたらいいよ」
　もちろん、この提案は、もし順子が由紀を一目見て、気に入らなかったのなら、持って帰ると言って今すぐに帰るだろうし、由紀を気に入ったのであれば、ここで書き写すと言って残るだろと考えて言った提案だ。

　もちろん、順子もそれに気がつき、由紀に見えないよう俺に目配せをしながら
「そうねぇ〜ノート借りたら、また返さなきゃならないし、面倒だから良かったらここで書き写させてもらっていいかなあ〜、叔母様は迷惑じゃないですかぁ？」
　そう言って由紀の方を見て反応をうかがった。

「私は、いいわよ・・・お邪魔じゃなかったら、私も掃除と洗濯をする時間はここにいますし」
「そうですか？じゃあ叔母様、二人でヒロシ君が帰ってくるまでお留守番してましょう！（笑）」
「はい、そうしましょう（笑）」
　由紀も明るく順子に答えた、どうやらお互い好感を持ったようだ。それどころか、順子は俺には目もくれず、ずっと由紀を見つめている、その様子をみて俺は出掛けることにした、もちろん、約束の２時間をつぶす為なのだが・・・・

「じゃあ、俺はゼミの集まりに行ってくるよ、そうだな２時間くらいで帰れるかな」
「うん、じゃあ、ヒロシ君が帰って来るまでには、ちゃんとノート書き写しておくから」
「ああ、俺が帰る前に書き写し終わったらノート置いて帰ってくれて、いいよ、それと由・・・・・・叔母さん、叔母さんも中村さんの用事が終わったら先に帰ってくれていいですから、掃除・洗濯は無理しなくていいですよ」
「ええ、できる限りはしておきますから・・・気をつけて行ってらっしゃい！」
「はい、じゃ、後はお願いします」
　そう言って俺は自分のアパートを出た。２時間・・・・近くのパチンコ屋くらいしか時間つぶしの先は思い当たらなかった。

（しかし、順子の奴、取り入るのがうまい、すくなくても由紀は順子に好感をもってたようだし、順子の様子からして由紀は好みのタイプだって感じだ。まあ、この先は二人にまかせるとしよう、もう俺の出る幕じゃない）

　俺はパチンコ屋に入り、時間をつぶした。しばらく夢中になって打っていたが持ち玉を使い尽くして、気が付くと２時を回わっていた。約束を果たしたと思った俺は自分のアパートに向かった。

　アパートに戻り、扉を確認すると鍵がかかっていた。
（まだ二人ともいるんだ）
　そう思いながら俺は鍵を開け、静かに玄関のドアを開け、部屋に入ろうと靴を脱ごうとしていると、中から由紀の悶える悲鳴のような大きな声が聞こえた。

「あぁぁ〜はぁはぁ〜あっあっぁぁぁ・・・・・・あぁぁぁ〜！！」

（えっ！まさか・・・・）

「由紀・・・はぁ〜はぁ・・・・いいでしょ・・凄く感じたでしょ・・・はぁ〜はぁ・・・はぁはぁ〜」
　続けて今度は順子の激しい息遣いと声がする。

　俺は部屋に入るのを一瞬ためらったが、俺のアパートだ、俺が遠慮する必要はないそう思い直して部屋に入って行った。
　
　部屋に入ると、俺のベッドの上で、裸になった由紀と順子がからみ合っている、由紀はベッドに横に寝かされ、片足を順子に持ちあげられ股間を広げられている、その広げられた由紀の股間に、両足を広げた順子が自分の股間を密着させ、お互いの性器を擦り付けあっていた。
　順子が腰を動かすたびに、その密着した部分からはグチャ・グチャと粘膜質な液体が音を立て部屋中に響きわたっている。

「お・・・おい・・・順子・・お前・・・」
　俺の声に、ボーッと虚ろな目をし、激しい息遣いの順子が振り返る

「あら・・・早かったじゃない・・・はぁはぁ・・・」
　順子の前に横に寝かされている由紀は、口からよだれを垂れ流し、激しい息使いで意識もうろうとなっていて、目は見開いたまま、ぼんやり横を見ていていて全く動かない。
　俺に気がつかないのか？

「おおい・・順子・・・もうそんなとこまで・・・いったのか？」

　俺の問いかけに順子は、まだ激しい息遣いで
「ええ・・・・はぁはぁ・・・ご覧のとおりよ、たった今失神しちゃったみたいだけど・・・ヒロシのセフレ・・・・凄く感度いいね・・すっかり楽んじゃったわよ・・・。由紀さん、こんなに乱れて・・・はぁはぁ・・・・なんか凄い・・・私もすごく・・・興奮しちゃった・・・こんなの初めてよ」
　満足そうに答えた。その上で

「あぁぁぁ〜喉渇いちゃった〜お水・・・お水少し・・・飲ませて休ませて・・・はぁ・はぁ・・」
　そういって順子は裸のまま、無造作のベッドから降り、俺の横を素通りして台所に向かうと水道の蛇口に直接口をつけ、うまそうにゴクゴクと水道の水を飲んだ。

「あああああっ〜生き返るぅ〜〜最高・・・・」
　俺はこの様子に戸惑いながら順子に話かけた

「順子、お前・・・こんな短時間に・・・・」
「ええ・・・あたしも、今日、ここまでの関係になるとは思ってなかったわ、ベッド汚しちゃったかもね・・・ゴメン！」
「それはいいけど・・・・おまえ・・・凄い奴なぁ・・・」
「違うの！・・・ちゃんと話すから・・・ちょっと待って・・・」
　順子は深呼吸して再び話始める

「ヒロシ、あなた由紀さんがレズの経験あるって知ってた？」
「えっ！そんな話、今、初めて聞いたよ」
「そうでしょ、あたしもびっくりしちゃった。ヒロシが出掛けたあと、由紀さんからヒロシと私の関係を聞かれたの・・・もちろん正直に単なる友人って言ったわよ、ついでに私はレズで男性に興味ないから誤解しないでってこともね、そしたら由紀さん学生の頃、レズ経験があるって言い出して・・・・後はわかるでしょ、もともと私はその気だから強引にキスしてみたら、全然抵抗しないの・・・後はご覧の通りよ（笑）・・・・・・・・バイね、この人」
「バイ・・・？」
「そう、バイセクシャルってこと、つまり男性でも女性でもどちらでもＯＫってこと、自分を悦ばしてくれる相手なら性別は問わないってタイプよ」
「そ・そう・・・なのか・・・なんか凄いな」
「言っておくけど、そういうの別に変じゃないわよ、Ｈ好きの女はそんな人が多いのよ・・要は肉体的に満足できればいいのよ・・・ねぇ、それよよりシャワー借りていい？」
「ああっ・・・いいよ・・・そこ・・そこの扉・・・」
「サンキュウー！じゃ遠慮なく！」
　そう言うと悪びれた様子も無く順子は浴室へ入って行った。