４０　アクセス数のグラフと放尿

　トップの営業成績である営業マンには、ボーナスやら昇進などいろいろな楽しみがあるが、卑猥な闇の部分である性行為を見ず知らずの他人に評価され一番を狙わなければならない佳乃の心中は穏やかではない。

「よっしゃ・・兄ちゃん・・時間だ。・・・奥さんのおま○こ・・良かったやろ。」
　余韻を楽しむように肉棒を差し込んだまま、離れようとしない鈴木に垢太郎はもう一つ質問する。
「どうだ・・・粉の威力は・・・効いただろ。」
　佳乃の白い肌も若くて激しいだけの交尾に、紅潮させ体の芯から温かくなっていた。汗まみれの鈴木は、二度目の質問に、ようやく体を離し、ギンギンにいきり立った肉棒を抜き去った。
「ヌッポッ」

「おじさん・・すげぇ効いたよ・・あの粉。・・・でも、本当に・・禁断症状なんて・・でないの。」
「・・心配すんな。・・・・あれくらいの量じゃ・・・なんともなんねぇよ。・・・テレビの見すぎ・・・・・常習者で普通に働いてる奴なんて、かぞえきれねぇくらいいるよ。」
　そんな話の中、佳乃の膣口からは若い遺伝子を大量に含んだ精液がとめどなく流れ落ちる。

「ジョ・・ジョッ・・ジョォォ。」

　白い精液に混ざり、抜き去った後の膣内から透明な混合液が勢い好く噴出した。
「・・き・・きたねぇ・・奥さん・・小便かよ。」
　佳乃の顔は、横に背けたままで汚い言葉にまったく反応しないでいる。背中にかかった佳乃のしぶきを拭い去ると鈴木は、

「臭くねぇ・・・・なんだこれ。」
「兄ちゃん・・教えてやるよ・・・それはなぁ、奥さんの気持ちいい時におま○この奥から沸きでる・・・・・お汁なんだ。・・・若い割りに、奥さん喜ばして潮汁出させるなんて、たいしたもんだぁ。」
　そう言うと、鈴木はかかった液体を指ですくい舐めてみる。

「・・ほんとだ・・臭いがねぇ。・・・・」
「お兄ちゃん・・・その汁・・・中国では長寿の薬と言われててなぁ・・・さっきのお猪口一杯で・・・・・１万元・・日本円で１３万くらいするんだぜ・・・しかも、子持の若妻だったら・・２万元・・・・くらいになってもおかしくねぇんだ。」
「・・・・・。」
「心配すんな・・請求はしねぇよ・・そろそろ、お迎えが来るぜ・・・若いもんは、勉強しろ・・俺みたいになりたかねぇだろ。」
　垢太郎をみながら、にやりと笑い開いた檻から出て佳乃に、声をかけた。

「・・奥さん・・今度、街であったら・・・必ず、犯してやるから覚悟しといてねぇ。」
　その声に反応することなく、佳乃の体は微動だにせず鈴木のほうすら見入ることはなかった。無視された感のある鈴木は、照れ笑いを浮かべながら着てきた服に手を通している。




「コンコン・・・」
　現実世界との扉が音をたてて開いた。

「じゃぁ・・兄ちゃん。今日のことは誰にも言うんじゃねえぞ。・・ま、だれも信用しねえけどな。」
　袋をかぶされた鈴木は、親指を立て「任せろ」と言わんばかりのポーズをして見せた。佐々木は、鈴木の手を取り階段をゆっくりとあがる。扉の奥を見ようとするが、暗い照明のためまったく分からない。が、ドアが閉まり始めたころ奥から佐々木を呼び止める野太い声が聞こえた。声の主は、垢太郎だった
。

「・・おい、あんた、ちょっくら顔見せなよ。・・・・どっかで、あってないか俺と？」
　少し前に高山に呼び止められたときと同じ言葉で佐々木は、

「・・どこでも、いる顔ですよ・・・こんな顔は。」
　振り返りながら佐々木は、怪訝そうな顔をしている垢太郎に答えた。すると、
「いや・・・確か・・・・思い出せねぇ・・・まぁ・・いっか、思い出せねえくらいの男ってことだな。・・・じゃぁ、その僕ちゃん・・頼んだぜ。」
「へい・・・抜かりなく。」
　佐々木は、閉まるドアを見送ると鈴木の手を引きながら階段を上っていく。垢太郎の頭の中には、色々な人格の中にある記憶がさまよっているが、今現在現われている人格の記憶に佐々木への記憶がないだけなのか、はたまたまったくの他人の空似なのかはさだかではない。

　口笛を吹きながら階段をのぼる鈴木。その手を引き階段を同じくのぼる佐々木。童貞を捨て去り調子付いた鈴木が、
「・・・・おいっ・・おっさん・・・人妻抱いたことあるっ？」
「いえ・・ありません。」
　車のスライドドアを開けようとした佐々木に向かって、先程までの佳乃との絡みを事細かく述べ始めた鈴木に佐々木は凄みながら物申す。

「・・おいっ兄ちゃん・・・やたらベラベラしゃべってると・・・その舌・・塩タンにして食っちまうぞ・・・忠告を無視しやがるだったら・・・このまま家に帰らず、この世とオサラバしても構わねぇんだ。・・・調子こいてんじゃぁねぇ・・クソガキが。」
「・・・・・」

　何もしゃべらなくなった鈴木は、開いているドアに押し込められ童貞をすてた竜宮城を後にした。最後に佐々木が凄んだ理由は、ただのガキに対する威嚇なのか、佳乃に対する哀れみなのかは本人のみが知っている。

　上山がクラクションを二度鳴らすとシャッターが開き始める。早朝の朝日が強く、初夏を思わさせる日差しが、二人に刺さる。アクセルを踏み込み右折をする上山、シャッターの下から車体の全てが通り過ぎると再び佳乃を残した竜宮城の扉は重く閉じる。閉じ始めたシャッターの奥に停まっているパネルバンの運転席からは、中南米風の顔をした男が飛び降り地下室へ向かう姿を佐々木は目に焼き付けていた。

　なにやら、胡散臭さを残したまま車は鈴木を乗せ路地を抜ける。



　時間は朝の１０時を過ぎた頃、鈴木に縛られたままの姿で転がされた佳乃は疲労もピークを越え、恥ずかしい姿のまま居眠りをしていた。ちょうどまる一日陵辱され続けた佳乃の、体力も限界を超え始めた頃、人間的な生理現象も気を抜いたタイミングで、もよおし始める。

「・・・・」
　二時間ほど拘束されたまま転寝をしていた佳乃は、膀胱の張りにいたたまれなくなり始める。モジモジと体をゆすりながらカメラに映らないように股間付近を移動させるが上手くいかない。どこに動いても、カメラは佳乃の姿を捉えているため無駄なあがきだが、尿意と恥辱のせめぎあいは時間が経つにつれどちらかが簡単に上回った。

「・・・ジョ・・・ジョッ・・・シャァァァァァ。」
　ビタミン剤のような濃い黄色の小便が、閉じた太腿をつたい、勢い好くベッドを汚しポタポタと床に溜まる。横たわった佳乃の顔は、汗臭いベッドに伏せ汚辱の涙に咽び泣く。嗚咽する声は、小便の垂れ流される音に完全に負け、誰にも聞かれたくない音がジョロジョロととめどなく鳴り続けていた。

　その姿を親指を咥えた、垢太郎が黙ったままじっと見つめている。無言の垢太郎は、瞬きもせずに垂れ流す小便をただただ見つめているだけだった。その姿に先程までの人格は、微塵も感じられないでいた。

「・・ポタッ・・・・ポタ・・」
　勢いを失った小便は、何も行われていないライブ動画のアクセス数と同じで平行線を保っている。隣からの奇声や、喘ぎも聞こえなくなり静かな時間だけが過ぎている。

「マサル・・・ソロソロ、ジカンダヨ。・・・・コンテナノ・・ミナトガ、チェンジシタカラ・・・・・・・ツレテイカナイト・・・アウト。」
　小柄なグァテマラ人のアグエロが、パソコンの前に座る勝に声をかけた。勝は、モニターのみを見ながら一言だけ言った。

「アグエロ・・・お前のお楽しみの時間を入れての話かい。・・・・」
「・・マサル・・・オレノ・タノシミヲヌイタラ・・コノハナシハ・・・ナシ・・ダヨ。」
　アグエロは、ズボンに隠れた肉棒をさすり笑いながら答える。

「分かったよ。・・・ちょうど２４時間たった・・・これで終了だ。」
　アクセス数をしるす画面をプリントアウトし、立ち上がりライブカメラのスイッチをオフにした。