| ５７ 引き上げの予兆 懲罰研修のあったその日は、昼から社長の運転手をさせられていた佳乃。尻の穴に埋め込まれているアナルプラグは、横にいる山本社長は気づくこともない。いつもなら、少しセクハラじみたことも言うのだが、今日の山本にはなにやらその余裕を感じない。 彼が見、そして舐りつくした陰唇の奥の菊座にはパンティーに張り付く無機質なプラグが埋め込まれているなんて考える余地は、今の山本にありえなかった。 「はい…。もう一度、猶予を与えてはいただけないでしょうか？先方との話もあと一息なんです。」 助手席にいる山本は、頭をペコペコとしながら電話の向こうの男に下手に出ている。 「ええ。…月曜の朝にはなんとか…なります、必ず。」 佳乃は、社長の電話先など気にもせず自らの尻の間に力を入れ、前方を見、運転をする。山本の電話は、ひっきりなしに着信音を鳴らし、誰ともわからない男たちに猶予を請う。 ようやく電話が鳴り止んだのは、事務所を出て１時間ほどした頃、目的地である建造中の９階建て分譲マンションのモデルルームの駐車場に車を止めたそのときであった。 「…社長、着きましたけど？…どうかされたんですか？」 どうかされているのは、佳乃自身なのだが相手を気遣う性格の佳乃は、山本の異様な疲れ具合を気にしてならないでいた。 「すまないけど。…お客さん…もう来てるから…加山さん…部屋の案内よろしく頼むよ。」 「はい。…でも社長…沢口さんは、居られないんですか？モデルルームには？」 動揺を隠そうと必死だが、その白々しい言い回しがよりいっそう佳乃の疑問に拍車をかける。 「…急に休みが欲しいなんていってさぁ。…沢口、…あいつは自覚がないんだよね。幹部としての自覚が。」 「そうなんですか。…沢口さんの代わりが私で勤まりますか？」 「大丈夫……だよ、加山さんは。……大島さんのセミナーでの受けもいいようだしさぁ。期待してるよ。」 「………はい。」 山本との間に温度差のある返事をした佳乃だが、そのことにまったく気付かず再びどこかに電話をし始める。 施錠されたモデルルームの前には、子連れの若い夫婦がチラシを見ながら佳乃ら販売員が来るのを待ちぼうけていた。佳乃は電話中の社長を車内に残し、小走りに夫婦の下へ駆け寄る。 「…すいません。…やまもと不動産の加山と申します。脇浜さまでございますか？」 不機嫌そうな顔をした奥さんはは、佳乃の元に近寄り、 「…客をこんなに待たせてどういうつもりよ。…マンションなんて他に幾らでもあるのよ。」 厳しい口調の母親に驚きもしない５歳くらいの男の子は、いつもの事がまた始まったと言わんばかりの顔をし、佳乃の回りを走り回っていた。 「…あんた、車の男といい事してて遅れたんじゃぁないの。…助平そうな顔した男だからさ。」 妻の言うことを制御できない旦那が、あたふたした動作で佳乃への話をそらす。 「…京香。何てこと言うんだよ、子供がいる前で……ごめんなさいね…部屋…みせてくれるかなぁ。電話で連絡したやつ。」 「あ…はい。…では、こちらへどうぞ。遅れて申し訳ありませんでした。」 佳乃がぺこりと頭を下げたその隙に、連れてきていた男の子が手のひらを合わせて佳乃の背後に回る。 「…かんちょうぅぅぅ。……いたっ。」 「キャ………。」 子供特有のいたずらである浣腸は、指先を佳乃の尻の間に確実にヒットしたが、いつも幼稚園でやっている感触と違い指先を気にする。 腰を曲げた状態でのいたずらは、佳乃の尻の穴に巣食うプラグが防御し事なきを得る。が、子供は突き指をしたのか痛みが沸き、涙をこぼしている。 「うっ…うえぇぇぇぇぇぇん。」 泣き始めた子供に、母親は俗に言う「モンスターペアレント」の顔をさらけ出した。 「あんた、うちの子泣かしてどうしてくれるのよ……謝んなさいよ。」 理不尽な謝罪要求に車の中の社長を見れど、電話が終わるようにも見えず、客のいいなりに謝罪した。 「も…申し訳ありません。」 「頭の下げ方が、なってないわ。……こうよ……こうっ。」 佳乃の頭を鷲づかみにした母親は、泣きじゃくる子供に見せ付けるように何度も頭を下げさせる。周囲の人間も大きな声で気付いたのか、ヒソヒソと指差しながらそそくさとその場を避けていた。 「……お…おいっ。……悪いのは、健二だろ。…すいません……うちの息子が。」 自分の妻を抑えることが出来ずに旦那は佳乃に詫びている。その態度が気に入らない母親は、旦那と口論になっていく。 「もういいわよ。……こんな安マンション。……健二、パパ置いて帰るよ。…さっ行くよ。」 手を握られた子供は、佳乃に向かってアカンベーをすると唾を穿き捨て悪態の限りを尽くしその場を去った。 「す……すいません。…僕、婿養子なもので、妻に何も言えないんです。おっおい、待ってくれよ。」 その二人を追いかけるように情けない父親は、駐車場に止めてある車の元へと急いでいる。 呆然と立ち尽くすしかない佳乃は、子供の指とはいえ、力加減の知らない浣腸の洗礼を受けた尻の窪みを気にした。食い込んだプラグ付き下着を元に戻そうと考えるが、辺りを気にしマンションモデルルーム内のトイレを目指した。 「バタンッ…」 便意があるわけでもないが、違和感の極みであるアナルプラグは少年の一撃で食い込み気味に菊門を陵辱していた。扉を閉めるなり、鍵をかけ、タイトスカートを腰まで巻き上げる。 巻き上げて露になった横山老人の置き土産の白いパンティーを便座に座ることなく、左指二つでつまみ、プラグの溶着された部分を引き戻そうとする。 「あっ…いっ…。」 声にならない痛みとも喘ぎともつかぬ甘い声をあげ、違和感を拭い去ることはできないが、我慢のできる位置へと鎮座させた。その場所を捉えた感覚は、痛みの中に芽生えている快楽のつぼ、そこに一番近い位置を佳乃の性電気の発信装置がナビゲートしていた。 スカートの乱れを直し皺を整えて、トイレブースのノブを掴みかけたその時、先程まで車の中で聞こえた山本の声が佳乃を呼ぶ。 「加山さん……。おーいっ、いないのか…どこいったんだよ。」 客とのやり取りを見ていただろう山本からの叱責を覚悟はしていたが、トイレから出るのをためらいやり過ごした。まさか、山本が襲い掛かることはないのだが、何かの拍子でアナルプラグの存在に気付かれることを気にし声を出さないでいる。 「……。」 「あの餓鬼。佳乃ちゃんの尻の穴ヒットしやがって…おれも嗅いだことない臭いを指先に…くそっ。」 事実ではない山本の発言は、佳乃の精神を揺さぶる。最初に相手をした嗜好会員が山本で、当の本人は佳乃との交わりや長時間のクンニを知らないでいる。その事を遠い過去の出来事としてしまっていた記憶のタンスが再び開かれ防虫剤のような不快な感じに襲われる。 （まだ、狙われているの…。） 山本の心の中を知っている佳乃は、この場で返事をすると万が一を考えてしまいスカートのまま便座に座り込む。 「……。あっ近藤さんですか？…山本です。……忙しいとこすいません。で、例の件どうなりました？」 「それで……はい。お安い御用です……それで助かるのであれば…。じゃぁ…登記の件は司法書士にお任せしますので…えっ、近藤さんのほうで……よろしいんですか。では、お言葉に甘えます。」 山本はトイレの中から大島からの紹介の銀行員近藤に電話をし、なにやら安堵の声をあげる。車の中の声色とは違い、ハイトーンの音域が話の内容をブース内の佳乃にもわからせる。 便座に座ることで下着は引っ張られ圧力を感じ、プラグの位置には変わりのないものの、異物を感じ続けることで腸液の分泌が活発になり、括約筋の動きに合わせてゆるゆるとしたプラグの動きに目をつむる。 「……近藤さん。ありがとうございます、大島さんによろしくお伝えください。では、のちほど。」 「ふぅぅぅ。これで月末はなんとかなりそうだ。」 大きなため息の後の言葉は一時凌ぎであることがわかる。その言葉で問題は根本的に解決はしていないようだった。 山本がトイレを立ち去り数分が経った頃、ようやく佳乃は便座から腰を上げ再びスカートの皺を伸ばす。 佳乃の聞いた山本の資金繰りの話は、耳の中にすら残らない。 立ち去った山本がモデルルームを出て行く扉の音を頼りに、ブースを出、案内用のパンフなどの整理に取り掛かり何もなかったような顔をしている佳乃。 「なんだ、戻ってたの？……それでどうなったの？さっきのお客さんは。なにか揉めてたけど？」」 「すいません……怒って帰られてしまいました。」 「やっぱり、いいよ…あんなお客は、購入してからも色々面倒になりそうだしね。……それよりお尻大丈夫？子供のいたずらとはいえ、すごい勢いの浣腸だったけど？」 「ええ、大丈夫です。……でも、契約できなくなってしまって申し訳ありませんでした。」 「……それより加山さんには、大島さんとこのセミナーのお手伝いがんばってもらわないと。」 「……。」 「どうしたの？。うちの事はいいからさ、我が社にとって今一番大事なお客様は、大島さんだよ。そこのとこだけは間違えないでね。僕の言うことよりあの人の言うことを聞いていて欲しいんだよ、加山さんには。」 「は……い。」 佳乃の間の開いた返事の裏を理解できない山本は、大島の企む裏など到底理解することなど出来ないでいた。 |
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| 2009.11.4掲載 |
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