２

（う〜ん…）
　不思議だ、と思いながら、私は目の前の綺麗なピンク色の場所を眺めていた。
つい先日、『初めて』であった彼女の処女を奪ったのは、確かに私であるはずなのに、彼方のその小さな亀裂は、ぴったりと閉じていて、指を一本入れるだけでも苦労しそうだった。

「あ、あのぅ…」
　不意に情けない声が聞こえて、私は顔を上げた。すると、顔を両手で多い恥ずかしそうに見をくねらせる彼方がいる。
「そんなに、じっくりと、そんなところを見ないでください」
　言われてみれば確かにそうだ。いくら綺麗で目を引くといっても、女性の秘所をまじまじと見るのは失礼だろう。私は慌てて目をそむけた。

「あの、何かおかしいところでもあったんでしょうか？」
「…いや、あまりに綺麗だから、見とれてしまったのさ」
　少し考えて、私が本当は何を思っていたのかは伏せることにした。まるで子供のような彼方に、私が感じたことをそのまま告げても首を傾げられるだけだろう。
　視線を下げると、私の目の前にはまた彼女の亀裂がある。ゆっくりとそこに顔を近づけ、唇を這わせた。
　小さな声が、私に快感を呼び起こす。

　あれから、彼方とはちょくちょく出会うようになった。もっとも、夜の営みにまで発展したのは今日が二回目ではあるが。
　一緒にいればいるほど、彼女の性格や人となりが理解できてくる。年齢などは尋ねないが、私よりは下だろう。
　美人ではあるが、『きれい』という美人ではなく、まだ幼く、『可愛らしい』といったほうがピン、とくる美人だろう。丸みと張りをそろえた輪郭は、見るものに元気を与えるのだ。

「ひっ、あっ、うっ」
　唇全体で、彼女の下半身の唇を吸ってやる。さながらディープキスのようだ。
　舌に当たる、プリンのような柔らかい感触が、私を掴んで離してくれない。
　唾液と愛液が口の中で混ざる。薄い地毛の感触すら心地よい。
「…っ、…っ、…」
　そのうちに、仰向けの彼方はシーツを両手でしっかりとつかんで声を出さないように耐えるところを見せた。
　すかさず、私はゆっくりと舌で亀裂を押し広げ、中に侵入させていく。
「ひぃッ…!!」
　小さな声が再びあがった。彼女の膣内は温かく、舌先を少し入れただけなのに、凄まじい締め付けだ。
（やはり、また『初めて』に戻っているんだ）

「あ、すごい、すごい、だめ…」
　舌先で彼女の亀裂を刺激しながら、優しく吸ってやる。彼方の声が一層強くなり、私の情欲も刺激されていく。より奥へ舌を差し込んでやりながら、両手で彼方の腰を支え、ゆっくりと揺さぶる。
「はあ・・あぁぁ・・・ッ！」
　どうやら、達してしまったようだ。顔を離してやると、大きく背中をのけぞらせ、唇の端から涎を除かせる彼女の姿があった。顔は火照っていて、紅を差したようだ。

「ゆっくりでいいからね」
　彼女が初めてだとすれば、今からこんなことをするのも初めてだろう。
　彼方は珍しそうに私のそれを眺めると、ゆっくりと細い指で包んだ。
「指で締め付けながら、上下させてごらん」
　私が言うと、彼女はその通りに動いてくれる。
「・・・・気持ちいいですか？」
　遠慮がちに訊いてくる彼方。私は、心地よさに声を出すのも面倒くさく、ただうなずくばかりだった。
「んっ・・・・」
　優しく先端を口に含む。恐らくは、先ほどの『お返し』のつもりなのか、ただ真似ているだけだろう。慣れてないのが目に見えて分かる。
「もう少し、舌のほう。うん、そこを吸ってみて」
　私の指示に従って、彼方が動く。
「ぷはっ！」
　息が苦しくなったのか、彼方が口を離してしまった。握られたそれの先端からは、唾液とは違う液体がにじみ出ていた。
　私は、彼方の頭をそっと撫でた。

　私は、女性との付き合い方が上手くないのかもしれない。だが、彼方となら上手くやれそうな気がする。それは、私のポリシーというか、考え方とは違う。
　たった数回あっただけ、裸を見たのはまだ二回目なのだが…。

　四つんばいになった彼方には、これまでと違った愛らしさと厭らしさがあった。
　愛らしさは、彼女が元々持つもので、厭らしさはこの体勢から来るものだろう。
　彼女の足の間はもう愛液で濡れており、蜜壷は指で軽くなぞるだけでも愛液を吐き出す。
　私は彼女のそこに、ゆっくりと当てた。少しずつ、力を込める。
（…戻ってる）
　彼方の声を聞きながら、私は思った。きつい。やすやすとは入れそうにない。明らかに、初めての状態にもどっているのだ。
「…はああぁぁッ！！」
　そっと秘所を広げ、ゆっくりと突き入れた。が、締め付けも凄まじい。先端が入っただけなのに、痛いくらいの締め付けがあった。
　彼方のほうは、体のほうが敏感になってしまったようで、ちょっと入っただけでも痛みを訴えている。
　腰を抱え、引き寄せる。まだ突くには早い。
「ああっ、ああッ、ああッ！」
　気持ちよさそう、というよりは痛そうに見える。必死に耐えているようだが、私のほうが罪悪感を感じてしまいそうだ。
　が、それとは裏腹に、伝わってくる快楽は凄まじいものだった。膣全体の温もりが、私を強く締め上げる。愛液で濡れた粘膜が、直に当たって、温かい。
　一瞬で達してしまいそうになるのをなんとか耐えながら、私は彼女の体にそれをなじませるかのように少しずつ責め苛む。
「ひっ、あッ、ん・・・っ」
　小さな声、大きな声が断続的にあがる。ぷるん、と揺れる乳房が見える。

（関係ないじゃないか）
　不意に、快楽に咽ぶ私の頭の中で、そんな考えが浮かんだ。
（そうだ、関係ない）
　声を上げる彼方を責めたてながら、快感を与え合いながら、私は気付いた。
「・・・・」
　しばらくして、彼方が痛みを訴えなくなった。その代わりに熱い吐息を洩らし、腰を自分で揺らすようになっていた。
「…気持ちいいかい？」
　私は、訊いてみた。意地が悪かっただろうか？しかし、彼女はうなずいた。それから、
「…はい」
　裸の自分を恥らいながらなのか、やはり遠慮がちに答えた。いまどき珍しい女性だ。今まで男との接触がなかったから、しおらしく育ったのかもしれない。
　そして、私は彼女を最初に犯した男なのだ。
「よかった。少し、激しくするからね」
　無意識の内に、彼女を気遣う自分があった。快感を得ることも大事だが、それ以上の欲望が私にはあったのだ。
　言葉どおり、腰を打ち付ける早さを上げていくと、彼女の声も自然に大きくなった。
　だが、それはもう痛みを訴える声ではない。
　「ああっ、もっと・・・もっと・・・！」
　ねっとりとした甘い声を、私は彼女から初めて聞いた。情欲が沸き立ち、いつまでも我慢できそうにない。彼女の中に突き刺さった私自身は、温かさと締め付けに限界に向かっていた。
　たまらず、彼女の乳房に両手を回し、わしづかみにしていた。
「あ〜〜〜〜〜・・・・ッ！」
　高い声が私の耳を貫いた。腰を激しく突きいれながら、乳房を強く揉む。
　一転した激しい行為に、彼方はついていけているだろうか？
「ひぁっ、あっ、もう、もう、だめ、だめです・・・・」
　どうやら、ついていけていないらしい。私は苦笑してしまった。
「…出しても、大丈夫？」
　私は彼女に尋ねた。どうやら私も限界だ。すぐそこにまで上り詰めてきている。
　こくん、と彼女がうなずいたのを確認してから、私は思いっきり射精した。

「ああぁぁぁ、熱いッ！」
　思い切り上半身をのけぞらせる彼方。私は射精しながら、その乳房を思いっきり強くもむ。
　彼女の体が逃げていかないように、しっかりと抑える。
「あ、あぁ、ああぁぁぁ・・・・すごく、一杯、出てます…わたしの中、とても、熱い…」
　どくん、どくん、と心臓の鼓動に似たテンポで、彼女の中へ放出していく…。
　快感のあまり、私は射精が終わると同時に、彼女の背中へ倒れこんだ…。
（そうだ、彼女の体質なんて関係ないじゃないか。私は…）

　やっと彼女の体から引き抜くと、私のそれには、白濁液と彼女の血液が混じった
　ピンク色の液体がねっとりとまとわりついていた。…出血したのだ。

　私は、やっと気付いた。たった数回の逢瀬、そして体を合せたのは二回目だ。
　それでも、彼女ほど私を悩ませた女性はいない。

「…あの、大丈夫、ですか？」
　ぽかんとした顔で、彼方が私を覗き込んでいた。もうパンティをつけてしまっている。
「うん。大丈夫だよ」
　そっと彼方の乳房を撫でてやりながら、左腕で彼女を抱き寄せる。
「…私のこと、どう思っているんでしょうか？変な女だと思いますか？やっぱり」
　不安げに尋ねてくる彼方。自分の体について知っている、というよりも、
『自分という女性は他人の目にどう映っているのか』が気になっているようだ。
「好きとか、思ってくれますか・・・？」

「…ん、好きだとは、思っていないよ」
　少し考えたあとで、私は彼方に告げた。
「えっ？」
　残念そうに眉をひそめる彼方。が、私は言葉を続けた。彼女を強く、両手で抱きしめながら。

　こんな出会いは、二度とないだろう。そして、この出会いを離したくない。
　彼女がどんな人間なのかは関係ない。少女だろうと処女だろうと、関係ない。

「…君を、愛しているんだ」
　全身を使って嬉しさを表現してくる彼方の下着を素早く、スルリと下ろして、私はもう一度彼女の体に挑みかかっていった…。

　その雌蘂は、たった数時間も経っていないはずなのに、またぴったりと閉じ、綺麗に咲き乱れて、私の愛撫を受けると甘い蜜を吐き出すのだった…。