六

　男たちは、ウイスキーのグラスを片手に、中腰になって、冴子の中央部にいやらしい目を注いでいる。
「顔も、声も、体の線も申し分なしね。文句のつけようがないくらいだわ。――でも、これから制作するビデオの主役はここ！」
　みどりは、そういって冴子の両肢の付け根付近を、軽くピシャピシャと叩いた。
「ひっ――」
　と冴子は鋭い悲鳴をあげた。怒りと屈辱で全身の血が逆流した。かまわず、みどりは柔らかに膨らむ冴子の悩ましい繊毛を、無遠慮に撫でまわしていった。
「な、なにをするの！」
　噛みつくような激しい声であった。美しい顔が汗と涙でべっとりと光っている。潤んだような黒い瞳が絶望的に開いていた。
「そんな怖い顔やめてよ。奇麗な顔がだいなしになるわよ」
　みどりは鼻で笑いながら、小さな箱を開いた。
「さあ奥さん、これがあなたを解剖する道具類よ。ね、見て。これが膣圧計。あなたの女性自身の締め具合と感度を調べる機械――」
　ふざけた言い方で、みどりは箱の中の奇妙な器具を取り出した。
「で、これが電動式オチンチン。すごいわよ、振動の強弱が自由に調節できるの。で、これが肛門拡大器。お尻の穴を開いて中を調べる機械。でも、前の方にも使えるの。普通、前からが先ね。だって、お尻に使ってからじゃちょっと不潔でしょ」
　箱の中から、次々と不気味な器具を取り出しては、わざとらしく冴子にかざし、ゆっくりと蒲団の上の方に並べていった。
　恐怖のあまり、冴子は熱病にかかったように、Ｙ字型に縛られた美しい裸身をブルブルと震わせた。顔が火照り、頬が、苦しげに引きつった。
「嬉しいでしょ奥さん。――皆さんにあなたの構造、隅から隅までお見せできるのよ」
「か、かんにん！　お願い、か、かんにんしてください！」
　おぞましさに、冴子は絹を裂くような声で叫んだ。
　しかし、みどりは構わず、冴子の正面に腰を据えた。
「やっぱり、最初は入口からね。ビデオと照明、しっかりお願いね」
　両手を使って、みどりは冴子の薄絹のような茂みを、下から上へとゆっくりと撫であげていった。
「うっ――」
　冴子は激しく体をくねらせた。緊縛された上半身と、あられもなく開き切った両肢を、交互にねじりあわせるようにして悶えた。艶々としたうなじが大きくのけぞった。豊な黒髪が宙を掃いた。しかし、みどりはいささかの躊躇もみせない。無遠慮ではあったが、ひどく優しげで、そして粘っこい手つきで冴子をかきわけていった。
「ああ、やめてっ！」
　同性の手で、女の最も辛い部分をいたぶられる――。身を八つ裂きにされるよりも辛い責苦であった。
「そんなにおおげさに嫌がらなくったっていいでしょ。割目ちゃんの大きさを調べるだけじゃないの」
　みどりは、男たちと目を合わせて笑った。得意げに、両手で煙るような柔らかな冴子の繊毛をかき分けていく。生々しい冴子の女の丘の部分は、裸の蛍光燈の光の下にあられもなく剥き出しになり、男たちの前に無残にさらけら出されていった。　
　男たちは、輪になって、まじまじと冴子の一点を凝視している。
「うわあ、さすが元大女優！　見て、見て。すごい貫禄。堂々たる割れかたじゃない！」
　ことさらに、冴子を押し開いて見せて、みどりは大げさに驚くふりをした。
　みどりの左右の指で大きく割られた冴子のそれは、息苦しいばかりに小高く盛り上がっていて、その中心部をぐっと削いだような甘い秘裂はドキリとするほど悩ましく熟れきっていた。人妻の豊満さと爛熟をあくことなく漂わせて息づいている。
「確かにいい位置に付いていますな」
「見事な上付き――」
「正面からそのままずばっと入る。四つん這いにさせても、バックからドンピシャの位置だ」
「それになによりも形がいい。男心をとろかすようなエッチな構造じゃないか。美人にしちゃあ、良すぎる道具建てだ。どうですか藤島さん」
「ウーン――」
　小男の藤島はうなった。
「たしかに外見は最高ですな。ウン、まず、毛の生え具合がいい。割れ目と実にうまく調和して生えている。縮れ毛も柔らかそうで多からず少なからず。それに割れ目の形。ごく自然に割れている。恥ずかしそうに、そのくせ恥じらいもなく、実にすらりと割れてますな。ま、割れ具合だけでいえば、一級品ですな。ホラ、この割れ目の間から、チラっと薄桃色の柔らかそうな肉が見えるでしょう。これ、これ、これです。普通はこうじゃない。こっちで開いてやらないかぎり、まず見えないのが普通です。股をこじ開いて縛っているからかもしれないが、この状態でこういう見せ方ができるのは道具がいい証拠です。それに色。実にいい色をしていますな。ナデシコ色というかサーモンピンクというか。しかし、色もいいが見せ方がいい。実にいい。この小陰唇ね。ほれ、このべっとりとしているこのベラベラ。この小淫唇に保護されているように見せながら、この中身の壁肉、ほんとうは小陰唇による保護を拒んでいる。見て下さい。恥ずかしくてたまらないという風情をしながら、こんな淫らな肉の見せ方をしているでしょう。見事な嘘のつき方です。どうです、この大胆な見せ具合。そうとうしたたかですな、このオ×コ。この二枚のベラベラの色具合から判断すると、この奥さん、そうとうな頻度でセックス、やってますな。実に淫靡な動物並みの生殖器の色だ。何人もの違った男の性液がこの小陰唇をこんな風に酸化させて、こんな味のあるいい色にしてしまったのですな」
「ね、ね、ばっちりでしょ、まさに、ビデオ向きのオマ×コよ」　
　いいながらみどりは、冴子の裂け目の筋を下から上になぞっていった。親指と人さし指で亀裂の長さを計る手つきをしている。
「お豆ちゃんも見せたげましょうか」
　いいながらみどりは、ひどくあっさりと冴子の中心部に指を添えた。そしてもう一方の手の指で、その部分を下から上になぞるようにゆっくりとせりあげていった。サヤ豆の莢を割くような無遠慮な指の動きであった。恥ずかしい部分の薄皮がぬるっと弾いて、ひどく切なげに、そのくせひどく大胆に、冴子の女の秘部がも蛍光燈の下で露わになって喘いだ。
「ひやあ、剥きだし、サ×！」
「す、すごい」
「ひ、光ってる！」
　みどりはその先端に、そっと指の腹を添えた。
「あああ、みどり姐さん。そ、そんな卑猥な触りかた、やめてくださいよ。黙って見てるだけで、おれ、イキそうになるじゃん」
　大ちゃんが生唾を飲み込んで、うめくようにいった。
「み、み、みどり姐さん、おれ、ほ、ほんとに、こ、この奥さんと、オ、オ、オ××コできるんでしょうね」
　舌なめずりをしながらいった。
「もちろんよ、やりたいだけやったらいいわ。でも、いまはだめ。大ちゃんの役目はカメラよ。ガツガツしないで、奥さんの構造、しっかり、ビデオに写しておかなくちゃ…。するのはそれから。後で腰の抜けるぐらいしたらいい」
　大ちゃんは、前を押さえて、しぶしぶビデオカメラを回転させた。額の辺りの汗をちょっと手で拭って、照明の具合を確認しファインダーを覗いた。　
「流石の藤島さんも感心してるじゃないですか」
　笹山が小男の藤島にからかうようにいった。
「こんな奇麗な顔をしたベッピンさんが、こんな凄い道具をつけている！　信じられませんな。――わしの人生観、変わりそうですわ」
「いやいや、藤島さんのお説を聞いていると、この割れ方がいよいよ偉大に見えてくる。この毛の生えっぷり！　ウン、上下の長さと開き具合！　中身の見せ方！　凄いじゃないですか。ああ、堪らんな。――大ちゃん、世紀のオ××コや。興奮せんと、しっかり写しとくことだ」
　カメラの無気味な回転音が、悪魔の呻きのように聞こえた。
　――ああ、男たちのいやらしい視線が、自分の一番辛い個所に集中している！　そう思うだけで、冴子は気が狂いそうであった。すでに、魂は完全にうち砕かれている。もはや、冴子には卑猥で好色な男たちの視線を拒む力も気力もない。ただブルブルと、小刻みに、震えているばかりであった。
「さあ、大ちゃん、ここをズームアップや。もっとカメラを近付けて――。さあ、そのちらっと見えているサ×、そいつもしっかりカメラに収めとくんだ」
　大きく開かれた自分の股間に、カメラがさらにぐっと接近してくるのを冴子は感じた。
「ああ、やめて！」
　絶望の声をあげた。ブルっと、また発作的に腰が震えた。
　大ちゃんは、ベッドの上に、惜しげもなくＹの字型に頑丈に縛りつけられた冴子の裸身のあらゆる部分を、ビデオで執拗にねめまわしていく。
「割れ目と女芯の部分は特に念いりにな。さあ、ここ、ここ。中の方も遠慮せんと。奥の奥まで写しとくなはれ」
　いいながら、小男は両の指先を、小高く盛り上がった冴子の女の丘に這わせていった。冴子は体を弓反りにして、絶息するような呻きを洩らした。
　小男の無骨な指が冴子の柔肉の谷間を、無残に押し広げた。微妙に入り組んだ内部の花層が、さらに露わに外部に剥き出しになった。小男は、クレバスの間の自分の指の先端をちょっとをひねった。美しい淡紅色の冴子の内部の襞々の層が、くるりとかえって、なめくじのように不気味な動きかたをし、男の指の下でぬるりとうねった。
「ズーム、ズーム、ズームアップや」
　不遠慮に、大ちゃんのカメラが冴子の両肢の間に、割って入った。不気味な機械音が、ゆっくりと、冴子に迫ってくる。冴子は、また、空しく全身をくねらせた。
「藤島さんのいうとおり外形は、まず、申し分なしね。あとは、機能上の問題」
「そう、見かけだおしということもありますからね」
　小男が笑って言った。
「で、どんな検査をするんです？」
　大ちゃんが聞いた。
「まず、吸引力ね。どのくらいの力で吸い付くか。それに収縮力もね。つまり、閉め具合の検査。中の大きさや深さも調べなくっちゃ。でも、一番大切なのは感度。どのくらい感じやすいかを調べるテストよ。このテストがちょっとやっかいなのよ。一口に検査といってもいろいろ忙しいんから――」
　男達は、息をのんで、みどりの動作を見守っている。
「じゃあ、最初は締め具合のテストからかかりましょうかね。――ついでに、感度も一緒にやっちゃいましょう」
　みどりは得意げにいい、屈辱と絶望に打ちのめされている冴子の頬を、いたずらっぽく、ちょっとつついた。冴子は、固く両方の目を閉ざし熱ぽっく息づいて朱に染まった顔を微かにそむけて、イヤイヤをした。
「いい？　奥さま。締め具合と感度のテスト始めるわね。よくなってくると、あなたのここ、どのくらい締まるかのテストなのよ。――おやおや、そんなに固くなることないわ。もっとリラックスして体の力を抜くの。いいこと？　すきな男に、オ××コしてもらう時のような気持ちで待っていればいいの」
　冴子は羞恥に打ちひしがれて、悲し気に嗚咽の声を洩らした。しなやかに首を、弱々しく左右に振るだけである。
「大ちゃん、その膣圧計を取ってちょうだい」　
　大ちゃんは、言われるまま、ベッドの上の不気味な器具をとりあげて、みどりに手渡した。カメラを抱えたまま、呆然としてみどりの言うなりになっている。
「しかし、こんなに開きぱなしの股の間に突っ込んで、本当の圧力がはかれるのかな」
　笹山が言った。
「いくらいい道具をつけていても、この状態では多少は緩むと思うんだが――。圧を計る時は、やっぱり、しっかり閉じた状態でないと、本当の数値はでないのと違うか」
「そうね」　
　みどりは、器具を持ったまま、暫く考えた。
「ほんと――これじゃ、開きすぎね。じゃ、圧はやめて感度だけにしましょう」
　ひどくあっさりと言い、手にしていた器具を脇においてもうひとつの道具をとりあげた。生身の男性をそっくり型どった不気味な筒具である。色具合まで、男性のそれとそっくりにしつらえてある。見るからにおぞましい格好をしている。その逆の先端に細いコードが繋がっていて、小さなボタンを押すと筒具は微かな電動音とともに、不気味な振動を見せた。
「奥さん、ご覧になって！　ご主人のとそっくりでしょう？」
　みどりは、冴子の目の前にそれを持ってきた。
「そんなに固く目を閉じていないでゆっくりご覧あそばせ。――…ご主人のとどちらが立派かしら」
　言いながら、みどりは二度三度ボタンを押したり止めたりしてその調子を調べ、満足気にひとりでうなずいた。それからぺたぺたと軽く、冴子の頬を筒具で叩いた。
「調子は上々。コイツ、生意気にも、早く奥さんの中に入りたいといってる」
　冴子は、頑なに目を閉じたままであった。みどりはあっさりと、器具を、冴子の頬から引き上げると、今度は、何を思ったのか、それを冴子の華奢なし足首の方へ持ってきた。
　蒲団の両端にしっかりと繋がれている白い冴子の足の裏にそれをゆっくりあてがった。不気味な振動が、冴子の足の裏をくすぐる。冴子はブルルっと震えた。