| ４６ 懲罰研修 大島の突然の来社に戸惑い、わが子の顔を見るために帰る家にも足取りが重くなっていた佳乃。帰宅時間になっても残務処理をしている佳乃に奈々が声をかける。 「佳乃さん・・まだ帰らないんですか？・・友佳ちゃんさみしがりますよぉ。」 「・・ありがと・・心配してくれて・・母が見てくれてるから安心なのよ。・・・・・」 パソコンの画面を奈々が食い入るように見ていると、心ここにあらずの佳乃の打ち出す文章の粗をいつもは指摘される側の奈々が指刺す。 屋でお待ちください。なお、嗜好会員さまはお二人でお伺いいたしますので、お心つもりよろしくお願いいたします。お子様は、ご自宅で寝かせつけてお待ちください。どこかに預けることは厳禁です。』 短くも恐ろしき文面は、友佳にまで危害が加わりそうなもので、その内容を見るや否や消去してしまう。 「どうしよう・・・友之さん・・急に帰ってきたら・・どうなるの。」 佳乃の独り言は、友之に助けを求めるのでなく友之にこの卑猥な研修が気づかれることのほうを恐れていた。その言葉の裏にある牝の本能にはまだ気がついていない佳乃は、おでこに纏わりつく前髪をさらりとなで上げた。 数分考えたあと、佳乃は友之に電話をかける。ほとんどがメールで済ます夫婦の連絡事項だが、とっさに帰宅する癖のある友之の行動を案じてメールではなく直接携帯からダイヤルした。 「・・・もしもし・・パパ？・・佳乃だけど・・今いい？」 「珍しいなぁ・・おまえが電話するの。・・どうした？」 「いや・・ちょっと今日は、お母さんのとこに泊まろうかと思ってね。・・・だから、もし急に帰って来ちゃったら・・・誰もいなくて心配しちゃうと思ってね・・電話したの。」 「・・なんだ・・そんなことか。・・俺は、暗い田舎の山奥で一人寂しくテレビ見てるからなぁ。・・・・・・次の日曜には帰るけど・・その先は月一くらいかなぁ・・・」 「えっ・・・話が違うじゃない・・・週一は帰るって・・言わなかったっけ・・・・」 「そんなに寂しいか？・・・おれと離れて？・・・・」 「・・う・・うん。」 「エッチも月一になっちゃうな・・・・・・・」 「・・そ・・そうだね・・・・風俗とか行かないでよ・・パパ。」 「心配すんなって・・・こんな田舎じゃ・・熊かイノシシくらいしかいねぇよ・・ハハハ。・・・それより、おまえこそなんだったっけ・・あの研修所・・研修に来てる若い男なんかと浮気するなよ・・・。」 「・・えっ・・パパ、気にしてくれてるの？」 「・・まぁな。・・・おまえだってまだ２４だしなぁ。・・・気にしないって言えば嘘になるかなぁ。」 「・・・ありがとう・・・パパ。・・・ごめんね。」 「どうしたんだよ、あらたまって・・おまえらしくないぞっ。・・・すまん・・所長が呼んでるわ・・・・・・またな・・友佳に・・よろしくな・・切るよ・・ガチャ。・・・・・・」 「あっ・・・・」 友之には、意味を違えて伝わった「ごめんね」は今夜用意された懲罰研修で犯される佳乃の精一杯の懺悔の言葉だった。 友之への電話を切るや否や再び着信音が自分以外誰もいない事務所の中でこだまする。 「ピリピリ・・・ピリ・・・。」 「はっ・・・はい・・加山です。・・・」 「・・備品ＮＯ２６・・気がきいてるな・・・旦那が帰ってくるかどうかを確認するなんて。・・・メールを見てわかってると思うが・・・今日は、懲罰研修だから・・・・朝まで寝られないことは覚悟してろ・・。」 間髪いれず夫婦の会話を盗み聞いた監視員佐々木は、佳乃への皮肉たっぷりの蔑みを吐き捨てる。 「・・・友之さんの・・単身赴任のことを・・報告しなかったことは・・謝ります。・・・どんなことでも・・罰は受けます。・・・でも、・・・家で・・懲罰なんて・・それと・・友佳の目の前でなんて・・・・・嫌です。・・・研修所でなら・・どんな懲罰でも受けます・・・。」 あらん限りの謝罪の言葉をもってしても、この非道な男たちが前言を撤回することはなかった。 「・・勘違いするなよ・・・懲罰研修は、温情をもって支配人が下した一番軽い研修なんだ。・・・・・・・普通だったら・・もう、娘は・・中国行きのコンテナの中で・・・寝てるんだぜ・・・感謝しろ。」 「・・・う・・わかりました・・でも・誰が・・来るのですか・・二人って・・誰なんですか？・・教えてください。・・監視員さま・・・・。」 「俺も知らない誰かだよ。まぁ・・来てからのお楽しみにしておけよ・・・くれぐれも施錠するなよ・・いいな。」 「・・うっ・・・はい。」 「・・あ・・もう一つ・・・今日は・・ノーパンだったそうだな。・・大島特級嗜好会員さまから・・・・・連絡が入ってたらしいが。・・・そこでだ・・帰っても・・・シャワーを浴びずに・・ノーパンのままでいろとの・・高山支配人からの命令だ・・・わかったな・・・ガシャ・・。」 「・・あっ・・・もしもし・・。」 佳乃は、佐々木への質問を打ち切られ聞こうとしていた重要なことを聞きそびれていた。それは、シャワーを浴びるなとは言っていたが、着替えをしてよいものかどうかが気になり質問をしかけた所一方的に会話は遮断されてしまった。 懲罰研修と言われると帰宅して着替えてしまうことにより、より激しい懲罰に発展しかねない嗜好研修の世界をそろそろ理解し、学習し始めている自分に備品としての物質的存在感から、より人間的な牝奴隷要素を感じ性的な興奮をも感じ始めている。 |
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| 2009.9.19掲載 |
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