１７　引き込み

　夜も９時を過ぎ、セミナーも終わりをむかえた。

　朝の出来事は序の口で、何度も涙に濡れたり笑顔になったりを皆一様に繰り返した。
　相手の短所や欠点を言い合い、自我を崩壊させまっさらな人間へとリセットさせていく。
　佳乃も例外でなく、今までの自分はなんて小さい人間であったのかといった言葉を使うようになっている。
　しかし横山は、田口の集中砲火をあび負け犬のように尾を巻いたままである。

　セミナーも終わりホテルのロビーで会話する佳乃と大河内。
「加山さん、なにか今までの自分がどこかに置き去りになった気がしない？」
　大河内は佳乃に対し声をかける。
「ええ。なんだか吹っ切れました。・・でも横山さん大丈夫ですかね。」
　と落ち込んでいた横山を気にする。
「気になるねっ。彼部屋に居るだろうから、励ましに行かないか。今からさっ。」
「そうですね。明日のこともありますしねっ。」
　と佳乃は大河内がいる安心感から男二人の部屋へと簡単に向かってしまう。

　６階のエレベーターホールから右へ曲がり横山の部屋へ向かう二人。
「コンコンッ」
「ガッチャッ・・・・はい・・あっ大河内さんっと・・」
「加山ですっ。」
「ああ、加山さん・・・どっどうしたんですかっ・・」
　横山はおどおどしている。
「部屋入れてくれるかい。ちょっと話さないかっ三人で。」
「・・・・あっいいっですよっ・・どうぞっ。」

　部屋に入ると浴衣姿の横山と三人で今日のセミナーについてや、自分たちの事を話し出す。
「横山さん、あまり気にし過ぎないようにしたほうがいいよっ。」
「ありがとう、大河内さんや加山さんがいてくれて、なんだか・・ほっとしてきた」
「一人じゃないんだって感じがするんだっ・・っうっうっ。」と横山は涙ぐむ。
「そうだよみんながいるんだからっ。」
「・・・・ほんとは二人がこなかったら、自殺しようかとおもってたんだっ。」
「馬鹿なこと言っちゃダメですよっ。横山さん・・。」
「うん・・ありがとう加山さん。もう大丈夫あなたたちのおかげで・・大丈夫。」
　と横山はタオルで目頭を押さえる。

「連絡いたします。６０１号室のお客様至急フロントまでおこしくださいっ。」
　館内放送が鳴り響き、大河内の部屋番号が呼ばれる。
「なんだろう、・・ちょっと降りてくるよっフロントまで。」
　大河内は腰を上げ、佳乃の背後に回り込み両肩をポンッと叩く。

　叩かれた瞬間に佳乃は心ここにあらずかまた瞬きをしなくなり大河内を見つめる。
「『解放せよ』そしてこの男に対し凶暴になれ、フェラチオをはじめよっ。」
「精液を飲み干したら自分の部屋へ戻りなさい。いいね。」
　佳乃はコクリとうなずき立ち上がり横山の方へと向かう。
　大河内はキーワード催眠を小声でかけ、そのまま横山に合図を送りこの場を立ち去る。

「なっ・・何するんですかっ・・加山さん・やめてくださいっ・・うっあ。」
　大河内による催眠により、佳乃は横山に詰め寄り首筋に横山のカバンから取り出したカッターナイフを当てる。

「・・・・・・・。」
　何も言わない佳乃はにやりと笑みを浮かべ静かになった横山の唇を奪う。
「チュルッ・・チュパッ」
　横山は首筋にカッターを当てられたまま若妻の舌の挿入を目を閉じながら受け入れる。
「チュッチュッパ・・・加山さん・・離してください・・。」
　唇が離れた佳乃は横山の頭を撫で回し、その後髪の毛をつかみ横山の顎を上向かせる。
「・・・・・おいっ横山っ・・女々しいこといわないで・・おとこでしょ。」
「・・じっと・・・・してて・・すぐ終わるから・・すぐに・・。」
　横山は佳乃の脅しに、頭を縦に振りうなずいている。
　虚ろな目をした佳乃が、ひ弱で根暗な横山を脅す姿は女が男をレイプしているに等しかった。

　カッターを持ったままの佳乃は、横山の背中を壁につかせ前がはだけた横山の股間をまえにしゃがみこむ。

「・・・おおきく・・なってる・・ね・・・」
　夢遊病者のように佳乃は上目遣いで横山に話しかけ、浴衣の帯を外しブリーフ姿の横山の膨らんだ物を見つめる。そのままカッターを床に置きブリーフの股間をいとおしげに両手でさする。

「・・そのまま・・にげないで・・・あばれないで・・おねがい。」
「・・・はっはい・・・。」と横山は佳乃の顔を見ずに返事をする。

　佳乃は横山の返事を聞くと、ブリーフからはみ出している亀頭の先端にある尿道口を舌先で舐める。
　尿道口を舌先で舐めながらブリーフを膝下までずらし、両手で握り締めても亀頭を余らすほどの長さの肉棒が目の前に飛び出る。

「・・・おっおおきいっ・・・ほしい。」
　と催眠の中でも女としての本能はごまかしきれない。いやこれが佳乃の内に秘めた本心なのだろう。
「ジュルッジュルッジュルッ・・・チュパッ」
　佳乃の右手はぶら下がった干し柿のような睾丸を揉みこみ、左手で肉棒の茎の部分をしごいている。
　膝まづき目を閉じ少しアンモニア臭のキツイ赤黒い亀頭をペロペロと舐めあげ、たまに深く咥え込む。
「・・・っううっ・・・っう。」

　横山は若妻のフェラチオに興奮してか目を閉じ、こぶしを握り締め必死に快楽を押しこらえている。
「チュルッチュルッ・・・・・チュパッチュパッ。」
「・・・・っはっは・・。」
「ジュ・チュルッチュルッ・・・チュポッチュポッ・・」
　佳乃は横山の太ももに両手をおき、自らの口のみで肉棒をしゃぶりはじめた。
「あっああっ・・・だだっだめだ・・・。」
　口だけで横山をフェラチオする姿は、啄木鳥が木に止まり巣穴をあけるような動きと見間違う。
「・・くちの・・なか・・で・・だして・・。」
「・・のんで・・あげる・・から・・。」
　啄木鳥の動きを止め、横山に射精を促す言葉をささやく。
「・・・っははっはあっ・・。」
　横山は快感に溺れ声が出ないかのように頷くだけで答えを出す。

　佳乃の舌がカリ首部分をささえながら亀頭を舐めあげ、右手の茎の部分へのしごきをいっそう加速させると、
「・・・・ああっ・・・いっいくっ・・で・・でるっ。」
「・・らひれ・・くひに・・・らひれ・・いっはいらひれ。」
　舌を亀頭に預けているため、聞き取りにくい言葉を発しているが佳乃は白い生臭い液を求めている。

「・・・ぅうううううぁー・・ピュッピュッ・・ああああっ・・ドピュッ。」
　狙い通り見事に全ての精液を佳乃の口内にしかも喉奥まで発射させ一滴もこぼしていない。
「・・ゴ・ゴックン・・・・」
　横山のＤＮＡの入った大量の精液を佳乃は自分の胃袋の中へとむせることなくしまいこんでしまった。
「・・うっうっっうううえっ。」
　横山は、急に嗚咽し始め泣き始める。
　佳乃は唇を舌なめずりし、すこしはみ出した精液を舐めとりそれもまた飲み込む。

　大河内の催眠どおり精液を飲み込み終えるとやおら立ち上がり、カッターを拾い上げ横山の首筋にあてがい、
「・・・きも・ち・よかった・・よね・・あんなに・・でたんだか・ら。」
「この・・こと・・は・だれにも・いわない・・よね。」
　と瞬きもせず横山の目も見ずに言い、横山が頷くとニヤッと笑みを浮かべカッターを渡し扉の方向へと向かう。

「ガッチャン」
　扉が閉まり、佳乃が部屋を後にすると少し放心状態の横山がカーテンの裏に置かれたカメラを持ちあげＲＥＣボタンを押し、録画をとめた。

「上手く撮れてるかな？・・・・」
「んー・・おっ・・上出来、上出来。」
「・・ネットで流したら、サーバーダウンしちゃうんじゃないっ。」
　と、先程の行為を画面で確かめ満足気な横山。動画には佳乃の熱心なフェラチオ姿が捉えられている。

「・・加山佳乃かっ・・今回は・・あれ使っちゃおうかな・・。」
「そうすれば・・俺の子を確実に孕ませられるし・・。」
「もう、他の奴には種付けさせないからな・・旦那にもっ・・キキキキッ。」
　ひ弱な横山の独占欲が佳乃という獲物を見つけ、雄の本能を覚醒させた。

　夢遊病者のように６階の廊下を自分の部屋へ歩く佳乃。
「ガチャン」と扉を開け中へ入り電気も点けずベッドへとへたり込み身動きしない。
　部屋へ入り込んだ佳乃を廊下から見届けると大河内は、催眠を外すために部屋へと向かう。

　田口から受け取ったマスターキーで佳乃が居る部屋の扉を開け進入する。
「？真っ暗だなっ。電気も点けられないほど・・。」
　照明に光が戻り佳乃の両肩をさわり、
「『拘束せよ』・・・ポンッ・・どしたの加山さんっ気分でも・・」
　と白々しく大河内が佳乃に話しかける。
「・・・・あっ大河内さん・・あれ私・・横山さんは？」
「なに言ってんの。話し終わって部屋に戻ったんじゃないか。変だよ加山さん。」
「・・あっそうなんだっ・・なんか最近ボーっとしちゃって・・」
「セミナー疲れかもしれないね。・・じゃぁ俺も戻って寝るわっ。おやす・・っ。」
　と立ち上がった大河内に佳乃は、抑えきれずキスをしてしまう。

　舌を絡ませあい唾液と唾液を吸い取りあう。
「・・・んんふっ・・・チュッ・・・んふっ。」
　横山の残した精液の匂いが大河内にもわかると（横山の・・くそっ・匂うなっ。）
「だめだよっ・・加山さん・・旦那さんに・・悪いよっ。」
　旦那という言葉にはっと我に返り、絡めた唇を離す。
「ご・・ごめんなさい。・・おっおやすみなさい。大河内さん。・・・」
「ああっ・・おやすみ佳乃さん。」
　と大河内は言い佳乃の部屋を後にする。

　佳乃は、
（わたし・・どんどん引き込まれていく・・あのひとに・・）
（明日で・・終わりなのに・・さみしくなる・・もうあえないのかな・・）
（・・・だいてほしい・・わたしを・・大河内さんの物に・・してほしい。）
　心の中の叫びは、徐々に友之、友佳から離れ大河内に陶酔していく。
　
　口の中に残る横山の青臭い匂いも気にならないほどに。