第二章　地下の書庫

　なんて事だ。この手紙を読みながら僕は震えが止まらなかった。
　午前中は仕事も手に付かず、いろんな事を考えていた。
　彼女には嫌な思いをさせてしまった。謝らなければ....。
　しかし納得もできなかった。妻には知られていない筈だ、もし感ずかれたとしても探偵を使って調査するなど絶対に有り得ないと確信していた。
　この事には何かがある。そう思うと、いてもたってもいられず彼女を地下の書庫へと呼びつけた。
　ここは殆ど人が来ることもなく、また内側から鍵を掛ければ合鍵もないため誰も入れない唯一二人の場所であった。
　この書庫には保管棚のほか未使用のディスクやテーブルなども置いてあって十分な広さがあり、過去にここで何度か愛し合う事もあったがもっぱら僕の方から誘うほうが多かったように思う。
　そんなことより、どうしてもこの事件の真相が知りたく彼女からもっと詳しい事や、ほかに何か聞き出せないか必死であった。
　僕は一応人目を気にしながら書庫の鍵を開けて待つことにした。
　息を潜めて腕時計を確認すると午後5時を回っていた。
　暫くするとドアの3回ノックが合図で時間通り来た彼女は悲しそうな顔をして今にも泣き出しそうだった。

「大丈夫だよ」
　僕は小刻みに震える彼女を強く抱きしめた。
　シクシクと泣き出した彼女の瞳からは大粒の涙が溢れた。
　その小柄な顔を両手で包み、親指のはらで涙を拭うと優しくキスをした。
「ごめんね..。嫌な思いさせて、僕がなんとかする」
　彼女は俯いていた顔を上げて僕の目を見ると頷いた。
「かおり、手紙読んだけど正直いって君と別れられないよ。妻はこのような事はしないと思うし、僕なりに調べてみるから。勿論、妻に悟られないように十分注意するよ。だから別れるのもう少し待ってほしいんだ」
　手紙では別れる決心をしたものの、会ってしまうと気持ちが揺らいでいったのか、彼女はか細い声で「うん。」と返事をしてくれた。
　僕はこの手紙の事について話を切り出した。
「その男は探偵のようだけど、その時の状況やどんな格好していたか何でもいいから覚えてること話してくれないかな？」
　彼女は頷くと思い出すように話し始めた。
「年齢は40前半の背丈は私と同じくらいかな？薄暗い場所でしかも帽子を被っていたから顔ははっきりと見えなかったけど、服装はラフな格好でジーンズに黒のＴシャツだったよ。
　近くに車が止まっていて、いつもは静かな場所なのにエンジンの音が響いてやけに煩く聞こえていた。
　たしか運転席に人影らしきものが見えたから、もう一人は居たような気がする。
　けどその男の人、話し方が丁寧で紳士的だったし悪い人のように見えなかったから、疑うなど少しも考えられなかったよ。
　手帳に一つ一つ書き留めては淡々と話を進められて、私が悪いので正直に答えるしかなかった。
　あっ、そう言えば別れ際にね（秀樹の事もっと調べてみます）って言ってたよ。だから秀樹も気を付けてね」
　と、僕のネクタイを軽くつかんで撫でながら話す仕草がとても愛らしく見えた。
（きっと何とかする。彼女を守りたい）そんな思いで僕は彼女の話を聴いていた。

「それから口止め料のお金のことで揉めたんだけど最初は10万円も請求されて（そんな大金ありません）って言ったら（今もっているだけでいいです）って言うから、お家に現金4万円あったので結局払ったんだけど、今すぐ支払う条件で、お家に帰ってまた駐車場へ戻るのに１5分位あったけどずっと待っていたんだ。それでお金を渡したんだけど....」

　彼女は声を詰まらせ、次の4番目の条件《その男に一度ホテルに付き合う事》はほんとうに怖かったらしく話を切り出せなかった。
　手紙にも彼女の怖かった様子が書かれていたので、僕もその事を深く聞こうとはしなかった。
「わかった、もうそれからの事は話さなくていいよ」
　涙がまた彼女の頬を流れている、それを僕は口唇で吸い取った。
　もう話す事はせず沈黙のなか再び彼女を抱きしめ、彼女も求めるよう身体を寄せてきた。
　お互いに唇を求め合い舌を絡めせては卑猥な音が書庫に響くなか彼女をテーブルに寝かせた。
　着衣のままブラウスの胸元を開くと細い身体には似合わないほど豊満な乳房、紺のタイトスカートを捲り上げるときめ細かな白肌の太股に水色の可愛いパンティが嫌らしいほど大事な場所を隠している。
　そんな彼女の柔らかい乳首や性感帯、あそこの芳しい匂いや酸味のある愛液の味など僕は彼女の隅々まで知り尽くしている。
　濃厚な愛撫を続けながら彼女の快楽に満ちた顔を見ていると僕も感じてしまう。
　僕の唇はもう彼女の最も感じる場所を這い回っていた。
　パンティのクロッチ部分は覆うものを避けるようにずれて丸出しになった内陰唇や外陰唇、その上にはクリトリスが可愛く顔を覗かせてる。
　ピチャピチャと卑猥な響きが大きくなるその瞬間
「あっ....いくぅ....。」
　オルガズムに至った彼女の顔がとても綺麗であった。