| ８３−１ 二人目の備品が落札者によって、運ばれていったその後。アタッシュケースに投げ込まれる札束の始末を終えると加山佳乃の払い下げ先が判明する。 「えぇ・・・では、このたび最も入札の多かった・・・備品２６・・・加山佳乃っ・・・２４歳・・・既婚・・・経産婦・・・堕胎回数０。」 高山に読み上げられると、三治の介添えで首輪の鎖をたくし上げられ、壇上傍へ引き出される。生えそろった陰毛を手で隠し、心臓の鼓動が伝達される乳房を押さえながら歩を進めると、目隠しの外の牡たちの視線を体に感じ取る。 「加山佳乃っ・・・おまえの陰核包皮に・・・墨をし損ねたが、おれはあきらめねぇよ。・・・落札者の後を追いかけ、いない時を見計らい、甘クリ在中の烙印をなっ。・・・楽しみにしとけよっ・・・ヶッヶッヶッ。」 「・・・。」 返す言葉すら見つからないくらい動揺と落ち着きを繰り返す佳乃。三治の言葉に嫌悪を示すも、この先の行き着く先によっては、彫師の戯言が、ただの妄言に聞こえてしまうことを覚悟していた。 「ほぉぉ・・・薄い陰毛と・・・赤いコロリとした乳首。・・・経産婦とは思えませんな。」 「いやらしさと・・・幼さ・・・それに・・・けなげさ。なんともいえんっ。」 「あの老師の・・・子種を・・・含んでおるとの話。」 「えぇ、それだけでも億の価値を・・・・。」 「ホホホッ・・・そうか・・・億の価値か・・・佳乃っ。」 入札をした者達は、ざわつきを押さえきれず高山はマイクの音を少しあげた。 「それでは、落札者様を発表します。・・・・医療法人社団・・・・横緑会・・・横山病院理事長・・・横山善二郎さま。・・・落札金額は・・・２、２億１０００万。」 「なにぃ・・・善二郎。・・・わしの金額をしっておったのかぁ。」 「いいえ、父上には・・・消費税の感覚がないんです。・・・だから、ちょうどの金額で入札すると・・・。」 「キィィィ・・・・お、おまえ・・・佳乃を・・・佳乃を・・・どうするつもりじゃ。」 「籍でも入れますかねぇ・・・キキキッ。」 平然と父の前で冗談を入れられた老医師は、金額の大きさを感じさせずどしりと構えた善二郎に開いた口を塞ぐのが精一杯だった。 「まぁまぁ・・・先生。これで孫の顔をも見れます。・・・それで良しとしま・・・。」 「いぃぃぃ・・・支配人、息子善二郎は・・・そんな男ではないっ。佳乃を、壊し・・・内臓まで弄るだけ弄り・・・挙句の果てに・・・ゴミ屑のごとくポイ。そんな男にぃぃ。」 親子喧嘩を目の当たりにした他の嗜好会員は、呆気に取られるもの、そのいさかいを楽しむもの様々で、落札し損ねたものは煽るようにし、憂さを晴らしている。 「なんとでも言ってください。・・・僕は、戸籍上あなたの子だが、妾の子、あなたに対する愛情などこれぽっちもありませんよ。」 「ぜ、善二郎。・・・きさまっ・・・・うくっ・・・あがっ・・・く、くるしぃぃ。」 胸を叩き、苦しみ始めた横山老医師は、息子善二郎の膝に抱きつくと、悶絶し意識を失いかけていた。 「せ、せんせい。・・・息子先生・・・。」 「いつもの発作です。・・・ニトロを飲ませておけば・・・落ち着きます。」 脇をつかまれ高山に身柄を渡すと、胸ポケットから取り出した錠剤を含ませると、安静にするよう促した。 「おいっ・・・金山、部屋を用意しろ・・・。」 「はいっ・・・こ、こちらに。」 「うぅぅぅ・・・く、くるしぃ。」 薬の効き目の遅さを知る大島らの動揺は薄い。抱えあげられた横山は、そのまま佳乃の前を通り過ぎ、悔しさの中部屋を後にした。 横山老医師の退場で、ざわつきの収まった室内の視線は、佳乃の裸体に集められると、周囲から箱の中身を問う声が上がる。 「Ｘマスプレゼントはなんなんだい？・・・あけて見せてくれないか？」 前列の男が興味を示すと、周りの声も同じ問いをかけ、壇上の高山は善二郎に目で催促をした。傍に近づく気配を感じた佳乃は、身をくじらせ横山と反発し拒絶の意を示す。 「逃げるなよ。・・・もうどこにも逃げられんのだから。」 鎖を受け取った横山は、脇腹を抱き寄せ、佳乃の頬に口づけをする。 「・・い、いやっ。・・・あ、あなたなんかにっ・・・。」 「次の言葉はなんだい？・・・まぁいい、強がっても一緒だ。・・・その涙も・・・よがり狂い、牝の喜びの涙に変えてあげるんだ。キィィィ。」 耳傍で囁いた地獄の言葉。佳乃の顎をしゃくり、首にぶら下げた箱のラッピングを外すと、中から出て来た淡いブルーのパンティーを取り出し、皆に見せびらかす。 「んっ・・・普通のパンティーだが。・・・なにかいわくつきか。」 「・・・ただのお気に入りってわけじゃぁないようだが。」 拡げられたパンティーを口々に批評する会員達は納得せず、落札者である横山に詰問した。 「先生、・・・備品２６に聞いては下さらんか。・・・どのような曰くか。」 「そうですねぇ、・・・匂いだけではわからんでしょうから、目隠しを取って・・・説明させましょう。」 横山は、すでに自らの所有物に成下がった佳乃に命令し、きつめに施された目隠しを外した。薄暗い室内の異様な興奮状態を視界に捉えた佳乃は、ドギマギと視線を揺らすと、袖の奥に腕組みをする大島を見つめた。その大島は、自分の手から離れていった子牛を見つめるように、次の所有者横山に目配せをする。 「さぁ、佳乃っ。・・・これは、どんな因縁の下着かな？・・・処女を奪われた物か・・・はたまた、旦那のお気に入りか。・・・若しくは、浮気相手のプレゼントか。」 淡いブルーの下着を大きく広げ、股布の少し汚れた部分を会場に見せ付けると佳乃の口は重苦しく開く。 「・・・い、言いますから。・・・ひ、拡げないで。」 「佳乃っ・・・丁寧に説明をしろ、情景が浮かぶような説明を。」 高山に背中を小突かれると、後ろを向き、見せびらかすようにリモコンを掲げる。首筋に伝わりそうな刺激を回避すべく、目を閉じ口を開く。 「・・・こ、この下着は、・・・不動産の物件案内の時に・・・。」 「ほぅほぅ。」 「お客さんで来た・・・男性に・・・触られました。」 「どこをだっ？」 「・・・お、お○んこを・・・。」 「直接か？・・・それともパンティー越しにか？」 「・・・ちょ、直接に。」 「ずらされて、直接なのか。パンティーの中を弄られる様にか？」 会場の詰問の鋭さは勢いを増し、核心部にせまる。情景が浮かぶが、会場に先導された説明では横山は納得しない。 「佳乃っ。・・・自分から全てを話せ・・・。深く・・・その時の情景を。」 「物件のアパートの鍵をかけられ、・・・後ろから羽交い絞めにされ・・・。男の指先が、この下着に入れられ・・・ク、クリトリスを・・・弄られました。」 「その男は、・・・会社の新入社員の友人で・・・私と・・・その新入社員の間柄を勘違いし・・・私のことを犯そうとしていました。」 「ほぉ・・・その新入社員と・・・お前さんは、いい仲だったんだね。」 「ち、ちがいますっ。・・・なんの関係もないのに・・・あることないことを・・・言いふらされて。」 狼狽した佳乃は力強く小山との関係を否定するが、今の自身の姿を見てそれに納得する者などいなかった。 「犯される寸前の陰核弄りに興奮し、その頃からＭ気が強くなったんだな。」 「・・・。」 「答えを聞くまでもないようです。・・・体が火照り出しました。」 横山は指先を佳乃の説明のように後ろから差し入れ当時の吉田がしたような動きを見せる。指先の先端の滑りを感じるとそのまま擦り続け佳乃の火照りは、増幅された。 「あっ・・あっ・・・あぁぁっ。」 内股に力を入れると横山の腕を挟みこんだ。相応の力加減に会場は、嘲笑を浴びせかける。 「あの時を思い出したのか。・・・こうしてその男の腕も逃がさぬように挟みこんだのか。」 「ち、違いますぅぅぅ・・・あっ・・・あくぅぅぅ。」 「ヌチャッ・・・ヌチャッ。」 動きの緩やかな横山の指の動きに、火照りを沈めるための消火剤のように湧き出る淫液は、逆の効果しか与えない。音から来る敏感な刺激は、佳乃の股間をさらに熱くし、燃焼に足らない酸素を欲するように息を荒くする。 「はっ・・はっ・・・あぁぁっ・・・い、いき・・・いきそうっ。」 力を入れたままの内太股に膣液の滴を垂らすと、その流れの先は足元に通じ、床のコンクリートに染みを作る。 「どうやら・・・薬の・・・効果が出ているな。今日が、仕込み頃かっ。」 指先から感じる熱い膣液と、視覚で捉えた内股に流れる液体の色身を確認する。横山の呟きはだれの耳にも届かず、薬物の受益者たる佳乃の耳にも入らない。 数十秒の摩擦に耐えられぬ佳乃の絶頂振りを見た会場の入札者は、落札者の横山に嫉妬を感じながらも、股間の膨らみを押さえることはできなかった。 「コッコッ・・・ガチャッ。」 霊気漂う暗闇の奥に、血の気の引きかけた男がつながれている。扉の開く音でしか時間を感じ取ることができない闇の中。聞き覚えの薄い声色に倦怠気味の声を掛けた。 「お、おいっ・・・今日は何日だ。」 「サンタがうろつく頃ですよ。」 「おまえ・・・女か。」 「えぇ・・・女と交わる時は・・・男になりますけど。」 「・・・。」 声が近づくたびに男の匂いを感じず、久しぶりに嗅ぐ女の匂いを感じ取った。少しでも近づくことができれば弱った体力の中でも対処できるよう身を整えた。 「笹山警部・・・わたしを力ずくで押さえ込もうとしなくてもいいわ。」 「おまえっ・・・。」 「岸本警視監の最後のお言葉を・・・お伝えに来ました。」 「し、死んだのか、あの人は・・・。」 「いいえ・・・依願退職をなされました。・・・天下り先も用意されて・・・。」 「そ、そうか。・・・君は、どうしてここへ。」 「説明より先に・・・時間がないのでは。」 「あぁ・・・。」 「笹山警部、巨悪を倒すことは、今の時点で困難になった。私自身が、組織の中で消されてしまっては、君への指示も全てが不法行為になってしまう。」 「・・・。」 「３人の女性警官ならびに・・・他の女性達の無念を晴らすべく、嗜好研修所の壊滅を君に託そうと思う。・・・その手段は、今、君の傍にいるだろう桧山警部補に伝えてある。・・・警察庁への根回しは、終えてあるので・・・組織の始末だけを考えてくれ・・・以上。」 「・・・あんたは、・・・。」 「そうよ・・・私も・・・潜入捜査官。・・・長居をしてしまったけど・・・あなたみたいにヘマはしなかったわ。」 あずさの顔を見ると大島の秘書である顔を思い出し、頭の中の混乱を少しずつ解き始める。 「こうしてはいられないの。・・・さぁ・・・立てるでしょ。」 「あぁ、・・・腹が減って・・・力がでないが・・・なんとか。」 「車に・・食料は用意してある。・・・武器も揃えたわ。」 「少し、肩を貸してくれ・・・いよっと。」 あずさの肩を抱くと、足に力を入れ開いたままのドアへ向かう。霊安室からの脱出を最優先にするべく無音でこの場を立ち去ることに専念した。 裏口に止まった遺体搬出用の寝台車は、後ろの扉を開け生身の人間を待つ。駆け込むように乗り込んだ笹山とあずさは、扉を内から閉めると運転席の男に合図する。 「出してっ。」 アクセルを静かに踏み込んだ運転手は、後方を確認すると、追手のないことにため息を深くつくと、声を出す。 「佐々木・・・いやっ笹山警部、無事だったか。」 「・・・う、上山・・・上山さん。」 上山の言葉に、全てを知っていることを感じると、あずさの用意した計画を引き出そうとあせる。 「け、警部補・・・この先どうするんだ？・・・。」 「まぁ・・・これでも食べて・・・それからよ。」 あずさは、簡易的な栄養補助食品を手渡すと、資料を片手に再度の確認をし始める。棒状のスナックに被りついた笹山は、空腹を満たすべく胃の中に流し込んでいた。 |
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| 2011.3.5掲載 |
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