九

「ほな、洗ったげましょ。わしの口で、徹底的に」　
　獣のような息使いで、冴子の裂け目に無遠慮に醜悪な唇を重ねた。冴子は必死になって身をよじった。
「――う、うめえ。姐さん、いい味や。ションベンのしょっぱさがたまらん」
　ペチャペチャと、猫が油を舐めるような音をたてて、冴子を蹂躪していった。
「おお、出る出る。よう出る。もうずるずる」
　呻くようにいいながら、小男の分厚い舌先は柔体動物のようにクネクネと不気味に、しかし一刻の休みもなく執拗に冴子の襞の内部をま探りかつ抉る。
　冴子は、いつのまにかおぞましさを通り越し激しく心臓を緊めつけるような狂おしい切なさをはっきりと知覚するようになっていた。汚辱を越えた痛烈な快美感をいまや身体の真芯で思い知らされようとしていた。
　小男の口の動きは、次第に荒っぽいものとなりその道のプロとしての本領をゆっくりと発揮していった。善良で世間知らずの一主婦にとってあまりにも残酷で卑劣ないたぶりであった。小男の淫靡な舌先は、冴子の小さな秘密の肉芽をさぐりあてた。ブルっと、獣が獲物につありついたように、小男の首は奮いたった。激しく肉芽を唇に含んだ。同時に、息を弾ませて荒々しく吸いあげる。容赦ない吸い方であった。息の根も止まるほどの衝撃であった。
「うっ！　あっ――」
　絶叫するような声をあげ、狂ったように乱れ髪を揺さぶり、ベッドの上に大きく開帳縛りにされたあられもない全裸を激しく悶えさせた。
　二人の男たちは、冴子のそんな半狂乱の狂態をなだめるかのように、左右からのた打つ冴子の上半身を押さえ込み、嵩にかかったように豊かな冴子の乳房を愛撫してく。
　きつく緊めあげられた麻縄が、じっとりと汗を含んで、冴子の真っ白い乳房の上下に、ビッシリと食い込み、乳房の周辺が薄赤く腫れあがっている。
　男たちは、もはや飢えた狼であった。冴子の両頬にまとわりつく黒髪を、掌で撫であげるようにして、耳たぶを噛んだり、脇の下や朱に染まった首筋に熱っぽい口吻を、狂ったように注ぎかけていく。
「――ああ」
　冴子は緊縛された全身を、弓反りにして、火を吐くような悲鳴をあげた。
　全世界が朱色の眩暈となって燃えさかる感じ――。屈辱と汚辱の絡み合う名状の出来ぬ快美感でフッと気が遠くなりかけていた。
　ようやく小男が、股間への粘っこい口吻を終えた。鼻の頭と唇の周辺が冴子の樹液と自分の唾液でズルズルになって光っている。
「ああ、うめえ、――さ、最高の味や！　それにしても久ぶりですわ、こんな美味しい蜜を堪能させてもらったのは――」
　小男の唇の間から、たらりとひとしずく粘っこい液体がスーっと糸を引いて落ちた。
「じゃあ、交替ね、今度は私の番」
　みどりが小男を押しのけようとした。
「とっとっとと――。もうちょっとや、みどり姉さん。――せっかくションベン、きれいに洗ってやったのや。もうちょっと舐めさせとくなはれ」
「いやねえ、これだから男ってきらい。――そんなにひつこいと、奥さんに嫌われるわよ」
「嫌うどころか、見てください。ここ、もっともっととヒクヒクしてるやおませんか」
　いいながら、小男は、平手を冴子の部分にあてがい、下から上にズルリと滑らせた。
　冴子を身をくねらせた。
「もうちょっとだけ。――今度は、反対から」
　小男は、蒲団の裾から身を起こすと、猿のように体をねじって、器用に蒲団の上にはい上がった。
「大ちゃん、奥さんのその縄、足首の縄、両足ともほどいてくれますか」
　いいながら、小男は、どっこいしょといい、冴子の顔に背を見せた形でその豊かな腹部に馬乗りになった。
「まだ暴れますからな、しっかりと押さえておいてくださいよ」
　意外に大きい臀部を、冴子の顎に押しつけるようにして、小男は再びゆっくりと冴子の股間に頭を下げていく。短い両手で冴子の両腿の膝を抱えた。
「よっしゃ、大ちゃん、その足、両足、こっちこっち。広げたまま、こっち、こっち」
　冴子は、一瞬、自由になった両足を腹の上にかぶさった小男ごと大きく宙にゆすって、力の限り捻り懸命に閉じようとした。しかし大ちゃんは、奇妙な声を発しながら、お構いなく冴子の足を高々とからげて両手で宙に抱えた。
「すごい力や」
「こっち、こっち。その足首、わしの肩にもってきてんか」
　無言のまま、大ちゃんは悶え狂う冴子の足を、ｕ型記号のように捻って小男の肩の方へしゃにむに折っていった。そのしなやかな両の腿の間に小男の首が割って入った。
「よっしゃ、そのまま。大ちゃんそのままや。すぐに大人しくなりますからな」
　小男は、くねった冴子の両足に、外側から短い手を絡めて頭を下げ、冴子の両尻と腿を同時に容赦なく抱えあげた。　
　小男の眼前に、剥き出しになった冴子の生殖器と肛門があった。ウッとうなって、小男はその方向から、冴子のその部分に頭をかぶせた。
「こっちからですと、ケツの穴の動きを観賞しながら舐められますのや」
　小男が、舌をならして、みどりをみた。
「こっちからの味も、また格別でっせ」
　いいながら、冴子の臀部にそろそろと片手を這わせた。両の大腿部の付け根の雪のように純白な豊満な臀部の底に、形のいい菊の蕾が震えていた。小男は、人差し指の腹で淫靡に蕾の周りを撫でながら、かまわず冴子の正面の真っ直に切れたクレバスの間に、逆の方向から武者ぶりついた。
「うっ！」
　冴子は呻いた。全身がとろけるようであった。腰から下がピクピクと自然に痙攣した。
「こうして責めると、すけべえな女はすぐおとなしくなる」
　事実、宙で狂ったようなあがきをみせていた冴子の両足の動きは、小男の唇がその部分に重なると、瞬間、ピクリと震え、しかし、萎えたようにひどくあっさりと力を失い、ダラっと小男の両肩を挟むように陥没していった。首をあげ、小男は、指の間に無雑作に冴子の突起部を挟んだ。その先端にもう一方の手の指を添え、ゆっくりと擦りながら、肛門と性器の間に唇を這わせた。耐えかねて、冴子は弓なりに腰を反らせた。
「そこまで！　もうストップ。藤島さん」
「も、もうちょっと――」
「だめ。挨拶はそこまで。それ以上やったら、奥さん、昇天しちゃう」
　小男はしぶしぶ顔をあげた。