３６　途中経過

　日が沈み始める時間になったころ、鈴木の家のリビングで携帯電話を触りながらなにやら確認をしている勝がつぶやいた。

「・・やっぱりなぁ・・みんな初物に興味があるのか・・トップは佳乃か。生贄候補は・・・由香里？・・・意外と伸びねえな。・・・そろそろ・・電話しとくか？」
　携帯の画面を、電話帳に切り替え、とある番号に発信した。３０秒ほどコールしてようやく厳つい男の声が聞こえる。

「・・あ、・・アグエロ・・・俺・・勝。・・・明日の出荷だけど・・準備できてるかい。・・そう。」
　簡単な言葉だけで済まそうとする電話は、ただの配送会社への手配のように聞こえるが、次の言葉に只の荷物の発送でないことにきづかされる。

「・・もちろん・・今度は、どこに連れて行くの？・・・ベラルーシ・・・へぇ・・分かったよ。・・・・・で、いくらで決まったんだ。・・・１２万ドル・・・・・・じゃぁ明日のこの時間に、家に寄ってくれ。・・・スパシーバ。」


　電話を切ると、再びあるサイトに接続し色々と打ち込んでいる。一方の鈴木は、三時から七時までの間、一度も降りてくることなくパソコン画面に食い入るようにかぶり付き陰茎をしごいている。

「おいっ・・・勝・・・上がって来いよ・・・早くしろ。」
　二階から大きな声で勝を呼びつける鈴木に、勝は待ってましたといわんばかりに階段をかけ上がった。

「ガチャ・・・どうしたんですか？先輩。」
　ノックもせずに開けた先には、下半身を露にした鈴木が興奮したように画面を指差す。
「これ・・・これ・・こんなバナーがいきなり開いたんだ。・・・ウィルスか？・・・おまえ見てくれよ。」
　勝は、ズボンを上げる鈴木をよそに画面のバナーをクリックした。すると、
「先輩・・これ・・このサイトからのお誘いですよ。・・・・参加しませんか？って・・・ランダムで・・今、見てる奴に参加を呼びかけてるんですけど・・それが当たったみたいですよ。・・これ。・・どうします。」
「・・参加するにきまってんじゃねぇか・・・早く返事しろ。・・・迎えが来るのか？」
　そのまま参加するというアイコンをクリックすると即座に返事が来た。
「先輩・・・２時間後には迎えが来るみたいですよ。・・・ここの住所、打ち込みましょうか？｝
「・・・いや・・・待てよ。・・おかん帰ってくるからやべぇって・・・駅まで迎えに来いって・・・・・・だめかぁ？」
　従順に先輩の要望を返信しながら、笑いをこらえている。それもそのはず、サイトの運営は勝が行っているので自作自演の演技を笑わずにはいられない。

「・・先輩・・ＯＫですって・・・・じゃぁ・・・俺帰りますから・・・先輩、楽しんでいってください。」
「・・お・・おう・・・すまねぇな・・お前のＩＤだから・・本来は・・・」
「いいんですって・・・いつも世話になってますから・・・俺のきもちっすよ・・・・じゃぁ失礼します。」
　鈴木は、もはや勝の声は届かずにこの先にある快楽へと頭の中は向かっていた。


　鈴木の家を出ると時刻は、７時をすぎもうすぐ８時になろうとするころ勝は嗜好研修所に電話を掛けた。
「もしもし・・・大友です。・・・・いえ・・そうじゃないんですが・・・一つお願いが・・・・ある男を迎えにいって欲しいんですよ。・・・・ええ・・・ＪＲの西大沢の駅に・・・ええ・・番号を言っておきます。・・・０９０・・・・・・この番号にかけて、その男を家の地下室に・・ええＶＩＰです僕の、・・・お願いします。・・・では。」
　電話をポケットにしまうと、大通りでタクシーに乗り込み家路を急いだ。


３６−１

　大友家の駐車場に止まっていた佐々木達の黒いワンボックスが、勝の指示したＪＲ西大沢の駅に止まっている。時間は９時を少し回り、タクシーが並んでいるため少し離れたコンビニの前に路駐している。

「・・・もしもし・・鈴木様ですか・・・わたくし・・・ええ・・お迎えに参りました。コンビニの前に黒いワンボックスが・・・・見えますか？・・ええ・・・そうです・・では、お待ちしております。」
　電話を切ると、後部座席に無造作につまれた佳乃の抜け殻である下着やらを隅に丸め、一人座れるように片した。

「おい・・・誰が来るんだ・・佐々木・。」
「・・・あの、くそガキの友達みたいですよ。・・・良く分からないが・・・あまり嗜好研修所のことは言うなと・・釘刺されましたよ。・・・・高山支配人に。」
「そうか・・・あの家に戻ればいいんだろ・・あれを拾ったらさぁ。」
　と上山が、前から歩いてくるにやけ顔の鈴木を指差しながら問いかける。
「良く分かりましたねぇ・・上山さん・・・あの若造ですか？・・・・・いいがたいしてやがるなぁ。」
「あんなけ股間膨らませてたら・・だれでも分かるよ。・・・・あいつと備品ＮＯ２６・・を掛け合わすってのかあの坊ちゃんは。・・・・もったいねぇぇ・・・あれじゃぁ・・猿だよ・・猿。」

「聞こえますよ・・・俺はそろそろ・・備品ＮＯ２６の旦那にメールしなきゃいけないけど・・・あいつに袋かぶせてからにするか。」

　佐々木は、車を降りて鈴木が駆け寄るのを待ちすかさず後部のスライドドアを開けた。飛び乗るように鈴木は挨拶もなしにひょいと乗り込んだ。

「お待ちしておりました。・・・それでは、これから向かう先を知られては困りますのでこれを被っていただけますか。・・・・どうしました？」

　鈴木は先程佐々木が片付けた佳乃が身につけていた下着に興味を持ち、佐々木の言葉が耳に入らない。その姿をバックミラー越しに覗き込む上山は、「やっぱり・・猿だ。・・・このガキ猿めっ。」と聞こえないくらいの声で口に出す。

「これって・・あの・・大股開きの女のパンツ？」
「・・・私どもには・・・よく分かりませんので・・早くこれを・・・。」
「わかったよ・・・帰りも送ってくれるんだろ・・・・バサッ。」
　袋をかぶった鈴木に、見えないと分かってか佐々木は中指を立てた。その姿を見た上山も同じく中指を立てると、車を急発進させた。

　車が進んでわずか２０分くらいでつく距離の勝の自宅を遠回りして１時間をかけて走る。夜も１０時を過ぎ道もすき始めているため高速の環状線をクルクルと回っていた。佐々木の動きは女が好みそうな携帯をいじりながら鈴木の動きを気にしていた。

「まだかよ・・・・遠いなあぁ・・・」
「・・・・・・」
　無言の佐々木は、友之へのアリバイメールを打ち続けているため気づかない。

『パパへ・・研修終わったよ・・・・今日は忙しかった。・・・今から懇親会に行って来るから、電話にでれないけど。友佳をよろしくね・・・明日は８時くらいには帰れると思うので待っててください。・・・・じゃぁね。・・よしの。』

　メールを送信し終えると、高速を降りた上山がそろそろだぞっという合図を送った。

「そろそろ、到着いたしますが被り物は、取らないでください。・・命の保証はありませんよ。」
「・・・わかったよ・・・・何時間だよ・・・終わるまでは？」
「私は知りません。・・・・中でお聞きくださいそれでは、到着しましたのでご案内します。」

　朝の９時に佳乃を降ろしたのと同様に鈴木の手を引いて地下階段を下る。朝と同じくとびらが開き鈴木の手を渡すが、その渡し手は勝ではなく真っ裸でぶらつくホームレス風の垢太郎であった。あまりの異臭に顔を背けそうになるがその異臭は、体臭などではなくあからさまに大量に吐き出されたであろう精液の匂いにむせ返りそうになった。

「・・ごくろうさん。・・・朝になったらノックしてくれ・・・・この子を返すから。ひっひっ。」
　こくりと頷くと佐々木は、階段を上り始めた。バタンと音がすると同時に鈴木は闇の世界に消えていった。

「あいつら・・なにやってんだ・・・しかしどっかでみたぞ・・・あの男・・・どこかで・・・」
　佐々木の記憶の中にあるアーカイブが開きかけるが、どこかでスイッチが入らずに遮断され垢太郎の正体を掴みきれないでいる。

「ピロピロン・・・ピロピロン。」
　佐々木のポケットの中から、メール受信の着メロが流れ佳乃の携帯を階段下の地下室に目をやりながら、受信箱を開けた。
『Ｒｅ、佳乃。お疲れさま・・・３日後からダムの現場に配属決まったよ。明日帰ったら詳しく話すよ。今、実家に帰ってお母さんと友佳と帰りの準備してるよ・・・明日の夜は・・久しぶりにエッチしようよ・・なあんて・・浮気すんなよ・・おやすみ。』

　なにか複雑な顔をした佐々木は、この受信メールを削除し送信したメールも削除した。佐々木の中の何かがそうさせたのかは分からないが、佳乃への配慮をし始める最初の行動であった。



３６−２

　被り物をされた鈴木は、股間の屹立をさすりながら地下室に入っていった。垢太郎はその手を引き、鈴木を佳乃が繋がれる左の檻に押し込んだ。鍵をかけると垢太郎は、大声を出して叫ぶ。

「おいっ・・兄ちゃん・・被り物外してもいいぜ。・・・見えてくるのは・・・なにかなぁ・・はっはっはっ・・・オープンっ。」
　掛け声とともに被り物を外すと、二時間前まで股間をさらして陰核を擦り上げられていた備品ＮＯ２６佳乃が同じ姿で拘束されていた。先程までと少し違うのは汚れた体は、きれいに拭い取られ髪型も整えられいつものお団子型にセットされていた。

「・・・す・・すげぇ・・ほんとかよ。・・・・」
　興奮を隠し切れない鈴木の目はギラギラ輝いてはいるが、何をどうしていいのか分からず立ち尽くしていた。その目線の先には、滑りを拭き取られはしているがピンク色に怪しく潤む膣肉がひくひくと視線から逃げようと必死にうごめいている。

「・・・見ないでください。・・垢太郎様・・・お願いします・・この人を・・どこかに・・・どこかに・・・もう・・いやぁぁぁぁ。」
　時間が１２時間以上も経つと始めは拒絶していた垢太郎を、仕込まれたとはいえ敬意を表した呼び方に変えるまでの責めは２４歳の若妻には耐え難いものであった事が分かる。質問責めにされ、佳乃の経験した性行為から自らが欲する性願望までを告白させられたのでは垢太郎に屈するしかなかったのだろうし、そのほうが垢太郎のＳ性を弱まらせるのではないかと考えての行動かもしれない。その様な、出来事を一切知らない鈴木の登場で、ＳとＭのフィールドは再び変わり始めていた。

「どうだい・・お兄ちゃん・・ポコチン、ギンギンだろぅ。・・・・早速、気持ちよくしてやんな。・・・この、奥さんは濡れてなくても君のが入るとすぐに・・ニュルニュルだから・・・はっはっはっ。」
　佳乃の股間から目を反らす事をしない鈴木は、凝視したまま垢太郎のけしかける言葉に返答する。

「・・・奥さんって・・まじかよっ・・・おじさん・・おれ・・おれ、人妻・・犯すの・・夢だったんっすよぉ・・・やべぇぇ・・・もう・・いいっすか？やっちゃっても。」

「・・だめぇぇ・・・やめなさい・・あなた・・まだ未成年でしょぉぉぉ・・・・やめなさい。」
　拘束された体を、獣のような目をした牡からそらす事は無理であり、逆にレイプ願望の鈴木にしてみるとまたとないシチュエーションであった。みるみる股間の勃起が目立つようになった鈴木は素早くズボンをトランクスと一緒に脱ぎ去った。陰茎をしごきながら佳乃が横たわるベッドから、脇を抱え上げそのまま檻を背にさせ冷たいコンクリートの土間に尻をつかせた。その姿は、テディーベアのヌイグルミが壁にもたれかけさせ置いてあるかのように見える。

「・・おいおい・・兄ちゃん・・・まずは・・・お口からかい・・・お若いのに、趣味がいい。」
　垢太郎は、鉄格子に覆いかぶさり隅間から佳乃の目に入るように自分の陰茎を隙間から差し出しブラブラとして見せた。

「その奥さんは、今までにポコチン咥えたのはまだ５本らしいよ。・・処女膜貫いた男のポコチンは咥えてないらしいから・・お前さんで６本目だ。まあ５本目は俺のポコチンなんだけどよぉ。・・・だから、歯ぁ立てちまっても・・許してやってくれよ・・な。」

　檻の外から茶化す垢太郎に、反論を出来ずに束ねたお団子上の髪を掴まれ上目遣いで隆起した剥き出しの亀頭に目をやってしまった。それをきっかけに鈴木の調子に乗った女を蔑んだ物言いが始まる。

「・・へぇ、奥さんフェラ・・・あんまりしたことねぇんだ。・・・大人しそうな顔してる割には、多いほうか。・・・今晩は、じっくり楽しませてもらうぜ、旦那専用のおマ○コと・・フェラくちをなぁ。」
　すこし開いた口に強引に鈴木の若く反りたった陰茎を喉の置く深くまで差し込んだ。まずは舌先、頬の裏側をゆっくりと擦り上げながら、用意周到な動きで扁桃腺まで貫いた。

「うぐぅぅぅ・・・うぐぅぅぅ・・・おうぇぇぇ・・・おうぅぅぇぇぇ。」
　じゅるじゅると音をたてていると、佳乃の中に大島との自宅陵辱嗜好研修がよみがえり始めていた。喉奥に刺さる肉棒は、大島ほどの大きさはないものの疲れ果てた１２時間もの焦らし、責め、いたぶりで疲労と性的感覚がピークに達してしまった牝には耐え難い大きさに感じてしまっていた。

　目をつむった佳乃は、「・・あそこの・・奥が・・熱い・・なんで、どうして・・・犯されてるのに、・・・逃げたいのに・・・体が・・体が・・・言うことを・効かない・・。」と心の中の母ではない牝の本能が顔を出していた。

　腰をゆっくりと動かし鈴木は肉棒に当たる人妻の頬の粘膜と舌先の感触を味わいながら恍惚な表情を、浮かべていた。少し、腰が引けたような動きを垢太郎は見逃さず、「こいつ・・もしや・・初めてかぁ？・・口だけ達者な・・チェリーボーイ？」垢太郎の視線は涙目になっている佳乃の瞳と、同じ高さに位置する鈴木の引き気味の腰の位置を凝視している。

「うぐぅぅうぅ・・ぐるじいぃぃぃ・・るいれぇぇぇ・・おうえぇぇぇ。」
　喉奥深く差し込まれゆっくりながらも確実に亀頭の先を扁桃腺をとらえている。だが亀頭への刺激を最低限に押さえるようにする鈴木は引き気味の腰つきをさらに引き下げた。

「・・うっ・・・ビュッ・ビュビュュッ・・・・やべぇ・・・」
　引き下げた瞬間鈴木は、首をすくめ上向き気味で遠くを見つめた。その表情は、若い精を発射したに違いないと垢太郎はほくそえむ。

「うえっ・・うえっ・・・うえっ・・けほっけほっ・・・・・・・。」
　喉奥に若く濃い精液を発射された佳乃は、抜き取らない鈴木の肉棒のため精液を朝から何も入っていない胃に収めた。
「おい兄ちゃん・・・出しちまったのか。・・・そんなに、フェラチオ上手くねぇだろうその奥さんはよぉぉ。」
「・・・ちょっと・・溜まってたんで・・・つい。・・・興奮しちゃったんです。」
　頭をかきながら、喉奥に刺さった肉棒を抜きもせず垢太郎の言葉に照れながらごまかしつつ返答する。

「よし、兄ちゃん。・・・俺はこれから仮眠すっから。・・朝まで好きにしていいぜ。・・ただし、顔や体に傷つけやがったら・・おめえさんの命もねえからな。・・・この鍵で、奥さん自由にして・・・・・逃げる人妻を、めいいいっぱい犯してやんな。・・・ははははっ。」
　ポンと安物の南京錠の鍵を檻の中に投げやり、そのまま欠伸をしながらもう一つ言い忘れたと、振り向く。

「忘れてた・・その奥さん・・・クリトリス擦るより・・摘んでやったほうが良く鳴くから・・試してみな・・・チェリーボーイ。」
　鈴木の行動を見て、童貞だと判断した垢太郎は最後に聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさの声でぼそりと呟いた。その声はまったく届いていない鈴木は、芸を忘れた猿のように佳乃の拘束された裸体を舐め回すように観察していた。

　拒絶すればするほど興奮する牡猿に、このまま犯されるのを頭の中での拒否と牝の本能の肯定が入り混じり体の動きが完全に停止した状態の佳乃。その牝の体を品定めをする発情した牡猿、鈴木。二人の獣の交尾をいまかいまかと待ちわびる人間の男達は、文明の力であるパソコンの前でビール片手に観戦中なのであろう。