| 後編 『デスブリンガー』 金曜日の夜。明日が、彩と約束をした日である。 長い年月を超えて、憧れの存在だった人に…それも美少女から美女へと成長した彼女に会うのは、昭の胸を弾ませた。 そして、あの少女とももう二週間ほどの付き合いとなる。といっても、夢の中だけではあるが。 しかし、以前のように彼女に対して畏怖や警戒心を抱くようなことはあまりない。とはいえ、親しみを持てるような相手でもないのだが。 今日の少女は、閑散とした小屋の中にいた。どこかの山小屋か何かだろうか？外には雪がちらついている。 （雪だって…？さすが、夢だな。それに、こんな場所、俺は知らないぞ） その静かな山小屋の中、少女は椅子に座っていた。 「あっ」 ふと気づいた。この状況は、今までで初めてなのだ。自分と少女、二人『だけ』という状況は。 今までは、『自分を認識していない人々』が必ず周囲にいた。満員電車にしても、夜の映画館にしても、路上にしても。 しかし、今回は誰もいない。本当に自分とこの少女、二人だけである。思わず周りを見回してみても、二人だけしかいない。 そんな中、部屋の片隅に置かれた椅子に逆向きに腰掛けた少女は、自分をただ見つめている。相変わらずの無表情だ。 傍目には、こちらを見ているのではなく、ぼーっとしているようにも見える。 少女が立たないので、昭はこちらから近づく。彼女は別に何をするでもなく、座ったまま昭を見ている。 変わったといえば、昭が目の前にきたので、その視線が上を向いたくらいだろうか。 しかし、昭には何故かそのしぐさが愛らしく思えた。付き合いが長くなってしまったからもあるが、この前微妙に見せた笑み？のようなものが印象深かったからである。 彼女は無表情だが、感情がまるでないわけでもないようだ。 「今日は、君一人なのか？」 今まで以上に静かに思える中、昭は少女に声をかける。これももう『いつものこと』になってきている。 「わたしは、いつも一人だ。いつも回りにいた人間たちは、お前の記憶から紡いで投影した『景色』に過ぎない」 よく分からないことを言うな、と昭は思う。しかし、『景色』という言葉は確かに合っているのかもしれない。 それに、なぜかこの場所が、この少女にはとても似合っている気がする。 不意に、昭は少女の頭に手を載せ、撫でていた。 少女は特に嫌がりはしなかった。分かってはいるが。 「…何故、そんなことをする？」 が、多少は意外に思ってはいるらしい。 きめの細かい紫色の髪の感触は、手にとても心地よい。 「でも、悪くはない」 特に何も言わないかと思ったが、彼女は感想を返した。こういうときの彼女には、独特の愛らしさを感じる。 この少女は一体何者なのだろうか。彼女に直接聞いたところで、応えてはくれない。 自分の夢に毎日出てきて、自分をただ見つめているだけの存在。そして、『お前を見ている』と自分で言い切った存在。 昭は徐々に、その存在に興味を惹かれている。少女の反応は一様に感情がこもっていない。 しかし、端々に感情のようなものを見せているのも事実である。 （…よし） 昭はひとつ決心した。どうせ夢のなかだ、と。 「…っ」 本来とは逆を向き、背もたれを抱きかかえるように座っている少女の後ろにその背中を両手で抱き締める。 （暖かいな） ひょっとしたら、彼女の口調と同じく、その体にはぬくもりがないのではないか、とも思ったものの、そんなことはなく、少女の体は人肌のぬくもりを抱いているのが両腕に伝わってくる。 「…やっぱり、するのか？」 少女は、外見からは想像も出来ないセリフを呟くように言った。ある程度は予想できるものの、やはり戸惑ってしまう。 昭は、一瞬罪悪感にかられるのをじっとこらえ、少女を椅子から立たせると、後ろから抱き締めたまま部屋の片隅のベッドへ導いた。 （…よく分からないが、彼女を抱くことで、何かが掴めるかもしれない） 「わたしは、子供に見えるか？」 今度はベッドに腰掛けた少女が、そう聞いてきた。 「あぁ、十五歳くらいかな」 正直に、そう答える。 「そうか。だが…今からされることは、わかっているつもりでも初めてだ。それを踏まえて頼む」 『まったく抵抗がない』というのも、それはそれでつまらない気がするものの、ここは彼女が存在する世界…すなわち夢なのだし、昭の心がすでに読まれてしまっていても不思議ではない。だから、ここに二人きりになったとき、少女はすでに覚悟していたのかもしれない。 まずはその黒いコートを脱がせる。 （おや、割と…大きいんだな） ワンピースの胸元に見える谷間の線がくっきりとしている。下着はつけていないようだ。 「…早く、しろ」 じっくりと見られているのが嫌だったのか、少女は素っ気無くそう言った。 が、今までよりは少しだけ感情が篭っている気がした。『無感情』ではなく『素っ気ない』と感じたからである。 「なんだ、結構可愛いじゃないか」 思わず、素直にその言葉が出た。見ると、少女はほんの少しだけ目じりを吊り上げているのが分かる。 いかにも『恥ずかしいのを堪えている』表情だ。 （やっぱり、感情がないわけではないのか） 昭はなんだか安心してしまった。 「だから、早くしろ」 「分かった分かった」 （これではどっちが『ヤりたい』と切り出したのか分からないな） 昭は苦笑してしまったが、せかされるままにその体に両腕を回し、再び抱き締める。少女からの声はない。そのまま押し倒す。 山小屋のベッドなので、そこまで質のいいものではないだろう、と思っていたが、意外に質感がよく、少女の体が少し弾んだ。 「俺もまぁ、数はこなしていないからな、多少乱暴になるかもしれない」 「構わない。だが、早くしないと夜が明けてしまうぞ。明日の予行演習のつもりでやればいい」 （この子、本当に子供か？） そう思った。もう彩と『そういうことになる』気でいるのだ。 ワンピースの上から胸をゆっくりと手に包む。ふんわりと暖かい感触。少女のぬくもりが伝わってくる。 （よかった、死人ではないらしい） 夢の中なのにばかばかしい言い回しだ、と自分で思う。ひょっとしたら冷たいんじゃないか、と思ったのである。 「…どう思う？」 少女のほうから意外な質問が来た。 「…柔らかいな。それに、暖かい。触れていてとても気持ちいい」 素直にそう言うと、少女の口元が少し緩んだ…ように思えた。特に顔を紅潮させたりはしていない。 おそらく『初めて』と言ったのは本当のことだろう。顔には出していないが、体は緊張しており、がちがちになっている。 …と同時に、自分の一部分もまた硬直していた。 『素直だな』、と自身のことながらに思った。 「気持ちいいか？」 「君は？」 質問を返す。彼女はどう思っているのだろうか？自身に実った二つの果実を手に包まれた素直な感想を、昭は聞いてみたかった。 「悪くない」 「そういわれると思った」 昭は昭で、少女の反応の仕方をなんとなく分かっている。苦笑しながら、鼻先を指でつついてやると、 「すまない」 と言って、少女は目を伏せる。 （やりにくいな…わかってはいたが） いずれは目が覚めてしまうことを気にしてはいるものの、あえてゆっくりと少女のワンピースを剥いでいく。 彼女のほうは昭と目を合わせたまま、じっと動かずされるがままに脱がされている。その様は、なんだか罪悪感にかられそうなほどである。 乳房も腹部もあらわになり、昭はその滑らかで白い肌の輝きに驚かされた。背丈や顔立ちの割に豊かな胸の頂点には、とても小さい桃色の隆起が存在している。当たり前なのだが、下のほうにはきちんと白い下着を身に着けていた。 もう一度、その体を抱き締める。今度は、少女のほうからも腕を背中に回してくる。 ベッドの上で抱き合う形となった二人は、しばらくそのまま、お互いのぬくもりを確かめ合うように動かずにいた。 「…変だな」 そう言ったのは、少女のほうだった。 「変？」 鸚鵡返しに聞き返すと、彼女は手をほどき、ゆっくり体を離してから小さくうなずき、再び昭の胸元に戻っていく。 「こうしていると…不思議な気持ちになる。安心、というんだろうか」 「…そうか」 戻ってきたその裸身を抱き締め、ついでに頭を撫でてやる。出来るなら、もっと彼女を安心させてやりたい。 それが何故なのかは、もちろん分からないのだが。 「ほら、続きだ」 何故か、昭のほうが少女にリードされているが、昭はあまり気にせず、彼女を再びベッドに押し倒すと、左右に大きく脚を広げてやる…と、さすがに頬を赤くした。 その様子が楽しくて、昭はなんとなく苛めてやりたくなってしまい、あえて下着に包まれた少女の下腹をじっと見つめてやった。 「早くしろと言っている！」 珍しく、語尾が強い言葉が返ってきた。なんだか微笑ましい、とすら思えてしまい、昭のほうが思わず微笑を漏らしていた。 ゆっくりと、下着の上からそこに指を這わせてやる。少女の体が一瞬、びくっ、とするのが分かる。 誰にも触らせたことのない場所。自分でも『初めてだ』と言っていたし、何よりここは夢の中だ。触れたことがある者などいるはずがない。 「…何をしている？」 「君のほうが、まだ準備が出来ていないからね。十分に濡れてからじゃないと…初めてらしいから、なおさら入らない」 昭がそういうと、少女は『必要ない』とでも言いたそうに思えたが、やはりされるがままで抵抗らしい抵抗をまったくしようとしなかった。 それでも、何かの感触はあるらしく、ときおり指の動きに対してびくん、びくん、と体を震わせて反応してくれる。 「声、出してもいいよ？」 「断る」 明らかに我慢しているのが分かったので、昭が気を利かせると、やはり少女のほうが突っぱねた。 何故か感情を表に出すのを拒んでいるような、そんな印象を受ける。 しかし、断られたとなれば昭にも男として意地がある。『なんとしてでも声を上げさせてやりたい』という欲望が湧いた。 そこで、意図的に少し激しく指を動かしてやったり、また急に優しくしたりと緩急をつけて刺激してやる。 少女の体が小刻みに震え、右手はマットレスを強く掴んでいる。やがて目がかたく閉じられ、口を強く食いしばって閉じるようになった。明らかに感じているのだ。 そして、下着にはいつの間にか染みが出来ていた。 （なかなか強情じゃないか。よし…） ゆっくりした指の動きから、いきなり下着の中に指を差し込んでやる。 「んぁっ！？」 それを予想していなかったのか、ついに少女が声を上げた…と同時に、その小さな両手が自分の口元を覆った。 その態度や行動がもう、可愛らしくて仕方がない昭は、まだ生え揃ってない草原を優しく撫でる。 まだ幼い恥丘の感触はとても柔らかく、感触だけでもぴったりと閉じていることが分かる。 何もかもが初体験であろう少女に愛撫を加えるのは、この上なく楽しい。少女の体が小刻みに震え、口元を抑えてはいるものの快感を押し殺すことが出来ていないらしく、時折大きく頭を横に振り、声にならない声が上がる。 「…いつまでやってる…！」 見ると、その瞳に涙が溜まっている。まさかこの少女から涙を見るとは思わなかった昭は、『やりすぎたか』と思ってしまった。が、目は特に怒っていない。 「ほら、今度はわたしの番だ。とっとと脱げ」 「は？」 今までのことが『なかったかのように』体を起こし、再びベッドに座り込んだ彼女は、再び感情をなくしてしまったような瞳を昭に向けて過激なことを言う。 「ほら、早く」 「あ、ああ」 もう一度促された昭は、言われるままに服を脱いでいく。 「大きいな」 少女の痴態を間近で見ていた昭のそれは、もうこれ以上大きくならないまでに膨れ上がり、上を向いている。 「こんなになるのか」 彼女は、『それ』に興味を持ってしまったようで、右手で『きゅっ』と首の部分を強めに握る。 「うっ！」 いきなり握られるとは思わなかった昭が、そして昭のモノが悲鳴を上げた。 「…なんだ、だらしない」 「うるさい」 言いつつ昭は、座り込んだ少女の目の前にヒザ立ちになると、モノを顔の前に差し出す。 なんとなく、彼女に『そうしろ』と言われた気がしたからである。 その少女のほうは、なんのためらいもなく、それを口に含んでしまった。 「くっ！？」 先端が限界まで膨れ上がっている今、相当モノのほうも敏感になっているため、くわえ込まれただけでもかなりの快感が走ってくる。少女のほうは口をあけるのが結構大変らしく、手でモノを支え、より奥のほうまで含もうとするのにちょっと苦しそうにも見えた。 （こ、これは…！） 本当に彼女は未経験者なのだろうか、と思うほど、その舌の動きが鮮やかに昭を追い詰めてくる。 口をすぼめて首の部分を締め上げ、先端の亀裂に舌を押し付け、抉るように舐め、強めに吸い上げる。 下腹部を苛められて悲鳴を上げるのを懸命に堪えていた少女とはまるで別人のようだった。 「…どうだ、悔しいか」 いったんモノを口から離して少女が発した言葉がそれである。 「いや、悔しくはないが、気持ちいい」 「そうか、なら、もっとしてやろう」 「いや、もう君に入れたい」 「えっ？」 少女の返答を聞く前に、昭の両腕が三度少女を押し倒す。 （そういえば、まだ朝にならないのか） 少女の下着を脱がせながら、昭はそんなことを思っていた。いつもより夜が明けるまでの時間が長い気がする。 していることがしていることだからだろうか、それとも、この少女が自分を目覚めさせまいとしているのだろうか？ 「…まったく、強引だな」 下腹部をあらわにされてしまった少女が、少し頬を染めて呟いた。その下腹部は、思ったとおりまだ生えきっておらず、申し訳程度に茂みがついている程度である。 正直なところ、もう少し舐めてほしかった、という欲望も強い。しかし、あのまま舐められたら一分ともたず、吐き出してしまっていたに違いない。それは男としてなんとなくみっともない気がする。 よりによって、こんな幼い、しかも男と交わったことのない少女にすぐに射精させられるのは…。 事実、昭の張り切ったモノの先端からはもう粘っこい液体が出てしまっている。 「入れるよ？」 ゆっくりと先端を亀裂にあわせてやる。少女のそこはもう溢れていた。 （なぜさっきの愛撫のとき、イかせてやらなかったのだろう）と多少後悔したものの、少女のほうは 「…ゆっくり、だぞ」 …と嫌がる素振りを見せなかったため、そのまま挿入することにした。 「ほら、少し力を抜いて」 入れる前から踏ん張っている少女を見て、昭は笑いかける。 自分に抱き締められて『安心する』と言ってくれた少女に、必要以上に苦痛を与えるわけにはいかない。 ゆっくりと力を込め、少女の亀裂を引き裂く。 「…うぐっ…！」 強く目を閉じ、マットレスにツメを立てる少女。モノに伝わる激しい締め付けの感覚。 じわり、と熱いものがモノにまとわりついたのが分かる。愛液だろうか、それとも血液だろうか。 （夢の中の少女でも…やはり痛いのか） 少女とは正反対に凄まじい締め付けによる快感に絡め取られ、昭のほうはいつ射精してもおかしくない状態にあった。 （早く、奥に…） 奥に入れなければ、と思うものの、少女の膣肉の抵抗は強い。力を込め、ゆっくり、ゆっくりと貫いていく。 「うあぁっ…」 少女の声に悲鳴が混じった。もう口元を抑える余裕もないらしく、彼女の両手はマットレスをに指を食い込ませて抵抗したままである。 「昭、深い、深くて痛い！」 少女が自分の名前を呼んだことに、昭はさらに興奮を覚えていた。自我で欲望をとめることが出来ず、彼はさらに奥を目指し力をこめて貫いた。 「んあぁぁっ！」 顔が上を向き、口が大きく開かれ、涎が飛んだ。少女の幼い膣が、大人の肥大したモノを全て受け止めた瞬間だった。 「あ…か…はぁ…っ」 先端が一番奥にめり込んでいる。昭にもそれが分かった。 『無理をしている』のは分かる。分かるのだが、我慢ができない。早く彼女が欲しい。少女の膣がもっと欲しい。 見下ろすと、亀裂から赤いものが滴っているのが見えた。同時に、自分の根元付近も赤く染まっている。…血だ。 （彼女は、やはり人間なのか） なんとなく安心した。いや、安心してはいけない状況ではあるのだが、なんとなく、彼女は人間とは違う存在なのではないか、と不安になってきていたのである。 「…お、終わりか？」 奥まで達してしばらく動かなかったせいか、少女のほうから話しかけてきた。息も絶え絶えのような声だ。 「動きたいけど、大丈夫？」 「激しくは、しないでくれ。まだ、慣れていない」 『慣れていない』どころか、つい先ほど『初挿入』を遂げたところである。自分の意地悪でひどいことをしてしまった、と快感に包まれつつも、昭はなんだか申し訳ない気持ちになっていた。 ゆっくりと、昭は体を前後させる。少しでも苦痛を和らげてやるために、両手を乳房にもっていき、ゆっくりと包んでやる。 いつの間にかその先端は、小さいながらも精一杯に立ち上がり硬さを増している。 これ幸いとばかりに、昭はその二つの小さな乳首を、指で捻り上げる。 「…っ！」 びくん、と正直に少女の体が反応した。同時に、膣がぎゅっ、とモノを握り締め、襞が絡み付いてくる。 （ここは敏感だ） そう思った昭は、腰をゆっくり動かしつつ彼女の上へと覆いかぶさり、乳房の谷間に顔を埋める。 柔らかさと暖かさが昭を心の底から包み、安心させてくれる。 体位の関係で少し結合が緩み、浅い場所を攻めることになったが、昭はその乳首を優しく舌で舐り始めた。 「ひっ」 今までにない声が上がった。 「やめろ…それは…っ！」 土曜日になり、島崎真司は、病院の一室を訪れていた。その個室には、つい先日『夢』という頓狂な相談を受けたばかりの知人、桜野昭がいる。 いや、『いる』と言っていいのだろうか？確かに彼は生きている。だが、もはや死んでしまったといっていい状態かもしれない。 『夢』についての相談を受けた翌日、桜野昭は、赤信号を無視して突っ込んだトラックに撥ねられ、意識不明の重体に陥ったまま、ベッドの上で数日を過ごしている。 だが、確かに真司は、昭から電話を受けた。『彩と出会う約束をした』という電話である。 驚いた真司は、『まさか意識が戻ったのか！』と、仕事の昼休みに病院を訪れたのである。 しかし、昭は未だ意識不明のままベッドに横たわっていた。 （悪戯電話だったのか…いや、あの声はまさしく昭のものだった。一体どういうことなんだ！？） そういえば、志田彩に会う、と言っていたな、と真司は思い出した。そこで彼は、『野暮かな』とは思ったものの、苦労して電話帳から志田家を見つけ出して電話をかけてみた。 すると…いや、当然なのかもしれないが、志田彩はすでに結婚して苗字が変わっていた。しかも結婚したのは去年である。 まだ結婚して間もない彼女が、高校の同級生とはいえ、男と出会う約束をするだろうか？ いや、学校のアイドルだった彼女が桜野昭という一人の男を知っていたかどうかすら怪しい。何しろクラスさえ違っていたのだから。 「それじゃ、あれは…誰からの電話だったんだ！？」 「あぁっ、あっ…はぁっ…」 小さく、でもねっとりした甘い声が昭をより深い興奮に誘っていく。 少女はようやく痛みを訴えなくなり、昭の攻めに快感と喘ぎで応じるようになっていた。 それでも幼い膣の締まりはとても強く、気を抜くと射精してしまいそうなので、嫌でも緩急をつけなければならなかった。 いや、正確に言うと、もう『射精してしまいたい』。しかしまだ『彼女の膣を味わっていたい』というのも事実なのである。 「気持ちいい？」 意地が悪いかな、と思ったものの、少女の素直な返答に期待して、昭はあえて訊いてみた。 「わっ…わるく…ないっ…！あぁ、もう…聞くな…っ！」 （可愛いな） ゆっくりと乳房を揉み解してやりながら、膣の奥へとモノをもぐりこませると、少女はまた『うっ』と声を上げた。 そろそろ限界だ、と思った昭は、乳房への愛撫を止め、再び少女に覆いかぶさって抱き締め、激しく何度も何度も突き上げる。 「えっ！？んぁっ、は、激しい、激しすぎる、おかしくなる…っ！」 「さあ…イって！」 「えっ！？い、イくってなんだ…んあぁっ！」 少女の両足が昭の腰を締め上げた。散々振り乱された紫色の髪が、汗で艶かしく光っているのを見ながら、昭は彼女の胎内へと全てを注ぎ込んでいく。 （そういえば、膣内射精で大丈夫だったかな…あ、ここは俺の夢の中だっけ） 「…無茶しすぎだ、馬鹿」 狭い山小屋の中、未だ裸の二人は、ベッドの上で抱き合っていた。少女の口調はもう元に戻り、顔も紅潮していないし、瞳からも表情が抜けている。 「わたしを一体なんだと思っている。壊されるかと思ったぞ。少しは自重しろ、馬鹿」 言葉は怒っているようだが感情が篭っていない。しかし昭のほうはもう、『これが彼女なりの感情だ』と理解している。 「聞いているのか、昭の馬鹿」 「馬鹿馬鹿言うなって」 昭のほうは苦笑している。確かにやりすぎた、と思ったからである。そして、『馬鹿』とは言われているものの少しは気を許してくれたのだろうか、とも思えるのが素直に嬉しい。とはいえ、やはり無感情さが目に付くのだが。 「…で、満足できたか？」 「あぁ、満足したよ」 二人でベッドの上に寄り添うように座る。少女からの質問に、昭が応える。 「そうか、よか…」 「あ、ひとつ満足していないことがあった」 少女の言葉を遮って、昭が言った。 「…気持ちよかった？」 その言葉に、少女は大きく溜息をついてから 「あぁ、悪く…」 『悪くなかった』と言おうとして、彼女は小さく頭を振ってからこう言った。 「いや、気持ちよかった。…これで、いいか？」 少女に『ちょっと恥ずかしそうに』そういわれたのを受けて、昭はうなずいた。 「…あぁ。出来れば、また会いたいな。それが出来るかどうかは、俺には分からないが」 「まったく。こっちは散々お前を見つめて、お前が何をしたくてこの現世に留まっているかずっと見ていて、やっとあの『彩』という女性を見つけたというのに、まさか直接わたしと交わって満足するとは、馬鹿にも程がある」 顔を赤らめもせず、少女が言う。彼女はまだ裸のままで、拭いてすらいないため、未だに体に白濁が付着している。 その後、ちょっと考えた後で 「…なんだ、わたしが何者か、悟っていたんじゃないか」 と言った。 「…途中からね。俺は、いつ死んだんだ？」 「正確に言うと、まだ死んでいない。お前の魂がいつまでも体にしがみついていて離れてくれないから、わたしが派遣された。お前が現世に留まろうとする理由…それを探り、叶え、魂をしかるべきところに届けるために」 「…有り体な言い方をすると、『死神』ってことか」 「ああ、その言い方で構わない。わたしには、死んだ体から魂を切り離す力はあるが、生きている人間の命を奪ったり、あるいは強烈に体から離れたくないという魂を無理矢理切り離す能力はない。 だからこそ、お前という存在の記憶を探り、わだかまりを残している原因が何なのか突き止め、それを叶えなければならない」 「…そうか、俺の望みというのは…」 「あの『彩』という女性を、死ぬ間際まで、心のどこかで想っていた、ということなんだろう。 だが、どうやら皮肉にも、夢の中にわたしが頻繁に出たことで、その想いがわたしのほうに向いてしまったようだな」 「反省している」 「いや、その必要はないさ…さて、そろそろ、いいか？」 そう言って、少女はベッドから降りた。 昭は死んだ人間であり、この『夢』はこの少女が作り上げた世界。昭の『望み』を叶えるために作り出した世界である。 本来ならば、少女は『彩』の成長した姿を昭に見せ、昭の欲望を満たすことで願いを叶える気であった。 しかし、それは途中から無意味になった。昭の興味が、彩から自分に向いてしまったからである。 昭が夢から覚めていたのではなく、昭はずっと夢の中にいた…少女に夢を見せられていたのである。 あの日…コンビニ行く途中に、トラックに撥ねられた日から。 『そろそろいいか？』の質問は、もうそろそろ昭の魂を連れて帰ってもいいか、という意味であろう。 それを理解した昭のほうは、うなずきかけた。…が、自分の前に全裸を晒す少女を眺め、こう言った。 「やっぱり、まだ満足していないみたいだ」 「…馬鹿」 「…こんなかっこう、嫌だ」 ベッドの上、少女が四つんばいになっていた。相変わらず瞳に感情はないが、それでも本能的に嫌な態勢らしい。 反面昭のほうは、目の前の光景に強く興奮せずにはいられなかった。 「ほら、ゆっくり入れるよ」 「…んっ！」 今度は素直に声が上がった。後ろからの挿入だ。昭の腕がその腰を抱え込み、ゆっくりと奥を目指して進んでいく。 先ほど交わったとはいえ、まだ二回目だ。相変わらずの狭さに昭のほうも喘いだ。 「…痛い？」 「大丈夫。続けて」 （二回目だから、興奮しないのかな？） そう考えると、昭のほうはちょっと不満である。 「うっ、くっ…」 かと思うと、少女のほうはそれなりに気持ちいいらしく、さっきよりは遠慮なく声を出してくれる。 気を良くした昭は、リズムをつけて後ろからずん、ずん、と突いた。 その体が少し前進し、昭の突き上げから逃げようとするのを、腰を左右からしっかりつかんで引き寄せ、奥まで突き上げる。 先ほど出した精液と、彼女の愛蜜が膣内で混ざり、押し出されていやらしい音を立てて流れる。 「あっ…くっ！」 どくん、と奥に食い込んだモノが脈打った。と同時に、少女の体も仰け反る。昭の手は反射的に彼女を押さえ込み引き寄せ、射精から逃げてしまわないようにしっかりとひきつけ、的確に奥に打ち込んでいった。 「上…か」 「今度は、君に攻めてもらいたい」 「馬鹿」 そういいながらも、仰向けになった昭の上に座り込んだ少女は、モノの上に着地し、受け入れる。 「くうんっ！…な、なんでこんなに、大きいんだ…」 昭の両手が、上にいる少女の両乳房をわしづかみにする。少女のほうはモノに向かって腰を打ち付ける。 止まらない。止めたいのに、気持ちいい。気持ちいいけど、声に出せない。『気持ちいい』と昭に言いたくない。 「あっ、あぁっ…あぁっ！」 自分でも抑制が効かなくなり、今までにないくらい激しく腰を振った少女は、やがて三度射精を受けて絶頂に達した。 その後も、少女と昭は幾度となく行為を交わす。どのくらいの時間だったのか分からないし、この空間に時間という概念が存在するのかどうかすら怪しい。 昭が少女を高々と抱き上げ上下に揺らして突いたり、仰向けに寝かせて左右に大きく脚を開かせたり、本来なら少女が嫌がりそうな態勢も交え、何度も何度も交わった。 「…まったく、死神本来の姿で男と交わったのは、古今東西お前くらいのものだろう」 長身の金髪の美女が、紫色の髪を持つ少女に、呆れたように言った。傍には精魂尽き果てた昭がいる。 「…どうしようもないくらい、強情だった。仕方ない。それに…人間を助けるために死神を捨てたお前に言われたくない」 少女はもう服を着て、後は自分の使命を全うするだけ、になっている。その右手には、鈍く光る鎌が握られていた。 「お前は、今まで何人送った？」 「天に送ったのは…昭で五十八人目」 先輩の死神に対し、少女は忌憚なく応える。 「でも…こんなに感情移入したのは、昭が初めて」 「だろうな。お前が、誰かの名前を『名前で呼ぶ』のは初めて見たからな」 「…今回も、ずっと『お前』と呼ぶつもりでいた」 そう言って、少女はベッドに座った。 「仕事はもう完了する。後は…斬るだけ」 そう言って、少女は鎌を持ったまま再び床に降りたち、意識のない昭の前に立った。 「…この男、死神が作った『世界』から現世に電話をかけるくらいに強い意思を持っていた。 一体、あの『彩』という女にどれくらい強い想いを傾けていたんだろうな」 「分からないし、もう、関わる必要はない」 そう言い、少女は右手の鎌を両手で握りなおし、高々と掲げ、そして昭に向かって振り下ろす。 「…さようなら、昭…」 天に魂が飛ぶのを見届けた少女は、再び金髪の先輩死神に目を向ける。 「そういえば、お前は…生前の記憶があるから、その名前を名乗っていたな」 「あぁ。『何々型何々番』は性に合わないんでな。もっとも、勝手に名乗っているだけだが」 「結局、わたしは昭に名前を名乗れなかった」 少女は、少し考えた。そして、思い出していた。自分の頭を撫でてくれた感触、交わったときの快感…。 ほんのわずかの間だったというのに、積極的に自分に接してくれた昭。その昭に名前を名乗れなかった心残り。 本来ならば、少女は『彩』の成長した姿を夢に出現させ、昭はそれで満足して天に昇るはずだった。 しかし、どこをどう間違ったのか、昭の思いは彩ではなく自分に向いた。そして、夢の中の産物である彩ではなく、自分自身と直接行為を交わすことになった。本来ならば、絶対にありえないことである。 それは、少女のほうが『嫌だ』と断ればいいだけの話だし、実力行使に出てくるようならば、見せる夢を変えて場面を変化させてしまえばいい。 彼女にはそれがいくらでも出来る。しかし、それをしなかったというのは…。 （少なからず、わたしは昭を気に入っていた、ということなんだろうか） 「ほら、帰るぞ」 明けの空をぼーっと眺めていた少女の頭を、金髪の美女の手が優しく撫でた。 少女は振り返ってうなずいた後、少し考えたのちに、こう言った。 「…お前のように、わたしにも相応しい『名前』があるだろうか。いずれ、誰かに名乗ることができるような『名前』が」 その言葉を受けた美女のほうは、まるで娘を見る母親のような目で、まだ経験の浅い死神を見ていた。 Ｄ’ｓ Emotion 了 |
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| 2012.7.7掲載 |
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