七

「や、やめて！」
　冴子は悲痛な声をあげた。
「割りと敏感だわね」
　みどりはお構いなく、タップリと冴子の足の裏をくすぐって、やがて器具のスイッチを止めた。
「そんなことで、感度がわかるの？」
　大ちゃんが聞いた。
「とっておきの秘訣よ。敏感な女は、これに弱いの。見ていてごらん」
　それから、みどりは手帳用の細い鉛筆を取りだして、再び冴子の形のいい足の、指と指の間をゆっくりとまさぐっていった。
　冴子は、腰をガクガクと揺さぶった。
「おっ、おっ願い！　や、やめて！　やめて下さい！」
「ね、もう、感じてるでしょ。すけべな証拠」
　みどりはさらに微妙なしぐさで、こってりと鉛筆を、冴子の指の間でこねます。冴子は、ブルルっと全身をゆすった。左右に大きく割れている透き通るような乳色の太股が、ピクピクと二度ばかり痙攣した。
「う、う、う――っ」
「よっしゃ、感度は良好！　やっぱし、エエ体質してる。きっと、道具も敏感よ」
　裸身の冴子の白い肌はすでにじっとりと汗ばんでいて、その端正な横顔は屈辱でゆがんでいる。涙と汗で、化粧のあとは完全は崩れていた。
「この感じかたからみると、この人、そうとう好きよ。――これだけ感度がよかったら、性感帯を見つけだすのはワケなしだわ」
　笹山が、むせいでいる冴子の熱い頬に両手かけて、正面に顔を向けさせた。
「いい顔だ。美人がこうして、あられもなく体を震わせていると、いやでも、性欲がそそられる」
「おっぱいの感度も調べてね。そっちの方は、殿方の役目よ」
　言われて、大ちゃんがカメラ片手に麻縄で緊めあげられた豊かな冴子の乳房に、そっと手を触れさせた。きつい縄と縄の間からはちきれんばかりにこぼれでた冴子の豊満な乳房がブルっと震えた。
「ええおっぱいしてる」
　桜の蕾のような乳房の両の乳頭を指先でつまむと、大ちゃんはコリコリともみあげていく。冴子は、全身に火をつけられたように、緊縛された白い裸身を狂おしくもだえさせた。裸身がエビのように反り返った。
「う――っ」
　唇の間から、嗚咽がもれた。乳房が固くなっていくのを自分でも意識した。
「すごい！　みどり姐さん、お乳の方も、すごく敏感だ！」
「どこまで好色にできているのかしらこの奥さん。体中が全部生殖器みたい」
　男が二人、得たりとばかりに、両側から、冴子の乳房を揉み上げていく。
「ああ――」
　全身が火になった。クラクラと眩暈がした。
「私は、この奥さんのヘソから下を受け持つわ。あなた達は、そのおっぱいから上の方を可愛いがってあげて」
　みどりが電動玩具にスイッチを入れた。
「みんなで手分けして、上と下の性感帯を刺激してあげるの。どのくらいの時間で、どれくらい淫密をあふれさせるか、楽しみじゃない？」
「なるほど、上と下を同時に責めれば感度も倍増するって、寸法だな」
「オッパイだけを揉みほぐしているだけじゃだめよ。首筋やら耳やら脇の下も、上手にキッスしたりくすぐってあげたりしてね」
　いやらしい手つきで、男達は、ゆっくりと冴子の乳房をいたぶり始めた。むっちりと、麻縄が、冴子の乳房の上と下に食い込んでいる。縄の間から、こぼれ落ちんばかりに緊めつけられた乳房を、男達は貴重なものに触れるように、左右から優しげに揉みしごいてく。冴子はもう、声も立てられなかった。
　淫靡にまさぐってくる男達の手を、払いのけようとして上半身をくねらせるのだが、力は次第に希薄になっていく。嵩にかかったように、男達は交互に醜悪な唇を冴子の乳房に押しつけた。薄紅色の可愛い乳頭を、満足気に口に含んでは緩く、そして強く吸った。飽きると、今度は、のけぞったように反り返った冴子のうなじに、粘っこくその唇を這わせていく。そして、また豊満な膨らみを楽しむように、ユサユサと乳房を揉みあげていく。
　冴子の血を吐くような憤怒の思いがゆっくりと希薄になっていく。身内の高まりが一人歩きをしていくようであった。肉も骨も精神も、何かに掻きたてられるような思いに変じようとしている。
「う、ううう――」
　冴子は、声をしのばせて呻いた。二人の男は、さらに飽くことなく、乳房や首筋、脇の下、上気した頬などに熱っぽい接吻の雨をそそいでいく。
　みどりは、そんな冴子の姿態を横目に眺めながら、不気味な笑みをもらせて腰を据えた。ゆっくりと冴子の股間をまさぐって、電動玩具で、下腹部の豊かな丘を愛撫した。
　それから、左右に大きく伸びた乳白色の冴子の女盛りの太腿に頬ずりしたり、そっと唇を持っていって接吻したりした。さらに、優しげ手つきで、両股の付け根の柔らかい表皮をくすぐるように撫でていく。そして、突然、その触覚のような指先をスルリと冴子のもっとも敏感な部分に這わせた。
　――ああ、駄目！
　冴子は観念した。何故か力づくで反発しようという気力は失せかかっている。体の芯が、自分の意思を裏切ってひとりでに何か不条理なものに掻きたてられていくのを、冴子は悲しく思い知っていた。身内を浸食しようとしていく情念を振りきろうと身をよじらせているのか、あるいは繊毛の膨らみだけをさすり上げて自分を焦らそうするみどりの策に引き込まれていくのか、自分で自分を判断することができなっかった。