| ８１ お守りの返納 秋風が早々に通り過ぎ、初冬の寒さが首筋を凍らせる頃。首からぶら下がる鎖をだらりとした備品女は、むき出しのコンクリートに包まれた霊安室に絡めとられていた。 「お、奥さん。・・・お久しぶりです。」 「・・・。」 「ぼ、ぼくです。・・・樽本です・・覚えていないのですか？・・・この奥で・・・先生と。」 「あっ・・・。」 「覚えててくれたのですね。」 樽本は、佳乃に覚えていてもらえただけで、数ヶ月前の行為が股間に蘇る。後ろ手に縛られた佳乃は、以前よりも牝のいやらしさを醸し出し、女体の変化にも樽本は気がついた。 「少し・・・乳房が張っています。・・・妊娠ではないようだけど・・・。」 「ヒッ・・・。」 樽本の手のひらが、佳乃の張った乳房の下を揺らすと、恥ずかしさを隠すように顔を樽本からそらし、入ってきたほうの扉を見つめる。 「ガチャッ・・・・バダンッ。」 扉をくぐった白衣の男は、内側から電子的に施錠された鍵のかかり具合を確認すると、久しぶりにみた裸体に目を奪われる。 「ヒヒィ・・・加山佳乃、久しぶりだね。・・・お乳の張りは、牡を欲している証拠だよ、樽本君。だよねぇ佳乃。」 樽本は、その声に反応すると、乳房を下支えした手をたたみ後ろに回した。一礼すると、部屋の隅にある婦人科用の診察椅子を転がしてくる。 「・・・ま、また、辱しめるのですか。」 「いえ、・・・今日は、医師としての仕事ですよ。・・・辱しめて欲しいのであれば、いくらでもしてあげますがねぇ。」 「・・・お、お断りします。」 「どうやら・・・棘がなくなったバラのようになっている。・・・女に責められる日々を送ると・・・攻撃的なホルモンは失われるのかな、実に興味深い。」 横山は、佳乃のこの数ヶ月を知っている。あずさに施されるレズ攻めを知り、苦々しく思う反面、これから来る蜜月の時間は、再び牝として実験していくには都合がいいと感じ取っていた。 「先生っ・・・準備ができました。」 樽本が声を掛けると、にんまりと笑みを浮かべる横山の顔は、婦人科医の顔にかわる。 「よし、では・・・奥さんを・・・固定しなさい。」 首輪の近くに鎖を巻きつけた手をやり、樽本は佳乃の裸体をお姫様のように抱えあげる。 「ヒッ・・・。」 足元が宙に浮くと、次第に近づく診察台に久方ぶりの恐怖が蘇っていた。樽本が抱える佳乃の体は以前と変わらず柔らかく、横山の言う棘のないバラの意味はわからないでいた。 「カチャンッ・・・カチャッ・・・カチャンッ。準備できました・・・先生。」 「じゃぁ・・・実習を兼ねた、婦人科検診を行うよ。樽本君・・・奥さんの膣洗浄は・・・温水を使わなくてもいい・・・冷水でやりなさい。」 「えっ・・・冬ですし・・・温水のほうが・・・。」 「いいんだよ・・・奥さんの熱い膣は、冷水で引き締めてやりなさい。」 「・・・ジュジュ・・・ジュワァァ。」 「ひぃぃぃ・・・つ、つめたいぃ。」 「あ、ご、ごめんなさい・・・き、きつすぎましたか？」 ノズルの先端を少し遠のけ、勢いを弱めると、陰唇廻りから膣前庭をくまなく洗い流す。佳乃の冷たさに配慮した樽本の処置は、思ったより短時間で清めると効率のよさを横山は褒めた。 「手際がいいね、・・・では、クスコを・・・あぁ・・・大き目の・・・そう、それで。」 「大きすぎませんか？・・・奥さんの・・・膣は・・・もう二まわり小さいほうが・・・適当かと。」 「それもそうなんだが、・・・今日の内診は・・・子宮口から先の診察もするんでねぇ・・・大き目のほうが処置がしやすいんだ。」 「えっ・・・す、すいません。」 子宮口とその先と聞いた樽本のうわずった声を聞き、横山は樽本の佳乃への愛着を推し量った。その横山の指摘に反応を見せた佳乃は、どうにもならない両手両足を動かし、拒否の反応をあらわにする。 「ど、どこまで・・・そ、そんなとこまで、女を辱しめるなんて・・・あぁぁぁっ・・・つ、つめたいぃ。」 「やはり、男の肌を感じ取ると・・・棘が出てくるようだ。・・・樽本君・・・奥まで押し込みなさい。・・そう、くるくると回せば・・・女のお汁が出て・・・潤滑のワセリンもいらんだろう？」 「は、はい。・・・ワセリンを使わずに・・・ここまで・・・お、奥さん・・・少しずつ開きます。・・・キリキリ・・・キリキリ。」 真っ赤な柔肉は、金属のペリカンに押し広げられる。ペリカンの嘴の隙間からはみ出、喰いこむ柔肉の赤みは前庭部分よりも濃い。最奥の子壷の入り口は、頑なに鍵をかけ誰の行く手も阻んでいる。 「せ、せんせい・・・あれは？」 「あぁ・・・お守りさ。」 「お守りですか？・・・なるほど・・・。」 飲み込みの速さをアピールしようと樽本は、横山の比喩に気がつかず納得の表情をみせていた。 「あぁ・・・と、とじて。・・・き、きつ過ぎますぅぅ。」 「子を産んだ経産婦がなんだ、いずれ尻の穴も、同じクスコで奥を覗かれる分際で・・・弱音を吐きやがって。」 横山の罵倒に、棘を失った佳乃の意気込みは尻すぼみし、表情を見せぬよう顔を背け、男達の視線から遠ざけた。 「さぁ・・・樽本君、もう一開きしなさい・・・お守りを神社の木にくくる時がきたんでね。」 「は、はい・・・先生・・・これくらいでしょうか・・・キリキリキリ。」 樽本の指先は、蝶ネジをキリキリと回し佳乃の子宮口を外部の空気に触れさせる。その入り口から見える細い糸は、佳乃自らの淫液や、数々の嗜好会員から吐き出された牡汁とまみえ臭いたつほど濡れそぼる姿が見える。 「うぅぅっ・・・。」 佳乃の苦悶の声に樽本の指先は躊躇を覚え、横山の合図に再び指先を動かす。 「まだ・・・よしっ、それくらいでいい。・・・では、弛緩用のクリームを・・・入り口に・・・揉みこんで」 「・・・そこじゃぁない・・・奥だよ・・・子宮口。」 指先に掬った弛緩クリームを適量かどうか横山の判断を仰ぐと、許可を得、指先をクスコの間に差し入れる。膣道の入り口に塗りかけた樽本の長い指先は、横山の指導で赤く膨らんだ子宮口へと進む。 「先生・・・満遍なく？」 「そうだねぇ・・・奥さんのことだから、揉み込んでやると・・・喜んでくれるかもしれないがねぇ。キキキィ。」 「あっぁぁぁ・・・そ、そんな・・・おくぅぅ・・を・・・うくぅぅぅっ。」 子宮口に触れられた指先の動きに、子壷は揺さぶられ佳乃の堪えきれぬ牝の声は、静かな霊安室に響き渡った。 「・・・こ、これくらいで・・・よろしいですか？」 「うーんっ・・・奥さん、どうだい、気持ちいいんなら、続けさせてもいいんだが、・・・ポルチオ性感より・・・直腸への刺激のほうがいいのかな？」 「ひぃぃぃっ・・・あっ・・あっ・・た、樽本さんっ・・・あっ・・・あっ・・・お、終わらせてぇぇっ。」 横山に頼らず、樽本の名前をさん付けで呼んだ佳乃に嫉妬してか、命令口調で樽本の肩をたたく。 「・・・ちっ・・・樽本君、もういいよ、１０分ほどそのままにしていてくれ。」 夢中で揉み込んでいた樽本は、お預けを喰らい叱られた犬のように、佳乃の股座から離される。そぼ濡れたゴム手袋の指先は、横山の命令ではなく佳乃の哀願を聞いてやめたと言わんばかりに小刻みに震えていた。 指示した１０分がたつと、怒りなのか苛立ちを隠しきれない横山は、肩を尖らせ診察台ににじり寄る。 「君は、後ろで見ていろ・・・。」 ご開帳された佳乃の股間の隙間に納まると、冷水のノズルを持ち出し、クリームの塗られた子宮口に勢いきつめに浴びせた。 「ヒィィ・・・。」 「娘の出てきた通り道を揉まれただけで、喘ぎを漏らすとは・・・女に囲われていても、牝は牝。・・・女、母には戻れんということかな。」 「・・・。」 「効いてきたか・・・ほれ、感じるか？」 「ど、どこを・・・触ってるんですかっ・・・な、なにも・・・か、んじ・・・。」 佳乃は弛緩している子宮口への感触を横山に知らせるのを途中でやめた。だが、先程までの樽本の行った指先の動きとの反応の違いに、弛緩クリームの効果は確認できていた。 「ほれっ・・・ほれほれっ・・・いじられても・・・わからなくなったようだ・・・あの時と同じだっ・・・キキキッ。」 横山が少しずつ話す佳乃との過去の経緯は、佳乃自身に見覚えのないことで、耳の中にこびり付く事もない。気付いて欲しいのか、執拗に横山はしゃべりかけるがその無反応を楽しんでいる。秘密はばらしたくなるもので、ばれるまでの感覚は知り得るものだけの快楽というべきなのだろうか。 「・・・い、いじらないで・・・。」 「どこをだい・・・わたしはどこも触っていないよ。・・・ハハッハ・・・被害妄想もはなはだしい、感覚のない証拠だ。・・・樽本君・・・わかったね・・・こうして、弛緩の具合を確かめるのも技術なのだよ。」 「・・・べ、勉強になります。」 「よし、・・・奥さんも快楽の壷を弛緩されたままではかわいそうだ、樽本君さっき君が揉んでいた、奥さんの乳房・・・張りを感じているのならば、母乳マッサージを施しなさい。」 「・・・いやです。・・・さ、触らないで。」 先程叱られた樽本は、恐縮しながら佳乃の脇に歩を進め、脇に立つと、両の手で片方の乳房を挟みこみ、乳首の周りを揉みしごく。 「お、奥さん・・・きつくないですか。・・・しこりなどを確認します。」 「うぅぅ・・・うぅぅ・・・・あっ。」 「痛いですか？・・・」 「樽本君・・・違うよ・・・声の変化に気付きなさい。」 「・・・ふぅぅぅ・・・・んっ・・・うぅうんっ。」 「ほらっ・・・段々・・・乳首が・・・どうだい？」 「はい、・・・勃起が進んで・・・あっ。」 「どうした？・・・母乳でも？」 「はい・・・少し滲んで・・・。」 「あっ・・・ああっ。」 「舐め取りなさい・・・強く押して・・・絞りなさい・・・乳腺の炎症を招きかねない。・・さぁ・・・口を当てて・・・吸い取りなさい。」 「チュッ・・・チュゥゥゥゥッ。」 「あんっ・・・そ、そんなっ・・・いやっ・・・あぁっぁ・・・す、吸わないでぇぇっ樽本さんっ。」 佳乃の視界を樽本の頭が遮った時、横山の指先に握られたハサミのような器具は、子宮口からぶら下がるお守りの紐をズルリと引き抜いた。 「・・・キキキッ・・・お守り、お勤めご苦労さん・・・。」 横山は手にしたＴの字型のＩＵＳ避妊リングの臭いを嗅ぐと、最後にフィールドに感謝をするアスリートのようにキスをし、樽本にも佳乃にも見えぬようゴミ箱に投げ捨てた。 黄体ホルモンの効果で妊娠を免れてきた佳乃の防御力はゼロになり、横山の攻撃力だけが相対的に上がるだけだった。 |
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| 2011.2.12掲載 |
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