布団の上に下着だけの姿で横たえられたさと子の上に藤川が覆いかぶさりながら、執拗なキスをしながら、乳房を揉み続け、やがて黒いブラジャーの肩紐がさと子の二の腕のあたりまでずれていった。
「ん…んっ…」

　さと子も藤川の背中に手を回し、引きつけながら藤川の胸元に何度もキスをしながら、自分の両脚の間に体を割り込ませている藤川の股間を盗み見るとすでに熱を帯びているかのように反り返ったものが、さと子の中に入るその瞬間を待ちきれないかのように、パンティごしに、おあずけを食った形になっていた。

　藤川がホックをはずすと、するりとブラジャーがさと子の両腕から抜けて、藤川はそれを枕元に置くと、露わになったさと子の、形のいい白い乳房に一瞬みとれた。

　少し大きめに口を開けて、藤川はさと子の乳首を口に含んだ
　唇が乳首に触れないで、頬張るように口に含むと、静かに吸い、口の中で舌の先を乳首に軽く乗せた。
「あんっ…んん…い…やぁん」
　さと子はかぁっと目を見開き、体を震わせながら、藤川の後頭部を掴んでいた手に力をこめると、髪がくしゃっとなった。

　さと子のパンティの上から正確に藤川の指が、小さな円を描くようにクリトリスをデリケートになぞると、その部分からじわぁっと愛液がにじんできた。
「ああ…あ…いい…」
　軽く身をよじらせながら、さと子は枕を握りしめ、藤川はさと子の尻にすぅっと手を伸ばすと、パンティに指をかけゆっくりと脱がした。

　藤川は、裸になったさと子の両脚の膝のあたりを掴むと、ゆっくり持ち上げるように大きく開かせ、かすかに開いたピンクの肉弁にキスをした。
「んっ…あ…あああああっ！」
　ほとばしる快感に、さと子の細身の体が布団の上ではずんだ。
　さきほど乳首にしたような、やわらかいキスはさと子のクリトリスを責め始め、同時に藤川の長い舌が、愛液の溢れる肉襞を何度もゆっくりとまさぐる。
「あっ！ああっあ…ほ…欲しい…」
　さと子がシーツを噛みながら身をよじらせた。
　そしてむっくり上体を起こした藤川は、赤黒く反り返ったものをさと子の肉襞に軽く当てると、一呼吸置いてゆっくりと沈み込ませた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！」

　根元まで藤川のものに貫かれたさと子の小柄な体が、大きく脚を開いたまま、弓のように反り返った。

　藤川は、うっすらと唇を開いたさと子の横顔の、頬から首筋、鎖骨のくぼみまで音を立てて唇を這わせながら、腰を動かし始めた。
「あっあっあっあっ…あああああああああんっ！」

　腰を動かしながら藤川は、自分とさと子の結合部を見た。
　細い体だが、さと子の腰まわりには、つくべき肉はついており、それが腰をぶつけるたびに細かく波打っていた。
「あああああっ…あああん…あぁっ！」
　さと子は軽く白目をむきながら、夢中で藤川の肩を噛んだ。
「んんんんん…んああああああああっ」

　さと子にとって藤川は、そう好みのタイプではない。
　今夜のこの情事にしろ、なんとなくのなりゆきであり、正直その気ではなかったのだが、思いのほか巧みな藤川のセックスは拾い物と言ってもよかった。

　もっとも明日以降まで、その関係を続けるつもりはなかったが。

　藤川はさと子の腰を抱きしめて、腰を回した。
「あ、いいっ…奥まで…く…るぅ！ああああん！」
　密着させた肌が汗でずるりと擦れあい、さと子の乳房は藤川の体に押し付けられながらも、乳首は熱く堅いまま、その火照りを藤川に伝えた。

「だめっ…だ…めぇ…いっちゃうっ…あんっ！」
　激しい突き上げに、いつのまにかさと子の体は、肩のあたりまで、布団からはみ出していたが、藤川がさと子の腰のあたりを抱きかかえ、つながったまま布団の中央に引きずり戻し、またあらためて突き上げ始める。
　そしてついに藤川が、さと子をきつく抱きしめ硬直した。
「うぐぅ…」
「っっああああああああん！！！」

　東京から出向でこの土地に来て以来、仕事だけ懸命にしてきてたまりにたまった藤川の精液が、さと子の中に注ぎ込まれた。

（あー…中で出すのは勘弁だったんだけどなあ…）
　セックスには満足し、荒い息で余韻を楽しみながらも、どこかさと子は醒めていた。

　シャワーを浴びたさと子が浴室を出ると、どうやら藤川は「二回戦」をするつもりらしく、冷蔵庫から取り出した缶コーヒーを飲みながら、眠気を飛ばそうとしていた。
「藤川さんさぁ…今度ゴムつけてね」
　さと子は口元こそ笑顔だったが、目は殺気立っており、藤川は一瞬ひるんでしまった。
「あっ…あぁ…申し訳ない…」
「もう一回したいんでしょ？」

　そう言うとさと子は、今度こそにっこり笑って、部屋の窓を開けた。
　目の前の国道を車がひっきりなしに行き来している。
　そしてときおり何台かが、それぞれ立ち並ぶラブホテルの駐車場に吸い込まれるように入っていく。

　見上げると今夜は満月だった。さと子はつぶやいた。
（あたしは…何にも気にしてないもんねー…）

「ん？春日さん何か言った？」
「ん…何でもないよ」
　そう言うと、さと子は窓を閉めた。

「月が満月なんですね…」
　桂月の家までそう遠くない、殺風景で死体でも埋まっていそうな造成地の暗がりに停めた辻元の車の中で、桂月は倒した助手席に横たわっていた。

　ブラウスの前は、これでもかと開かれ、ブラジャーは後部座席に転がり、スカートは腹のあたりまでめくれあがったままで、パンティに至っては助手席の足元で行方不明で、あとで探さなくてはいけないだろう。

　そして、何より桂月の体の上には、射精を済ませた辻元がぐったりと覆いかぶさっており、桂月はそんな辻元を抱きしめながら、サンルーフから見える星空を眺める時間。衣服をはだけ、男の体を乗せたその姿は、桂月の親が見たら失神しそうだが、そんな時間を過ごすのが好きだった。
「店長…」
「んー？」
「今日…お店のクレームなんですけど…」
「ああ、あんなのしょっちゅうじゃないか…」
「うん…でも…社員の人って大変なんですね」
「まあなあ」
「ストレスたまるんじゃないですか？」
「俺は桂月に解消してもらってるが？」
「ええ？私が…ですか？」
「もう俺もガキじゃねえしな…ストレスはためないんだ」
「まあためようとして、ためる人はいないですけど」
「桂月…こないだお前の身の上話聞いたから」

　辻元は桂月の乳房を軽く撫でた。
「今日は俺の身の上話してみようか」

　グリフォンから歩いて10分ほどのところにあるカントリークラブの、照明の消えた駐車場で、月明かりに照らされるように加藤が5人の男に囲まれていた。
　白いフルスモークのワゴン車から降りてきたその一団は丸山千恵の友人たちであった。

「てめえ、なんか千恵に偉そうな事言ってるらしいなあ！」
「殺すぞコラァ！」
　口々にすごむ彼らの背後で、ワゴン車に寄りかかり丸山千恵が、メンソールのタバコに火をつけながらニヤニヤしていた。

「てめえ聞いてんのかよ」
　右手にバットを持った一人が加藤を突き飛ばした。
　いや正確には「突き飛ばそうと」したのだが、190センチの巨漢である加藤はびくともせず、ただ丸山千恵を凝視していた。

「おーい、丸山ぁ！あれ悪いのお前だろぉ？」
　加藤は平然と千恵に声をかけたが、千恵は優位に立つ者特有の見おろすような口調でタンカを切った。
「うるせえんだよ！！」

「しょうがねえなあ」
　加藤が首を振ると、取り囲んだ男のリーダー格とおぼしき男が言った。
「殺されたくなかったら慰謝料として100万持って来いよ」
「100万ん？」
　そう言うと加藤は笑い出し、そしてしばらく間をおいてから言った

「お前らさあ…」

　加藤から笑顔が消えた。

「『こっちは5人だから勝てる』とでも思ってるのか？」