| ４． 「おれもイギリス行こうかなぁ」 余韻から醒め、潤の名残をティッシュで始末していると、背中の方から潤の声が聞こえた。 「だめよ。せっかく芸大に受かったのに・・・」 由紀恵は振り返って、たしなめるように言う。 年上のプライドもあったし、恥ずかしいところを見られてしまったという焦りもあった。 「別に入りたくて受けたわけじゃないもん・・・おれ、由紀恵さんのために・・・だから、由紀恵さんと一緒にいられるなら大学なんてどうでもいいんだ」 「そんな・・・じゃ、こうしましょ。私がイギリスへ行くまで、毎日、潤くんと付き合ってあげる。だから、ちゃんと大学には行って。私のためにも・・・夏休みになれば、また会えるし」 「じゃあ、ずっと付き合ってくれるんだね」 「年上が嫌じゃなかったらね」 「おれ、由紀恵さん以外は考えられない・・・由紀恵さんは最高だよ・・・」 「潤くんの気持ち・・・うれしいわ・・・」 「ねえ・・・」 「なに？」 「また、モデルやってくれるよね？」 気が付くと、潤はカメラを手にしていた。 まだ裸のままの由紀恵にレンズを向ける。 「だめよ、そんなの・・・」 「だって、エッチな顔してるときの由紀恵さんって最高にきれいなんだ。あっ、ごめん。いつもきれいだけど・・・あのときって、なんだか・・・いやらしい意味じゃなくエロスって言葉の意味が分かったみたいなんだ・・・」 「いやよ。恥ずかしいから・・・」 「やっぱ、だめかぁ・・・」 がっかりしている潤の顔を見ていると、なんだか可哀想になってきた。 「エッチな写真はやだけど、ヌードだけだったら・・・」 「ほんと？！」 とたんに潤の顔が輝く。 「あのさ・・・こんなこと言うと怒られちゃうかもしれないけど、由紀恵さんのあそこって、神秘的ですごくきれいだって思ったんだ。だから・・・あそこも撮らせてもらえないかな・・・」 美大出身の由紀恵は、普通の女性に比べればヌードとかに抵抗はない方だ。 ヌードになることで必然的にあそこが露出してしまうのは仕方のないことだし自然なことだとも思っていた。 でも、もろに言われると恥ずかしさが先に立つ。 「それは潤くんが男だからよ。女は、そんなふうに言われると抵抗があるものよ。もし、私が潤くんのあそこを撮りたいとか描きたいって言ったら嫌でしょ？」 由紀恵は、潤の羞恥をあおって、やんわり断ろうとした。 「いいよ、おれ」 「えっ？」 「おれ、由紀恵さんのためなら何でもするよ。芸大受けたのも由紀恵さんに言われたからじゃないか。おれ、必死でやったんだ。受からなかったら死んだ方がましだって思ってた。だから、由紀恵さんが望むなら、おれ・・・なんでも・・・」 「わ、わかったわ・・・」 潤の情熱の激しさに目眩のようなものを感じて、由紀恵は潤の言葉が終わらないうちに答えていた。 これ以上聞いていたら自分から潤のことを抱きしめてしまいそうだった。 「じゃ、いいんだね？」 うなずくしかなかった。 「だったら、このソファーに座ってよ・・・そう・・・こうやって膝を立てて・・・そう・・・すごく・・・きれいだ・・・」 シャッターの音が響き、ストロボが閃く。 まるで身体が自分のものではないようだ。 催眠術にかかったみたいに潤の言う通りに動いてしまう。 「由紀恵さん、両手で自分の膝を持って・・・そう・・・そのまま脚を開いて・・・こっちを向いたままだよ・・・」 由紀恵がカメラの方を向いたとき強烈なストロボの光が眼を刺した。目の前が白くなる。あのときの感じと似ていると由紀恵は思った。 「ああ・・・」 だからというわけではないが思わず呻いてしまう。まだ余韻が残っている。 「きれいだ。今の表情、とってもきれいだった」 連続してシャッターが切られる。 すべてを晒しながら、賛美の言葉を浴びせられると、ふたたび蜜壺の奥が疼いてきた。 「由紀恵さん。もっと脚を開いて・・・」 潤が近寄ってきて秘肉へレンズを向ける。 （潤くん、見て。私のすべてを・・・） 由紀恵は心の中でそう言っていた。見せてあげたい、いや、見られていると思うと身体がどんどん熱くなってしまうのだ。 「由紀恵さん。ちょっといい？」 潤が秘肉へ手を伸ばす。 「はぁん・・・」 脇の方に指が触れただけで喘ぎ声が漏れてしまう。 「あれ、だめだな・・・どうしてだろう・・・すぐ閉じちゃうや・・・」 どうやら、花びらが開いたところを撮りたいらしい。 「こうやって・・・だめだ・・・カメラが構えられない・・・」 必死になって秘肉を触っている潤。その指の動きに反応して、どんどん蜜が溢れてくるのが分かる。由紀恵は肩で息をしながら耐える。 「由紀恵さん・・・お願い・・・自分で開いてみて・・・」 「こ・・・こう？」 由紀恵は両手で大陰唇の脇を押さえ左右に拡げた。 「そうっ・・・すごい・・・きれいだ・・・」 何度もシャッターが切られる。 「ああっ・・・いや・・・」 涙が出るほど恥ずかしい。でも、それ以上に感じてしまう。 焦らされているときのようで疼いてたまらない。 入り口から蜜があふれ出てアヌスを濡らしているのが分かる。 「すごいや・・・ピンクで・・・複雑で・・・こんなにきれいだなんて・・・」 潤はアングルを変えて何度もシャッターを切っている。 「ねえ・・・入り口のところ、もうちょっと開けないかなぁ・・・奥の方が見えないんだ・・・」 由紀恵は操り人形のように指先を動かしてしまう。 フワッと奥の方まで空気が通る感触。 「きれい・・・本当にきれいだ・・・神様が創ったんだね・・・」 興奮の極にある潤の言葉はあまりにストレートで、普通だったら陳腐に感じてしまうものかもしれない。 でも、この状況の中で聞くと心に響く。由紀恵は、潤に賛美されるたびに胸が熱くなり、疼きが増していく。 「由紀恵さん。そのままでいて」 潤は少し離れてシャッターを切っている。どうやら、全身を撮っている様子だ。 恥ずかしくて目を閉じていた由紀恵だったが、薄目を開けて潤を見る。 「じゅ、じゅん・・・くん・・・」 股間にある潤のものがそそり立っていた。 由紀恵は、猛烈な喉の渇きにも似た感覚でそれが欲しいと思った。 「ず・・・ずるいわ・・・わたしばかりに、こんな恥ずかしいことさせて・・・」 もう撮影などどうでもよかった。潤に抱いて欲しかった。 「どうしたの、由紀恵さん？」 「い、いじわるぅ・・・こんなにさせて・・・」 「もしかして、由紀恵さん、エッチな気分になっちゃってる？」 「ばかぁ・・・」 「エッチな由紀恵さんも素敵だよ」 シャッターが続けて切られる。 「いやぁ・・・」 「おれ、うれしいよ。由紀恵さんがおれのことを求めてくれるなんて」 潤はそう言って由紀恵に近づき、ひざまずいた。 「ほんとだ。すごく濡れてるね・・・」 「いや・・・そんなこと言わないで・・・」 「由紀恵さん・・・」 潤は由紀恵の名を呼ぶと、溢れ出た蜜をすくい取るようにペロリと舐めあげた。 「はぅぅんっ・・・」 ビクンと身体が痙攣して喘ぎ声が漏れる。 「美味しいよ・・・由紀恵さんのここ・・・」 そう言って、潤は猫がミルクを飲むときのように、由紀恵のアヌスからクリトリスまでを何度も舐める。 「やっ・・・だめ・・・あうっ！」 燃え上がった身体は感じすぎるほどで、痙攣を繰り返しながら、由紀恵はあっという間に登り詰めていく。 「いやぁぁぁっ！」 ついに絶頂に達し身体が硬直する。 「よいしょ」 潤は痙攣している由紀恵の身体を横抱きにして床に横たえる。そして、上になると、ジワジワと感触を確かめるように挿入した。 「ああんっ・・・じゅんくん・・・いい・・・いっぱいになってる・・・ああ！」 満たされて悦びの声が漏れる。 こんどの潤は激しく動かない。じっくりと出し入れを繰り返しながら、バストや太ももの感触を楽しんでいる。 「ああっ・・・いい・・・も、もっと・・・もっとよ・・・」 はしたないなどと思う余裕もなく、由紀恵は自ら腰を動かしていた。 そんな由紀恵の耳元で潤がささやく。 「由紀恵さん。さっきは夢中だったけど、こんどは由紀恵さんの感じるようにしたいんだ。どうしたらいいか教えてよ」 耳に息がかかっただけで、全身にザワザワとした快感が拡がる。 「ああ・・・そこ・・・たまらない・・・」 「そうか、映画のラブシーンみたいにすればいいんだ」 潤は察しがいい。それに今回は余裕たっぷりだ。考えてみれば四回も出したばかりなのだから当たり前かもしれない。 潤の舌が耳の裏側から首筋までのラインをゆっくりと這い、右手がやさしくバストを愛撫しはじめる。 「ああっ・・・すごい・・・じゅんくん・・・」 身をよじりながら悶える由紀恵。 挿入したままの、潤の丁寧な愛撫が続く。 由紀恵は肩で息をしながら喘ぐことしかできない。 「由紀恵さんが感じてるところ、すごくきれいだ。大好きだよ、由紀恵さん」 そんなことを耳元でささやかれると蜜壺がキュンと締まるのが自分でも分かった。 「すごい。由紀恵さんの中。なんだか締まってきて、硬い肉を押しつけられてるみたいだ」 実際、子宮口が降りてきて、由紀恵は最後の瞬間を迎えようとしていた。 「じゅ、じゅんくん・・・だめ・・・もう・・・わたし・・・」 「じゃあ、由紀恵さん。上になって」 そう言うと同時に、潤は由紀恵の腰と背中に手をまわして持ち上げるようにした。体勢が入れ替わり、由紀恵が潤をまたぐ格好になる。接続が深くなり由紀恵は呻いた。 「ああんっ！ あ・・・あんっ！」 潤が下から突き上げてくる。脳にまで響くような抽送。 「あぁぁんっ・・・もう・・・だめ・・・いく・・・いっちゃう〜っ！」 たえきれず由紀恵が叫ぶ。 そのとき、連続してストロボの光が閃く。 いつの間にか潤はカメラを手にしていた。 「だめ！ だめぇ〜っ！」 由紀恵が硬直し痙攣している間もストロボの光は止まなかった。 しばらく由紀恵は背中をのけぞらせてブルブルと震えていた。 やがて、自分を支えきれなくなった由紀恵は、潤の上に崩れ落ちる。 その身体を潤が力強く抱きしめた。 「大好きだよ。由紀恵さん」 まだ、潤の肉棒は大きいまま由紀恵の中にある。 繋がったまま潤は由紀恵を持ち上げて立ち上がり、ソファーの上に移動する。 そして、ぐったりと脱力した由紀恵に激しい抽送を開始した。 「あうっ・・・だめ・・・もう・・・どうにかなっちゃう・・・うっ・・・ううっ・・・」 もはや、由紀恵が経験したことのない異次元の感覚だった。身体が浮遊し四散していくようだ。 目の前に何度も閃光が走る。 そのたびに意識が薄れていく。 「由紀恵さん！」 潤の叫びと同時に身体の中が熱いものでいっぱいになり意識が弾けた。 ソファーの上で目を見開いたまま失神している由紀恵。その姿を潤は夢中になってカメラに収めた。 ときおりヒクヒクと痙攣するものの、瞳は焦点を結んでおらず、四肢はぐったりと投げ出されたままだ。 呼吸も浅い。 情事の果てにある姿に、最初は感動して写真を撮りまくっていた潤だが、やがて心配になりカメラを置いて由紀恵の身体を揺さぶる。 「由紀恵さん。大丈夫？ ねえ」 その刺激のせいか、由紀恵は目を閉じて身体を震わせはじめる。 「由紀恵さん。由紀恵さん」 潤の声がうろたえ気味になったとき、由紀恵は大きく息を吐いて目を開けた。 「由紀恵さん・・・」 潤が心配げに覗き込む。 「じゅ、じゅんくん・・・わたし・・・どうしちゃったのかしら・・・」 「よかった。由紀恵さん。心配したよ・・・」 「えっ？」 由紀恵は辺りを見回す。 「う、うそ・・・」 「由紀恵さん。大丈夫？ 気を失ってたんだよ」 「うそみたい・・・潤くん、わたし、本当に・・・」 「そうだよ。すぐに目が醒めると思ってたのに・・・おれ、びっくりしちゃった」 潤が由紀恵のことを抱きしめる。 由紀恵はしばらく呆然としたままだった。 「もう、ひどいんだから・・・あんなとこ写真に撮るなんて・・・」 やがて、全てを思い出した由紀恵はそう言った。しかし、その声には媚が感じられ、本気で潤を責めているのではないことが分かる。 「ごめん。あんまりきれいだったから・・・ねえ、由紀恵さん。ロバート・メイプルソープって知ってる？」 「アメリカの写真家でしょ」 「さすが、やっぱり知ってたんだね。おれ、あの写真が好きでさ。なんで、花とポートレイトしか撮らないのかと思ってたんだけど、今日、その理由が分かったよ」 「どうして？」 「二つは一緒のものなんだ」 「どういうこと？」 「由紀恵さんのあそこを撮っているとき、花だって思ったんだ。エッチな気持ちはあったけど、それ以上にきれいだって・・・」 由紀恵は潤の感性に驚いていた。 美大で生意気な理屈をこねている人はたくさんいたけど、潤は、そんな理屈を突き抜けて自分の世界を持っている、そう思った。 それは、本物のアーティストしか持ち得ない感覚だった。 「潤くん・・・」 「なに？」 「大学で頑張ってね。私、本気で応援するから」 「なんだよ、いきなり・・・」 「私、潤くんのためなら何でもしてあげる。モデルにもなるし、潤くんがしたいことがあったら、何でも言って」 「エッチなことでも？」 「ばかぁ・・・でも、エッチなことでも何でもしてあげる」 「ほんと？」 潤の瞳がキラキラ輝く。 由紀恵がうなずくと、潤が抱きついてきた。 「由紀恵さん。最高だ。おれも、由紀恵さんのためなら何でもするよ」 日が沈み、部屋の中が暗くなっても、二人はいつまでも抱き合っていた。 |
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| 2010.12.4掲載 |
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