八

「どう、奥さん、少しは気分が乗ってきた？」
　みどりの指先が、冴子の裂け目に侵入しようとした。
「いやっ！」
　一瞬、冴子に自意識が甦った。昴ぶった声をあげ、真っ赤に染まった横顔を二度、三度、激しく揺さぶった。構わず、みどりは、指先を、冴子の内部へ挿入し、淫靡に動かした。そのゆるやかな動きが、冴子の感覚をしびれさせた。
「あら？！　もう、濡れてる！」
　みどりの言葉に、冴子はっとして身を固くした。
「いやねえ、いくらなんでも早すぎるじゃない」
　冴子は、辛そうに美しい眉根をしかめた。顔が真っ赤に染まって火照った。苦しげに顔をそむけた。恥ずかしさで地上から自分を抹殺したいと思った。
　しかし、みどりの白い指先をくわえた冴子のサーモンピンクの花肉は、すでに甘く柔らかに膨らみ始めている。みどりの愛撫は、巧妙で執拗であった。粘膜の底深くにみどりの指がユルユルと達すると、冴子は耐え切れず押し殺した喘ぎを洩らせた。
「すごく熱いわ。指がやけどしそう！」
　指を二本にした。みどりの巧妙さに堪らず冴子は腰をくねらせた。
「でも、濡れ具合は、もうちょっとね。この電動チンチン、乾いているから、入れて擦るとチョット痛いかもね。だから、入れるのはもうちょっと濡れてから――。擦りきれちゃうと、あとで、ここ、使い物にならなくなっちゃうもの」
　みどりは指を三本にした。ほとんどの抵抗らしい抵抗もなく冴子はみどりの指を受け入れた。みどりの執拗な愛撫が続く。
　冴子は、すでにあられもない喘ぎを洩らすようになっている。全身を痙攣させてやや腰を浮かすようにしてくねらせた。
　男達は、もう夢中になって冴子の乳房や、うなじに接吻の雨を降らせてせいる。形のいい乳房を緊めあげている麻縄もじっとりと冴子の汗を吸っていた。
　上半身と下半身を、同時に何人かの人間に責めさいなまれて、冴子は、いまや荒波に翻弄される小舟であった。進退を極めるにも似た呻きが唇をついてでた。
「ああ、ねえ――」
　名状のできぬ被虐の昴ぶりに、のたうつように舌足らずの声をあげた。
「ねえ、ね。――や、やめてぇ」
「うわーっ、いやらし！　垂れてきたジャン、お汁！」
　みどりは、淫靡に笑った。
　冴子は無意識に腰をひねった。
「そう、垂らしていいのよ。――もっと垂らしなさいな。もっともっと！　ご遠慮にはおよばないわ。どんどん、垂らしてちょうだい」
　みどりの巧みな指の動きが、ゆっくりと冴子の官能の源泉を痺れせ始めた。巧妙なみどり指の動きに耐え切れず、ついに冴子は屈辱の樹液を一筋、たらっと外部へあふれさせた。
「すごい度胸！、奥さん、やるじゃない」
　冴子は唇を噛んだ。　　　
「最高の感度よ、奥様。ひょっとしたら、あなたのオ×ンコ、稀にみる名器かもしれなくってよ」
　冴子の喘ぎからは、これまでに見せてきた頑なな反発や拒否の様子が失せてしまっている。押さえに押さえた感情を、甘く、切なげな喜悦さえ漂わせるような響きで訴えるかのような呻きになっていた。
「すごいじゃない。中、ものすごく燃えてる！　指、熱くてうだりそう。なんて、敏感なオ×ンコ！　まあま！　濡れること濡れること。指、こんなになっちゃった！」
　みどりは、指の動きを休めて、男達を見た。
「いずれ、この穴、藤島さんのオチン×ン、くわえることになるんでしょ？　そんなら、どうでしょう、その前に藤島さんに、ここへ、ちょっと挨拶をしてもらったら――？」
　藤島さんと呼ばれて小男は目をあげた。さきほどから、不気味な笑みを浮かべながら、徐々に崩れていく冴子を、冷酷に眺めていた。
　小男ながら、この道のプロである。プロを自称するだけあってセックスについては、異常なほどの知識と能力をもっている。場末のストリップ劇場を渡り歩いて、踊り子との本番実演を何度も経験している。セックスの技巧も常人の及びつかないテクニシヤンである。亀頭の先端に小さい真珠の玉を縫いこんでいるというのがこの男の自慢であった。
　その小男藤島と冴子の絡みを撮影することが今日の彼らの本当の狙いであった。
「藤島さん、今夜は、あんたとこの奥さんが主役でしょ」
　藤島は、皺だらけの顔をちょっと歪めた。
「まかしときなはれ。批評だけでけではなく実技でも女を喜ばせるのには自信があります。すぐにこの奥さん、いい声でヒイヒイよがらせてみせまっさ。イク時、この人、どんな嬉しそうな顔をしてイクか、オ×コと顔、音入りでビデオにばっちり入れといておくなはれや」
「だったら、その前に、奥さんにご挨拶していただきたいわ」
「挨拶？　強姦するのに、挨拶がいりますんか？」
「そうよ、これから仲好くしましょうって挨拶よ」
「強姦前の挨拶なんて、聞いたことおませんな」
「いやな藤島さん。ちゃんと分かっているくせに」
　みどりは藤島を見て笑った。
「ここへキッスをしてあげるの！」
　みどりは、冴子の股間のその部分を指でなぞった。
「やる前に、しっかり、相手さんのあこそ、味わっておくのが礼儀でしょ」
　小男は、満面に喜色を浮かべた。
「なんや、挨拶いうたら、オ×コを舐めることですかい。――そんなら、おれの一番得意とするとことやおませんか」
　みどりと小男は、顔を見交わせてちょっと笑った。それからよいしょと小男は腰を上げた。
「ほな、失礼して、ちょっと、挨拶させてもらいましょ」
　両手をこするようにして、ペッとに唾を飛ばした。小さい体をヒョコヒョコと運んで、冴子の股間に、猿のように身を乗りいれた。
「ひやーっ、こいつは！　――淫らな穴や、舐めてほしいといって、もうピクピクと息づいてまっせ」
　小男は、わざとらしい声をあげた。
「それにしても、エライねぶり甲斐のある面積やな。――さてと、どこからいただきましょうかな」
　小男は淫靡に笑って周囲をみた。
「ほな、ご馳っ走ォさん！」　
　ベッドの上にすっきりと伸びた冴子の左右の白い両股の間に、小男はうずくまるようにして短い両手を絡ませた。冴子は気もそぞろになって卑劣な人間どもの会話をに聞いていた。ブルっと全身がふるえた。意思に関係なく熱い樹液が淫らに溢れるのを悲しく意識していた。苦しげに息をついた。同じ瞬間、小男の部厚い唇が、ひどく無遠慮に冴子の部分に触れた。
「うっ！」
　冴子は悲鳴を上げた。思わず腰を捻った。小刻みに、ヒクヒクと痙攣する冴子の両腿を、小男は短い両手で、力づくで抱え込んだ。すっかり濡れそぼった冴子のその柔らかい亀裂の部分にヒルのような醜悪な唇が這っていった。はっ、はっと獣のような不気味な息遣いが生暖かく股間を這っていく。
「お願い！　や、やめてっ！」
　呻いて、冴子は激しく体を震わせた。
「ウーン！　ええ匂いや」
　小男は、鼻先にまつわる薄絹のような柔らかい縮れ毛を、サカリのついた豚のような醜い唇で丹念に撫で上げ、さすりあげていく。
「ありゃ？」
　唐突に、小男は顔をあげた。
「くさいな、ちょっと」
　上げた唇と鼻孔の周囲が冴子の密汁をたっぷりと含んでネットリと光っている。
「え？」
「ちょっとしょっぱい。――ションベン臭い」
「――いやねえ」
　みどりは吹きだした。
「オシッコのあと、しっかり拭いたンかいな」
「そりゃ、拭いてるわよ。でも、その都度、洗うわけにもいかないじゃないの、ねえ、奥さん」
　二人は声をあげて笑った。
「そりゃそうや。きれいに洗っていると味も匂いも落ちてしまって、鮮度の落ちた魚のと一緒ですからな。多少は匂う方がいいにはいいんですが。それにしても、このオ×コ、いささかションベン臭いわな」
　いいながら、小男は再び、冴子の股間に身を沈めた。