２７　納品済証

　逆算すると人妻の帰宅時間にしては遅すぎる夜の９時。友之は、携帯が受信したメールを一目見、普段どおりの返信を仕事場から送信する。

『佳乃へ・・お仕事ご苦労様。そろそろ帰宅するんで友佳を迎えにいって帰ります。・・またメールするよ。』ごく普通の返信をしながら、工事現場の分電盤のブレーカーを落とした。
「佳乃、忙しそうだな。・・俺のかせぎがすくねえからなぁ。申し訳ない。」
　友之は自戒しながら佳乃の自宅にむけ、友佳を迎えにいく電話をかけていた。

　友之からの返信メールを見ているのは、配送の車に乗り込んだ佳乃ではなく監視員である佐々木であった。
「・・旦那、あまり心配してねえのかな。・・・気づかないほうがいいのか、気づいたほうが二人の為なのか。」
　と佐々木は、佳乃の携帯電話の履歴を見ながらつぶやく。色々な人間の付き合いが分かる携帯電話だが、佳乃の人間関係はごく普通の２４歳の女性の内容であった。男友達からのメールは殆どなく、メールの受信ホルダーには友之か母親、会社など、のぞいてみても興味をそそる内容の物は皆無であった。
「この奥さん、いや備品ＮＯ２６・・・本当にできた女じゃねえか。」
「・・・・んっ。」
　佐々木は、一つだけ気になる名前を電話帳リストに見つけた。
「・・大河内光太郎。・・・あのさくらの名前だっ・・どうして？・・・・」
　考え込む佐々木に配送班の上山が、
「どうした、佐々木。携帯ん中になんかおもしれえの見つけたか。浮気の痕跡やらエッチな画像とか？」
「・・・いや、ありませんねぇ。いたって普通の人妻ですよ。」
「そうかい。・・・まあ会員様には普通の女ってのがいいらしいからな、いたぶったり調教するのに丁度いいらしいんだが・・・」



　狭苦しいシャワールームに後ろ手錠の女が、刺青だらけの三治に６時間の汚れを洗い落とされている。
「・・・自分でできます・・いやっ、そんなぁぁとこ・・さわらないで。」
　髪の毛をアップにした佳乃は、背後に纏わり付くブリーフ姿の三治にあからさまな嫌悪感を言葉であらわしたいが、男性がする逆ソープのような三治の動きにあらがう素振りを見せられない。

「オマ○コのなか、精子まみれだぜ。・・ニュルッ。」
　佳乃の膣内に二本の指を滑り込ませ、ニュル、ニュルッと山本の少し黄色がかった精液を取り出す。
「ううぅっ・・・はぁっん・・・入れないで・あんたの汚い指なんて・・」
　どろどろと出てくる精液を三治は指にすくい佳乃の目の前でだらりと落とす。
「・・へへっ・・これだけとっても何億匹っていう、あのおっさんの精子の何匹かは子宮の卵ちゃんに届いてるかもよ・・・来年の２月くらいかなぁ。出産予定日は・・・」
「けだものっ・・・そんなこと・・・ううっあっ・・やめてぇん・・指をぬいて・・あはぁぁぁん。」
「うれしいよっ。俺様の指に感じてくれて・・・よしっ・・だいぶ取れたやろ。」
　と三治は指先に染みた膣液と精液の絡まった匂いを嗅ぎ、精液の薄まりを鼻で確認した。

「ＮＯ２６・・尻の麻酔はそろそろ切れてくる頃だ、・・・最新の技術だぜぇ、感謝しな。」
　三治は、佳乃のお尻の割れ目に手を差し込み石鹸を使わずにお湯と自らの手のみで臭いをこそぎ落としている。
「・・・・・・お尻に、・・なにをしたんですかっ。」
　さきほど四つんばいにされ、麻酔をかけられなにやら尻に刺激を感じていた作業を疑問に問う。
「尻だけに、しりてぇかい？・・・・ひひっ。」
　たいして面白くもない冗談を耳元で言われ佳乃の耳に息を吹きかける。
「・・ひっ・・・いったい何をしたんですかっ・・お尻に・・」
「教えてやるよっ・・・おめえの可愛い尻たぶの割れ目の内側にな、備品用の管理番号と納品日時を刻印してやったんだよっ、刺青でな。」
「なんてことを・・・そんなことしたら・・友之さんに・・・・見られ・・」
　何かを口走りそうになるがその先を言わずに止めた。

「へぇ、友之ってぇのか旦那の名前はよぅ。・・・そうか旦那との交尾の時に見られるんじゃねえかって考えてんだなっ。・・・心配すんなよ。堂々と尻の穴まで広げられてアナルＳＥＸしてもばれねえからよっ。」
　今までの刺青では考えられない細工をこの男、三治はやってのけていた。

「この墨はなっ、ブラックライトにしか光らねえ特殊なもんだよっ。・・・たまにラブホにいくとブラックライトがあるから、そんときは尻の穴に力をめいいっぱい入れとけ。そうすりゃ尻の割れ目の内側までみられることはねえからなっ。」
「ロスで入れてみろ、１５００＄は覚悟したほうがいいぜ。・・それを無償でやってんだ感謝しろっ。」
　と佳乃の刻印を入れられたほうの尻をパシンッと叩いた。
「いたっ・・・・なんて事を、わたしには名前があるんです。・・備品とかそんな名前で呼ばないで。」
「めんどくせぇ備品だっ。・・特別に彫ってあるぜ・・おめえの本名もな。・・・さあ終わりだよっ。」
　シャワーのコックを閉め、佳乃の体をはじく水滴をタオルで拭き取った。

「おめえの服だ。備品女・・・早く着替えろっ。」
　朝に着てきた服を床にほり投げ手錠を外し、三治はマットレスや部屋の中の片づけを始めた。尻の内側のまだ麻酔が掛かった感覚のお尻をさわり割れ目の内側に刻印された部分をさする。
（・・感覚がないわ・・ほんとに見えないの・・刺青だなんて・・）
　彫られた刺青を隠すように、山本に舐められ続けたパンティーを再び穿き朝来た格好の加山佳乃に戻る。

　扉の付近で片づけをする三治に声をかけ、
「早く・・帰らして・・・」
「おうっ・・・・ちょっとこれ見ろよっ・・・」
　デジカメの画像をパソコンを通して大画面ＴＶに映し出すと、きれいに結んだおだんごの髪をつかみ三治はＴＶを強引に見せ付ける。

『備品ＮＯ２６　０８０４２２　加山佳乃』とブラックライトに怪しく青白く光る刺青が佳乃の目に入り顔を伏せ泣き出す。
「これで、おめえさんも『嗜好研修所』の一員に仲間入りさ。仲良くしようぜ・・・」

　佳乃の尻肉の割れ目に指を差込み、
「なかなかいい出来だろっ。・・おまえ尻の毛がねえから、きれいに彫れたぜ。・・いつか機会があったら、おめえのクリトリスの包皮に「甘栗在中」って彫らせろよなっ。・・・はぁっははっ。」
　と顔を伏せ咽びなく佳乃の頭に空気穴一つ開いた頭巾をかぶせ、再び後ろ手錠を嵌めＥＶホールに送り出した。

　ＥＶホールでは、高山が待ちうけそのまま乗り込み階数ボタンを押す。無言のままのＥＶ内部だが、聞こえてくるのは咽び泣く佳乃の泣き声だけである。

「チンッ」
　ＥＶの扉が開き肩をつかまれた佳乃に高山は、
「じゃあな・・ＮＯ２６．後は、監視員の佐々木がおめえさんを家まで送るだけだっ。・・・佐々木に今後のことよく聞いとけ・・・わかってると思うが・・ポリに駆け込んだりしたら・・電車でドンッや・」
　横付けされた黒いワンボックスに押し込められ、佳乃は備品初日を終えた。

　佐々木との対面が一つの光明であることを加山佳乃が知るのは、まだまだ先の話であった。