目を閉じてベッドに横たわる桂月は黒いワンピースを着ていた。
　そのボタンを辻元は、一つずつ丁寧にはずした。上の4つくらいをはずせば簡単に脱がす事ができたのだが、辻元はあえて下まで全部はずし、包みを開くように、それを左右に開いた。
「はああっ！」
　桂月は、初めて男に下着姿の自分の体をあらわにされる羞恥に両手で顔を覆った。
　白く豊満な体を守るかのように、その肌と同じくらいに白い下着。
　辻元は、そのブラジャーの刺繍を指でなぞるように桂月の乳首を探った。
「んんっ・・・」と桂月は顔を反り返らせた。

　自分はどうして今日ここに来たんだろう。いくら処女の自分でも男の部屋に来たら、こうなる事は予想がついていたはずなのに。
　ブラジャーの上から正確に乳首を愛撫されて、初めて感じるこの感覚と次第にじわぁっと自分の中からあふれパンティを濡らし始めたそれは桂月にある事を否がおうにも自覚させた。
（私は今夜初めて女にされるんだ）

　辻元は、ブラジャーをはずすと桂月の乳房を揉み始め、もう片方の乳房にキスをすると。そのまま乳首に舌を絡みつかせた。
「はああああああああっ・・・ああんっ！」
　桂月は羞恥に嗚咽しながらも、初めて襲われる快感にたまらずのけぞった。
　すでにぐっしょり濡れたパンティが、自分の初めての発情を伝えていた。
（恥ずかしい・・・）

　辻元は桂月の首筋や肩や鎖骨へのキスをしながらも、乳首を人差し指で刺激したまま、乳房全体を揉み上げる行為を続けた。
　桂月は興奮しながらも、辻元にしがみつく勇気まではなく肩のあたりを握り締めた。

（胸だけでこんなに感じるのに、これから一番敏感なところをいじめられたらどうなっちゃうの・・・？）

　やがて辻元が、桂月のぐっしょり濡れたシルクのパンティを脱がし桂月は遂に裸にされたが、もはやそれ自体を恥ずかしがる余裕はなかった。
　辻元が桂月の乳首を吸いながら、その右手が白い肌を降りてやや濃い目の茂みをすり抜けると、指の先が桂月のもっとも敏感な突起部に達したのだ。
「ああああっ！！いやぁ！・・そこ・・だめぇ！」
　桂月はかぁっと目を見開くと悲鳴をあげたが、辻元はキスでその口を塞ぐと、数回その突起部を指で回すと、そのまま今まで誰にも触らせた事のなかった、桂月の女の亀裂に指を滑り込ませた。
「んんんんんんんんっっ！・・・・んんんんんん・・んん！」
　桂月の閉じられた目から、涙が耳のあたりまでこぼれてきた。
　辻元は一気に子宮の奥まで指を入れる事はせず、指の第二関節くらいまでをクリトリスを刺激しながら出し入れさせた。
「あああっ・・ああああん！・・はああああっ・・いやっ・・」

「すごい濡れてるよ・・」と辻元が囁くと、キッと桂月は辻元を睨みつけ飛んで来た平手が辻元の右頬を打った。
「・・わっ・・私は・・女です！！」
「でも、女の自分・・いや自分の女がいやなんだろう？」
　辻元の言っている意味がわからないまま、桂月は息も絶え絶えになりながら、下唇を噛み締めた。

「よくわからないけどさ・・女じゃない女になりたかった感じがするんだ。」

　自分の体に覆い被さり、恥ずかしい快感を与え続けた辻元が起き上がったとき、その股間にあったそそり立つ男のものを見て桂月は緊張した。
（こんなものが・・・今から私の中に入ろうとしているなんて・・）
　そして再び桂月に辻元が覆い被さるとそれは、数回桂月の亀裂を撫で、その初々しい愛液をつけて滑りをよくした後、ゆっくりと挿入された。
「はっ・・あああああっ・・・はあああああああああああああああ！」

　それは不思議と「痛み」ではなかった。しかしもちろん「快感」でもなかった。
　自分の膣粘膜への初めての来訪者による「陵辱」の悲鳴であった。
（・・子宮に・・・触ってるのがわかる・・）
　辻元が腰を動かし始めたとき、桂月は枕を掴んで力を込めた
「はっ・・あっ・・はっ・・はっ・・んっ・・んっ・・」
　辻元のものが子宮を突き上げるたびに桂月は息が止まった。
　そしてそれは力強く何度も繰り返され、桂月の息遣いも激しさを増した。

「んっ・・んっ・・あっ・・んっ・・・ん・・はっ・・」
　昨夜、制服の上から乳房をわし掴みにされただけで逆上した自分が今夜は裸にされ、そればかりか脚を開かされ、自分の性器を男の性器で貫かれ何度も子宮を突き上げられながら、乳房を掴まれても興奮のあまり抗うことすらしない事実を、桂月は受け入れざるを得なかった。

　しかし、初めての体験に興奮しながらも桂月は思った。
（女でない女になりたかった・・なりたかったわよ・・・）
　辻元の腰の動きが激しくなってきた。しかしそれが男の絶頂の到来を意味することをもちろん桂月は知らない。
　やがて辻元が、自分の体の上でのけぞり呻き声をあげ、動きを止めた。
　次の瞬間、桂月は自分の体の奥底に温かい液体が流し込まれるのを感じ、たった今、自分の体はこの男のものになったのだ、と思った。

　荒い息を整える長い沈黙の後、口を開いたのは桂月の方だった。
「店長・・・女でない女ってどういう意味ですか？」
「んーわかんないな・・なんとなく。」
「なんとなくで、ずいぶん抽象的な言い方をするんですね。」

　辻元がうつ伏せになった桂月の乱れた髪を撫でた。
　それに任せながら桂月はふっと目を閉じた。

「君はさ、すごく色っぽい体をしている。確かに女の子は思春期に
自分の体の変化に戸惑い、自分の、いわゆる「性」を否定しようとする。
たとえば自分で「ボク」なんていう女の子なんかがそうだよな。」

「それでも大抵の子は、結局自分の「性」に向き合う事を憶える。
　そして君の日ごろの振る舞いは、上品なお嬢さんそのものだ。
　ここで言うところの「自分の性」にちゃんと向き合っている。
だが、胸が大きいとか、そういう誉め言葉に君は極端に反応する。」
　
　桂月は目を開き、辻元の目をじっと凝視した。

「そこには、軽く受け流したりする余裕がまったく感じないんだよな。
　しかもさっき君は「劣等感を持っている」とさえ言った。そのニュアンスに
　単純に「スレンダーになりたい」みたいなものは感じなかったんだよ。
　という事は、君は自分の体の魅力を知ってるが、それゆえに
　何かイヤな経験したんじゃないかって思ったんだ。レイプされたとかさ。」

「私は・・たった今店長に処女を奪われたんですよ・・」

「わかってるよ・・・だからそのあたりがわかんなかったんだよ。」

（この人は・・・・・）桂月は思い、そして起き上がった。
　ベッドから降りると、床に落ちていた下着を身に付け、ワンピースを着ると、乱れた髪をゴムでポニーテールに整えた。

「店長・・・帰ります。その話は、またあらためて・・・ここで。」
　桂月はかすかに微笑しながら、言った。
「送ってくよ、もうこんな時間だしね。」
「いえ・・ここは駅が近いから・・・まだ深夜バスがあるはずです。」
　そう言うと、桂月は一人で辻元のマンションを後にした。

　駅前に停まっていた深夜バスに飛び乗ると、車内は数人の酔っ払いが乗っているだけだった。桂月は、一人乗りの座席に座ると、窓に映る自分の顔を見た。

（体が男を知ると、女の子はきれいになるって言うけど・・変わらないじゃない）