１

　たまに、昔の女が懐かしくなることがないだろうか。

　勿論、今の彼女と縁を切ろうとは思っているわけではない。
　初めて知り合い、何度か出会い、やがて体での付き合いを交えるようになると、やはり『はじめて』のころの彼女が懐かしくなることはないだろうか？

　体を交えるということが、『汚す』という考えに繋がるのは、私が古風な考え方なのだろうか？

　私は、今までつきあった何人かの女性との仲を、そんな勝手な理由で絶ったことが何度かある。
　自己弁護かもしれないが、『飽きた』のとは違う。性格が気に入らないわけでもない。
　むしろ、結婚してしまいたいくらいにフィーリングのあう女性もいた。

　そんな中、私は何人目かの彼女を得た。
　いつまでも最初を忘れさせない女性だった。

　長い、腰まで伸びた髪を持つ、まだ幼さの残る顔立ちを持った女性で、名前を『結城　彼方（かなた）』という。
　彼女を初めて見たのは、ビル風の吹き荒れる路上だった。
　何かを探すようにおろおろしていたのを見かねて、私が声をかけたのである。
『何か、道が分からないんですか？』
　私が声をかけると、彼方は、すぐに言葉を返せなかったらしく、しばらくしてから小さくうなずいた。

　別れ際に、名前を聞かれたので名刺を渡した。ちょっとした英雄気取りだろうか。

　夜になって、その彼方から電話が掛かって来た。案の定昼間のお礼の電話だった。
（いまどき、道を聞いたくらいでお礼の電話なんかかけてくる人がいるんだな）
　感心させられたような、当惑したような。そんな思いの中で彼女の話を聞いていると、突然彼女のほうから、『またあとで会いましょう』と言ってきたのである。

　おりしも、私は前述の理由で前の彼女と縁を切った後だった。

　駅まで迎えに行き、一緒に食事をとり、瞬く間に夕暮れとなる。
　そんな、初めてではないにしても、新鮮な時間が、あっという間に過ぎていく。

　無意識的に私が彼方の肩に手を置くのを、彼女は拒まなかった。

　ホテルは嫌いなので、私は自分の家へ彼女を誘った。
　下心が見え見えだったと思うが、彼女はやはり拒まなかった。
　冒険好き、といった悪げな様子もなく、ごく自然に、いつもの彼方だった。

「片付いているんですね」
「うん。普段あまり使わないからね。寝られればそれでいいんだよ」
　そういった、たわいもない会話をしながらも、私の目はやはり彼女の胸や脚へいっていたのかもしれない。

　行きずりとはちょっと違った形になってしまったが、導かれるように、私たちは一つの寝所へ入った。彼女も最初からそのつもりだったのだろうか・・というのは私が奢っているだけだと思うが。

　怖がらせないように、なるべく優しく服を脱がせる。
　真っ白な下着が、彼女の胸を包んでいた。
　いや、下着だけではない。その肌も、日焼け一つない、雪のように白かった。

「・・・恥ずかしいです」
「大丈夫だよ」
　ありきたりな台詞だが、私のほうも、彼女が反応を返してくれるのがうれしい。
　本当に、出会ったばかりの男と体を重ねようとしているという、一種の罪悪感からだろうか。
　彼女は、しなやかな体を恥ずかしそうにくねらせた。

　胸を覆っている下着を取ってしまうと、彼女のその部分は、胸から乳房へと変わった。
　緩やかに盛り上がった乳房は、身長の割には小さく見える。頂点の小さなピンク色の輪の上には、申し訳程度に小さな乳首が乗っていた。

　そこに指を触れると、彼方の体がびくん、と反応した。
　どうやら、男に触れさせたこともないらしい。いまどき珍しい女性だ。

　手で包める大きさの乳房を優しく揉みしだいてやりながら、私は彼女に気付かれないようにスカートを下ろしていく。
　彼女の腰を包む下着は、間もなく姿を現した。

「やっ・・・」
　不意に下着姿にされ、驚いたのだろうか。それとも、乳房を揉まれる感触に喘いだのだろうか。
　それを確認するために、私は乳房をさらに激しく弄んだ。
「うっ、うっ・・あっ・・・」
「痛いかい？」
　私は、彼女の過剰とも言える反応に不安を覚えて尋ねた。
「あ・・大丈夫です・・・気持ち、いいですから」
　その答えに満足した私は、ゆっくりと彼女の足の間に左手を走らせた。
「ひっ・・！」
　悲鳴交じりの声があがる。誰にも触れさせたことのない場所を、出会ったばかりの男に触れられたとなれば、やはり抵抗があるのだろう。

　下着の上から、柔らかい女性の部分を優しく刺激してやる。
　ゆっくりと、そして激しく。それらを交互に繰り返す。
「あっ、ひっ、あっ、あっ、あっ・・・」
　彼女にとっては、まったく未知の世界の感覚だっただろう。
　だが、それでも彼女は私に快感を訴えてくれた。

　興奮した私は、いつのまにか隆起した、綺麗なピンク色の乳首を貪った。
　一息に吸い上げ、一呼吸おいて口に含んだまま舌を這わせてやる。
　もちろん、左手の愛撫も忘れてはいない。

　反対側の乳首も同じく吸い上げ、左手は我慢しきれずに、彼女を守る唯一の砦を素早く脱がせた。

　雌蘂にねっとりと絡みついた液体が、彼女の快感の大きさを伝えてくれる。
　指で触れてやると糸を引き、彼方は恥ずかしそうに顔をそむけた。

　私自身は、言うまでもなくもう、これ以上ないというほどまで大きくなっていた。
　私は彼方が顔をそむけたのをいいことに、ズボンからそれを取り出す。
「・・な、何ですか、それっ・・！！」
（本当に珍しいな。ぜんぜん男を知らない女性なんて）
　苦笑しながら、私は彼女の右手にそれを握らせた。太さを、堅さを知って欲しかったのだ。
「これが、ここに入るよ」
　私は、左手で彼女の雌蘂を撫でてやる。少しだけ、入口を広げながら。

「うぐ・・くぁっ！」
　やはり、彼女は処女だった。その証拠に、挿入の時になって、彼女は悲痛な声を上げた。
「痛い・・痛いッ！うぅッ・・！！」
　凄まじい締め付けに耐えながら、私は彼女の中へとだましだまし入っていく。
　私たちは、同化しようとしているのだ。

「入った！」
　私は、快感と達成感のあまり、バカなことだと思いながらも声を上げていた。
「だ、ダメッ、大きすぎる・・・！！」
　ぐしょぐしょに濡れた彼女の膣内は、彼女が感じる苦痛とは裏腹に、私に快感を与えてくれる。
　なるべく痛みを与えないように、なじませるように彼女にむかって腰を前後させる。

　動くたびに彼方の乳房がぷるぷると振るえる。それを見て、私はその乳房に両手を置くと、激しく揉みしだきながら、思う存分責めたてた。

「あーっ、あーッ！」
　目尻に涙を浮かべながら、彼方の悲鳴が耳を刺す。同時に、彼女の中に埋まった私の肉が、快感を体中に伝えてくれる。
「だ、ダメ、そんなに、そんなにしたら・・・！！」
　どうやら、彼女ももう限界のようだ。

「大丈夫だよま・・」
　もちろん、中に出したりはしないつもりだ。あとで彼女に、交接以上の苦痛を与えてはいけない。
「あっ、あっ、もっと・・・このまま、このままお願い・・！！」
　驚くことに、彼女のほうから求めてきた。さすがに、男がこのあとどうなるかは、分かっているらしい。

　それが分かり、私は彼女をもっと激しく責めたてた。悲鳴と嬌声のなか、私はついに限界に達すると、思う存分彼女の中に欲望を吐き出す。

「くぁあーーーーーっ！！」
　長い射精が終わると、私は素早く彼女からそれを引き抜いた。
　彼女の雌蘂を見ると、大量に出してしまったせいか、溢れかえってしまっている。
「・・あ・・・熱い・・・すごい・・・」
　白濁に汚れた自分の雌蘂を見つめながら、彼方は感嘆の声を上げた・・・。

　家賃が安いだけが取り得の１ＤＫの中で、私たちは交接の感想を述べ合った。
「・・・君、初めてだったんだよね？」
「あ、はい。びっくりしちゃいました」
　思いのほか、なんとも思っていないようでこちらが驚かされることになった。
「何にびっくりしたの？」
「え・・と、あんなに痛いこととか、あんなに気持ちいいこととか、
　あんなに一杯出ちゃうこととか・・・」
　顔を真っ赤にしながら言う彼方。

　道を教えただけの関係だというのに、私たちはこのときからまるで恋人のようだった。いや、すでに体を交えたのだから、恋人なのかもしれない。

　そして、また彼女と出会う機会はすぐにやってきた。

　私たちは、恋人同士なのだろうか？
　彼女に尋ねてみると、微笑を返してくれた。
「わたしが、貴方の理想の女性なら、うれしいです」

　同じ１ＬＤＫの部屋で、また彼女と固く抱き合った。今度は口づけも交わした。
　その後、あの時と同じように彼女を裸にした私は、あまりのことに驚きの声を上げた。

　彼女の雌蘂は、まるで何もかもなかったようにまたぴったりと閉じており、あんなに激しい交接があったとは微塵も思わせないほど、綺麗なピンク色だった。

　彼女は『汚れない女』だったのだ。
　そして、いつまでも『はじめて』である女性だったのである。