「やあ、ありがとう。」
　辻元はケーキを智子に渡して、みんなで切り分けるよう言った。
　店長室で辻元と二人っきりになった晶子はよっこいしょっと椅子に座った。
「おめえらケーキ食ったことねえのかよ、ちょっと待ってろ！」
　遠くで真紀がいつもの姉御ぶりで厨房のバイトをどなっていた。

「ヒマでさぁ。」
「ヒマぁ？そりゃうらやましい！子供はどうしたの？」
「旦那の実家へ行っちゃった、私も来週行くんだけどね。」
「あーあ、お盆かぁ・・・」

　実はかつて辻元は、この片桐晶子と関係を持ったことがある。　
　忘年会の流れでホテルに連れこんだのは、なんと晶子の方だった。
　辻元はあまり酒には強くない。だからひどく悪酔いしていたため晶子の体をよく憶えていなかった。
　酔いにまかせた、ちょっとした遊びのルールを晶子はちゃんと知っており、それから辻元と二人っきりになるときがあっても、それを口にすることはなかった。
　だから辻元はあのとき自分がどうだったかよく憶えていない。
　それに、ここ数日、野坂智子、荒井真紀と続いているので辻元はあまり晶子に関心はなかった。

「今週だけでいいからちょっと出てくれよぉ」
「やーだ、遊ぶだけならいいよ。」
　遊ぶ、この漠然とした言葉を最近の若い奴はよく使うが辻元はよくわからない。
　それを自分と同じ、言っちゃ悪いがいい歳の晶子が使うことに軽い違和感を覚えた。
「店長あたしの携帯の番号知ってるよね？」
「えっと・・・・これか、ああ知ってるよ。」
「今週いっぱいはフルに空いてるからね」
　晶子は立ちあがるとサングラスをかけて店の通用口を後にした。
　その日の店は、繁忙を極め、辻元はフロアを走り回っていた。
　やっと最後の客が店を出て、レジを締めるころにはクタクタになっていた。
　バックヤードの片付けを終えた智子が声をかけた
「店長、今日は私帰るけど・・・・・。」
　辻元は正直ホッとした。こう毎晩明け方近くまで、智子と一緒にいたら、いくら放任主義とおぼしき智子の親だって黙ってはいまい。
「・・・・浮気しちゃダメだからね」
　もう完全に智子は辻元の女房気取りだ。18歳の女子高生が、35歳の辻元のだ。
　業務を終えた辻元が生ビールを持って店長室へ行くと真紀がクスクス笑っていた。

「・・・うわきしちゃだめだからねぇ」と智子の口真似をして見せた。
「からかうなよ。」
「ところで瀬戸内くんっていつ入社だったっけ？」
「去年の新卒じゃなかったっけ？」
「あれ・・・・やばいよ・・・明日からでも来なそうだよ。」

　確かに瀬戸内は最近疲れているようではあった。まじめな性格で彼女もいないし、 特に今は夏の繁忙期だから精神的にも参る時期でもあった。
「うーん・・・・元気づけてやってくれよ。」
「元気づけって・・・・どうやってぇ？」
　真紀はわざととぼけた態度で、いたずらっぽく上目遣いで辻元を見た。
「こうちゃんを元気づけてあげたみたいに？？」
「・・・・・まかせるよ。」
　 辻元も真紀に向かって笑って答えた。
「うふふん・・・気が向いたらね。」
「気を向けてくれよぉ」と辻元が言うと真紀は大笑いした。
「・・・・・・こうちゃんのそう言うところ好きだよ。悪党なんだけど素直な悪党だもんね。」
　真紀は辻元のズボンの局部を人差し指でちょんと突いて笑い、辻元も真紀の乳首のあたりを人差し指でつつくと、真紀はふざけて
「ああんっ」
　 と大げさに悶えてみせた。
「じゃあね、こうちゃん、鍵は閉めておくからね。」
　 と言い残すと真紀も帰っていった。

　さて、と辻元はバッグからノートパソコンを取りだし、電源を入れるとウィンドウズが立ちあがるのを待ちながらビールを一口飲み、タバコに火をつけた。

　 さすが晶子である。他の従業員に見られる危険を敏感に回避して携帯にでなく辻元のパソコンのアドレスにメールを送ってきた。
　このあたりの老練とも言える用心深さは真紀も及ばないだろう。

「ラスト業務お疲れ様、うちは当然誰もいないから一緒に飲もうよ。 2時までは起きてるからね」

　時計を見ると1時半だった。疲れてはいたがなんとなく行ってみる気になった。
　今度はしらふで晶子を抱いてみたいとも思った。

　晶子の家は新興住宅地の一角にあるしゃれたレンガ造りの一戸建てだった。
　ガレージが空いているのを確認したが、辻元は近くのコインパーキングに車を停めた。
　いくら隣人に無関心なご時世とはいえ、人の口に戸は立てられぬ。
　あたりに人気がないのを確認して辻元は晶子の家の玄関に立ちチャイムを押した。
「びっくりしたぁ」
　 と晶子は出てきた。

　すでに多少できあがっていた晶子は、白いTシャツにピンクの短パン姿で、 三十路女とはとうてい思えないような、抜群のスタイルによく似合っていた。
　晶子のTシャツの下からは紺色のブラジャーがくっきり透けて見えた。
　ソファに座って辻元はしばらく晶子の話し相手になっていた。
　話し相手といっても辻本お得意の「聞き役」だった。
「たまには一人になってみたくてさ、旦那に子供頼んでみたんだけど。」
「一人になってみると意外とすることはない・・と。」
「そうそう！ははははははは！」
　笑いながら両足を立てた晶子の短パンの裾から青いパンティがのぞいた。
「今、見たぁ？」
　 と晶子がおどけて言うと、辻元も
「見たよ」
　 と答えた。
「はははは！ほーら！」
　 と晶子はその美しく伸びた足を開いた。
「そこまでされると俺も黙ってられないよな。」
　 と辻元は晶子の隣に座った。
「黙ってられなかったらどうするのぉ」
　 と言う晶子の唇をキスでふさいだ。
　辻元が押し倒すというより、晶子が引き倒した格好で二人はソファに横たわった。

　晶子が両脚を辻元の腰にからませると、晶子のあの部分はすっかり火照っているようだった。
　トロンとした目で辻元に晶子は言った。
「ベッド行こうよ」

　晶子の家の寝室にはベッドが二つ並んでおり、ハンガーにかかったままの背広が置いてある方が亭主のベッドらしかった。
　辻元がネクタイをほどいているそばで、晶子はTシャツをするっと脱いだ。
　本当に均整の取れた体の持ち主だと辻元は思わずうっとりしてしまった。
　辻元のそんな視線に気づいているのか、晶子は背中を向けて短パンも脱いで、ブラジャーとパンティだけの姿になり、顔だけ振り返りながら言った。
「どうする？全部脱いだ方がいい？」
「どっちでもいいよ」
「じゃあ、私脱がされるの好きだから」
　そう言うと晶子は先にベッドにポーンと飛び込んだ。
　少し遅れて裸になった辻元がベッドに入ると、襲いかかるように晶子は辻元にのしかかってあお向けの辻元の唇を貪るように舌を入れて来た。
　晶子の背中を愛撫しながら、辻元はブラジャーのホックをはずした。
　辻元の上に覆い被さりながら、晶子は辻元の上半身をくまなく舌で刺激した。
　その舌の動きは絶妙で、ときおりキスを交えながら肩や首筋や耳を責めてきた。
　ホックをはずされ肩にひっかかってるだけのブラジャーを放り投げると、晶子は遂に辻元のものを口に含んだ。

「うっ・・・・」
　辻元が、もうそれだけでイキそうになるくらいに晶子のフェラチオは甘美だった。
　ただ男のものをしゃぶるというのとは次元が違っていた。
　ちょうどフルートを吹くように男の先端部分、その下あたりを唇で咥え、たっぷりと唾液をつけた舌で、ねっとりと舐めるのだ。
　辻元のものは、もう破裂しそうに大きくなっていた。
　左手の届く距離に晶子の尻があり、辻元は後ろからするりと晶子のあの部分をパンティの上からさすると、もうすでに大量の愛液が染み出していた。
　晶子は、サドというほどではないにしても、責めることに快感を持つタイプらしかった。
　しかしそれでも責められっぱなしというわけにはいかない。
　辻元は晶子のパンティ左手で降ろすと、自分の顔に晶子を跨らせ69の体勢に持ちこんだ。
　目の前に濡れきった晶子の性器がわずかに口を開き、襞が剥き出しになっていた。
　その部分を辻元は晶子が辻元にしているように、たっぷり唾液をつけた舌で舐めた。
「あああっ・・・ああん・・・だ・・めぇ・・・」
　晶子はこんな声を出す女だったのか、と辻元は思った。

　職場で働く片桐晶子は、どちらかというと体育会系の性格でさばさばしていたが、そのくせ時折セックスアピールをかなり大胆にする女だった。
　さっきのように、Tシャツの下から透けるような色のブラジャーをつけて来るようなそんなことは何度かあり、他のパートから陰口を叩かれることもあったが
　露骨な若作りをするパートが多い中、「容姿に自信のある30代女性のシースルー解釈」 として、辻元はかなり気に入っていたし、白いTシャツの下に透ける原色のブラジャーと、黒のスリムのジーンズといういでたちで、開店前のフロア掃除をする晶子の後姿に少なからず欲情したこともあった。
　だからこそ、忘年会の夜にホテルへ行ったのにその行為を憶えてないのが残念でならなかった。

「はああああああああああああああんっ」
　そして今、辻元は晶子の中への挿入を果たした。
　晶子は、大きく脚を開いて辻元を抱きしめ、大きく喘いだ。
　膝を曲げて脚を上げた体勢を自分からとって下半身を密着させた。

「あっ・・あっ・・あっ・・あっ・・ああん・・ああああっ・・いいっ」
　女はどれくらいの年齢から、男のものが自分の奥までちゃんと届く体勢を憶えるのだろう。
　智子は辻元が抱え上げてやらなくてはいけない。
　真紀はそろそろいい線いってるかもしれないが、こればかりは経験人数よりも経験回数なのかもしれない、と腰を晶子の子宮めがけて何度も打ちこみながら思った。

「ああ・・ああ・あああ・あ・ああ・あ・ああ・・もうだめぇ・・」
　悲しいかな女は年齢を重ねると、若さや初々しさと言った面の魅力を失う。
　その代わりに、セックスの感度は高まっていく。
　しかしそのころには亭主も飽きてしまうから、晶子くらいの年齢の女の欲求不満は行き場を失い、運良く辻元のような相手を見つけた女はそれを炸裂させるのだろう。

「い・・ぐ・・・いっ・・・くぅぅぅっ・・・ああああああああああああああ！」
　晶子が上半身を反り返らせ硬直させた。なんとか先にイカせることには成功したようだ。
　辻元にはまだ多少の余裕が残っていたので、抽送をねちっこくしてみた。
　晶子の肉襞をまんべんなく舐めるように腰を回しながら突いてみた。

「あっ・・あああああああん！もうだめぇ・・・」
　晶子は甘えるような、それでも一層激しい喘ぎ声をあげ始めた。
「いやっ・・・いやっ・・・あああん！・・またイッちゃう・・」
　辻元がスパートに入ると晶子は、隣の家に聞こえそうな、悲鳴に近い声をあげた。
「いやああああっ・・・いやあああ・・ま・・た・・いっぐぅぅぅ・・・ああっ！」
　正常位で責めていた辻元の太もものあたりを掴んでいた晶子の手が、瞬間的にものすごい握力になり、爪が痛いくらいに食いこんできた。
　そして、まるで何日分か溜まっていたかのように大量の精液がどくどくっと、晶子の膣粘膜に撒き散らされた。

　晶子が夫以外の男と、何人関係を持っているかはわからないが少なくとも、夫婦の寝室で他人の女房の性器に自分の精液を流しこむという背徳。
　その禁断の愉悦が、疲れているはずだった自分の射精を一層激しくしたのだと辻元は思った。
　両腕を広げ、開いた脚を閉じる気力もないまま晶子は、まだ意識が朦朧としているのだろう、半分白目をむきながら荒い呼吸を整えていた。
　辻元が射精を済ませた自分のものを晶子の性器から抜くとき、ヌチャッと音がした。
　そうとう大量に出したらしい、おそらく今夜は二回戦なんか無理だろう。

　智子は生殖器だけ超一流の名器だが、女の体としてはまだ未開発だ
　真紀は智子と比べるとはるかに大人の体だが、まだ経験よりも情報と知識でセックスしているところがある。
　二人とも若く、晶子からしてみればそれだけで嫉妬の対象ですらあるだろう。
　しかし、感度という面から見ると晶子と比べたら二人はまだ子供だ。
　セックスという行為に対する牝としての貪欲さ、男を本当に狂わせるのはそこなのだ。

　やがて我に帰った晶子は、あお向けに寝る辻元の上に重なるように乗った。
「すっごい久しぶりだった・・・男だったらこういうの溜まってたって言うんだね」
　晶子の乳房をさわると、まだ乳首は固くなったままだった。
「なんか飲む？取って来てあげるね」
　パンティだけはいて、寝室を出て行った晶子が麦茶を持って戻ったときにはすでに辻元はいびきをかいて眠っていた。

　晶子も今夜は久々に満足したらしく、二人分の麦茶を飲み干すと辻元の隣で眠った。

つづく