| 登場人物 下海 麗子（２８）・・・警視庁一の美貌とスタイルを兼ね備える美人潜入捜査課課員。配属一年目であるが、数々の潜入捜査で功績を挙げた知性、運動性に優れる切れ者だ。それが故に上司ともよ く衝突していた。 相川 係長（４５）・・・警視庁、潜入捜査課係長。現場からの叩き上げで係長に昇進。キャリア組の麗子を好まず、よく衝突していた。職務を利用し、麗子を罠に掛けるべく画策するひどい男だ。 鈴木 課長（４４）・・・警視庁、潜入捜査課課長。庁内随一の好色男と噂される程の好き者だ。仕事は、ほとんど相川係長に任せきりだ。 飯坂 英二（４０）・・・広域暴力団金高組幹部。表では、合法のクラブ「ルシャンテ」を経営する傍ら、地下では違法な高級ＳＭクラブを経営していた。その収益のほとんどは組の運営に廻されていた。地下のクラブでは、相当な悪事が行われているにも関わらず、情報提供者のお陰で、難を逃れている。 桜井 健一（３０）・・・警視庁潜入捜査課課員。検挙率では麗子と並ぶ、優秀な捜査員。相川係長の癒着を見抜き、偶然にも麗子を救い出す。 騙された女潜入捜査員 プロローグ 庁内で職場に向かうべく、さっそうと歩く麗子の心は、ウキウキしていた。警視庁潜入捜査課、下海麗子だ。その職務がら、検挙した刑事こそ公表されないが、麗子一人で今月に入り二件の検挙を上げている。「フン、係長の沈んだ顔が目に浮かぶわね」 肩過ぎまである髪をなびかせ、豊かな胸を隠す黒いＴシャツに、くびれた腰を隠すグレイ色の七分袖ジャケットにパンツを穿き、職場に急いだ。 職場では、麗子の直属上司である相川係長が、デスクで書類の整理に追われていた。麗子が入ってきても無視である。その方が麗子も気楽であった。 キャリア組の麗子と現場からの叩き上げできた相川は相性が合わず。お互いが嫌っていたのだ。 その夜、今は使用されていない工場跡のガレージ内で、エンジンが掛かったままの一台の車が止まっていた。その車内では、まさに密談が行われていた。 「例の件は、頼むよ。あの女、目障りなんだ」 「いいですよ、他ならない旦那の頼みだ。どんな女でも腑抜けにしますよ。けど、これからもいろいろ頼みますよ。旦那と俺は、一蓮托生なんだから」 「あぁ〜、解ってる」お金の入った分厚い封筒を受け取った男は、車から降り立った。薄暗い照明に浮き上がったその顔は、間違いなく相川係長であった。 第一話 潜入命令 警視庁内の一室にある潜入捜査課は、職務の特殊性から、誰も近寄れぬ地下に配置され、案内板も室内明示もなかった。その捜査員は、庁内から選りすぐりが集められ、その正体もカモフラージュされ非公開であった。 この三日間事件もなく、デスクで書類を読む麗子は、暇を持て余していた。事件がないと言うことはいいことだが、麗子に暇は似合わないし、嫌いでもあった。 そんな時、「下海くん、来てくれ」係長が無愛想に呼んだ。 麗子が呼ばれた取り調べ室の一室に、鈴木課長も同席していた。この鈴木課長、庁内一の女好きで有名な男なのだ。彼女はこの課長をも嫌っていた。現に入ってきた麗子の身体を上から下まで卑猥に嘗め回わし見るのだ。その目を潰してやりたく思う彼女であった。 この課長に係長もいれば、必ず潜入捜査の話だ。 「下海くん、すまんが今回も頼むよ。君にしか出来ない仕事なんだ」鈴木課長が切り出した。そして、詳細は、相川係長が話す。 「君も知ってると思うが、暴力団金高組が○黒で経営するクラブ「ルシャンテ」なんだ、裏で非合法な営業していると言う情報があったんだ。そこで、君にここへ入って貰い、情報を集めて貰いたいんだ」麗子が係長の話を片耳に入れながら、書類をあさり出し、読み始めた。 「ただ、今の状態は、よくない。それからの情報が上がってこないんだ。チェックが 厳しくて、危険な状態かも知れない。それに情報の伝達が難しいんだ。もしかした ら一人で逃げるはめになるかも解らない。やめるなら、今のうちだよ」麗子が否と言わぬ性格を読んだ上で言っているのだ。皮肉な男だ。それに、そんな事、今まで何回も麗子は遭遇していた。 「解りました。やります」麗子がきっぱり言った。 「そうかい、なら、君のカモフラージュだ。読んどいてくれ。すぐにでも頼む。情報の伝達は、後々考えるよ」二人の男がそそくさと出て行った。 「えぇ、何、安藤智世28歳、買い物好きで五百万の借金、住所、東京都西区・・・」 その夜、自宅でシャワーを浴び、準備の終えた麗子は、目的のクラブ「ルシャンテ」へ向かったのであった。 |
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| 2011.9.24掲載 |