６．

「ふぅ〜っ‥‥」
　誰もが恥ずかしく、気まずい、そして、ちょっと後ろめたい爛れた雰囲気が支配する中、沈黙を破ったのは忠雄だった。
「美樹、飲むものって何か残ってる？」
「ま、まだ、ビールなら冷えたのがクーラーボックスに‥‥」
　忠雄が、どうでもいいことをたずねたのは、その雰囲気を良い方向に持っていくため、皆に探りを入れる年長者らしい気配りだった。
　最初に動いたのは奈緒だった。
「お兄さま、どうぞ」
　全裸のままテラスに出てクーラーボックスから滴のついた缶ビールを取り出すと、なんのてらいもなく忠雄にビールを持ってきた。
「おっ、奈緒ちゃん。サンキュ！　でも、お兄さまなんて呼ばれると照れちゃうな」
　そこは年の功で、内心驚きながらも、忠雄は笑顔で答える。
「ぷは〜っ！　旨い！　奈緒ちゃんも飲む？」
　プルトップを開け、ゴクゴクと音を立てビールを飲んだ忠雄は缶を奈緒に差し出す。
「いただきます」
　奈緒の白い喉が波打つ。
　美樹と良雄は、あっけにとられて、その光景を眺めていた。
　もしかしたら、いや、かなりの確率で、皆、奈緒が泣き出してしまうか、あるいは、ショックで塞ぎ込んでしまうと思っていたからだ。
「奈緒ちゃん‥‥いやじゃなかった‥‥？」
　美樹が心配げに言う。
「‥‥ちょっとビックリしたけど‥‥もう、吹っ切れちゃいました。それに、みんなやさしいし‥‥」
「そ‥‥そう。良かった‥‥」
　まだ美樹は納得できないようだ。
「いいじゃないか。それより、皆で風呂に入ろう。汗かいたしな」
「そうね」
　忠雄の提案に、美樹は曖昧な微笑みを浮かべてうなずく。
　割り切っているつもりでも、忠雄と奈緒を見比べながら嫉妬とも違う複雑な気分になってしまうのだ。
　そんな美樹を見て忠雄はニヤリと笑う。
「よし。クーラーボックスごと移動だ。良雄、手伝え」
　なんだか、会話に入り込む隙間を見つけられずオドオドしていた良雄は、バネ仕掛けの人形みたいにクーラーボックスのところへすっ飛んでいく。
「おっ、ひとりで持てそうだな。じゃ、頼んだぞ。行こう、奈緒ちゃん」
「そ‥‥そんなぁ〜‥‥」
　奈緒の肩を抱いて行ってしまった忠雄を見て、良雄が情けない声を上げる。
「マジ‥‥」
　おまけに、素直についていく奈緒を見て、やるせない感じがしてトホホな良雄だった。気がつくと、ひとりでリビングに立ちつくしていた。美樹も忠雄に促されて一緒に行ってしまった。
「ちぇっ、みんな冷たいなぁ‥‥なんだよ‥‥奈緒ちゃんまで、あんなにうれしそうに兄貴に付いていくなんて‥‥」
　三人の後ろ姿を見ながら、ひとりでブツブツ言っていると
「お〜い！　早くビール持ってこいよ〜っ！」
　と、忠雄の声が聞こえる。
「はいはい、と‥‥俺はただの運び役かよ‥‥はーい、みなさん、ビールの到着ですよ〜‥‥」
「やだっ。良雄さんったら拗ねてる」
　ふてくされた良雄の顔を見て美樹が言うと、三人は声を上げて笑った。
「ちぇっ、どーせ、おいらは下っ端のペーペーですよぅ」
「ごめんね、良雄さん」
　奈緒が寄り添うようにしてビールを運ぶのを手伝いはじめる。
　二の腕に奈緒の豊かなバストが触れる。そのしっとりとした感触と、間近に見える淡く生えた陰毛に、良雄は息を飲み、機嫌もすっかり治ってしまった。
「あ〜っ、やっぱり奈緒ちゃんってサイコ〜‥‥」
　良雄がおどけて唇を奈緒の方に突き出すと、奈緒はなんのためらいもなく「チュッ」と音を立てて一瞬だけ唇をあわせた。
　豹変とはこのことだろう。いままで、受け身でおとなしい印象だった奈緒の変わりように美樹は驚くより、狐につままれたような気分になっていた。
「ねえ、奈緒ちゃん。どうしちゃったの？」
　それぞれが身体を洗い終え、湯に浸かったとき、美樹はたずねた。
「だって、わたし‥‥家族になったんでしょ」
　奈緒は笑顔で答える。
「ほんとうに、そう思ってるの？」
　まだ、美樹は半信半疑だ。
「じつを言うと、わたし、高校のとき先輩とあんな関係になっちゃって、みんなと違うのかなって悩んでたんです。で、自分なりに勉強して、文学部を選んだのも人間の気持ちっていうか魂みたいなものに興味があったから‥‥でも、今日、分かったんです。わたしたちを縛っている常識がどんなに馬鹿馬鹿しいものかって。人はみんな自由だし、思想や正義だって頭の中にしかないものなんだから、そんなものにこだわるより、自分自身に素直になりたいって思ったんです」
「なんか哲学的ね」
　ため息をつきながら答える美樹。良雄なんかは、目をまん丸にして何も言い出せずにいる。
「そうさ。人は自由なんだ。奈緒ちゃんは、俺が思ってたことを、あっという間に理解しちゃったんだな。くだらん常識や価値観なんてクソ喰らえだ。所詮、人間は肉なんだ。肉体が無きゃ魂もへったくれも無いからな。でも良かった。分かってもらえなくって泣かれちゃったら土下座して謝ろうって思っていたから」
　忠雄が奈緒の身体を抱き寄せて言った。
「そ、そんなぁ〜、やめてよ〜」
　寄り添う二人を見てジェラシーに駆られた良雄は不平を漏らす。
「お前は、まだまだだな。美樹、良雄を後ろから押さえていろ。こういうふうに」
　忠雄は奈緒の背後に回り込んで、手をバストと腰の辺りにやって抱き寄せる。
　ゲームが始まったと、すぐに理解した美樹は言われた通りにする。
　二組の男女は、お互いに向き合う形になった。
「あんっ‥‥」
　奈緒がかわいらしく喘ぐ。
　よく見ると、忠雄の右手は秘肉を覆って細かく動いている様子だ。左手は乳首、唇は首筋を愛撫している。
「奈緒ちゃん、良雄を見てるんだ。いいね」
「は、はい‥‥」
　すでに官能に火がついた奈緒は、感じているとき独特の目を良雄に向ける。
　良雄の方は、ぴったりと背中に押しつけられた美樹のバストを感じながら、細くしなやかな指で半ば勃起した肉棒をしごかれていた。
「元気ね。あんなにした後なのに‥‥奈緒ちゃん、これがあなたの中に入っていたのよ。見える？」
　美樹の妖しい言葉に、美樹はうなずきながら、徐々に膨らんでいく肉棒を、息を荒げながら見つめている。
「舐めてみる？　興味あるんでしょ」
　また、美樹が誘いをかける。
　忠雄が手を離すと、奈緒は操り人形のようにフラフラとひざまずき、良雄の肉棒に手を伸ばして、しげしげと眺めた。この露天風呂で美樹が忠雄のものをくわえているのを目撃したときから、この手で男のものを確かめてみたいと思い続けていたのだ。
「さ、キスしてあげて」
　美樹が言うと、肉棒に見入っていた奈緒は、夢から覚めたように亀頭の部分を両手で包むようにして先端に口づけした。
「そう、上手ね。こんどはくわえてあげて」
　奈緒は、ためらうことなく肉棒を口にふくんだ。
「す、すご過ぎるぅ‥‥」
　暖かく、ねっとりとした奈緒の舌の感触に良雄が呻く。
「美味しいでしょ。好きな人のものはそう感じるのよ。それが身体の中へ入ってきたときのことを想像してごらんなさい」
　美樹の言葉を聞いて、奈緒は秘肉を中心に身体が熱くなってくるのを感じていた。
（こ、これが‥‥男の人のなのね‥‥わたしの中にはいっていた‥‥）
　そんなことを考えているときだった。
　忠雄の指が蜜壺に侵入してきた。
「んっ！　んんっ！」
　身体中に電流が駆けめぐる。
　身をよじるようにして悶える奈緒。
　巧みな忠雄の指がクリトリスと蜜壺を同時に責めているのだ。
　奈緒は呻き、身悶えしながらも、くわえた肉棒を離さない。
「美樹、良雄をベンチに寝かせるんだ」
　美樹は、忠雄の言う通りにする。
　ベンチに脚を開いて横になった良雄。その足下に奈緒が四つん這いになって肉棒を舐める体勢になった。そして‥‥
　忠雄が奈緒の蜜壺に屹立したものをあてがっていた。
「んん〜っ！！」
　奈緒の声にならない喘ぎ。
　忠雄のものが一気に挿入されたのだ。おまけに、前の方へまわされた手はクリトリスを優しく愛撫している。
　満たされた悦び、一番敏感な部分を愛撫されている快感、そして、口の中の肉棒の感触に目の前が真っ白になっていくようだ。それなのに、いつの間にか美樹までが加わり乳首を責められていた。
「んっ！　んんっ‥‥んっ！」
　あっという間に絶頂がそこまでやってきた。
　身体が硬直して、良雄のものをくわえている口にも力が入った瞬間、口の中が熱いもので満たされた。奈緒は夢中になって、それを飲み込む。
「う‥‥ううっ‥‥」
　良雄も身体を硬直させて呻いている。
　忠雄のストロークが長く激しくなる。
「あなた‥‥」
「分かってるって‥‥奈緒ちゃん、こっちも感じていたみたいだったな‥‥いいかい？」
　忠雄の親指が奈緒のアヌスを撫でていた。
　永遠に続くのではと思えるほどの絶頂の中、奈緒は「もう、どうなってもいい」と思い、忠雄の問いに腰を振って答える。さっき、美樹のアヌスへ忠雄の屹立が突き刺さっていた光景を思い出す。
　忠雄の屹立が奈緒のアヌスへあてがわれ、徐々に力が加えられた。
「ああっ！　あうっ！」
　奈緒が叫んだときには、もう、忠雄のものが半分ほど入ってしまっていた。
　目の前で忠雄にアヌスを征服され喘ぐ奈緒を見て、良雄は窃視の欲情と嫉妬の悲しみの狭間にいた。できれば奈緒の後ろの方の処女も自分が、と思っていたのに、あっけなくそれを許してしまった奈緒と無情な兄。でも、繋がっている二人を見て興奮してしまう自分。今日、何度目かの放出を終えた直後なのに、良雄の肉棒は痛いほど勃起していた。
「兄貴ぃ‥‥ずるいよぅ‥‥」
　膨れあがった肉棒を誇示するように良雄が立ち上がる。
　それを見た忠雄は、四つん這いの奈緒の膝の裏に手をまわして身体を持ち上げはじめる。筋肉が躍動する。ものすごい力だ。ついに幼児がオシッコをさせられているような格好で奈緒の身体が宙に浮いた。
「あっ‥‥ああっ！」
　両膝と肉棒が入っているアヌスの三点で身体を支えられ、自分の体重で忠雄のものを根本まで飲み込んだ奈緒は、苦痛とも喘ぎともつかない声を上げる。
　忠雄は、ゆっくりと尻をつき、奈緒と一緒に仰向けになった。
　良雄の眼下に両膝を開き秘部を露わにした奈緒がいた。
「来い」
　忠雄が一言いう。
　良雄は吸い込まれるように膝をつき、屹立を奈緒の蜜壺に挿入した。
「ああっ！　いやぁ〜っ！」
　前と後ろを同時に満たされた奈緒が絶叫する。
　不思議と、二人の男に責められていることへの抵抗はなく、恐ろしいほどの快感に身を委ねる奈緒だった。
　長い喘ぎ声が漏れる。
　その口が美樹の唇でふさがれた。
「んんっ！　ん〜っ！　んっ！」
　もう声にならない。それでも奈緒は身をよじって悶える。美樹の指がクリトリスをさすっているのだ。そして良雄が猛烈な抽送を開始する。
「‥‥し‥‥死ぬぅ‥‥死んじゃう‥‥」
　美樹の唇が乳首に移動したとき、奈緒は身を震わせながら訴える。
「い、いやぁ〜っ！」
　ついに高い声を上げて身体を硬直させる奈緒。どうやら忠雄が果てて、その熱い奔流を身体の奥で受け止めてしまったらしい。
　良雄の方も終わりが近いらしくストロークが早くなる。
「中はだめ、良雄さん」
　美樹は、良雄の肩を押して奈緒から引き離す。そして、終わらせてあげようと、抜け出た屹立を口にふくんだ。
「ね、義姉さん‥‥それより‥‥お‥‥俺‥‥義姉さんの後ろでいきたいんだ‥‥」
　屹立をふくんだまま上目遣いで良雄を見た美樹は凄艶な笑みを浮かべる。なにもかも分かっている、そんな表情だった。
「‥‥いいわよ‥‥きて‥‥」
　そう言うと奈緒に覆い被さってヒップを突き出した。
　良雄は矢も楯もたまらず屹立を美樹のアヌスにあてがい力を込める。
「ああっ‥‥すごい‥‥大きい‥‥」
　その言葉の半分は忠雄と奈緒に向けられたものだったに違いない。
　良雄にしても、この場で美樹のアヌスを犯したかったは、二人に対する複雑な感情の発露に他ならない。
「ああっ‥‥いい‥‥いいわ‥‥」
　良雄の指が前の方を愛撫しはじめると美樹はいっそう喘いだ。
　繋がっているところ、感じているところを見られている、あるいは見せているのが興奮を高めるスパイスになるのは良雄も美樹も分かっていた。しかし、相手を交換した状態での軽い嫉妬の感情が、これほど燃え上がるような快感をもたらしてくれるなんて思ってもみなかった。
　次第に二人は行為に熱中する。
「ああっ‥‥またよ‥‥いくっ‥‥いっちゃう！」
　続けざまにオルガスムスを迎えた美樹は桜色に染まった肌を震わせながら喘いだ。
　しかし、何度も射精した後の良雄は、なかなかフィニッシュには至らない。それが、いっそう美樹の官能を深める結果になる。
「く‥‥く‥‥ね、義姉さん‥‥すごい‥‥締まる‥‥」
「あうっ！」
　絶頂時の括約筋の収縮に対抗するように良雄が力を込めると、肉棒の硬度が増し、その刺激が美樹を狂わせる。そのとき、下の方から手が伸びてきて、喘ぎ続ける美樹の頬を挟んだ。
「あ‥‥あなた‥‥」
　優しく引き寄せられた先に忠雄の顔があった。
　唇が重ねられる。
「んっ！　んんっ！」
　同時に奈緒の指が蜜壺をかき回しはじめ、乳首を口にふくまれた。
　良雄もストロークの長い抽送をはじめる。
　美樹は、もう自分がどんな格好をしているのか、誰が何をしているのかが知覚できないほど登り詰めていた。全身が熱くドロドロに溶けてしまったようにも感じる。
「☆！♂♭♀※！」
　良雄の射精を感じ、美樹は目の前が真っ白になり全身が硬直した。
　熟しきった身体が、これ以上ないくらいの快感をもたらし、美樹は意識を失って忠雄と奈緒の身体の上に崩れ落ちる。
「す‥‥凄すぎるぅ‥‥」
　尻餅をつくようにへたり込んだ良雄がポツリと言った。

　もう、身体を洗うどころではなく、汗と体液をざっと流しただけで、四人は全裸のまま寝室へ行って泥のように眠った。

　最初に目を覚ましたのは奈緒だった。
　並べられた敷き布団の上に三人が寝ているのを見て、昨晩の出来事を思い出し、顔を赤らめた。夢のようでもあったが、夢であって欲しくなかった。大の字になって寝ている忠雄の股間の翳りを見て、なぜか「ホッ」としてしまう。
　昨日の出来事で忠雄は兄と父と愛人を掛け合わせたような存在になってしまったし、美樹は姉と愛人？　ちょっと複雑だが愛おしいかけがえのない存在、良雄に対しては初めての相手というより、責められれば喘ぎ悶えるのは自分なのに、何か弟のような感情を抱いてしまっていた。
「‥‥家族か‥‥」
　奈緒は、そうつぶやくとキッチンへ向かった。
　途中、服を着ることも考えたのだが、それが不自然なことのように思えて裸のままでいた。そして、簡単な朝食の準備を始める。
「な〜おちゃん。おはよう」
　コーヒーの香りが漂いはじめた頃、入り口の方で良雄の声がした。
「おはよう。コーヒー飲む？　ちょうど淹れたところ」
　明るく答えて振り返った奈緒を見て良雄はドキドキする。白く透き通るような肌、果実のような張りのあるバスト、その頂には可憐なピンクの乳首、そして淡くスリットが見えるほどのヘアー、完璧とも思える肢体が微笑みながら自分の方を向いているのだ。
「う、うん‥‥ありがと‥‥あ‥‥あのさぁ‥‥」
　良雄の言葉は歯切れが悪い。
「なに？」
「お‥‥俺さぁ‥‥」
「どうしたの。おかしな良雄さん」
　奈緒が微笑む。
「ねえ、奈緒ちゃん‥‥怒ってない‥‥？」
「どうして」
「だって‥‥」
　良雄は言葉を飲み込んでしまう。ペニスもうなだれたままで元気がない。
「夕べのこと？」
「う、うん‥‥」
　なんだか小さく見える良雄に、奈緒はちょっと意地悪をしたくなった。
「ひどいわ。すっごく怒ってるんだから」
「や‥‥やっぱり‥‥」
「とっても」
　奈緒は笑いながら答えているのだが、下を向いたままの良雄は、全然それに気付いていない。
「ごめん‥‥でもさ、俺‥‥あんなことして言うのもヘンだけど‥‥俺‥‥奈緒ちゃんのこと、一番好きなんだよ‥‥」
「うそよ」
「ほ‥‥ほんとだよ。奈緒ちゃんが一番大事なんだ‥‥」
「だったら、どうしてお姉様にしたみたいに、私を可愛がってくれないの。不公平よ」
「えっ？」
　良雄が顔を上げると、奈緒が微笑んでいた。
「なんだよ〜、俺、ほんとに心配しちゃって、どうしようかと思ってたのにぃ‥‥」
　良雄の泣きそうな顔を見て、奈緒はキュンとなってしまう。
「でも、ちょっと怒ってるのはほんとかな」
「どして？」
「だって、良雄さん、お姉様とああなったの初めてじゃないでしょ」
「う‥‥うん‥‥」
「だったら、その分、わたしを‥‥きゃ！」
　言い終わらないうちに、良雄に抱きしめられていた。
「よかった‥‥俺、奈緒ちゃんに嫌われちゃったら生きていけないもん‥‥」
　大袈裟だが素直で憎めないのが良雄の得なところだ。
「ありがとう‥‥うれしいわ‥‥」
　逞しい胸の筋肉を心地好く感じていると、下腹あたりにあった肉棒が硬くなってきた。良雄が擦りつけるようにすると、どんどん硬度が増し膨れあがってくる。
　昨日まで処女だったとはいえ勃起を知らないほどウブではない。でも、良雄が性的に興奮しだしたことを知って、ちょっとうろたえてしまう。
「だめよ‥‥こんなところで‥‥」
「ちょっとだけ‥‥」
「だめ‥‥」
　お定まりのやりとり、でも、いくらそんなことを言っても、二人とも裸なのだ。ハードルは低い。良雄の唇が首筋を這うと、しっかりと閉じていた脚が緩む。
「ああ‥‥だめ‥‥」
　良雄は腰を落として、いきり立った肉棒を脚の間に入れてくる。
　秘肉に触れた。
　奈緒は肉棒の熱さに驚いていた。
「だめよ‥‥」
　そう言っても、肉棒の熱さが秘肉へ伝わり、潤ってくるのが分かる。
「だめよ‥‥だめ‥‥」
　そう言いながら奈緒は自ら腰を動かしていた。
　そんな奈緒に、良雄はかがみ込むようにして唇をあわせた。奈緒は、むさぼるように応える。キスをしながらヒップへ手をまわした良雄は、蜜壺が十分濡れているのを確認して、奈緒の身体をクルリと回転させて両手を流し台につかせる。そして、屹立に手を添え、後ろから一気に挿入した。
「ああっ！　やん‥‥だめぇ‥‥あっ、ああんっ！」
　挿入と同時にはじまった激しい抽送に奈緒は喘ぐことしかできない。
　噴き出す汗からメスの匂いが漂う。
　両手でヒップを固定して抽送する良雄の筋肉が躍動し、肉を打つ音がキッチンにこだまする。やがて、良雄の親指が双丘の間に忍び寄っていき、奈緒のアヌスを揉みほぐすように動く。
「いや‥‥やめて‥‥」
　指の動きを察知した奈緒は喘ぎながら抵抗の言葉を口にする。しかし、その声は十分甘さをふくんでいて、良雄には「して」と言っているように聞こえる。事実、奈緒は昨晩のことを思い出しながら期待にドキドキしていた。
　反応を確かめるように良雄の親指が第一関節まで埋没する。
「ああ‥‥いやぁ‥‥」
　そう言いながらも、まるで親指を飲み込もうとするように、奈緒はヒップを突き出して応える。
「奈緒ちゃん‥‥好きだよ‥‥」
　良雄は親指をゆっくりとかき回すように動かしながら抽送のピッチを早める。
「や‥‥やん‥‥ああっ‥‥」
　ますます奈緒の声が甘くなっていく。
　抽送に合わせて、垂れ下がっていても丸さを失わないバストが揺れている。
　ついに親指が根本まで入ってしまった。
「ああんっ」
　奈緒が身体を震わせる。
　良雄は今頃になって、出発する前に美樹に「爪を良く切っておくのよ」と言われた意味を理解していた。
「ああっ‥‥いやっ‥‥もう‥‥いっちゃう‥‥」
　しばらく直腸の感触を指で楽しみながら抽送を続けていると、小刻みに震えていた奈緒の背中が反り返り、蜜壺がギュッと締まる。そして、ブルッと大きく震えた後、全身の力が抜けたようになった。
　そのチャンスを見逃さず良雄は屹立を素早く引き抜きアヌスにあてがった。
　十分揉みほぐされていたせいか、亀頭まではスムーズに収まる。
「ああっ‥‥き、きつい‥‥」
　奈緒が悲鳴を上げる。
　一瞬締まって侵入が阻まれるが、力が抜ける瞬間を見計らって、少しずつだが深くまで入れることを良雄は諦めなかった。まだ、開発されていないせいか、奈緒のアヌスは入り口が硬い感じだった。その感触が肉棒を通じて良雄の脳を直撃する。
「ほんとは‥‥俺が‥‥最初にこうしたかったのにぃ‥‥奈緒ちゃん‥‥大好きなんだ‥‥」
　官能の波の中で良雄の言葉を聞いて、その複雑な心境の一端に触れ、奈緒の心の中で良雄に対する母性が目覚めた。
「ああ‥‥良雄さんの‥‥好きにして‥‥気の済むまで‥‥」
　そう言って、アヌスの力を抜くと、肉棒が根本まで侵入してきた。
「あ‥‥う、う、う‥‥」
　額に脂汗が滲むほどの充満感に奈緒は耐えた。
「奈緒ちゃん、痛いの？」
「だ、だいじょうぶだから‥‥よ、良雄さんの好きにしていいの‥‥あうっ！」
　奈緒は震えながら背中をのけぞらせる。奈緒の気持ちが内部の動きになって肉棒へ伝わる。
「す‥‥すごい‥‥な、奈緒ちゃん！」
　その動きと言葉に、良雄は心の中が暖かいもので満たされたような気分になった。と同時に猛烈な射精感に襲われドクッ、ドクッと勢いよく放出した。
「ああ〜んっ！」
　熱い奔流と、硬度が増し倍に膨れあがったかのような感触に、奈緒が最後の悲鳴を上げる。
　目の前が真っ白になるような射精の快感が過ぎ、やがて萎えはじめても、しばらく良雄はそのままの姿勢でいた。そして、後ろから思い切り奈緒の身体を抱きしめた。
「奈緒ちゃん‥‥なんだか、俺‥‥すっごく感動しちゃった‥‥」
「う、うん‥‥」
　まだ余韻が醒めない奈緒は虚ろに答える。
　良雄が奈緒を抱きしめたままダイニングチェアーに座るとズルリと肉棒が滑り抜けた。

「やっぱり若いと元気だな。ひとっ風呂浴びて汗流してこいよ」
　気がつくと、忠雄と美樹が並んで笑っていた。
「えっ！？　兄貴達‥‥寝てたんじゃなかったの‥‥」
「あんなに艶っぽい声が聞こえたら起きちゃうに決まってるだろ」
「いやっ‥‥」
　奈緒が両手で真っ赤になった顔を隠す。
「あなた、からかったら可哀想よ。でも、二人ともきれいだったわ」
　その言葉に、こんどは良雄までが恥ずかしくなってしまう。
「行こうよ‥‥奈緒ちゃん‥‥」
　良雄は立ち上がって奈緒を促す。
「ったく‥‥兄貴ったら、趣味悪いよな。黙って見てるなんて‥‥」
　露天風呂へ続く廊下で良雄が愚痴ると
「でも、お兄さまに感謝してるの‥‥もし、お兄さまがいなかったら、わたし、こんな世界に出会えなかったし‥‥それに‥‥」
「ちぇっ、悔しいけど、そうなんだよな‥‥ガキの頃から敵わないって思ってたけど‥‥」
「あのね‥‥お兄さまって、わたしの求めていた答えを持っているような気がするの‥‥」
「あの、自由がどうのってやつ？　俺には難しくって、どうもね‥‥」
「良雄さんのいいところはそこ。ねえ、背中流してあげましょうか？　なんか、良雄さんにしてあげたい気分」
　風呂場に着いて、奈緒がはしゃいだように言った。
　結局、二人は仲のいい姉弟のようにお互いの身体を洗い合い、なんだか晴れ晴れとした気持ちになってキッチンに戻った。

「奈緒ちゃんの淹れたコーヒー、いただいてるよ」
　帰ってきた二人を見て、忠雄がマグカップを差し上げた。
「ごめんなさい。わたし、朝ご飯の支度、途中だった‥‥」
「いいのよ。この人、普段は、朝、コーヒーだけなんだから」
　美樹が笑いながら言う。
「奈緒ちゃんの淹れたコーヒー、最高に美味いよ。で、みんなに聞いて欲しいんだが‥‥」
　急に忠雄が真面目な顔になる。
「奈緒ちゃん、後悔はしていないね」
「は‥‥はい‥‥」
「ほんとに？」
　忠雄の鋭い視線に、奈緒は脅えたようにうなずく。
「だったら、みんな、座って聞いてくれないか」
　その口調の迫力に、美樹までが真面目な顔をして椅子に座った。
　全員が裸でテーブルにつくという不思議な光景だったが、美樹も良雄も奈緒も神妙な顔をしている。
「良雄、お前、親父の身体が悪いこと知ってるよな」
　いきなり話題を振られた良雄は黙ってうなずく。
「もう、親父は死を覚悟して、俺に財産の処分を頼んできた。お袋は早くに逝っちまったし、ホスピスで楽に逝きたいらしい。そのための資金が出来れば、あとはどうでもいいそうだ。俺は親父の意思を尊重したいと思っていた。でも、後のビジョンが無くって悩んでいたんだが‥‥」
「あ、兄貴‥‥親父、そんなに悪いのか‥‥」
「うん、たぶん一年は保たないと思う」
「そうか‥‥」
　皆、黙り込んでしまった。
「そんなに暗くなるなよ。人は一度は死ぬんだ。それより、これからのことを考えようぜ。俺はな、実家の財産を処分して、みんなの住まいを作ろうって、昨日、思ったんだ。奈緒ちゃんも加えてな」
「あなた‥‥それって‥‥」
「うん。じつを言うと、もう目星は付けてあるんだ。競売物件だけどな。それほど大きなビルじゃないけど、俺たち四人が住んで、おまけに賃貸料も稼げる建物がある。そこを買ってみんなで暮らさないか。俺たちみたいな家族の形は、なかなか社会に受け入れられないと思うんだ。だったら、自分たちの城を作った方がいいと思ってな」
「梁山泊みたい」
「おっ、奈緒ちゃん、水滸伝なんか読むの？　たった四人だけどね。これから仲間を増やすつもりもないし」
「梁山泊ってなに？」
「良雄、お前は黙ってろ」
「ちぇ‥‥」
　良雄のふてくされた顔を見て皆が笑った。
「わたしも住めるんですか？」
「もちろんさ。奈緒ちゃんがいなかったら意味がないだろ。もし、世間の目が気になるんだったら、良雄と籍を入れればいい。学生結婚なんて珍しくもないだろ」
「ええ〜っ、俺、結婚するの〜？」
　良雄が目を丸くする。
　これには一同爆笑した。
「よ、良雄さん‥‥ごめんなさいね‥‥でも‥‥おかしくって‥‥」
　美樹までもが身体を震わせて笑っている。張りのあるバストがそれに釣られて揺れるのが悩ましい。
「勘弁しろ。お前をバカにしてる訳じゃないんだ。そこがお前のいいところだからな。で、奈緒ちゃんと結婚して、俺たちと住むのは嫌か？」
「みんなで暮らせるの？　で、昨日みたいに‥‥」
「そうだよ。やっと分かったか」
「賛成！」
「まったく、お前の考えていることは分かりやすいな」
　また、皆が爆笑する。奈緒などは涙を浮かべて笑っている。
「どうだい？　奈緒ちゃん」
「ほ、ほんとに、わたしを家族にしてくれるんですか‥‥」
　奈緒は、忠雄と美樹を交互に見ながら聞く。
　忠雄は頼もしげにうなずき、美樹はモナリザのように微笑んでいる。
「う、うれしい‥‥」
　奈緒の頬に涙が一筋流れた。