３．

　食事が終わると、良雄は元気を取り戻して、美樹を再びリビングへ引きずるようにして連れて行った。
　良雄は飽くことなく美樹を責め続け、最後は二人とも足腰が立たないほどになってしまった。
　良雄にしてみれば、こんなチャンスが巡ってくることはもうないかもしれないという思いが強く、欲望と願望のすべてをリリースしてしまいたかったのだ。
（ああ‥‥やっぱり‥‥）
　まだ蜜壺の中でくすぶり続ける余韻に痙攣しながら、美樹は心の中でつぶやく。
（はやく、何とかしないと大変なことになっちゃう）
　美樹は良雄に身体を抱きしめられていて、その体温を快く感じながらも、この関係が続いてしまうことが危険だと改めて思っていた。若くて経験の浅い良雄が自分に夢中になってしまえばトラブルは避けられない。なにより、美樹自身が良雄のたくましさに心を寄せはじめてしまっている。
「ねえ、良雄さん‥‥近いうちに、奈緒ちゃんを誘って温泉に行かない？」
「えっ、どーゆーこと？」
「はやく、みんなで仲良くできる方法を考えてたの‥‥」
「そんな‥‥」
　良雄は、ちょっと不満そうな顔をしながら言う。
「だって、このままでいる訳にはいかないでしょ」
「う‥‥うん‥‥」
　良雄は兄の顔を思い出しながら、渋々うなずく。
　今日のことだって、忠雄に知られたらどうなるのか分からないのだ。このまま義姉との秘め事を続けられると思うほど、良雄もバカではない。
「義姉さん、ありがと。すっごく良かったよ」
「分かってくれたのね」
「分かったよ。だから‥‥」
「えっ？」
「もう一回‥‥兄貴が帰ってくるまでに‥‥たのむよ‥‥」
　やはり義姉と二人っきりで楽しめる機会は少なそうだ、そう思った良雄は美樹に覆い被さった。そして、まだ硬いままの乳首を口にふくむ。
「ああ‥‥もう、ゆるして‥‥」
　そう言いながらも、蜜壺の奥がジンジン熱くなってきてしまい、美樹は良雄の愛撫に身をゆだねる。
「義姉さんの身体を全部舐め尽くしてやる」
　良雄は四つん這いになって、乳首からヘソ、脇腹から下腹、太ももから膝へ舌を這わせると、美樹をうつぶせにして、こんどは足の裏を舐めはじめた。
「だ、だめ‥‥そんなとこ汚いから‥‥」
　くすぐったさに官能が混じり身悶えする美樹。
「ああっ‥‥いやぁっ！」
　指の股を舐められたとき、ついに官能が勝ち、ビリビリと内ももを伝わって電流にも似た快感が蜜壺まで届く。
　美樹の反応に気をよくした良雄は、親指から順番に足の指を口にふくみ舐めまわす。
「ああっ‥‥良雄さん‥‥は、はやく‥‥」
　蜜が洪水のように溢れだしたのを感じ、美樹は良雄を求める。
「まだ、まだ」
　余裕たっぷりの良雄は、美樹の懇願を無視して、太ももの裏側からヒップの膨らみまでを丁寧に舐めあげる。
「ああっ！」
　舌がヒップの合わせ目をとらえたとき、美樹はシャギーカーペットの長い毛を握りしめながら、背中をのけぞらせて叫んだ。全身が痙攣しはじめる。
「ふふふ、美味しいよ。義姉さんの身体」
　オルガスムスに震える美樹を、良雄は舐め続ける。
「だ、だめぇ‥‥溶ける‥‥溶けちゃう‥‥」
　終わらない責めに、美樹は悲鳴のような喘ぎ声を上げ続ける。
　背中、脇の下、くびすじ、耳の順番で舐め終えると、美樹を再び仰向けにさせて唇を合わせ、舌を絡める。
　美樹も、精一杯それに応える。
　良雄の手が下半身へ伸び秘肉をとらえたとき、美樹は、また、オルガスムスに達して身体を震わせ、しがみつくように良雄を抱きしめた。
「さてと、ラストだ」
　唇を離した良雄は、そう言うと、美樹の脚を開かせて淡い茂みに顔をうずめ、勃起しきったクリトリスを舌先で弄びながら蜜壺の中へ人差し指と中指を挿入する。
「ああ〜っ、いやぁ〜」
　自ら腰をグラインドさせながら美樹が喘ぐ。
　もう、蜜壺の中は洪水状態だ。
　良雄はたっぷり濡らした中指を引き抜きアナルにあてがう。と、それを待っていたかのように、スムーズに菊蕾に指が飲み込まれていく。蜜壺とは違う粘りつくような肉の感触。中は十分に熱い。
「ああっ‥‥そ、そこは‥‥」
　美樹の声が肉を通して指先に響く。
　良雄が舌先の動きを速くすると、美樹の喘ぎは泣き声に変わった。
「はぁ〜ん‥‥だ‥‥だめ‥‥もう、ゆるして‥‥」
　全身がブルブルと痙攣しはじめる。
　それでも良雄は攻撃の手を休めず、親指を蜜壺へ差し込み、つまむようにしてアヌスとの間の肉の感触を楽しむ。もちろん、もっとも敏感な部分への愛撫も続けたままだ。そして、少し身体をずらし、空いた手でバストを揉みはじめた。
「ああ‥‥ゆ、ゆるして‥‥も、もう‥‥どうにかなっちゃう‥‥」
　それでも良雄は攻撃の手をゆるめない。
「あっ‥‥いいっ‥‥い、いくぅ‥‥」
　美樹の全身が硬直して、浮かした足の指先までもが鍵型に曲がっている。
　やがて、ぐったりと脱力し、喘ぎとともに痙攣を繰り返す。
「きれいだよ、義姉さん。すっごく、きれいだ‥‥」
　身を起こした良雄は、オルガスムスの余韻に浸る美樹を見下ろして言った。
　事実、筋肉質で良く締まった身体をしているけど、ほどよく脂肪の乗った美樹の肢体は、プレイボーイなどの紙面を飾っている欧米のモデルを彷彿とさせるような華やかさがある。ましてや、そんな芸術作品のような肢体が目の前で官能に息づき、一糸まとわぬ姿でいる感激はたとえようもない。
「義姉さん‥‥」
　良雄は、そう言って美樹を抱きしめ、まだ痙攣している蜜壺へ侵入していった。

「ねえ、あなた。また、会社の貸別荘、借りられないかしら」
　帰宅した忠雄が食事を終え一服するのを待って美樹が言った。
「ん？　いいけど‥‥」
「良雄さんと奈緒ちゃん誘って四人で行きたいのよ」
「おまえ、なに考えてんだ？」
「だって、あの二人、なかなか先に進めそうもないから‥‥」
「それだけか？　なんか怪しいなぁ‥‥」
　何年も連れ添っているだけ合ってさすがに忠雄は鋭い。美樹は、全てを隠すことはできないだろうと思い、奈緒を抱いてしまったことだけを告白し、仲間に引き入れるためには良雄と関係を結ばせることが一番いいのだと話した。
「なんだよ、もうそんなとこまで行っちゃってたんだ。それじゃあ、俺の美味しいところがないじゃないか」
「でも、そうするのが早道だと思うわ‥‥」
「じゃあ、条件がある」
「なに‥‥」
「一度、奈緒ちゃんを連れてきてレズってるところを俺に覗かせろ。ビデオに撮ってやる」
　美樹は、それくらいは仕方ないと思い、黙ってうなずいた。
「それからな、俺に黙ってそんなことをしていたお仕置きだ。今日は、ちょっときつく責めてやる。いいな」
「そ、そんな‥‥」
　今日は日が暮れるまで良雄に責められていたのだ。その余韻が残っているのに、このうえ忠雄に責められたらどうなってしまうのだろう。もしかして隠れた情事の痕跡が残っていて忠雄に気付かれてしまうかもしれない。そう思うと、美樹は戦慄に震えたが逆らうことはできない。
「あ、あなた‥‥わたしは、それが一番いいと思って‥‥」
「うるさい。黙ってやった罰だ。縛って、たっぷり可愛がってやるから覚悟しろよ。それから、良雄のことも俺が決める。いいな」
「‥‥」
「返事は！？」
「は‥‥はい‥‥」
　パブロフの犬のように忠雄の言葉に反応してしまい、蜜壺が熱くなってくる自分の身体が恨めしかった。でも、忠雄の責めを想像しただけで、どんどん溢れてきてしまう自分を抑えきれないのだ。
「あ‥‥あなた‥‥ゆるして‥‥」
「ふん。もう目が潤んでるぞ。こっちへ来い」
　結局、美樹は失神するまで責められた。ベッドに固定され、陵辱の限りを尽くされた。ツボを心得た忠雄の責めに、下地が出来上がっている身体はいつもより敏感に反応し、腰全体が溶けて流れていくような快感の果てに意識を失ってしまったのだ。

　翌朝、美樹は
【お話があるの。明日の都合はどう？】
　と、奈緒の携帯にメールを送った。
【おねえさま。とっても逢いたかった。午前の授業が終わったら行きます。それでいいですか？】
　と、即座に返事が返ってきた。
「あなた、奈緒ちゃん明日大丈夫ですって」
「なんだ、ずいぶん早いな。じゃあ、明日は休暇を取るからな」
　忠雄はメールの文面を覗き込みながら、ニヤニヤ笑って答える。
「あなた、覗くだけよ。それ以上は‥‥」
「わかってるよ。俺も一回だけで終わらせたくないからな。良雄にも悪いしな」
　忠雄の言葉を聞いて美樹はちょっぴり心が痛んだ。でも、良雄と二人っきりで楽しんでしまったことを言うわけにはいかない。せめてもの償いに、奈緒との情事をたっぷり楽しんでもらうしかない。夫のために、精一杯、奈緒を乱れさせてやろうと思った。昨晩、完膚無きまでに翻弄され、やはり忠雄への強い愛情を再確認した美樹だったからだ。

「ねえ、みんなで温泉に行かない？　とっても素敵なところなの」
　美樹は、中指を奈緒の秘肉へ割り入れながら耳元でささやく。
　すでに、奈緒は舐められ、揉まれ、最初の頂点を迎えた後だった。
　奈緒は出迎えた美樹がドアを開けるなり、美樹にむしゃぶりつき、ゆっくりと会話を交わす暇もなく、二人はベッドルームへもつれ込んでしまったのだ。
「み‥‥みんなで‥‥？」
「そう。旦那も一緒。良雄さんも誘ってね。楽しいわよ。奈緒ちゃんも、もう家族みたいなものだから、いらっしゃいよ」
　ああ、家族旅行なんだと奈緒は思った。仲間に加えてもらえるうれしさと、美樹と長い時間一緒にいられることに気付き、奈緒はコックリとうなずいた。
「じゃあ決まりね。うれしいわ」
　そう言うなり、美樹は奈緒の勃起した乳首を口にふくみ、脚を使って奈緒の脚を大きく開かせ秘肉を弄んだ。
「ああ‥‥お、おねえさま‥‥」
　奈緒は背中をのけぞらせて悶える。
　実は、ベッドの足下の方にあるウオークインクローゼットに忠雄が隠れているのだ。ドアに細工して覗き穴が設けられている。美樹は、忠雄によく見えるよう、わざと奈緒の脚を開かせたのだ。
「奈緒ちゃん、ひとりでいっぱいしたでしょ？　じゃなかったら、こんなに感じるはずないわ。正直におっしゃい」
「だ‥‥だって‥‥」
　奈緒は、美樹の誘導尋問にあっけなく引っかかる。
「我慢できなかったの？」
　ヒクヒクと痙攣しながら、奈緒はコクンとうなずく。
「かわいいわ。どうやってしていたか、私に見せて」
　美樹は、秘肉から指を離し、淡く生えたヘアーを焦らすように撫でる。
「そ‥‥そんな‥‥はずかしい‥‥」
「お願い。見せて。それとも嫌なの？」
　美樹は奈緒の身体を起こすと、クローゼットのドアの前に置かれた椅子に座って言った。
「さあ、見せて」
　美樹と目が合うと、奈緒はおずおずと右手を股間へ移動させた。
　上半身を起こし脚を開いて膝で立った姿勢だ。
「そう。いい子ね」
　最初は躊躇していた奈緒だったが、美樹に微笑みかけられ、決心したように指を動かしはじめた。
　泣き出しそうで、なにかを求めるような不思議な目で美樹を見つめながら、奈緒は指を動かし続ける。
　やがて、感じはじめたらしく、空いた手を添えて両手で秘肉を愛撫しはじめる。両腕に挟まれる格好になったバストが前に突き出し妖しく揺れている。
「あ‥‥あん‥‥おねえさま‥‥あんっ‥‥」
「かわいいわよ。奈緒ちゃん。行くまで見ててあげる‥‥」
「ああ‥‥そんな‥‥」
「だって、見られて感じてるんでしょ？」
「‥‥いじわるぅ‥‥」
　そう言いながらも、奈緒は指先の動きを早める。
　このままでは、すぐに達してしまうかもしれない。素直過ぎる奈緒の反応に、美樹はチェストの引き出しからバイブレーターを取り出した。
「さあ、こんどは、これを使って。この前してあげたでしょ？」
　美樹の手に握られた乳白色のバイブレーターを見て、こんどこそ奈緒は泣きそうな顔になった。
「こ‥‥こわい‥‥ゆるして‥‥」
「大丈夫よ。ちゃんと見ていてあげるから」
　美樹の言葉は答えになっていない。ただ選択肢がないことを奈緒に知らせているだけだ。
「さ、持って」
　美樹は無理矢理バイブレーターを握らせる。
「どうしたの？　私に見せてくれないの？」
　美樹の優しい口調に促されるように、奈緒は蜜壺の入り口に先端をあてがった。しかし、それ以上はできないと言うように首を振り続ける。
　そこで、美樹は奈緒の後ろに回り込み、手を回して両方の乳首を軽くつまみながら、耳元でささやく。
「奈緒ちゃん。お願い。私に見せて」
　そして、耳たぶを口にふくんで舐めまわした。
「ああ‥‥」
　奈緒が悶える。
「見せてくれるわよね？」
　駄目押しするように美樹が耳元でささやくと、奈緒はかすかにうなずいた。そして、次の瞬間。
「あうっ！」
　奈緒が悲鳴を上げて前屈みになった。
　ついに先端が侵入したのだ。
　白く抜けるような奈緒の肌が、みるみるうちにピンクに染まっていく。
「そうよ。いい子ね。感じる？」
　奈緒はガクガクと震えながらうなずく。それが、精一杯らしい。
　きっとクローゼットの奥で忠雄も喜んでいるに違いない。美樹は美樹で、倒錯した悦びを覚えていた。
「もっと奥まで入れられる？」
　一線を越えてしまった奈緒は、歯を食いしばりながら指先に力を入れ、けなげに美樹の希望に応えようとする。忠雄の方からだと、じりじりとバイブレーターが蜜壺へ収まっていく様子が良く見えるだろう。
　奈緒は「はあっ、はあっ‥‥」と荒い息をしながら、ついにバイブレーターを根本まで飲み込んだ。美樹が背中を支えていなければ、ベッドに倒れ込んでしまうくらい上体が不安定になっている。
「もう、ちょっとよ」
　美樹は天井の照明器具にセットされたCCDカメラを確認するように上を向き、バイブレーターのスイッチを入れた。今日のために忠雄が準備したものだ。どこから借りてきたのかカメラは合計三台。天井と、ベッドの側面にあるドレッサーの中、そしてベッドのヘッドボードの中にセットされている。
「きゃっ！　いやっ！　ああんっ」
　内部で動きはじめた刺激に、奈緒は背中をのけぞらせて悶える。その勢いを利用して、美樹は奈緒の身体をベッドの上に横たえた。
「ほら。こうすると、もっと気持ちいいわよ」
　美樹は枝分かれした子機をクリトリスに押しあてスイッチを入れる。
「ブゥ〜ン」と蜂の羽音のような音が響き、奈緒がいっそう悶える。
「やっ！　だめ‥‥おねえさま‥‥たすけて‥‥」
　恥ずかしさも何もかなぐり捨てて悶える奈緒を見ていると、美樹は無性に忠雄のペニスが欲しくなった。このままクローゼットのドアを開けてしまいたい欲求に駆られた。今なら、奈緒も３Pを受け入れてしまうかもしれない。しかし、それは危険な賭だ。忠雄も、そう思っているからクローゼットから出てこないのだ。
（ああ‥‥あなた。見て）
　心の中で、美樹はそう叫ぶと、奈緒に覆い被さり唇を重ねる。
　美樹にしても、忠雄に覗かれているという刺激で、気がつかないうちに恐ろしく興奮していたのだ。
　美樹の荒々しいキスが引き金になって奈緒は絶頂を迎え身体を硬直させた。下の方から抱きついてきて、何回も腰をバウンドさせる。その勢いでバイブレーターがベッドの上に抜け落ち、そのときの刺激で奈緒はさらに呻いた。
　熱い抱擁がしばらく続く。
「‥‥おねえさま‥‥ごめんなさい‥‥わたしばっかり‥‥」
　まだ荒い息の中から、絶え絶えに奈緒が言う。
「かわいかったわ。奈緒ちゃん‥‥」
「こんどは、わたしが‥‥」
「じゃあ、上になってくれる？」
「えっ？」
「私の顔にまたがって」
「こ、こうですか‥‥」
　奈緒は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらシックスナインの体勢になった。
　美樹はヘッドボードにセットされたカメラの正面に奈緒のヒップを向け、秘肉を指で開く。きっと、初々しい奈緒の秘部が大写しになっていることだろう。女である美樹の目から見ても、奈緒の秘部は美しいと思う。ちょっとぽってりとした花びらは控えめできれいなピンク色で日本人離れしている。ヘアーも綿毛のように細く縮れていて前の方にしか生えておらず、大陰唇には産毛程度しか生えていない。
　後で、忠雄がビデオを見たら喜ぶに違いない。美樹は、奈緒を愛撫する振りをして忠雄のために秘部を弄んでいた。
　それでも、奈緒にしてみれば感じないはずはなく、なんとか均衡を破ろうと、まだ自分の愛液で濡れたバイブレーターを手に取り、美樹の蜜壺へ一気に突き刺した。
「いやぁ〜っ！」
　忠雄のことばかりを考えていた美樹は、突然の攻撃に驚き、悶えた。
　忠雄のペニスを熱望していただけに、蜜壺を満たされた悦びで、全身を伸ばしたまま硬直する。
　奈緒は、そんな美樹の反応がうれしく、リズミカルにバイブレーターを抜き差ししながら、吸い付くようにクリトリスを口にふくみ、舌先で舐めまわす。
「奈緒ちゃん‥‥いい‥‥すごく‥‥上手よ‥‥ああっ‥‥」
　こんどは、美樹が腰をバウンドさせる番だった。

　奈緒は満ち足りた顔でバイトに出かけていった。
（良雄さん、奈緒ちゃんの変化に気付くかしら？）
　そんなことを考えながら美樹がベッドルームへ戻ると、忠雄がニヤニヤ笑いながら待っていた。
「ふふふ。やるじゃないか。興奮したよ」
「あなた‥‥」
　美樹は忠雄の背中にしがみつく。
「なんだ。まだ足りないのか？」
「欲しかったの‥‥あなたが‥‥」
「そうか、だったら裸になってリビングへおいで。ビデオを鑑賞しながら、たっぷり可愛がってやる。ご褒美にな。どんな絵が撮れてるか楽しみだ」
　忠雄はリビングへ行って、買ったばかりの５０インチのプラズマビジョンにビデオをセットしはじめた。市販のソフトでホームシアターにするためでなく、自分が撮った映像を楽しむために買い換えたのだ。
　画面に絡み合う二人の姿が映し出されたとき、美樹が全裸でリビングへ入ってきた。
「よく撮れてるぞ。おまえも、こっちへ来て一緒に見よう。最近のCCDカメラはすごいな」
　それは、天井に仕掛けた小型カメラによる映像だった。真俯瞰の絵はきれいにベッドマットいっぱいをフレームに収めている。美樹が奈緒のTシャツを脱がせながら、あらわになった肌に舌を這わせている。受け身一方の奈緒も大画面で見ると、表情の変化を見ているだけで十分に蠱惑的だ。
「やだ‥‥こんなに、はっきり写っちゃうの‥‥」
　美樹は自分が全裸であることも忘れて画面に見入っている。
　忠雄は、そんな美樹を面白そうに観察していた。
　画面の中の美樹は、まるで子猫をじゃらすように奈緒を扱い、果実の皮をむくように衣類を剥ぎ取っていく。ポイントごとに的確な愛撫を加えているから、奈緒は美樹のなすがままといった感じで、あっという間に全裸にされた。そして、美樹はおもむろに自分も服を脱ぐと、カメラを意識して奈緒の脇に横たわり、手を伸ばしてバストを揉みはじめる。
　絡み合う肉と肉、こすれ合う肌と肌を見ていると、それだけで秘肉が疼きだし、美樹は肩で息をするようになっていた。
「二人ともきれいだ。そう思わないか」
　いつの間にか忠雄は美樹の後ろに立っていて耳元でささやいた。
　子宮まで電流が走ったように感じ、美樹は身体を震わせる。
「あ、あなた‥‥」
「こんどは俺が可愛がってやるからな」
　忠雄は、画面の中で美樹が奈緒に加えている愛撫にシンクロさせて、現実の美樹を愛撫しはじめた。
　女同士の行為は、自分がされたいことを相手に施すことが多い。だから、画面の中の奈緒に感情移入している美樹は、忠雄の愛撫を受けて、ある種の倒錯した感情が渦巻き普段以上に感じてしまう。
「ふふふ。すごいな。洪水だ」
　忠雄は太く逞しい指を秘肉に割り入れ、その濡れ方に驚いたように言う。美樹は内ももを濡らしてしまうくらい溢れさせていた。
「あ‥‥あなた‥‥はやく‥‥」
「まだまだだ。ゆっくり楽しませてもらうよ」
　美樹の懇願を一蹴する忠雄。
「もっと脚を開いて、前屈みになるんだ」
　忠雄は、そう言うと、ひざまずいて美樹のヒップに顔を埋める。そして、器用に舌先でクリトリスや花びらを舐めまわしながら、鼻先でアヌスを刺激する。
　画面の中では、美樹が奈緒の股間に顔を埋めていた。
「あっ‥‥いいっ‥‥いくっ‥‥もう、いっちゃう‥‥」
　美樹の身体が震え出す。
「だめ‥‥もう、だめぇ‥‥」
　美樹は、崩れるようにしてしゃがみ込んだ。
「おまえ、覗かれていて興奮してたんだろう？」
　忠雄は身体を離して聞きながら、美樹の膝を立て四つん這いにさせる。
「いつ見ても、いい眺めだ。おまえのオマ○コは最高だよ」
　ヒップを突き出した格好の美樹を後ろから指を使って嬲りはじめる。
「ああっ‥‥あなた‥‥はやく‥‥来て‥‥」
「そうだ‥‥温泉に行って、こうしてるところを良雄たちに覗かせてやろう。いい考えだろう」
　それは、美樹が描いているシナリオと同じだった。長い間、身体を交えている者同士だから、気持ちが通じやすいのかもしれない。
「あ‥‥あなたの言う通りにするから‥‥だから‥‥お願い‥‥」
「これが欲しいんだろ」
　ズボンを下ろした忠雄は、猛り立った一物を一気に突き立てた。
　美樹は満たされた悦びの声を上げる。
「ついでに、こっちもだ」
　抽送を繰り返しながら忠雄は親指を美樹のアヌスに根本まで沈めた。
「ああっ‥‥いいっ‥‥」
　美樹はむせび泣くような喘ぎを上げ続ける。
「こっちにも欲しいか？」
　忠雄は親指でアヌスをかき回すようにして聞いた。
「あ‥‥あなたの‥‥好きに‥‥してぇ‥‥」
　リズミカルな抽送の間に美樹は切れ切れに答える。
「ちきしょう、バイブを持ってこなかったのは失敗だったな。美樹、おまえ自分で前の方をいじれ」
「こ、こう？」
　美樹はクリトリスを自ら嬲りはじめる。
「そうだ。もっと激しく」
　忠雄は抽送のピッチを早めながら言う。
　パンッ、パンッ！　と肉を打つ音が強まり、美樹の顔が快感で歪む。
「あっ！　ああっ！　いく‥‥もう‥‥いっちゃう！」
　美樹がそう叫んだ瞬間、忠雄は引き抜いたペニスを菊蕾へ押し込むように挿入した。
「いやぁ〜っ！」
　背中をのけぞらせて絶叫する美樹。
　忠雄も、美樹の腰を引き寄せるようにして硬直し、後ろの穴へ長々と放出した。熱い奔流を受けて、美樹はシャギーカーペットを掻きむしるように握りしめ、押し寄せる快感に耐えていた。しばらく放出の余韻を楽しんだ忠雄は、腰を引いてカーペットに尻餅をつき肩で息をする。ポンッと栓を抜くような音がしてペニスが抜けると、美樹は、そのまま倒れ込んで弛緩してしまう。それでも、まだ名残のせいで、ときおりヒクンと痙攣している。
「四人で温泉旅行か‥‥どうなるか楽しみだな。うんと見せつけてやろうな。おまえ、見られてると興奮するんだろう？」
　忠雄は無邪気に笑った。

　次の週の土曜日。忠雄と美樹、良雄と奈緒の四人は、忠雄の運転するメルセデスに乗って伊豆へ向かっていた。
　奈緒はジーンズのミニスカートを着てきたことを、ちょっと後悔していた。リアシートに座ると、膝が心持ち上を向きストッキングを付けていない太ももがやけに目立ってしまうように思えたからだ。隣に座った良雄の視線が気になる。
「ひゃ〜っ、奈緒ちゃん、超かわいい！　すっごく似合うよ、それ」
　良雄に、いつもの調子で褒められたのだが、かえって、その言葉で露出度の高い服装をしてきたことを意識してしまったのだ。
　上はレースをあしらったピンクのキャミソールに薄手のブラウスを羽織っただけ、下はジーンズのミニスカートに生足、サンダルという姿だったからだ。
　美樹にも「とってもかわいいわよ、それ」と褒められ、うれしさ半分、恥ずかしさ半分で、車に乗っても落ち着かなかった。
「兄貴、貸別荘って、どんなとこ？」
　良雄は異常にはしゃいでいる。無理もない、忠雄に呼び出され、計画の概要を聞かされていたのだ。
「昔は、なんとかいう財閥の持ち物だったらしいんだが、それを会社が買い取って福利厚生の施設にしたんだ。山の斜面に敷地が三千坪もあって海が見える露天風呂があるんだ。気持ちいいぞ」
「うわ〜、すっげー楽しみ。でも、飯とかどうすんのよ？」
「夜はバーベキューだ。たっぷり用意してあるから心配するな」
「奈緒ちゃん、手伝ってね」
　助手席に座った美樹が後ろを振り向いて言う。
「あ、はい」
　むき出しの膝小僧を気にしてハンカチか何かで隠そうかと思っていたところへ会話が振られ、美樹と目が合ってしまい、奈緒はドキドキしながら答えた。
「よろしくね」
　美樹はニッコリと微笑む。
　明日の夜まで美樹と一緒にいられると思うだけで奈緒はうれしかった。それに、この家族の雰囲気も好きだ。
　ふと、良雄の方へ目をやると、ニコニコと笑いながら奈緒を見ていた。つられて笑い返すと、良雄はシートの上にあった奈緒の手をさりげなく握ってきた。不思議と抵抗感はなかった。むしろ、暖かく乾いた良雄の手のひらの感触が心地よい。
　奈緒は、ちょっとうつむき顔を赤くしながら、良雄の手をそのままにしておく。
　どうやら忠雄はバックミラーで二人の様子に気がついたらしく、美樹に向かって軽く合図を送る。
　こんな調子で三時間ほどのドライブが終わり、メルセデスはどっしりとした和風の建物に到着した。
「あなた、お疲れ様」
「いや、ぜんぜん疲れてないよ。おい、良雄。荷物を運ぶの手伝え」
「オッケー」
　良雄は勢いよく飛び出し、トランクを開けてクーラーボックスを取り出す。
「じゃあ、準備は男どもに任せて、私たちはちょっと散歩しましょうか。奈緒ちゃん、案内してあげる」
「えっ、でも‥‥私もお手伝いします‥‥」
「そんなに気を遣わなくてもいいのよ。こっちへいらっしゃい」
　美樹は奈緒を庭の方へ連れ出す。
　男達の姿が見えなくなったところで、美樹は奈緒の耳元に顔を寄せる。
「車の中で、良雄さんといい雰囲気だったじゃない」
　美樹が悪戯っぽく笑ってそう言うと、
「ごめんなさい‥‥」
　奈緒は真っ赤になってうつむいた。
「怒ってるんじゃないの。嬉しいのよ」
「えっ？」
「私は奈緒ちゃんのことも良雄さんのことも大好き。だから、二人が仲良くなれるんだったら何でもしてあげる」
「だって‥‥」
　奈緒は少し混乱して、どう答えていいのか分からない。
「もちろん、私と奈緒ちゃんも仲良しのまま」
「ほんとですか‥‥？」
「もちろんよ。奈緒ちゃん、良雄さんのこと嫌い？」
　奈緒は小さく首を振る。
「だったら、いいじゃない。ねえ、教えて。良雄さん、車の中で何してたの？」
「‥‥えっと‥‥手を‥‥」
「手を握ってきたの、手だけ？　こうやって？」
　美樹が奈緒の手を包むように握ると、奈緒はかすかにうなずいた。
「いやだった？」
　こんどは首を振る奈緒。
「もう〜、二人ともかわいいんだから」
　美樹は、奈緒を抱き寄せると、すばやく唇を重ねた。
　奈緒は必死になってそれに応える。もしかしたら、美樹が自分から離れていってしまうのではと不安になったからだ。
「奈緒ちゃんが、こんなにキスが上手だって知ったら、良雄さんびっくりしちゃうかも」
「そ‥‥そんな‥‥今日のおねえさま、ちょっといじわる‥‥」
「ほら、あそこが露天風呂よ。海が見えてきれいでしょ。後で一緒に入りましょ。また洗いっこしましょうか？　楽しみだわ」
　奈緒が目に涙をためているのを見て、美樹は話題を変えた。そして、もう一度キスをする。奈緒の息づかいが荒くなってくるのを見計らって唇を離す。
「そろそろ戻らないと。お昼の用意しなくちゃ」
　奈緒の中に官能の炎が芽生えているはずだ。キスをしたのも、意地悪をしたのも、そして一緒に風呂へ入ろうと言ったのも、計画実行のための準備に過ぎない。どうやら第一段階は成功のようだ。奈緒は不安定な心情のまま官能に火を灯している。あとは良雄の腕前と、忠雄との行為を見て奈緒がどう反応するかだ。
（素敵な休日になりますように）
　美樹はそう祈りながら、奈緒の手を引いて建物の方へ歩いていった。